内科医キューピーのつぶやき

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CIDP(Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy)

CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー)は、免疫介在性の慢性炎症性末梢神経疾患として最も頻度の高い疾患です。

 

今回は昨年公表されたCIDP診療の世界標準ガイドラインとも言えるCIDP EAN/PNS Guideline 2021の内容について詳細にまとめてみました。

 

基本的に記載事項はほぼ全て上記Guidelineに準じたものとなります。

 

この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

European Academy of Neurology/Peripheral Nerve Society guideline on diagnosis and treatment of chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: Report of a joint Task Force—Second revision(Eur J Neurol 2021;28:3556–3583.)

日本神経学会編:慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、多巣性運動ニューロパチー診療ガイドライン2013

 

【基本事項】

・CIDPは、最も頻度の高い免疫介在性の慢性炎症性末梢神経疾患とされます。

病態:末梢神経(特に神経根部と遠位部)の髄鞘構成成分に対する免疫異常が想定されていますが、未解明です。

→近年、ランビエ絞輪(node)やその近傍のparanode、juxtaparanodeの分子に対する自己抗体の関連が注目されています。

臨床像:慢性経過で進行する四肢筋力低下と感覚障害を主徴とします。

→進行様式には階段状に進行するものと再発寛解をきたしながら進行するものがあります。

有病率(日本):難治性ニューロパチー研究班の2004-2005年の調査で、1.61でした。

好発年齢/性差:加齢とともに増加し、性差(日本)は1.6~3.3:1と男性に好発します。

 

【診断方針】

Eur J Neurol 2021;28:3556–3583

・上図はEAN/PNS Guideline 2021におけるCIDPの診断方針のまとめになります。

※いずれの項目についても詳細は後述します。まずは概略をまとめて記します。

対称性または多巣性の多発根ニューロパチーで、再発寛解または8週間以上の進行性の経過を示し、特に感覚症状腱反射消失振動覚や関節位置覚優位の障害などを認める場合は、CIDPを疑う必要があります。

神経伝導検査は必須の検査であり、Electrodiagnostic Criteriaが参考になります。

→初回検査で基準を満たさない場合は、再検査を検討する価値もあるとされます。

・大まかな方針としては、臨床所見から各病型のClinical Criteriaを満たすか確認し、その上で各病型のElectrodiagnostic Criteriaを満たすか確認して、CIDPの診断となります。

・Clinical CriteriaやElectrodiagnostic Criteriaからは確定診断に至らないものの、CIDPが疑われる場合はSupportive Criteriaを確認します。

→具体的には画像検査(神経超音波およびMRI)髄液検査神経生検があります。

→なお神経生検は侵襲的であり、感度/特異度とも十分ではないため、慎重な検討を要します。

・また、CIDPが疑われる全ての患者でM蛋白の確認が強く推奨されます。

→特にIgM paraproteinが検出される場合は必ず抗MAG抗体を確認します。

・更にauto-immune nodopathiesとされる一群の臨床的特徴を伴う場合は、nodal and paranodal antibodyの測定を検討します。

・CIDPの鑑別診断は多岐に渡り、いずれかの疾患を疑う所見(Red flags, 後述)を認める場合は必ず鑑別に挙げるようにします。

 

【臨床診断基準(Clinical Criteria)】

①Typical CIDP

以下の全てを満たす場合に、Typical CIDPと診断する.

-進行性または再発性で左右対称性の近位+遠位の上下肢筋力低下および少なくとも2肢以上の感覚障害

-少なくとも8週間以上の進行性の経過

-全四肢の腱反射低下または消失

・多くの場合、四肢遠位筋の筋力低下歩行障害で発症します。

・臨床経過は8週間以上の慢性進行性ですが、再発寛解をきたしながら進行することもあります。

・GBSと異なり脳神経呼吸筋自律神経の障害はとされます。

男性に多く、特に40-60歳に好発するとされます。

→ただしどの年齢でも発症し得て、乳幼児や小児期の発症の報告もあります。

・最大13%で急性に発症し、acute-onset CIDP(A-CIDP)と呼ばれます。

4週間以内に急速に進行し、最初はGBSと誤診されることもあります。

→このうち5%が後にA-CIDPと再診断されており、A-CIDPとGBSの鑑別は困難とされます。

A-CIDPとGBSの鑑別のポイント

-A-CIDPは発症後8週間以上経過しても悪化し続け、改善したとしても少なくとも 3 回は再発するとされます。

-A-CIDP患者は多くが自立歩行可能で、顔面筋呼吸筋自律神経の障害はです。

-A-CIDPでは感覚障害が多い傾向があるとされます。

※ただし、急性期にA-CIDPとGBSを区別する特異度の高い臨床的特徴や検査はありません。

 

②CIDP variants

(0)基本事項

以下のいずれかであるが,記載事項以外はTypical CIDPと同様である.

