内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

人工呼吸器の使い方

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

キューピーです。

 

人工呼吸器は使用頻度が高いものの、設定など非常に奥深く難しい面があります。

 

集中治療科など、一部の診療科に管理が集中していることもあります。

 

一方で、病院によってはどの科でも扱えなければならない場合もあります。

 

今回は、人工呼吸器の設定方法などを勉強してみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

↓1日1クリックお願いしますm(__)m

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

 

 

目次

 

 

【参考文献】

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

ARDS診療ガイドライン2016

 

 

【基本事項】

⓪はじめに

・人工呼吸器は奥深く、初学者にはやはり難しい印象があります。

・また知識の範囲も広く、ハードルを上げる要因にもなっている気がします。

・本項では初学者の自分なりに重要だと思った事項に絞って記載してみます。

・超基礎的な用語については、説明を割愛して使用している場合もあります。

・少し内容が難しい場合は、記事を通読してからだと分かりやすいかもしれません。

・また、参考文献の教科書がどれも名著ですので、是非参考にしてみてください。

 

①人工呼吸器設定の大原則

-低1回換気量(6-8mL/kg(理想体重))

-プラトー圧≦30cmH2O

-適切なPEEP設定

-FiO2≦0.6

・病態にかかわらず、上記の事項は重要な原則となります。

・ARDS患者で1回換気量を6mL/kgと12mL/kgの2群で比較したRCTがあります。

(ARMA study:N Engl J Med 2000; 342:1301-1308)

→この研究で6mL/kgの群が院内死亡率を改善させたという結果が得られました。

→これにより、ARDSでは低1回換気量が推奨されるようになりました。

・また、非ARDS患者においてもメタ解析が行われています。

(JAMA. 2012;308(16):1651-1659)

6-8mL/kgの低1回換気量群で、肺傷害の発生率が低いという結果でした。

→その他の研究結果等を踏まえても、低1回換気量(少なくとも<10)が推奨されます。

プラトー圧は肺胞内圧を反映し、肺傷害予防の指標になります。

ARDS診療ガイドライン2016でも30cmH2O以下とすることが推奨されています。

高いFiO2も有害と考えられるようになってきており、≦0.6が目標とされます。

PEEPについて、詳細は後述しますが以下の表などを参考に適切な値に調整します。

-FiO2に対してPEEPが低めの対応表(非ARDSや軽症のARDSに推奨)

FiO2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

PEEP

5

5-8

8-10

10

10-14

14

16-18

18-24

-FiO2に対してPEEPが高めの対応表(中等度以上のARDSに推奨)

FiO2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

PEEP

5-14

14-16

16-20

20

20

20-22

22

22-24

N Engl J Med 2004; 351:327-336

 

②基本3波形

(0)基本事項

f:id:p_kun:20211109200827j:plain

f:id:p_kun:20211109204229j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

・人工呼吸器グラフィックで、確実に理解する必要のある波形です。

・いずれも時間を横軸にとっています。

※その他のグラフィックには圧換気量曲線、流量換気量曲線がありますが割愛します。

 

圧波形からわかること

f:id:p_kun:20211109201011j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

PCV:過剰な吸気時間。

VCV:吸気流量不足(or過剰)、過剰な吸気時間、コンプライアンス/気道抵抗の変化。

 

流量波形からわかること

f:id:p_kun:20211109201047j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

全モード:Auto PEEPとミストリガー、気道分泌物/回路結露。

PCV:吸気時間の適切さ(吸気流量0を目標)、コンプライアンス/気道抵抗の変化。

 

換気量波形からわかること

f:id:p_kun:20211109203241j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

全モード:リーク。

 

どの波形からもわかること

f:id:p_kun:20211109203327j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

全モード(PSVは稀):二段呼吸。

 

