内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

構音障害の診療

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キューピーです。

 

構音障害は重要な症候ですが、難しい領域でもあります。

 

今回は構音障害について、様々な観点からできるだけ系統的にまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

高次脳機能研究.2010;30(3):413-417

音声言語医学.2007;48(3):227-230

脳神経.1994;46(7):611-620

 

【基本事項】

①構音障害とは何か

・言語を発するとき、正確な発音での発声ができないことを指します。

・構音障害はdysarthriaと英訳され、時にanarthriaとも併記されることがあります。

・ただし、anarthriaに対応する和訳は”失構音”が正確と思います。

・失構音は、言語を口から発することができないことを指し、以下の2つの用いられ方をします。

・1つ目は、構音障害が重度すぎて、言語を口から発することができない状態です。

・2つ目は、運動性失語の範疇で、口からの発語のみできない状態(筆談は可能)です。

→特に後者は”純粋語唖”とも呼ばれます。本記事では、後者を失構音と考えます

※多くの参考文献でも同様の考え方であり、この考え方が自然だと感じました。

・なお広義の構音障害において、声帯障害により声が出ない”失声(aphonia)”を含むことがあります。

 

②障害脳神経と障害音(“ぱたか”の目的)

支配神経

構音筋

構音

顔面神経

口輪筋

パ行,バ行,マ行,ワ,フ

舌下神経

舌筋

サ行,ザ行,タ行,ダ行,ナ行,

ハ行(フ以外),ラ行,ヤ行

迷走神経/舌咽神経

口蓋筋,咽喉頭筋/舌筋

カ行,ガ行

脳神経.1994;46(7):611-620

・しばしば”ぱたか”と言わせる神経診察がなされますが、上記の表がその理由です。

→支配神経の異なる口唇音(パ行)舌音(タ行)喉音(カ行)を確認しています。

 

③構音障害の診察

実際の診察例

-「ぱぴぷぺぽ(口唇音)」「らりるれろ(舌音)」「がぎぐげご(喉音)」の復唱

-「るりもはりも照らせば光る」の復唱

-「ぱたか」を3回連続で発音

 

注意するポイント

-声量(かすれているかも含む) -声の高低 -抑揚の有無

-流暢さ -文章を話す速さ -鼻声の有無

-発音の明瞭度 -最初の語がすぐ出てくるか

-語がとぎれとぎれになる傾向があるか

 

特に注目すべき他の診察所見

-下顎反射 -咽頭反射 -軟口蓋反射 -口尖らし反射(snout reflex)

-小脳失調 -パーキンソニズム -深部腱反射

 

神経内科ハンドブック

・後述する種々の構音障害の鑑別のため、上記の診察を行います。

・構音障害そのものの診察も重要ですが、その他の神経診察が更に重要です。

・構音障害のみで鑑別を絞ろうとはせず、その他の所見も合わせて総合的に考えます。

 

④構音障害の原因別分類

器質性構音障害:構音器官の形態異常によるもの(口唇口蓋裂や口腔外科領域腫瘍など)。

運動障害性構音障害:構音器官の機能障害によるもの(神経筋疾患)。

機能性構音障害:上記のいずれにも分類できないもの(音韻学習過程での発達障害など)。

・器質性や機能性構音障害は耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、リハビリ領域で特に問題となります。

・内科領域で構音障害といえば、専ら運動障害性構音障害を考えることが多いと思います。

→本記事では、運動障害性構音障害についてまとめます。

 

⑤運動障害性構音障害の種類

音声言語医学.2007;48(3):227-230

phonation:発声resonance:共鳴prosody:韻律articulation:調音

→これらは音声生成の主要な4要素とされます。

・(運動障害性)構音障害は従来より、その特徴から上記の6つに分類されています。

・なお、痙性構音障害は一般的に両側UMN障害による偽性球麻痺に相当します。

・近年、一側のUMN障害による(運動障害性)構音障害について、一側性上位運動ニューロン性(UUMN:unilateral upper motor neuron)として7つ目の分類がなされることもあります。

→UUMNでは発語は緩慢になる傾向や、偽性球麻痺より軽度である傾向があります。

→特に脳卒中による構音障害の多くはUUMNと考えられ、重要な分類です。

※本記事では以下、”運動障害性構音障害”と記載せず、”構音障害”と記載します。

 

【障害部位と構音障害】

⓪基本事項

高次脳機能研究.2010;30(3):413-417

・構音運動に関わる神経メカニズムは上記のようになります。

・構音筋の運動という観点からは、中心前回下部から始まる錐体路が主要な役割を果たします。

→末梢では前述の脳神経(顔面/舌下/迷走・舌咽神経)が構音筋を支配します。

・この錐体路系に錐体外路小脳が関わることで、正常な構音運動が行われます。

・また、構音運動時には感覚のフィードバックも行われており、感覚野の活性化も認めるとされます。

・以下に障害部位別の構音障害の表現型について詳細をまとめます。

 

錐体路-構音筋経路

(0)基本事項

中心前回下部-大脳-橋/延髄脳神経核-構音筋の障害では、”UUMN/弛緩性/痙性構音障害”を呈します。

※なお、中心前回下部(右利きでは左側)の障害では失構音を認めます。

・上記は一般論であり、以下に既報で構音障害が特徴付けられているものを示します。

 

球麻痺/偽性球麻痺

 