※ただし,非罹患肢では腱反射が正常な場合もある.

-Distal CIDP:下肢優位の遠位感覚障害+運動障害.

-Multifocal CIDP:多発単神経炎パターンの感覚障害+運動障害で,通常は非対称性,上肢優位で2肢以上に認める.

-Focal CIDP:1肢のみの感覚障害+運動障害.

-Motor CIDP:運動障害のみで,感覚障害を伴わない.

-Sensory CIDP:感覚障害のみで,運動障害を伴わない.

・CIDP variantsは時間経過でTypical CIDPに進展し得る可能性が指摘されており、両者の病態が異なるかは明らかではありません。

・一方で診断の方針や鑑別診断が異なるため、CIDP variantsとTypical CIDPを区別して認識することは重要とされます。

 

Distal CIDP

・"DADS(Distal Acquired Demyelinating Symmetric neuropathy)"として知られていた一群です。

上下肢遠位優位の感覚障害+運動障害を呈します。

・特に筋力低下は上肢よりも下肢で遠位優位に生じ得ます。

・Distal CIDPの約2/3抗MAG抗体関連ニューロパチーとされます。

※MAG:Myelin-Associated Glycoproteinです。

・抗MAG抗体関連ニューロパチーは特徴的な検査所見、免疫治療への反応性不良などの点から、CIDPとは区別すべき疾患と考えられています。

緩徐進行性深部感覚障害優位、NCSにおける遠位潜時延長が特徴的です。

→治療はCIDPに準じてステロイドIVIgPE(特に急速な経過の場合)が行われますが、治療効果に乏しいことも多いです。リツキシマブの有用性も報告されつつありますが、多くの症例で著効するものとは言い難いと考えます。

 

Multifocal CIDP

・"MADSAM(Multifocal Acquired Demyelinating Sensory And Motor neuropathy)"などと知られていた一群です。

・通常は、上肢優位多発単神経炎パターンの感覚障害+運動障害を呈します。

・下肢は遅れて障害され得ますが、発症時から下肢にも障害を認めることもあります。

・他の病型よりも動眼神経三叉神経顔面神経迷走神経舌下神経などの脳神経障害を呈しやすいとされます。

 

Focal CIDP

1肢のみの感覚障害+運動障害を呈する稀な病型です。

腕神経叢仙骨神経叢の障害が多いとされます。

 

Motor CIDP

近位+遠位の上下肢筋力低下を呈し、左右対称性であることが多いとされます。

・臨床的にも電気生理学的にも感覚障害は認めません

・臨床的に運動障害のみで、電気生理学的に感覚障害を認める場合は"motor-predominant CIDP"と称されます。

・Motor CIDPでは、ステロイド投与後に症状が増悪することがあります

 

Sensory CIDP

感覚障害のみを呈し、臨床的にも電気生理学的にも運動障害は認めません

電気生理学的に運動障害を認める場合は"sensory-predominant CIDP"と称されます。

・Sensory CIDPの約70%が長期経過で筋力低下を認めるとされ、他の病型の前段階を見ているに過ぎない可能性が指摘されています。

 

【電気診断基準(Electrodiagnostic Criteria)】

⓪基本事項

・本項ではElectrodiagnostic Criteria、すなわちNCSの所見の基準について記載します。

・なおMCSとSCSについて、それぞれCriteriaが存在しています。

 

①Motor nerve conduction criteria

Strongly supportive of demyelination

少なくとも以下の1つを認める.

(a)2つの神経で遠位潜時が正常上限より50%以上延長している.

※ただし、手根管症候群による手関節部での正中神経障害を除く.

(b)2つの神経でMCVが正常下限より30%以上低下している.

(c)2つの神経でF波潜時が正常上限より20%以上延長している.

※遠位のCMAP振幅(陰性ピーク)が正常下限の80%未満の場合、50%以上の延長とする.