③PEEP

・PEEP:Positive End-Expiratory Pressure、呼気終末陽圧です。

呼気終末に付加される陽圧のことです。

・①で示した表などを参考に、適切なPEEP設定を行います。

呼吸への影響

-呼気時に虚脱した肺が開き、機能的残気量が増加する。

→シャントが改善し、酸素化の改善が期待できる。

-過剰な肺胞虚脱↔膨張の繰り返しを減じる。

→ずり応力による肺傷害が抑制され、肺保護効果が期待できる。

循環への影響

-胸腔内圧上昇により静脈還流量が低下し、前負荷が低下する。

心拍出量低下低血圧を生じるリスクがある。

-胸腔内圧上昇により肺血管抵抗が上昇し、右心の後負荷が上昇する。

→特に右心機能低下症例では、心拍出量低下低血圧を生じるリスクがある。

心不全では高すぎるPEEPを避ける傾向にある。

 

プラトー

f:id:p_kun:20211108215741j:plain

若手のための人工呼吸器ワークショップ: [アシュワース教授]

 

f:id:p_kun:20211031204744j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

吸気終末の肺胞内圧のことで、肺傷害の指標となります。

プラトー圧≧30cmH2Oは肺傷害のリスクと考えられています。

VCV:吸気ポーズ後に平坦となった部分の圧(図)になります。

※患者の呼吸努力が入ると正確な測定とならず、自発呼吸がある場合は行いません

※吸気ポーズはボタンを押せばでき、一時的に高圧アラームを最大にして行います。

VCVプラトー圧測定時の圧波形から、異常時の肺メカニクスを知ることができます。

→図のごとく、気道抵抗上昇コンプライアンス低下のいずれかが分かるのです。

PCV:吸気流量が0で吸気が終了している場合、ピーク圧=プラトー圧になります。

→この場合は、あえてプラトー圧を測定する必要がありません。

→一方で吸気流量が0になる前に吸気が終了している場合は、ピーク圧>プラトー圧です。

→閉塞性肺疾患の設定(後述)などで生じ、プラトー圧を測定する意義があります。

※ただし、ピーク圧≦30cmH2Oであれば必ずプラトー圧≦30cmH2Oとなります。

PCVでは流量波形をみるだけで、異常時の肺メカニクスを知ることができます(図)。

・なお、肺傷害の指標として考える際は必ず胸腔内圧についても考えます。

胸腔内圧上昇があれば、プラトー圧よりも実際に肺にかかる圧は小さくなります。

胸腔内圧低下があれば、プラトー圧よりも実際に肺にかかる圧は大きくなります。

胸腔内圧上昇:重度肥満、胸郭異常、腹部コンパートメント症候群など。

胸腔内圧低下:強い吸気努力。

胸腔内圧低下(強い吸気努力)がある場合は、プラトー圧だけで安心しないようにします。

 

⑤Auto PEEP

f:id:p_kun:20211031203648j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

・主に閉塞性肺疾患(COPD気管支喘息)で問題となります。

・閉塞性肺疾患では気道抵抗が上昇し、呼気時間が延長します。

→人工呼吸器設定が適切でないと、呼気の途中に次の吸気が送り込まれます。

→次第に肺は過膨張した状態となっていきます(air trapping)。

→この状態では呼気終末の肺胞内圧が気道内圧より高くなります

→このような肺胞に残った気体による圧を”Auto PEEP”と呼びます。

流量波形呼気終末に0に戻っていなければAuto PEEPが存在します(図)。

呼気ポーズの間に測定した気道内圧と設定PEEP値との差がAuto PEEPとなります。

→例えば呼気ポーズ時の気道内圧が13、設定PEEPが5ならばAuto PEEPは8です。

呼吸努力があると正確な測定とならず、呼気時に完全閉塞している部分があると過小評価になります。

Auto PEEPの問題点

-容量傷害や圧傷害のリスクが上昇する。

-コンプライアンスが低下する。

VCVでは気道内圧が上昇し、PCVでは1回換気量が低下する。

-胸腔内圧が上昇する。

静脈還流量が低下し、血圧低下(最悪の場合は心停止)を引き起こす。

-気流を生じさせるために、より強い吸気努力を要する。

ミストリガー(吸気努力が人工呼吸器に感知されない)を生じ得る。

Auto PEEPへの対応

-呼気時間を確保するような設定にする。

吸気時間を短く(吸気流量を大きく)、呼吸回数を少なく設定する。

PSVの場合は、フローターミネーションを高めに設定する。

※Auto PEEPが著しい場合は、少ない呼吸回数や高CO2血症を許容する。

-上記の設定変更でミストリガーの改善が得られない場合、PEEPを上げることを検討する。

※Auto PEEPによるミストリガーは、トリガー感度を変更しても改善しない。

 

