内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

運動誘発電位(MEP:Motor Evoked Potential)

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キューピーです。

 

MEPは通常ではとっつきにくい検査かもしれません。

 

しかし、例えばMSでは症状がなくてもMEPで異常を検出できることがあります。

 

このように臨床的に有用な場面も間々あります。

 

今回はMEPについて、可能な限り簡潔にまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

脳研生理ホームページ

テクニカルノート:研究のための磁気刺激テクニカルノート

 

【基本事項】

・MEP:Motor Evoked Potentialです。

大脳皮質運動野や脊髄(神経根)を磁気で刺激し、骨格筋で誘発電位を記録します。

大脳から末梢神経までの運動神経機能の評価ができ、特に中枢神経系の評価ができる点が重要です。

運動神経路の異常部位や異常の有無の判断に用いる他、術中モニタリングに用いることもあります。

※今回は前者を目的とする場合を想定して、内容をまとめます。

・一般的に磁気刺激は、電気刺激のような強い痛みを伴わないメリットがあるとされます。

→ただし、被検者は不快感(衝撃波を受けるような感覚)を感じることが多いです。

禁忌:ペースメーカー等刺激部位付近に金属を有する患者、重篤な心疾患患者、てんかん患者など。

※心臓への直接刺激も禁忌事項となります。

・検査の際は金属類(腕時計など)や磁気カード(クレカなど)等を身に付けないようにします。

 

【原理】

①磁気刺激の原理

・磁気刺激装置により発生した電流は、刺激コイルを流れます。

コイルに流れた電流によって磁場が発生します。

※磁場の方向/定位は”右ネジの法則”が当てはまります。

→右親指を立てた向きに電流が流れると、その他の指の巻く方向に磁場ができます。

※磁場は生体の電気的特性の影響を受けず、生体組織や衣服等を通過します。

・磁場により、生体組織に電場が誘導されます。

・この電場が、コイルに流れる電流と逆方向のイオン電流(渦電流)を生じさせます。

→これにより神経膜に脱分極が生じ、活動電位が発生します。

 

②MEP形成の機序

※実際には更に細かく研究が為されており、簡潔な説明となることを了承ください。

・”電気”刺激では、錐体ニューロンの軸索が直接刺激されて発生するD waveと錐体ニューロンシナプス結合している介在ニューロンが刺激されて発生するI wave錐体路を下行します。

→これらが脊髄前角細胞に達すると時間的加重を生じ、細胞膜電位が上がります。

→何発目かのI waveにより閾値を越えると前角細胞が発火します。

・”磁気”刺激では、渦電流の流れる方向に沿った介在ニューロンが刺激されます。

→従って、原則として磁気刺激ではI waveが誘発されます。

※ただし、非常に強い刺激や前もって力を入れておいて刺激をするとD waveも誘発されます。

・上記のため、磁気刺激は電気刺激のMEPより潜時が1.5-2.0m秒程度遅くなります

 

【検査の実際】

①使用装置

テクニカルノート:研究のための磁気刺激テクニカルノート

刺激装置:図の単発、モノフェイジック磁気刺激装置がよく用いられます。

コイル:円形、ダブル、ダブルコーン(コイル同士が約95°の角度をなす)があります。

→円形(90mm)はコイル直下で、ダブルは8の字の交点直下で誘導電流密度が最大となります。

記録装置:NCS等と同様の誘発電位記録装置を用います。

 

②刺激部位

テクニカルノート:研究のための磁気刺激テクニカルノート

上肢:(対側)大脳皮質運動野、C7棘突起上付近の頸部神経根。

※末梢神経の機能評価を目的とする場合、鎖骨上窩(Erb点)や肘部を刺激します。

下肢:(対側)大脳皮質運動野、L4棘突起上付近の腰部神経根。

・これらに加えて、脳幹を刺激することもあります。

・運動野の刺激に際しては、図を参考に刺激部位を決定します。

上肢ではCzの6-7cm側方下肢ではCzの2cm後方にコイルの誘導電流密度が最大となる部位を当てます。

Cz

-Vertex(頭蓋頂)とも呼ばれ、脳波電極10/20法の中央部に位置する点です。

-鼻根と後頭結節(後頭部の1番突出している部分)を線で結びます。

-両側の耳介前点(耳のすぐ前かつ頬骨根部の真上にある陥凹する部分)を結びます。

-これらの二つの線のどちらも二分にする点がCzになります。

 

③記録部位

上肢:短母指外転筋、第1背側骨間筋、小指外転筋など。

下肢:前脛骨筋、母趾外転筋など。

・上記の筋腹に記録電極を置きます。基準電極も置きます。

・CMAP振幅は大きいため、(SEP等と異なり)電極間抵抗は多少大きくても問題ありません

 

④刺激-記録

・原則として被検者が座位の状態で検査を行います。

下肢記録時は仰臥位(頭部刺激時)腹臥位(腰部刺激時)とすることもあります。

・記録/基準電極を置いたら、コイルを前述の刺激部位に当てます。

・機器やコイルの種類によりますが、最大出力の60(-90)%程度の刺激強度で開始します。

加算平均の必要はありませんが、再現性確認のため必ず2回以上は記録します。

 

●運動閾値(motor threshold)

・刺激をした際に、50%以上の確率でMEPを誘発できる最低の刺激強度のことです。

・(本記事では触れませんが)特に反復磁気刺激2発刺激の際に重要です。

・安静時閾値(RMT:Resting Motor Threshold)と収縮時閾値(AMT:Active Motor Threshold)があります。

→被験者が被検筋に力を入れた時(AMT)の方が、閾値が低い(反応が出やすい)です。

・一般的にRMTでは50μV以上AMTでは100-200μV以上の反応をMEPと判定します。

・運動野の閾値はAMTを使用するべきですが、簡便さからRMTを用いることも多いです。

 

●Silent Period(SP)

テクニカルノート:研究のための磁気刺激テクニカルノート

・被験筋を収縮させて運動野刺激をした際に、MEP直後から筋活動電位が抑制される時間が生じます。

・これをSilent Periodと呼び神経系(皮質/脊髄とも含む)の抑制状態と考えられています。

 

【結果の解釈】

①正常所見

テクニカルノート:研究のための磁気刺激テクニカルノート

・結果の解釈に際して、特に立ち上がり潜時CMCTが重要になります。

※CMCT:Central Motor Conduction Time、中枢運動伝導時間です。

・潜時の正常範囲例を示しますが、年齢/性/身長の影響を受け、施設ごとに基準値が設定されていることも多いです。

CMCT運動野刺激時の潜時-脊髄神経根刺激時の潜時で求まります。

→注意点として、脊髄は前角ではなく神経根の刺激であるため、上位運動ニューロンの伝導時間を完全に反映しているわけではありません。

より正確な値を確認したい場合、NCSで末梢伝導時間を求めます。

→具体的には、MEP皮質潜時-(M波潜時+F波潜時-1)/2で求まります。

※ただし、臨床的には前者の求め方をCMCTとすることが圧倒的に多い印象です。

 

②異常所見例

大脳皮質/内包付近病巣:病側運動野刺激時のMEP消失。

脳幹(中脳-橋)病巣:運動野刺激時のMEP潜時延長(重症の場合、消失)、CMCT延長。

脊髄病巣:運動野刺激時のMEP潜時延長(重症の場合、消失)、CMCT延長。

末梢神経病巣:運動野、脊髄刺激時のMEP潜時延長(重症の場合、低振幅化-消失)。