内科医キューピーのつぶやき

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舞踏運動の診療

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キューピーです。

 

舞踏運動choreaは重要な不随意運動の1つで、時に内科外来受診の主訴にもなり得ます。

 

今回は舞踏運動の診療についてまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

Neurol Clin Pract 2016;6:150–156

Huntington病の診断,治療,療養の手引き

 

【基本事項】

Lancet 2007;369:218-28

・舞踏運動choreaは、四肢遠位部優位に出現する非律動的で、比較的速い滑らか振幅の大きな不随意運動です。

・四肢遠位部の他、四肢近位部体幹顔面などにも全身性に生じ得ます。

表面筋電図:強弱の一定しない持続の短い筋放電(phasic discharge)が不規則に出現します。

発症初期には、患者が随意的に抑制しようと試みる(パラキネジア)ため、舞踏運動が目立たず”単に落ち着きがない”と捉えられていることもあります。

→病態として筋緊張低下を伴うため、病状の進行に伴い随意的な抑制が困難となり、舞踏運動が目立つようになります。

責任病巣:少なくとも尾状核および被殻視床下核、中脳被蓋の3か所は病巣となり得るとされます。

原因疾患:後述のように遺伝性と後天性に大別できます。

→スクリーニング採血の項目として血液像(目視で有棘赤血球を確認)セルロプラスミンフェリチン甲状腺ホルモンHbA1c抗核抗体膠原病関連抗体は最低限確認するべきだと考えます。

対症療法:主にドパミン枯渇薬(テトラベナジン(コレアジン®))や抗精神病薬などが用いられます。

→ただし、長期使用によるパーキンソニズムなどの副作用に注意を要します。

 

【原因】

遺伝性

後天性

Huntington病

歯状核赤核淡蒼球Luy体萎縮症(DRPLA)

SCA17

神経有棘赤血球症(有棘赤血球舞踏病やMcLeod症候群など)

NBIA(無セルロプラスミン血症や神経フェリチノパチーなど)

Wilson病

Lesch-Nyhan症候群

毛細血管拡張性運動失調症

良性遺伝性舞踏病

発作性運動誘発性舞踏アテトーゼ(PKC)

感染性:Sydenham舞踏病、脳炎、AIDS(HIV脳症、日和見感染など)など

自己免疫性:SLE、APS、SjS、神経ベーチェット病など

※その他舞踏運動を引き起こす自己抗体は欄外に記載します。

薬剤性/中毒性:CO、アルコール、レボドパ、経口避妊薬、抗てんかん薬など

代謝:糖尿病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、VitB12欠乏症など

血管障害性線条体視床下核頭頂葉、島皮質病変など

腫瘍性

外傷性

老人性舞踏病

心因性舞踏運動

腫瘍を伴わない舞踏運動に関連した自己抗体(Neurol Clin Pract 2016;6:150–156)

leucine-rich glioma-inactivated 1(LGI1)、NMDA、IgLON5、contactin-associated protein 2(CASPR)、GAD65、CRMP-5/CV2

傍腫瘍性舞踏運動に関連した自己抗体(Neurol Clin Pract 2016;6:150–156)

Hu、Yo、LGI1、NMDA、IgLON5、CASPR、GAD65、CRMP-5/CV2、striational muscle

原因疾患の鑑別フローチャート(Neurol Clin Pract 2016;6:150–156)

 

【特徴的な症状】

⓪基本事項

・舞踏運動を有する患者は、前述のように全身性に症状を呈し得ます。

・身体の各部位の筋の不随意収縮により生じる特徴的な症状を述べていきます。

 

①しかめ面(facial grimacing)

・顔面筋の不随意収縮により生じます。

眼の開閉口を尖らせる/横に開くしかめ面様の表情を作るなどの運動です。

 

②darting tongue

www.youtube.com

・舌筋の不随意収縮により生じます。

・挺舌を命じると挺舌を維持できずねじるように引っ込めてまた素早く挺舌するといった動作を繰り返します。

※動画では後述するmilking gripも認めています。

 

③構音障害

声のピッチや大きさが不自然に動揺する構音障害を呈します。

・不随意運動の合間を縫って発声を試みるためか、爆発様の発音を示すこともあります。

 

④斜頸(torticollis)


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・頸部筋の不随意収縮によります。

頸部の回旋屈曲などの頭位の異常を生じます。

 

⑤milking grip

www.youtube.com

・検者の指を中等度の力で持続的に握り続けるように命じると、握る指の力の強さが強弱変動します。

・これが、あたかも乳牛の乳搾りのようであることが名前の由来です。

※動画では前述したdarting tongueも認めています。

 

⑥hung-up reflex

www.youtube.com

座位で膝蓋腱反射をみると、通常は反射による筋収縮で下腿が跳ね上がった後に下垂位に戻ります。

→この下垂の途中で1-2回止まる場合、hung-up reflexを考えます。

大腿四頭筋で、反射による筋収縮の後に不随意な筋収縮が起こるものと考えられています。

 

⑦pronator sign

・両上肢を手掌が向かい合うような肢位で頭上に挙上させます。

→しばらくすると前腕が回内し、手掌面が前向きになるのがpronator signです。

 