●Auto PEEPとミストリガー

f:id:p_kun:20211108231711j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

ミストリガーの見つけ方には以下の2つがあります。

・1つ目は、胸郭挙上と吸気の送気が一致しているか確認することです。

・2つ目は、流量波形の呼気にラクダのこぶ状の上向き波形を確認することです。

※上向き波形は吸気努力を反映しています。

PEEPがミストリガーを改善する具体例

-PEEPなし、Auto PEEP 7cmH2O、圧トリガー感度 2cmH2Oとします。

→この場合、9cmH2O以上の吸気努力が必要となります。

-一方で上記の状態でPEEP 5cmH2Oである場合を考えます。

→この場合、4cmH2O以上の吸気努力が必要となります。

※ミストリガーの発生機序もこの知識から理解できます。

・また、Auto PEEPよりPEEPが低い限り肺胞内圧は上昇しません

→”ダムの理論”と呼ばれ、この原則を守ればピーク(プラトー)圧は上昇しません

・逆にピーク(プラトー)圧が上昇する場合、PEEP設定が高すぎることになります。

 

【初期設定】

①モード

・自発呼吸の判断がつかない場合、A/C(アシストコントロール)が推奨されます。

コントロール:自発呼吸がなければ、設定した送気方法で強制換気を行います。

アシスト:自発呼吸があれば、それをトリガーして設定した送気方法で補助換気を行います。

→これらが合わさっているモードになり、どの呼吸も設定した送気方法に従います。

・A/Cでは患者の呼吸回数設定回数を超えた場合、全てアシストします。

→適切に設定ができているならば、患者の呼吸仕事量が最も小さく済むモードです。

・なお、送気方法には従圧式(PCV)従量式(VCV)があります。

→いずれかが優れることはなく、一般的には慣れている方を用いることになります。

 

②PCV

初期設定例

-吸気圧:5-15cmH2Oで開始。1回換気量 6-8mL/kg(理想体重)を目標に調整。

※吸気圧+PEEP(≒or>プラトー圧)を30cmH2O以下とする。

-吸気時間:0.8-1.5秒で開始。吸気流量が0で送気終了となるように調整。

-換気回数:10-16回/分で開始。30-60分後のpHやPaCO2を参考に調整。

-PEEP:5-10cmH2Oで開始。

-FiO2:100%で開始。SpO2≧94%となる範囲で下げる。

※できるだけ早期にFiO2≦60%になることを目標にする。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

・設定した圧が気道にかかる送気方法です。1回換気量は変動します。

・特に肺/胸郭コンプライアンスが低い場合気道抵抗が高い場合低1回換気量になります。

→一般的に吸気圧を上げると1回換気量は増加します。

→ただし吸気終末に吸気流量が0でなければ、吸気時間を長くするだけでも増加します。

・吸気努力に合わせた吸気流量となるため、VCVよりも同調性が良いとされます。

 

③VCV

初期設定例

-1回換気量:6-8mL/kg(理想体重)で設定。

-吸気流量:40-60L/分で設定。流量が遅ければ吸気時間は長くなる。

※吸気流量の代わりに吸気時間を設定する機種もある。

-波形パターン:漸減波で設定。矩形波の方が吸気時間が短くなる。

-換気回数:10-16回/分で開始。30-60分後のpHやPaCO2を参考に調整。

-PEEP:5-10cmH2Oで開始。

-FiO2:100%で開始。SpO2≧94%となる範囲で下げる。

※できるだけ早期にFiO2≦60%になることを目標にする。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