(d)2つの神経でF波消失を認め,他の神経で1つ以上の脱髄所見を認める.

※(d)はF波消失を認める神経の遠位のCMAP振幅(陰性ピーク)が正常下限の20%以上の場合に検討する.

(e)運動伝導ブロック;脛骨神経を除く2つの神経において,遠位のCMAP振幅(陰性ピーク)に比して近位で30%以上の減少を認め,遠位のCMAP振幅(陰性ピーク)が正常下限の20%以上もしくは他の神経で1つ以上の脱髄所見(F波消失を除く)を認める.

(f)病的時間的分散;2つ以上の神経において,近位のCMAP持続時間が遠位に比して30%以上(脛骨神経では100%以上)の増加を認める.

(g)1つ以上の神経において遠位のCMAP持続時間(ここでは最初の陰性ピークへの立ち上がりから基線に復するまでの時間と定義)の延長および他の神経で1つ以上の脱髄所見を認める.

※low frequency filter(LFF)の設定による持続時間延長の基準について示す.

-LFF 2Hz:median>8.4 ms, ulnar>9.6 ms, peroneal>8.8 ms, tibial>9.2 ms.

-LFF 5Hz:median>8.0 ms, ulnar>8.6 ms, peroneal>8.5 ms, tibial>8.3 ms.

-LFF 10Hz:median>7.8 ms, ulnar>8.5 ms, peroneal>8.3 ms, tibial>8.2 ms.

-LFF 20Hz:median>7.4 ms, ulnar>7.8 ms, peroneal>8.1 ms, tibial>8.0 ms.

 

Weakly supportive of demyelination

⑴と同様であるが,所見を示すのは1つの神経のみである.

 

注意事項

・皮膚温は手掌部で33℃以上、外踝部で30℃以上に保つようにします。

・まず片側の正中/尺骨(below the elbow)/腓骨(below the fibular head)/脛骨神経を検査します。

・基準を満たさなければ反対側を検査し、腋窩とErb点刺激(尺骨/正中神経)も確認します。 

 

②Sensory nerve conduction criteria

CIDP

2つの神経にSCSで異常所見を認める.

※遠位潜時延長,SNAP振幅低下,SCV低下のいずれか.

ただしMCSが正常なSensory CIDPは以下のいずれかを満たす必要がある.

(a)正中/尺骨/橈骨/腓腹神経の2つ以上の神経において,SCVが正常下限の80%未満(SNAP振幅が正常下限の80%以上の場合)または正常下限の70%未満(SNAP振幅が正常下限の80%未満の場合)である.

(b)sural sparing pattern;腓腹神経のSNAP振幅が正常である一方,正中神経または橈骨神経のSNAP振幅の異常を認める.

※ただし,手根管症候群は除外する.

 

Possible CIDP

⑴と同様であるが,所見を示すのは1つの神経のみである.

 

注意事項

・皮膚温は手掌部で33℃以上、外踝部で30℃以上に保つようにします。

・腓腹神経の振幅は加齢とともに低下するため、60歳以降は年齢別基準値を用いることが推奨されます。

 

【各病型の総合診断基準(Diagnostic categories)】

⓪基本事項

Eur J Neurol 2021;28:3556–3583

・Diagnostic categoriesの記載に沿って、最終的なCIDPの診断となります。

・いずれもPossibleの基準も存在します(上段は2つのSupportive criteriaを満たすことで診断確実性が上がります)。

 

①Typical CIDP

Typical CIDP

・Crinical Criteria+2神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

・Possible typical CIDP⑴+少なくとも2つのSupportive criteriaを満たす.

 

Possible typical CIDP

⑴Clinical criteria+1神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

⑵Clinical criteria+1神経でMotor nerve conduction abnormalitiesを認める+2神経でSensory nerve abnormalitiesを認める+客観的な治療反応性を認める+その他1つのSupportive criteriaを満たす.

※⑵は他のSupportive criteriaを満たしてもPossibleとする.

 

②Distal CIDP

Distal CIDP

・Clinical criteria+上肢の2神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

・Possible distal CIDP⑴+少なくとも2つのSupportive criteriaを満たす.

Possible distal CIDP

⑴Clinical criteria+上肢の1神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+1神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

⑵Clinical criteria+下肢の2神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

※⑵は他のSupportive criteriaを満たしてもPossibleとする.

