内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

頚動脈エコーの方法

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キューピーです。

 

頚動脈エコーは脳梗塞の病型診断に有用です。

 

それだけでなく、急性期の治療方針決定にも有用な場合もあります。

 

今回は頚動脈エコーについて、GLを参考にしてまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

超音波による頸動脈病変の標準的評価法 2017

 

【基本事項】

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体位:仰臥位で顎を軽く上げ、反対側へ顔を30度以内に傾けます。

→肩甲骨背側にタオルを挿入すると総頚動脈起始部の観察が容易になります。

→側臥位にして頚部後方から見ると内頚動脈遠位部の観察が容易になります。

画像表示:短軸は足側から俯瞰する像とし、長軸については規定はありません。

短軸像:前方と側方の2方向以上からアプローチし、描出不良領域を補います。

長軸像:近位壁と遠位壁のIMCが広範囲に明瞭に描出されるようにします。

エコーゲイン:血管内腔に近い低輝度病変を見落とさないよう、やや上げて観察します。

観察範囲:総頚動脈、頚動脈洞、内頚動脈、椎骨動脈を原則とします。

→必要に応じて外頚/鎖骨下/腕頭/浅側頭動脈なども観察します。

 

【最低限覚えておくべき基準値】

 

CCA

ICA

VA

(偽)外膜間距離

≦9mm

≦7mm

≦5mm

PSV(cm/秒)

40-100

40-80

40-70

EDV(cm/秒)

5-30

20-40

6-40

NASCET≧50%指標(cm/秒)

-

≧125-130

-

同≧70%指標(cm/秒)

-

≧200-230

-

PSVICA/PSVCCA:NASCET≧50%→≧2、NASCET≧70%→≧4

 

【総頚動脈(CCA:Common Carotid Artery)】

①アプローチ(短軸)

・血管横断走査で内側の甲状腺と外側の内頚静脈に挟まれたCCAを画面中央に描出します。

→この際、短軸直交断面が描出されるように操作します。

・CCAを画面中央に捉え、短軸直交断面を保ちながら鎖骨までプローブを移動します。

鎖骨に接したプローブを傾斜させ、可能な限り中枢側の血管を描出します。

→目標は鎖骨背側のCCA起始部(右側は腕頭動脈まで)になります。

・CCA短軸直交断面を保ちながら、末梢側へプローブをスライドし頚動脈洞まで観察します。

・頚動脈洞は紡錘状形態を示します。特にゆっくりとスライドさせて観察します。

 

②IMT(内中膜厚)

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・IMT:Intima-Media Thicknessです。

動脈硬化の進行の程度を反映し、一般的に>1.1mmで動脈硬化進行と考えます。

遠位壁で内腔/内膜境界の高エコー層上縁(LE)と中膜/外膜境界の高エコー層上縁(LE)を測定します。

※max IMT測定時は近位壁も確認し、この場合は図のTE間の計測で代用します。

IMTの種類:どれをどのように利用するか、一定の見解はまだない状況です。

-IMT-C10:CCAと頚動脈洞の移行部より中枢側10mmの遠位壁のIMTです。

-mean IMT:10mm長程度の範囲の長軸像における複数点のIMTの平均値です。

→マニュアル計測する方法と、一定の範囲を自動トレースする方法があります。

-max IMT:CCA-ICAの観察可能な全ての範囲のIMTの最大値です。

→近位壁の測定が困難である場合は、観察領域を遠位壁のみとすることもあります。

・日本の研究(JAHA. 2018 Jun 1;7(11):e007720)でIMTに関するものがあります。

→”CCAのmax IMT>1.1cm”が循環器病発症リスクの良い指標となることが示唆されました。

 

③血管径

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頚動脈洞の移行部より中枢側10mmで計測します。

・(偽)外膜間距離の基準上限は9mmです。拡張を認める場合、解離所見に注意します。

内径:図のごとく、近位壁のLEと遠位壁のLE間の距離を計測します。

外膜間距離:図のごとく、近位壁のTEと遠位壁のLE間の距離を計測します。

※ただし本来の距離と異なるため偽外膜間距離などとも呼ばれます。

・なお頚動脈は血管拍動に伴い動脈径が周期的に変化します。

→血管径計測時は、原則として心電図のR波のタイミングとします。

→これは心拍の拡張後期、頚動脈血管の収縮後期に当たるタイミングです。

 

④パルスドプラ

(0)基本事項

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・パルスドプラによる血流波形の計測は、頚動脈狭窄の評価に有用です。

→一般的に断層法による狭窄率の評価よりも信頼性が高いとされます。

CCA(またはICA)およびVAにおける計測が推奨されています。

・また、狭窄病変がある場合は最大狭窄部での計測が必須となります。

・スクリーニングでは収縮期最大血流速度(PSV)拡張末期血流速度(EDV)の計測が必須です。

心房細動症例では連続3心拍以上の平均値を求め、計測値は参考値とします。

 