・設定した1回換気量が送り込まれる送気方法です。気道内圧は変動します。

・特に肺/胸郭コンプライアンスが低い場合気道抵抗が高い場合高圧になります。

→圧傷害を防ぐために、プラトー圧≦30cmH2Oを原則とします。

・送気パターンには漸減波と矩形波があり、前者の方が生理的パターンに近いです。

・吸気努力がある場合は、PCVよりも同調性が悪いとされます。

 

●PCVとVCVのどちらがよいか

・一般的には両者のどちらかが優れるという明確なエビデンスはないとされます。

→従って、それぞれのメリットや施設の傾向を考慮して決定します。

PCVのメリット:同調性がよい、気道内圧を制限できる、肺内の換気分布が均等など。

VCVのメリット:波形診断が行いやすい、一定の換気量を維持できるなど。

参考文献によると、近年はPCVが選択されることが増えてきているようです。

→その理由として同調性の良さなどが大きく影響している可能性があります。

・ただし気管支喘息重積発作(やCOPD急性増悪)ではVCVの方が好まれる傾向があります。

※その理由などの詳細は【疾患別の設定】に記載しています。

 

CPAP±PSで開始する場合

・気道確保目的や意識障害で挿管となり、自発呼吸が保たれている場合に検討します。

肺は正常であり、人工呼吸器による補助はほとんど必要ないからです。

自発呼吸の判断がつかない場合、前述のようにA/Cが推奨されます。

CPAP:定められた圧が吸気/呼気を問わず、常に気道にかかっている状態です。

※実質PEEPと同じですが、慣習的に自発呼吸と器械呼吸で名称が使い分けられます。

PS:自発呼吸に対して、吸気の間だけ圧をかけて吸気を助けます。

→患者が息の吸い始めと吸い終わりを決めるので、同調しやすいとも言えます。

※基本的にPSは、気管チューブの抵抗分だけ吸気を手助けするために使用します。

初期設定例

-CPAP:3-5cmH2Oで設定。

-PS:0-10cmH2Oの間で、1回換気量 6-8mL/kg、呼吸回数≦30回/分となるように設定。

※必要以上に高いPSは非同調の原因にもなる。

-FiO2:40-50%で設定。

-酸素化目標:SpO2 90-95%。

-ターミネーションクライテリア:25%で設定。

※人工呼吸器が吸気の終わりと判断する基準で、吸気始めの流量を100%とする。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

 

●SIMVが推奨されない理由

・SIMV:Synchronized Intermittent Mandatory Ventilationです。

自発呼吸なし:A/Cのコントロールと同様、設定した送気方法で強制換気を行います。

自発呼吸あり:設定呼吸回数を上回る分は、自発呼吸のままとなります。

→自発呼吸にはPSの補助は加わりますが、自発呼吸が増えると呼吸仕事量が増加します。

→この点がデメリットで、開始モードにA/Cが推奨される理由の1つでもあります。

・また、毎日SBTを行うよりも人工呼吸器離脱までの期間が長くなると報告されています。

(N Engl J Med 1995; 332:345-350)

→人工呼吸器管理において、SIMVを選択しなければならない状況はないとされます。

※昔はA/Cの同調性が悪くSIMVは重宝されましたが、現在A/Cの同調性は改善しています。

・上記の理由から、開始モードとしてSIMVは第一選択とはなり得ないのです。

・A/Cで開始し、離脱に向けてCPAP±PSへ移行する流れが理想とされます。

※ただし、実臨床ではSIMVで開始されることも比較的多い印象はあります。

 

【疾患別の設定】

心不全

設定方針

-モード:A/C(PCVとVCVはどちらでも可能)

-1回換気量:6-8mL/kg(理想体重)とする。

-プラトー:30cmH2O以下とする。

-吸気流量:60-90L/分とする。

-呼吸回数:6-35回/分で、pH 7.35-7.45を維持できるように設定。

-PEEP:5-10cmH2Oで酸素化が維持できる範囲で設定。

-酸素化目標:SpO2 88-95%(PaO2 55-80mmHg)。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