 

③Multifocal or Focal CIDP

Multifocal or Focal CIDP

・Crinical Criteria+2神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

・Possible multifocal or focal CIDP⑴+少なくとも2つのSupportive criteriaを満たす.

 

Possible multifocal or focal CIDP

⑴Clinical criteria+1神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

⑵(Focal CIDPのみ)Clinical criteria+1神経でMotor nerve conduction abnormalitiesを認める+1神経でSensory nerve abnormalitiesを認める.

※⑵は他のSupportive criteriaを満たしてもPossibleとする.

 

④Motor CIDP

Motor CIDP

・Crinical Criteria+2神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+4神経でSCSが正常である.

・Possible motor CIDP+少なくとも2つのSupportive criteriaを満たす.

 

Possible motor CIDP

・Crinical Criteria+1神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす+4神経でSCSが正常である.

 

Motor-predominant CIDP

・上記のMotor CIDPまたはPossible motor CIDPにおいて,2神経以上でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める.

 

⑤Sensory CIDP

Possible sensory CIDP

・Crinical Criteria+Sensory nerve conduction criteriaにおけるSensory CIDPの基準を満たす+4神経でMCSが正常である.

※診断確実性はPossibleが最大で,その他の病型のように確定診断基準は存在しない.

 

Sensory-predominant CIDP

・Crinical Criteria+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める+2神経でMotor nerve conduction criteriaを満たす.

 

Possible sensory-predominant CIDP

・Crinical Criteria+2神経でSensory nerve conduction abnormalitiesを認める+1神経でMotor nerve conduction criteriaを満たすor2神経でMotor nerve abnormalitiesを認める.

 

【治療反応性(Response to treatment)】

⓪基本事項

・Diagnostic categoriesにおける上段のPossible症例において、IVIg,ステロイド,PE後の客観的改善はSupportive criteriaの1つとされます。

・この中の"客観的改善"すなわちIVIg,ステロイド,PEへの治療反応性の評価について考えます。

・"客観的改善"とするには少なくとも1つのdisability scaleと少なくとも1つのimpairment scaleの改善を確認する必要があるとされます。

disability scale: Inflammatory Rasch-built Overall Disability Scale (I-RODS)、Inflammatory Neuropathy Cause and Treatment (INCAT) disability scale。

impairment scale:MRC sum score、Modified INCAT Sensory Sum scale (mISS)、Neuropathy Impairment Score、ハンドヘルドダイナモメーターで測定した握力。

scaleごとの改善の目安

I-RODS:+≧4 centile points

INCAT disability scale:−≧1 point

mISS:−≧2 points

MRC sum score (0-60):+≧2 to 4 points*

Grip strength

-Martin Vigorimeter:+≧8 to 14 kPa*

-Jamar hand grip dynamometer:+≧10%**

*数値が高いほど特異度が上昇する可能性がある。

**連続3日間の平均値を使用すると特異度が上昇する。

 

①I-RODS(Inflammatory Rasch-built Overall Disability Scale)

・2011年に報告された炎症性ニューロパチー患者における活動および社会参加の程度の評価scaleです(Neurology 2011;76:337-45)。

一般的な日常活動を示す24項目からなり、いずれも患者自身に評価してもらいます。

※新聞/本を読む、食事をする、数時間立っている、走るなど。

・各項目は0(不可能)、1(何とかできる)、2(簡単にできる)の3段階評価で、48点満点です。

※原著論文にアクセスできなかったため、詳細はリンク先サイトを参照ください。

 

②INCAT disability scale(Inflammatory Neuropathy Cause and Treatment)

Ann Neurol 2001;50:195-201

・2001年のCIDPの臨床試験で使用されました(Ann Neurol 2001;50:195-201)。

・上記のように上肢と下肢ごと0-5点で評価し、合計します。

・合計点数が低いほど、軽症と判断されます。

 

③MRC sum score

肩関節外転 肘関節屈曲 手関節背屈 

股関節屈曲 膝関節伸展 足関節背屈

・上記の筋につきMMTで0-5の評価を行い、左右で合計60点満点とします。

運動障害についての評価となります。

・CIDPの他に、GBSでも使用される機会が比較的多いです。

 

④mISS(Modified INCAT Sensory Sum scale)

上下肢の痛覚触覚振動覚関節位置覚および示指における2点識別覚を評価します。

感覚障害についての評価となります。

・それぞれ0(正常)-4(最重症)で評価し、合計33点満点の評価とします。

 

【その他の支持基準(Supportive Criteria)】

①画像検査

神経超音波

正中神経および/または腕神経叢の少なくとも2か所に神経拡大を認める.