収縮期最大血流速度(PSV)

PSV:Peak Systolic Velocityです。

心収縮期における最大血流速度です。

成人健常者では若年者で高く高齢者で低い傾向があります。

・また、血管径が左右で異なる場合、健常者でも左右差を認め得ます。

基準範囲:40-100cm/秒。起始部や蛇行部を除き、1.3倍以上の左右差に注意します。

 

拡張末期血流速度(EDV)

・EDV:End-Diastolic Velocityです。

心拡張末期における血流速度です。

・自動計測では収縮期-拡張期移行部の切痕の血流速度をEDVと誤ることがあるので注意します。

基準範囲:5-30cm/秒。

 

平均血流速度(V mean)

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各時相の最大流速を時間平均するか各時相の平均流速を時間平均する2つの求め方があります。

TAMV:前者で、マニュアルトレースで求めることができ、臨床的にV meanとして扱われます。

※TAMV:Time-Averaged Maximum flow Velocityです。

TAV:後者で、自動トレース機能を用いて求めます。

※TAV:Time-Averaged flow Velocityです。

 

拍動係数(PI)

・PI:Pulsatility Indexです。

PI=(PSV-EDV)/TAMVで算出します。

末梢血管抵抗の指標で、高値の場合は末梢血管抵抗増大を示唆します。

 

抵抗係数(RI)

・RI:Resistance Indexです。

RI=(PSV-EDV)/PSVで算出します。

・PIと同様に末梢血管抵抗の指標で、高値の場合は末梢血管抵抗増大を示唆します。

・PIより簡便に求まりますが、EDVが検出されない症例は全てRI値が1になります。

 

ED ratio

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左右のCCAのEDVについて速い値を遅い値で除したものです。

→従って、原則として1以上の値を示します。

・求める際は同じ部位/入射角/心拍数であることを前提条件とします。

・”急性期脳梗塞において、ICA遠位部閉塞病変の推定に有用です。

-ED ratio≧1.4:EDVの低い側の遠位部の高度狭窄-閉塞を疑います。

-ED ratio≧4.0:患側ICA拡張期の血流成分が記録できればPCA分岐部閉塞を疑います。

→血流成分が記録できなければPCA分岐部前の閉塞を疑います。

 

●パルスドプラ法の手技

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・血管長軸断面は、可能な限り傾斜させて描出します。

サンプルボリューム血管中央に血管径の1/2以上で設定します。

※狭窄病変部のPSV計測時は、血管径と同等かそれ以上に大きく設定します。

→これにより最大血流が確実に検出できるようになります。

・血流方向に対してドプラ入射角度を平行に補正します。

ドプラ入射角補正は最低でも60°以内とし、できるだけ小さい値とします。

・計測値の左右差をみるときは、できるだけ左右で同一のドプラ入射角とします。

 

【内頚動脈(ICA:Internal Carotid Artery)】

①アプローチ(短軸)

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・頚動脈洞から連続しており、外頚動脈との鑑別が重要です。

・末梢側が深部方向に向かうため、注意しながら描出します。

・遠位部では下顎骨によりプローブ操作が制限されます。

 

②IMT

max IMTについてはCCAだけでなく、ICAでも確認します。

 

③血管径

起始部より数cm末梢以遠で、血管径の安定した部位で計測します。

・(偽)外膜間距離の基準上限は7mmです。拡張を認める場合、解離所見に注意します。

 

④パルスドプラ

PSV基準範囲:40-80cm/秒。起始部や蛇行部を除き、1.3倍以上の左右差に注意します。

EDV基準範囲:20-40cm/秒。

 

【椎骨動脈(VA:Vertebral Artery)】

①アプローチ(長軸)

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長軸像で総頚動脈-頚動脈洞を描出し、外側方向にプローブを水平移動します。

VAはCCAの背外側に位置します。

・椎骨横突起を背外側部に描出し、横突起内に入孔するVAを観察します。

→大部分は第6頚椎(C6)の横突起で入孔します。

・VAの表在側に椎骨静脈が伴走しており、目印にもなります。

・VAを同定したら、中枢側にプローブを移動させて鎖骨下動脈分岐部を観察します。

・その後、末梢側にプローブを移動させて可能な範囲でVAの末梢側まで観察します。

 

②血管径

・描出が容易な第3-6頚椎の椎骨横突起間で計測します。

・(偽)外膜間距離の基準上限は5mmです。拡張を認める場合、解離所見に注意します。

 