NPPVの効果が乏しい意識障害心原性ショックの場合などに適応があります。

PEEPは胸腔内圧上昇による静脈還流量低下肺血管抵抗上昇を引き起こします。

前負荷は低下し、右心の後負荷は上昇します。

→結果として心拍出量低下や低血圧を生じるリスクがあります。

→このことから、心不全では高すぎるPEEPを避ける傾向にあります。

 

②ARDS

設定方針 

-モード:A/C(PCVとVCVはどちらでも可能)

-1回換気量:6mL/kg(理想体重)とする。

-プラトー:30cmH2O以下とする。

→>30cmH2Oのとき、1mL/kgずつ1回換気量を減量する。

pH<7.151回換気量4mL/kgの場合はプラトー圧>30cmH2Oを許容する。

-吸気流量:60-90L/分とする。呼吸ドライブが亢進していることが多い。

-呼吸回数:6-35/分で、pH 7.35-7.45を維持できるように設定。

※換気量を抑えるため、必然的に呼吸回数は多くなりやすい。

-I/E比:1.1-1.3とする。

-PEEPプラトー圧が目標を逸脱しない範囲でFiO2に応じた高めのPEEPを設定。

※PEEPを上げることで酸素化が悪化する場合は、その限りではない。

-酸素化目標:SpO2 88-95%(PaO2 55-80mmHg)。

-driving pressure(プラトー圧-PEEP):15cmH2O未満とする。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

-FiO2に対してPEEPが高めの対応表(中等度以上のARDSに推奨)

FiO2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

PEEP

5-14

14-16

16-20

20

20

20-22

22

22-24

-FiO2に対してPEEPが低めの対応表(非ARDSや軽症のARDSに推奨)

FiO2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

PEEP

5

5-8

8-10

10

10-14

14

16-18

18-24

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

・ARDS:Acute Respiratory Distress Syndromeです。

・原因から1週間以内心不全や輸液過剰のみで説明できない両側性肺水腫をきたします。

PEEP≧5cmH2Oの状態でのP/F比で重症度を分類します。

軽症:201-300、中等症:101-200、重症:≦100です。

・肺保護のため換気量を抑える戦略をとります。

→しばしば呼吸性アシドーシスが進行しますが、pH>7.15であれば許容します。

低1回換気量を達成するため、しばしば深鎮静筋弛緩管理となります。

※ただし、筋弛緩薬は原則として吸気努力の強い重症ARDSのみ適応と考えます。

・近年、driving pressureがARDSの予後を規定している可能性が示唆されています。

・また、中等度以上のARDSでは高めのPEEP設定を検討します。

 

③頭蓋内圧上昇

設定方針

-モード:A/C(PCVとVCVはどちらでも可能)

-1回換気量:6-8mL/kg(理想体重)とする。

-プラトー:30cmH2O以下とする。

-吸気流量:40-80L/分とする。

-呼吸回数:高CO2は頭蓋内圧を上昇させるため、PaCO2 35-40mmHgに調整する。

-PEEP:5cmH2Oとし、上げる場合は頭蓋内圧上昇に注意する。

※特に10cmH2O以上とする場合は、頭蓋内圧のモニタリングが望ましい。

-酸素化目標:SpO2 94-98%。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

・ICP:IntraCranial Pressure、頭蓋内圧です。

・CPP:Cerebral Perfusion Pressure、脳灌流圧です。

ICP上昇によりCPP低下が生じ、脳虚血に至ることを二次性脳損傷と呼びます。

二次性脳損傷を防ぐことが設定管理上の目標となります。

管理目標:ICP≦20mmHg、CPP(mBP-ICP) 50-70mmHg。

PaCO2が高い場合は、脳血管拡張によりICPが上昇します。

→一方で低い場合は、脳血管収縮により脳血流が減少します。

→いずれも問題となるためPaCO2は正常域を目標とします。

・PEEPによりICP上昇をきたしますが、10cmH2O以下では問題にならないとされます。

 