※断面積で正中神経前腕部>10mm²、正中神経上腕部>13mm²、斜角筋間>9mm²、神経根>12mm²を拡大とする.

成人患者において上記基準の使用が提案されています。

・一方で小児患者については、有用性を支持するエビデンスはなく、その他の遺伝性疾患の頻度も高いことなどから、神経超音波は推奨されていません。

 

MRI

T2WI(一般的にはSTIRなどの脂肪抑制法)で神経根拡大や信号強度増加を認める.

※冠状断において神経節に近接する神経根の直径>5mmを拡大とする.

・過去の研究では、上記の他に造影増強効果も診断に寄与したとするものもあります。

MRISupportive criteriaとして成人患者に用いる場合のみの使用が提案されており、そうでない場合は成人患者でもMRIは推奨されていません。

→その理由として、例えば上記のカットオフ値を設定した研究は極少数であるなど、診断的価値を有するとするにはエビデンスが不十分であることなどが挙げられています。

Taehan Yongsang Uihakhoe Chi 2020;81(1):81–100

※上図は左側が正常の腕神経叢、右側が同部の炎症により矢印部分に神経根拡大および信号強度増加を認めています(正常像の方が全体が拡大されているので、大きさの比較がしにくく申し訳ありません)。いずれも脂肪抑制T2WIになります。

 

②髄液検査

以下の場合に髄液検査を考慮する.

-Supportive criteriaとして用いる場合

-急性~亜急性に発症した場合

-感染症や悪性腫瘍が疑われる/除外したい場合

※糖尿病患者では正常でも髄液蛋白が高値となりやすく,慎重な解釈を要する.

※50歳以上では正常でも髄液蛋白が高値となりやすく,より高い基準値を用いるべきである.例えば60mg/dLをカットオフとするべきとする報告などがある.

上記の場合に髄液検査を考慮し、診断基準を既に満たしている場合は推奨されていません。

※実臨床では、診断までの過程で実施してしまっていることが多いとは思います。

・髄液所見は蛋白細胞解離(有意な細胞数上昇はなく、蛋白上昇あり)が有名です。

・ただし、髄液蛋白上昇がどの程度診断に有用であるか十分なエビデンスがないとされています。

→更に、既に診断基準を満たしているのに髄液蛋白が正常であった場合、CIDPの診断について不必要な疑念を持ってしまうこともあるため、そのような症例では髄液検査をする必要すらないという趣旨の記載となっています。

 

③神経生検
以下の場合のみ,神経生検を考慮する.

-Supportive criteriaとして用いる場合

-CIDPを疑ったが治療効果がほとんどなく,CMT/アミロイドーシス/サルコイドーシス/神経鞘腫/神経線維腫症などその他の疾患が考慮される場合

 

神経生検を実施する前に,以下を満たすべきである.

-熟練した神経生検施行医と神経病理医がいて,経験豊富な施設であること

-神経生検のメリットが合併症などのデメリットを上回るほど症状が重篤であること

-神経生検の精度の低さを患者が十分に理解していること

 

神経生検を実施する際は,以下に注意する.

-神経生検一般に関する現在の専門家のコンセンサスを遵守する(J Peripher Nerv Syst 2010;15(3):164-75).

-腓腹神経(または浅腓骨神経)で施行することが多いが,臨床的所見を認める神経の方が診断に有用な情報を得られる可能性が高い.

-CIDPを支持する所見として以下が挙げられる.

thinly myelinated axons and small onion bulbs

thinly myelinated or demyelinated internodes in teased fibres

perivascular macrophage clusters

supportive features of demyelination on electron microscopy

・神経生検はルーチンでは推奨されず上記のような状況のみで考慮するべきとされます。

侵襲的であるものの診断精度が高くないことなどがその理由とされています。

 

【血液検査(免疫学的検査)】

①M蛋白(paraprotein)

・CIDPが疑われる患者に対するM蛋白の確認は強く推奨されています。

M蛋白血症に伴うニューロパチーが知られており、必ず鑑別する必要があるためです。

・検査法には免疫電気泳動(IEP:ImmunoElectroPhoresis )免疫固定法(IFE:ImmunoFixation Electrophoresis)があり、後者の方が感度が高く特に推奨されます。