③パルスドプラ

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PSV基準範囲:40-70cm/秒。

EDV基準範囲:6-40cm/秒。

VA閉塞:VAに血流信号を認めません。

PICA前閉塞:血流信号を認めるものの拡張末期血流を認めない場合に疑います。

PICA後閉塞:図を参照ください。

mean ratio:左右のVAのV meanの比です。

diameter ratio:左右のVAの血管径の比です。

PICA end:VAの低形成の1つで、VAがPICAに終わり、BAへ至らないものです。

 

プラーク(plaque)】

⓪基本事項

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定義:1.1mm以上の限局した隆起性病変。

→全体がびまん性に肥厚した状態(びまん性肥厚)とは区別します。

プラーク性状等の評価対象となるのは原則として最大厚>1.5mmプラークです。

→この場合、以下の項目を評価して注意するべきプラークであるか検討します。

存在部位

サイズ

表面の形態:潰瘍形成は高リスクの徴候です。

内部の性状:低輝度で被膜が薄いものは高リスクの徴候です。

可動性:可動性プラークは高リスクの徴候です。

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①サイズ

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・一般的にはプラークで表現されます。

→図のごとく血管内腔境界と血管外膜面境界で、最大厚部分で計測します。

→また、長軸では血管外膜垂線上短軸では血管中心部からの放射線で計測します。

・その他に血管長軸方向の範囲短軸断面でのプラーク占有率も重要です。

 

②表面の形態

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・平滑(smooth)、不整(irregular)、潰瘍(ulcer)で表現します。

平滑:表面がほぼスムーズなラインとなるものです。

不整:表面に不規則な凹凸を認め、潰瘍形成を伴わないものです。

潰瘍:明らかな陥凹の形成を認めるものです。

潰瘍形成を認める場合は、高リスクなので注意します。

 

③内部の性状

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プラーク周囲の非病変部のIMCを比較対象として評価します。

輝度均質性により図のごとく分類しますが、主観による要素も大きいです。

→評価困難例では無理をせず”内部性状不明”とします。

高輝度プラークは石灰化病変であり、しばしばacoustic shadowを伴います。

→そのため石灰化プラークとも称されます。

低輝度で被膜の高輝度層が薄い(またはない)ものは、高リスクなので注意します。

 

④可動性

プラーク全体や内部を含めた一部が動脈拍動とともに可動性を有することがあります。

→これを可動性プラーク(mobile plaque)と呼び、以下などが知られています。

-Jellyfish plaqueプラーク表面全体または表面の一部が動脈拍動とともに変形するもの。

-plaque with fluctuating contentsプラーク内に可動性の構造物を認めるもの。

-fluctuating ulcer plaque:潰瘍底が液状化したような動きを認め動脈拍動とともに変形するもの。

-floating plaqueプラーク全体または表面に付着した構造物が血流により可動するもの。

・可動性プラークは、プラークの破綻や内出血を示唆し、高リスクの徴候です。

→特にプラーク剥離に注意し、圧迫操作も十分に注意して行います。

 

【狭窄(stenosis)】

⓪基本事項

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・狭窄病変は、短軸断面でプラーク占有率が50%以上の場合に評価します。

→図のごとく面積を計測しても良いですが、目視でも可能です。

・評価は狭窄部のPSV測定を必須とし、断層像にて面積狭窄率を行うことも可能です。

広範囲の狭窄石灰化病変ステント挿入後CEA術後ではPSVが過大評価されます。

→この場合は積極的に面積狭窄率を計測するようにします。

 

PSV

・サンプルボリュームは狭窄内腔径よりも大きく設定します。

・ドプラ入射角は60°以内を最低条件とし、可能な限り小さい値とします。

・日本のGLでは以下の欧米の指標の使用が推奨されています。

NASCET≧50%の指標

-PSVICA≧125or130cm/秒

-PSVICA/PSVCCA≧2

 

NASCET≧70%の指標

-PSVICA≧200or230cm/秒

-PSVICA/PSVCCA≧4

 

②面積狭窄率

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PSVに比して、エビデンスは不足しています。

d:遠位壁側は内膜と血管腔の境界線の上を、近位壁側は同じ境界線の下を通過するトレースラインの面積。

e:遠位壁側は血管外膜と中膜の境界線の上を、近位壁側は同じ境界線の下を通過するトレースラインの面積。

{(e-d)/e}×100で面積狭窄率が求められます。

 

●NACSET法とECST法

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・NASCET:North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trialです。

・ECST:European Carotid Surgery Trialです。

・いずれも”血管造影法におけるICAの狭窄率”を指します。

→従って、エコー検査におけるルーチン項目ではありません

→前述のごとく、エコー検査ではPSVによる狭窄病変の評価が基本です。

→ただし、必要に応じて測定することもあります。

NASCET法ではリファレンスを末梢側の血管径が一定な部位とします。

ECST法ではリファレンスを狭窄部とします。

・一般的に面積狭窄率≧NASCET法≧ECST法の関係が成り立つとされます。