COPD急性増悪

設定方針

-モード:A/C(PCVとVCVはどちらでも可能)

-1回換気量:6-8mL/kg(理想体重)とする。

-プラトー:30cmH2O以下とする。

-吸気流量:60-90L/分とする。多めにすることで、吸気時間を短くできる。

-吸気時間:Auto PEEPを少なくするため、より短く設定する(0.5-1.0秒程度)。

PSVの場合はフローターミネーションを高めに設定する。

-呼吸回数:呼気時間確保のため、できるだけ少なく設定する(8-12回/分程度)。

-PEEP:5cmH2Oとし、ミストリガー発生時に増加を考慮する。

-酸素化目標:SpO2 88-92%。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

NPPVの効果が乏しい意識障害循環動態不安定の場合などに適応があります。

急性増悪の定義:呼吸困難/咳/喀痰などの症状が日常の変動を超えて急性に悪化し、治療の変更を要する状態。

・急性増悪の原因の多くは感染で、治療はABCアプローチが有名です。

・人工呼吸器管理においてはAuto PEEPが問題になります。

→Auto PEEPが著しい場合は、少ない呼吸回数と高CO2血症を許容し得ます。

・更にミストリガー(吸気努力にもかかわらず送気がトリガーされない)も生じ得ます。

→ミストリガーが生じている場合は、PEEPを上げると改善することがあります。

COPDに対するPEEPは、呼気時の気道抵抗を改善する意義もあります。

 

気管支喘息重積発作

設定方針

-モード:A/C。気道抵抗が高く、ピーク圧が非常に高くなるためVCVが推奨される。

プラトー圧さえ問題なければ、ピーク圧が90cmH2Oであったとしても許容する。

-1回換気量:6-8mL/kg(理想体重)とする。

-プラトー:30cmH2O以下とする。

-吸気流量:60-90L/分とする。多めにすることで、吸気時間を短くできる。

-吸気時間:Auto PEEPを少なくするため、より短く設定する(0.5-1.0秒程度)。

PSVの場合はフローターミネーションを高めに設定する。

-呼吸回数:呼気時間確保のため、できるだけ少なく設定する(8-12回/分程度)。

-PEEP:5cmH2Oとし、ミストリガー発生時に増加を考慮する。

-酸素化目標:SpO2 88-95%。

-圧トリガー:1-2cmH2Oで設定。

-フロートリガー:2-3L/分で設定。

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

トリガーのみDr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理を参照

・概ねCOPDと類似した病態ですが、気道抵抗上昇の程度が大きいとされます。

・またNPPVの効果も比較的乏しく、推奨度は高くありません。

・気道抵抗上昇が著しく、自発呼吸もある場合は著明な非同調が生じ得ます。

→この場合は、自発呼吸を抑えるための筋弛緩薬の使用を検討することもあります。

 

【アラームへの対応】

⓪アラーム設定例

・それぞれのモードや送気方法で設定できない項目を見張ることが重要です。

PCVでは1回換気量の上下限VCVでは気道内圧の上限が最も重要になります。

CPAP±PSでは呼吸回数(や分時換気量)も重要な設定項目になります。

1回換気量

-上限:1000mLまたは目標の200%

-下限:250mLまたは目標の50-75%

気道内圧

-上限:30-40cmH2Oまたは目標+5-10cmH2O

-下限:目標-5-10cmH2O

呼吸数

-上限:30回/分または目標+10回/分

-下限:8-12回/分

分時換気量

-上限:8-10L/分または目標の150-175%

-下限:3-4L/分

PEEP/CPAP下限:設定値-3-5cmH2O

無呼吸時間:20秒

※バックアップ換気設定:1回換気量6-8mL/kg、呼吸数12-15回/分

人工呼吸管理レジデントマニュアルを参照

 