・その他に尿中免疫固定法(特にBence Jones蛋白)sFLC(serum Free Light Chain)などがあり、他の検査で検出されないM蛋白血症を検出し得ます。

・特にDistal CIDPでIgM paraproteinが検出される場合、抗MAG抗体関連ニューロパチーを疑い抗MAG抗体を確認します。

・また有痛性およびDistal CIDPλ型IgGorIgA paraproteinが検出される場合、POEMS症候群を疑いVEGFを確認します。

・M蛋白を認める場合、その他に多発性骨髄腫ALアミロイドーシスが鑑別となります。

 

②nodal and paranodal antibody

以下の特徴を持つCIDP患者では,nodal and paranodal antibodyの検査が推奨される.

-IVIgやステロイドによる標準治療に抵抗性である場合

-急性~亜急性に発症した場合(またはGBSやA-CIDPと診断される場合)

-(深部)感覚障害に不釣り合いな運動失調や振戦が目立つorその他の小脳失調を認める

または遠位優位の筋力低下を認める場合

-呼吸不全や脳神経障害を伴う場合

-ネフローゼ症候群を伴う場合

-髄液蛋白が著増している場合

 

具体的には以下の抗体が該当する.

-抗NF155抗体 -抗CNTN1抗体 -抗Caspr1抗体

-(測定可能であれば)抗NF140/186抗体

Nat. Rev. Neurol. 2017;13:533-547

・CIDPが疑われる全患者での測定が提案されており、特に上記の所見を伴う場合は積極的な測定が推奨されています。

ランビエ絞輪(node)その近傍のparanodeに対する抗体になります。

・特に抗NF155, CNTN1, Caspr1抗体(いずれもIgG)は診断に有用とされます。

・一方で抗NF155抗体(IgM)抗NF140/186抗体(IgG)については、更なるエビデンスの蓄積を要するとされています。

・いずれかの抗体が陽性である場合、"auto-immune nodopathies"として扱い、CIDPの亜型とは見なすべきではないとされています。

→その理由として明確な臨床的特徴を持つこと、明らかな炎症やマクロファージを介した脱髄を認めないこと、CIDPの治療(特にIVIg)に反応しにくいことなどが挙げられています。なお、リツキシマブが有効である可能性が示唆されています。

抗体別の臨床像

-抗NF155抗体:発症年齢が若い(20歳未満も含む)傾向があり、亜急性~慢性の経過、遠位筋筋力低下、運動失調、振戦、IVIgへの反応性不良といった特徴があります。

-抗CNTN1抗体:急性~亜急性の経過、運動症状や運動失調、IVIgへの反応性不良といった特徴があります。

-抗Caspr1抗体:急性~亜急性の経過、運動失調、神経障害性疼痛、脳神経障害、IVIgへの反応性不良といった特徴があります。

 

【鑑別診断】

⓪基本事項

Eur J Neurol 2021;28:3556–3583

・次項以降に詳細な鑑別診断を示しますが、かなり多岐に渡ります。

→従って、まずは上表のRed flagsを確認して代表的な鑑別を考えていく方針がよいと考えます。

・例えばDistal CIDPが疑われる症例で家族歴がある場合は、CMTや家族性ATTRアミロイドーシス(FAP)の鑑別を行う必要があります。

・またDistal CIDPが疑われる症例で自律神経障害や疼痛が目立つ場合は糖尿病性ニューロパチーやATTRアミロイドーシスの鑑別を行う必要があります。

・このように上表を利用することで、代表的な鑑別を考えていくことができます。

 

①病型ごとの鑑別診断

Typical CIDP

AL amyloidosis, ATTRv polyneuropathy

Chronic ataxic neuropathy ophthalmoplegia M-protein agglutination disialosyl antibodies (CANOMAD)

Guillain-Barré syndrome

Hepatic neuropathy

HIV-related neuropathy

Multiple myeloma

Osteosclerotic myeloma

POEMS syndrome

Uremic neuropathy

Vitamin B12 deficiency


Distal CIDP

Anti-MAG IgM neuropathy

Diabetic neuropathy

Hereditary neuropathies (CMT1, CMTX1, CMT4, metachromatic leukodystrophy, Refsum disease, adrenomyeloneuropathy, ATTRv polyneuropathy)