⑧dishing spoon

youtu.be

・上肢の前方挙上をさせます。

MP関節屈曲PIP/DIP関節過伸展を生じるのがdishing spoonです。

 

【Huntington病(ハンチントン病)】

①基本事項

常染色体優性遺伝様式を示す神経変性疾患です。

・舞踏運動などの不随意運動運動障害精神症状認知症を主症状とします。

浸透率の高い遺伝性疾患ですが、de novo変異と推定される症例もみられ得ます。

病因遺伝子:第4染色体短腕4p16.3のHTT(huntingtin)で、CAGリピート(≧36回)を有します。

ポリグルタミン病であり、その特徴としての表現促進現象を認めます。

※ただし、精神症状の有無とCAGリピートの長さには関係がないとされます。

有病率:本邦では難病個人票から0.7/10万人と推定されています。

コーカソイドに多く、アジア/アフリカ人で少なく、全世界で5/10万人という報告があります。

平均発症年齢:30-50歳ですが、5-10%は20歳以下に発症します。

→この場合、若年発症Huntington病と呼ばれ、以下の特徴があります。

-精神症状(行動障害や薬物乱用など)、認知機能障害での発症が多いです。

-運動症状では巧緻運動障害ジストニアミオクローヌスが多く舞踏運動は少ないとされます。
-てんかん発作の頻度も高く、症状の増悪も早い傾向があります。

 

②症候

Huntington病の診断,治療,療養の手引き

運動症状:巧緻運動障害、運動持続障害、舞踏運動、ジストニア、ミオクローヌスなど。

精神症状:人格の変化、衝動性障害、うつなどの気分障害、不安など。

認知症:注意・遂行機能低下などが特徴とされます。

認知症状は進行期に目立つともされますが、診断前から認知機能障害を呈しているとする報告もあります。

眼球運動障害:衝動性眼球運動開始遅延、固視障害、測定障害など。

→眼球運動失行にも類似していて、発症早期に認め得ます。

その他てんかん発作を合併し得ます。腱反射は亢進する傾向があります。

 

③検査

評価スケール:統一ハンチントン病評価尺度(Unified HD rating scale:UHDRS)がしばしば用いられます。

頭部MRI尾状核に強調される全脳萎縮と付随する側脳室前角の拡大を認め得ます。

SPECT:前頭・側頭葉型の血流低下を認め得ます。

心理検査では前頭葉機能検査(Stroop testやWCSTなど)でしばしば異常を認めます。

遺伝子検査(確定診断):HTTのCAG3リピート数の伸長を調べます。

≧40:浸透率100%、36-39:発症し得るが100%ではない、27-35:稀に発症する。

 

④臨床経過

Huntington病の診断,治療,療養の手引き

※全ての症例で同様の経過をたどるわけではありません。

早期:眼球運動障害、巧緻運動障害、運動持続困難や保続、固執、性格変化などを呈します。

・次第に舞踏運動を呈するようになり、増悪傾向となります。

・更に進行するとジストニアパーキンソニズムを示します。

・最進行期には嚥下障害てんかん発作などを生じて失外套状態となります。

・罹病期間は概ね15-20年、死因は低栄養、感染症、窒息、事故が多いとされます。

・特に発症早期には自殺の頻度が高いため、精神症状にも留意する必要があります。

 

⑤治療

Huntington病の診断,治療,療養の手引き

・治療は対症療法が中心となります。

・上記は欧米における舞踏運動への治療のフローチャートです。

舞踏運動のみならば第一選択はテトラベナジンです。

精神症状を伴う舞踏運動非定型抗精神病薬(スルピリドなど)が第一選択です。

・その他、精神症状や認知症状にも対症療法が行われます。

※詳細はHuntington病の診断,治療,療養の手引きに詳しいです。

 

【Sydenham舞踏病(小舞踏病)】

①基本事項

A群β溶連菌感染によるリウマチ熱1-6か月後にみられる舞踏運動です。

リウマチ熱の大症状の1つとされ、リウマチ熱の10-15%でみられます。

・小児の舞踏運動の原因として重要ですが、先進国ではリウマチ熱そのものが減少しています。

病態:A群β溶連菌感染による交差反応と考えられています。

 

②診断

舞踏運動の存在に加えて、A群β溶連菌感染を証明する必要があります。

血液検査:ASOやASKの上昇が確認できれば、A群β溶連菌の先行感染を示唆します。

心エコー:心炎の存在が確認できれば支持的所見として有用です。

頭部画像検査髄液検査では、基本的には異常所見を認めないとされます。

尾状核被殻の腫脹を認めたとする報告もありますが、非特異的と考えられています。

 

③治療

・治療法はまだ確立されていません。

予後良好例が多く、発症から1-6か月程度で自然軽快することが多いとされます。

舞踏運動にはパルプロ酸などの抗てんかんハロペリドールなどが使用されます。

重症例ではステロイド、その他にIVIg血漿交換療法の有効性も報告があります。

・A群β溶連菌感染が再発する場合は、抗菌薬による治療を行います。