①急性発症の低酸素血症/呼吸困難

f:id:p_kun:20211031203910j:plain

Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理より引用

 

f:id:p_kun:20211031204744j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

・急性に低酸素血症や呼吸困難が生じた場合の対応を示します。

フローチャートの通りですが、その前に確実にSpO2が測定できているか確認します。

→測定ができていることが確認できたら、基本的にはバッグ換気に切り替えます。

※ARDSなどで高いPEEPを要しているときはPEEPバルブを用います。

・バッグ換気で胸郭がほとんど挙上しない場合は、気管チューブの問題を考えます。

固定長胸部XP喉頭鏡や気管支鏡で位置異常を確認します。

→また、カフの問題である可能性もあり、破損が疑われる場合は再挿管を検討します。

・バッグ換気で強い力を要する場合は、チューブ閉塞コンプライアンス低下気道抵抗上昇を考えます。

まず気管吸引を行います。吸引器が挿入しにくい場合、チューブ閉塞を考えます。

→この場合、吸引で閉塞が解除できなければ気管支鏡による分泌物除去チューブ交換を検討します。

・なお、胸郭の動きや呼吸音の左右差を確認することは原因の鑑別に役立ちます。

→左右差がある場合、気胸痰詰まり片肺挿管が鑑別となり、胸部XPが有用です。

 

②1回換気量低下

f:id:p_kun:20211031203939j:plain

Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理より引用

 

f:id:p_kun:20211107152436j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

 

f:id:p_kun:20211031204744j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

・原則としてPCVでみられ、フローチャートに沿って原因を考えます。

Auto PEEPが存在する場合、PCVでは1回換気量が低下します。

→流量波形の呼気の部分で、呼気終末に0に戻っていなければAuto PEEPが存在します。

→対応策は吸気時間を短く呼吸回数を少なく設定して呼気時間を確保することです。

コンプライアンス低下がある場合、流量波形では吸気/呼気とも早く終わります

→1回換気量を改善するためには吸気圧を上げます

吸気努力低下は、例えば鎮静薬を追加/増量した場合などに生じ得ます。

→この場合、グラフィック変化や対応策はコンプライアンス低下に準じます

気道抵抗上昇がある場合、流量波形では吸気/呼気とも延長します

→1回換気量を改善するためには吸気時間を伸ばすか、吸気圧を上げます

・なお、CPAP±PSでも同様の原因で1回換気量が低下します。

→この場合、PSを上げるA/Cにモードを変更する必要があります。

 

VCVにおける1回換気量低下

・VCVでは1回換気量を設定するため、原則として1回換気量低下となることは少ないです。

・なお、VCVでは吸気の1回換気量(VTI)を設定しています。

呼気の1回換気量(VTE)低下により、1回換気量低下のアラームが鳴ることがあります。

※設定上の問題で、VTI低下によりアラームが鳴ることもあります。

原因

リーク

-VTE低下によりアラームが鳴ります。

-換気量波形(呼気で0に戻らない)から判断します。

-⑵との鑑別で気道内圧上限アラームが鳴っていないことも重要です。

 

気道内圧上限アラーム

-VCVで気道内圧上限アラームが鳴る場合、VTIは設定よりも制限されます。

→VTI低下に伴い、1回換気量低下のアラームが鳴り得ます

-この場合、一時的に上限を上げて1回換気量が設定通りとなるか確認します。

-続いて、気道内圧上昇の原因(根本の原因)に対処します。

 

③気道内圧上昇

f:id:p_kun:20211107145007j:plain

Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸管理より引用

 

f:id:p_kun:20211107151145j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

 