POEMS syndrome

Vasculitic neuropathy

Multifocal and focal CIDP

Diabetic radiculopathy/plexopathy

Entrapment neuropathies

Hereditary neuropathy with liability to pressure palsies (HNPP)

Multifocal motor neuropathy (MMN)

Neuralgic amyotrophy

Peripheral nerve tumours (such as lymphoma, perineurioma, schwannoma, neurofibroma)

Vasculitic neuropathy (mononeuritis multiplex)

 

Motor CIDP

Hereditary motor neuropathies (such as distal hereditary motor neuropathies, spinal muscular atrophy, porphyria)

Inflammatory myopathies

Motor neurone disease

Neuromuscular junction disorders (such as myasthenia gravis, Lambert-Eaton syndrome)

 

Sensory CIDP

Cerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome (CANVAS)

Chronic immune sensory polyradiculopathy (CISP)

Dorsal column lesions (such as syphilis, paraneoplastic, copper deficiency, vitamin B12 deficiency)

Hereditary sensory neuropathies

Idiopathic sensory neuropathy

Sensory neuronopathy

Toxic neuropathies (such as chemotherapy and vitamin B6 toxicity)

 

●CISP(Chronic Immune Sensory Polyradiculopathy)

感覚障害のみを認める多発神経根症です。

・特に臨床的にSensory CIDPが疑われる患者でNCSが正常の場合に鑑別に挙げます。

後根神経節より近位側の軸索に障害を生じるため、SEPでは潜時延長や波形消失を認めますが、後根神経節の感覚ニューロンは障害されないためSCSでは異常を認めないものと考えられています。

免疫介在性の病態が想定されており、IVIgなどの免疫治療が有効とする報告があります。

 

②検査

CIDPが疑われる全患者で強く推奨される検査

-神経伝導検査(NCS)

-免疫固定法による血清/尿中M蛋白

-血算 -空腹時血糖

-肝機能 -腎機能

 

CIDPが疑われる全患者で必要に応じて行うべき検査

-神経超音波(Supportive Criteria) -MRI(Supportive Criteria)

-髄液検査(Supportive Criteria) -神経生検(Supportive Criteria)

-HbA1c -CRP -抗核抗体(ANA)

-HIV serology -Borrelia burgdorferi serology

-VEGF -抗MAG抗体

-nodal and paranodal antibody

-骨X線検査 -胸部X線検査

-遺伝性ニューロパチーに対する遺伝子検査

※ライム病の起炎菌です。

 

疑われる病型により施行を検討する検査

Distal CIDP

-抗MAG抗体

 

Multifocal CIDP/Focal CIDP

-赤沈(ESR) -抗核抗体(ANA)

-抗好中球細胞質抗体(ANCA)

-抗GM1 IgM抗体

※多巣性ニューロパチー(MMN)の約半数で陽性になります。

 

Motor CIDP

-CK -筋生検

-神経筋接合部疾患の評価

※MGについてはこちらLEMSについてはこちらを参照ください。

 

Sensory CIDP

-抗MAG抗体 -抗ガングリオシド抗体

-ビタミン(B12やB6など)

-抗神経抗体(傍腫瘍性神経症候群)

-SEP(NCSが正常所見の場合)

 

【治療】

⓪治療の概略

Eur J Neurol 2021;28:3556–3583

・(各項目については後述しますが)上図が1枚だけで非常によくまとめられています。

・大きく症状増悪時の導入療法慢性期の維持療法に分けられます。

導入療法

-1st line therapyとしてIVIgステロイド血漿交換(PE)があります。

-まずはIVIgかステロイドによる治療を検討します。

-実臨床ではステロイドの効果発現に時間を要する(後述)ため、IVIgが好まれます。

※また、症状を増悪させ得るためMotor CIDPに対するステロイド投与は好まれません。

-PEも有効ですが、前2者よりも実務的な欠点(vascular accessや特殊な装置など)があるため、第3の選択肢(third option)と述べられています。

-治療反応性は【治療反応性(Response to treatment)】で述べた客観的指標で評価します。

※特に簡便なのは握力測定で、実臨床ではよく用いる印象があります。

-客観的指標で効果不十分もしくは1st line treatmentで副作用が問題となる場合、併用治療の前にその他の1st line treatmentのいずれかをまずは試みるべきとされます。