球麻痺

偽性球麻痺

障害部位

LMN(Ⅸ/Ⅹ/Ⅻ)or筋

両側UMN

構音障害

嗄声(声帯筋群麻痺)

鼻声(軟口蓋閉鎖不全)

抑揚の低下

ゆっくりとした話し方

高い音を出しにくい

爆発性言語(explosive speech)

単調で抑揚のない発声

母音が分かりにくい

嚥下障害

特に固形物

特に液体(球麻痺より軽度)

強制笑い・泣き

なし

あり(わずかな刺激で笑い泣きの表情になる)

下顎反射

減弱-消失

亢進

咽頭反射

減弱-消失

様々(保たれる傾向)

軟口蓋反射

様々(保たれる傾向)

減弱-消失

カーテン徴候

あり(片側障害時のみ)

なし

舌萎縮/線維束性収縮

あり

なし

ベッドサイドの神経の診かた神経内科ハンドブックを参考に一部改変

球麻痺は"弛緩性構音障害"、偽性球麻痺は"痙性構音障害"に含まれます。

迷走神経喉頭枝(反回神経)の障害で声帯筋群麻痺となり、嗄声をきたします。

・また、迷走神経の障害で軟口蓋閉鎖不全が生じ、鼻声になります。

→これらは球麻痺による構音障害に特徴的な症状になります。

爆発性言語(explosive speech):最初の語はすぐに出ず、間をおいて一塊に大きな声でとぎれとぎれに会話するような状態です。

:「・・・るりもはりも!・・・・・照らせば光る!」

偽性球麻痺に特徴的とされますが、実際に認める頻度は高くありません。

→偽性球麻痺は多くの場合、声量が小さく単調で抑揚のない発声となるとされます。

咽頭反射(pharyngeal or gag reflex):舌圧子で咽頭後壁に触れると、咽頭が収縮する反射です。

→左右差も確認します。求心路は舌咽神経、遠心路は迷走神経、中枢は延髄です。

軟口蓋反射(palatal reflex):舌圧子で軟口蓋に触れると、軟口蓋挙上/口蓋垂後退が生じる反射です。

→通常は刺激側で強く生じます。求心路は舌咽/迷走神経、遠心路は迷走神経、中枢は延髄です。

カーテン徴候:「あー」と発声させた際に、障害側の咽頭後壁が健側に引っぱられる所見です。

 

内包・放線冠病変

ラクナ症候群の1つである”Dysarthria clumsy hand syndrome”の原因病巣です。

※同病態は橋底部(橋傍正中枝支配域)のラクナ梗塞でも呈し得るとされます。

主に口唇音と舌音の障害で、発語は緩慢になる傾向があります。

・(特に右利き患者において)左側病変優位に、構音障害を呈しやすいとされます。

 

半卵円中心病変

錐体路障害による構音障害の他に、”失調性構音障害”も呈するという既報があります(脳神経.1994;46(7):611-620)。

・失調性構音障害は後述しますが、小脳系の障害に伴い出現する構音障害です。

→既報では、半卵円中心近傍病変により、二次性に小脳血流の低下をきたしたとしています。

・(特に右利き患者において)左側病変優位に、構音障害を呈しやすいとされます。

 

中脳

・特に中脳水道近傍の病変により、構音障害を呈することが知られています。

・中脳水道は大脳の構音運動開始に関与する経路が集約される部分です。

→同部は下位の脳神経核への中継点でもあります。

 

神経筋接合部(重症筋無力症)

・分類では”弛緩性構音障害”にあたります。

話を続けていると、言語は次第に緩徐、不明瞭になりますが、休息をとると元に戻ります

 

②小脳

-断綴性発語(scanning speech):音の強さの変化が際立って強くなると、連続的な発音に際して、発音が刻まれるように聞こえる。

:「るり・も・はり・も・照ら・せば・光る」

-不明瞭言語(slurred speech):一音節から次の音節への転換が下手で、区切りが不明瞭になる。

-発語緩慢(bradylalia):発音が長引き、発語が全体として緩徐になる。

 

高次脳機能研究.2010;30(3):413-417

神経内科ハンドブック

・小脳障害による構音障害は、”失調性構音障害”と言われます。

→発音の不規則性やリズムよりも断綴性言語のような”強弱の障害”が特徴とされます。

→ただし、断綴性言語を全例で認めるわけではなく、むしろ発語緩慢の頻度が高いとされます。

・大脳病変とは逆で、右側病変優位に構音障害を呈しやすいとされます。

 

錐体外路(Parkinson病)

-小声:声量が小さくなる。

-発語のすくみ:話始めに発音の抑制がかかって、数秒後にどもるような早い不連続音がでる。

-発語速迫(tachyphemia):発語が速迫する。抑揚はなく単調で、一気に言葉が続く。

→言葉は徐々に弱くなり、最後には聞き取れなくなる。

-同語反復(palilalia):一息で話す言葉の終わりの一部が不随意的に反復される。

 

高次脳機能研究.2010;30(3):413-417

音声言語医学.2007;48:227-230

神経内科ハンドブック

錐体外路障害を呈する種々の疾患により構音障害を呈します。

・今回は、その中の代表疾患であるParkinson病の”運動低下性構音障害”について上記しています。

・その他にWilson病Huntington病などでも構音障害を呈することが知られています。