f:id:p_kun:20211031204744j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

・原則としてVCVでみられ、フローチャートに沿って原因を考えます。

・まずは回路と気管チューブを確認し、回路に分泌物や結露があれば取り除きます。

気管チューブの位置や閉塞を確認し、吸引も行います。

→上記で改善しない場合、気管チューブより先に原因があるものと考えます。

咳嗽がある場合、収まったら気道内圧が正常化するか確認します。

Auto PEEPが存在する場合、VCVでは気道内圧が上昇します。

→流量波形の呼気の部分で、呼気終末に0に戻っていなければAuto PEEPが存在します。

→対応策は流速を速く呼吸回数を少なく設定して呼気時間を確保することです。

二段呼吸:設定換気量の不足で生じるため、設定換気量を上げます。

オートトリガー:吸気努力がないにもかかわらず、人工呼吸器が吸気を開始することです。

回路のリークや結露心拍動などが原因となり、トリガー感度設定が鋭すぎる場合も生じます。

原因の除去トリガー感度設定を鈍くすることを検討します。

PCVでは吸気時間が長すぎると、患者が息を吐こうとして気道内圧が上昇することがあります。

 

④その他

1回換気量上昇

・基本的にPCV(やCPAP±PS)で問題になります。

・以下に原因を示しますが、いずれの場合でも”吸気圧を下げる”ことで解決します。

CPAP±PSの場合、PS圧を下げることで解決します。

気道抵抗低下気管支喘息の改善過程などで、吸気時間の設定によってはみられます。

コンプライアンス上昇:ARDSの改善過程などでみられます。

吸気努力増大:胸腔内圧が低下し、肺内外圧差が大きくなることでみられます。

 

気道内圧低下

f:id:p_kun:20211107153033j:plain

人工呼吸器のファイティングでの波形を解説【直し方も伝授します】 | コキュトレ

・著しく低下する場合、重大なトラブルの可能性もあるため早急に対応します。

回路の外れやリーク:これらが否定できるまではバッグ換気とすることが推奨されます。

気管チューブ関連のリーク:チューブの固定位置やカフ圧を確認します。

吸気努力:吸気流量が少ない時に、圧波形がへこみます。吸気流量設定を上げて対応します。

 

無呼吸

CPAP(±PS)で鳴るアラームで、一般的には自動でA/Cに変更されます。

・対応策として、まずは実際に患者が無呼吸であるか直接確認します。

→この場合、鎮痛薬や鎮静薬による呼吸抑制が最多とされます。

呼吸努力を認める場合、真の無呼吸ではないと考えられ、以下の原因を検討します。

回路の外れやリーク:気道内圧低下アラームと同時に鳴ることが多いとされます。

ミストリガー:呼吸努力を人工呼吸器が感知しないことで生じ、以下の原因があります。

-トリガー感度が鈍い:通常は圧トリガー 1-2cmH2O、フロートリガー 2-3L/分程度に設定します。

-吸気努力が弱い:トリガー感度を低く(鋭く)設定するか、A/Cに切り替えます。

-Auto PEEP:この場合、PEEP(CPAP)の設定を上げるかA/Cに切り替えます。

 

呼吸回数上昇

どのモードでも鳴ることがあり、以下の原因を考えます。

オートトリガー:吸気努力がないにもかかわらず、人工呼吸器が吸気を開始することです。

→回路のリークや結露、心拍動などが原因となり、トリガー感度設定が鋭すぎる場合も生じます。

→原因の除去やトリガー感度設定を鈍くすることを検討します。

必要換気量の増大代謝性アシドーシス、死腔増加、CO2産生量増加などです。

→この場合、代償的に呼吸回数が上昇するため、むやみに呼吸回数を下げないようにします。

不適切な人工呼吸器設定:非同調やモードの不適などが考えられます。

その他:呼吸苦、不安、疼痛なども原因となり、対症療法を検討します。

 

分時換気量低下

呼吸回数か1回換気量のいずれかが低下することによります。

→”呼吸回数”の方に注目し、低下しているか否かを確認します。

呼吸回数低下なし:前述の”1回換気量低下”に準じて対応します。

呼吸回数低下あり:前述の”無呼吸”に準じて対応します。 

 

分時換気量上昇

呼吸回数か1回換気量のいずれかが上昇することによります。

→”呼吸回数”の方に注目し、上昇しているか否かを確認します。

呼吸回数上昇なし:前述の”1回換気量上昇”に準じて対応します。

呼吸回数上昇あり:前述の”呼吸回数上昇”に準じて対応します。