-いずれの1st line treatmentも効果がなく、引き続きCIDPの診断で間違いないと考えられる場合はリツキシマブシクロフォスファミドシクロスポリンの使用を検討します(エビデンスレベルは低い)。

維持療法

-効果のあった1st line treatmentの継続が基本となります(IVIgとPEは定期的な施行)。

-最も効果が得られる最適な維持量/間隔を確定するため、漸減/施行間隔延長をします。

-IVIgについては皮下注であるSCIgによる代替も可能です。

-ステロイドの減量(sparing)IVIg, PEの施行回数減少を狙いアザチオプリンシクロスポリンミコフェノール酸モフェチルの併用も検討し得ます(エビデンスレベルは低い)。

 

ステロイド

・1st line treatmentとして導入/維持療法に用いられます。

強い推奨とされますが、最適なレジメンはまだ明らかになっていません。

・また、Motor CIDPでは症状を増悪させ得るためIVIgが優先されます。

投与例:PSL 60mg/日から開始し、治療反応性/副作用を評価しながら6-8か月かけて漸減。

※PSL 1-2mg/kgの高用量が好まれる場合もありますが、こちらが優れているとする明らかなエビデンスはありません。

効果発現に時間を要し、一般的には数週間-数か月後に効果が現れ始めるとされます。

治療効果判定は、3か月程度投与を継続した後に行うことが多いです。

・いわゆるパルス様の定期投与で、より長く寛解期間が維持されたという報告もあり、選択肢となります(Neurology 2012;78:1079-1084, Neurol Neurosurg Psychiatry 2015;86:729-734)。

投与例:DEX 40mg/日経口 or mPSL 500mg/日静注 1か月に4日間、6か月間投与。

 

②IVIg

・1st line treatmentとして導入/維持療法に用いられます。

強い推奨とされ、ステロイドとの間に優劣はつけられていません。

→ただし長期的な副作用の少なさおよび治療効果発現の早さ(投与6週間以内)といった点からIVIgが優れるとする意見もあります。

→一方で維持療法については、IVIgよりも(前項で述べた)パルス様のステロイド定期投与の方が寛解および寛解維持期間の点で優れていたとする報告(ただし1件の小規模な研究)もあります(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2015;86:729-734)。

導入療法例:総投与量2g/kgを(2-)5日間で投与。その後の最適な投与量は確立されていませんが、1つの方法として治療反応性が確定するまで、3週間ごとに1g/kgの投与を2-5回繰り返すことが提案されています。

治療効果判定は、初回投与から6-8週間後が目安となります。

維持療法例:(臨床試験で最も頻用されるのは1g/kgを3週間ごとに投与ですが、)0.4g-1g/kgを2-6週間ごとに投与などのように、より低用量かつ最大限の効果を維持する治療間隔の延長を検討すべきとされています。

→状態が安定していれば、長期的には更なる減量や投与間隔の延長を図ります。

→具体的には治療開始から2-3年間6-12か月に1回、以降は1-2年に1回程度とすることが提案されています。

・また、維持療法としてSCIg(皮下注用人免疫グロブリン, ハイゼントラ®)の使用も強く推奨されています(IVIgとの間に優劣はつけられていません)。

→特に在宅自己注射が可能であることや全身性の副作用が少ない可能性が示唆されていることがメリットとして挙げられています。

 

③PE

・1st line treatmentとして導入/維持療法に用いられます。

・ただし前述のように実務的な欠点(vascular accessや特殊な装置など)から、ステロイドやIVIgの次点という立ち位置となっています。

→ただし治療効果発現の早さ(投与4週間以内)はメリットと考えられます。

 

④その他の免疫抑制薬

・いずれの1st line treatmentも効果がなく、引き続きCIDPの診断で間違いないと考えられる場合はリツキシマブシクロフォスファミドシクロスポリンの使用が考慮されます。

維持療法としてはアザチオプリンミコフェノール酸モフェチルシクロスポリンを主にステロイドやIVIgの投与量/間隔減少(sparing)を目的として併用することが考慮されます。

・いずれもエビデンスレベルは低いことに注意が必要ですが、特に維持療法としてsparing目的の免疫抑制薬併用は比較的見かける処方ではあります。

・なお、造血幹細胞移植は有効とするエビデンスは不十分であり、重大な合併症や死亡リスクも伴うため、専門施設における最終手段としてのみ考慮するべきであると記載されています。