内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

COVID-19の治療

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

キューピーです。

 

COVID-19が猛威を振るっています。

 

個人的にはデルタ株はこれまでのSARS-CoV-2と一線を画す印象です。

 

診療の機会も増えてきたため、勉強も兼ねてできるだけ最新の治療をまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

※ECMOについては詳細は言及していません。

 

↓1日1クリックお願いしますm(__)m

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

 

 

目次

 

 

【参考文献】

新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第5版

COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 8 版

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における静脈血栓塞栓症予防の診療指針

BMC Infect Dis 21, 337 (2021)

ロナプリーブ®適正使用ガイド

 

【重症度分類】

⓪概略図

f:id:p_kun:20210828215645j:plain

新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第5版

 

f:id:p_kun:20210828220006j:plain

新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第5版

 

f:id:p_kun:20210828220042j:plain

COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 8 版

 

①軽症

治療:一般的には無治療経過観察で自然治癒することが多いとされます。

→ただし発症2週目までは急速に病状が進行することがあり、注意が必要です。

→特に重症化リスク因子を要する症例で中和抗体薬(カシリビマブ/イムデビマブ)が適応です。

・多くの場合、病状の悪化は低酸素血症の進行として表れます。

→この場合、自覚症状の乏しい低酸素血症(happy/silent hypoxia)となり得ます。

→自覚症状や身体所見以上にパルスオキシメーターでのSpO2確認が重要です。

 

②中等症Ⅰ

治療:レムデシビル投与を検討します。

→特に重症化リスク因子を要する症例でカシリビマブ/イムデビマブが適応です。

→酸素投与不要の患者では、予後を悪化させ得るためステロイド薬は推奨されていません

※継続使用中のステロイド薬を中止する必要はありません。

呼吸不全を伴わないものの、肺炎を呈する重症度になります。

・症状進行時に速やかに対応するためにも(本来であれば)入院が望ましいとされます。

・バイタルサイン(特にSpO2)は最低でも1日3回測定するようにします。

 

③中等症Ⅱ

f:id:p_kun:20210828220924j:plain

新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第5版

治療:レムデシビルやステロイド薬に加えて、ヘパリンの使用を検討します。

→さらにバリシチニブやトシリズマブ(適応外使用)が用いられることもあります。

→また呼吸不全を伴うため、酸素投与は必須です。

→酸素マスクでSpO2≧93%を保てない場合、人工呼吸器使用を検討します。

→この段階ではHFNCやリザーバー付きマスクの使用も考慮されます。

※鼻カヌラ使用時はエアロゾル発生抑制のため、サージカルマスクを着用させます。

※HFNCやリザーバー付きマスクは、エアロゾルが発生し得るため然るべき対応を取ります。

呼吸不全を伴う重症度になります。酸素投与前に必ずABGは確認します。

入院は必須ですが、人工呼吸器やECMOが使用可能な施設が望ましいと思います。

注意する合併症血栓塞栓症、細菌性肺炎、ARDS、敗血症、心筋障害、AKI、消化管出血。

 

④重症

治療:中等症Ⅱの治療に加えて、人工呼吸器やECMOを使用します。

・原則として集中治療の専門知識および体制が不可欠となります。

・肺炎はL型H型に分類され、H型の方が重症です。

・一部でL型からH型に移行しますが、その判定は困難とされます。

人工呼吸に際して、以下の如く戦略が記載されています。

f:id:p_kun:20210828214733j:plain

f:id:p_kun:20210828214757j:plain

 新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第5版

 

【薬物治療】

⓪基本事項

・現在日本で適応があるのはレムデシビルデキサメタゾンバリシチニブカシリビマブ/イムデビマブです。

・今回は上記の適応のある薬剤と抗凝固薬(ヘパリン)について記載します。

 

①各薬剤のエビデンス

レムデシビル

f:id:p_kun:20210828221036j:plain

COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 8 版

・上記の4つのRCTが報告されています。

・挿管や高流量の酸素投与に至った重症例では効果が期待できない可能性が高いとされます。

→ただしサブグループ解析では非重症の酸素需要のある症例で有効性が見込まれています。

・一方、国内で承認条件に基づき臨床試験成績が提出され、中等症に有効と判断されました。

→そのため、酸素投与を必要としない中等症Ⅰにも投与可能となっています。

 

デキサメタゾン

N Engl J Med 2021; 384:693-704が重要な研究で、適応の根拠となっています。

・英国の入院患者を対象とした大規模他施設無作為化オープンラベル試験です。

・6425人を対象とし、デキサメタゾン群2104人、対照群4321人が参加しました。

デキサメタゾン群の21.6%、対照群の24.6%が試験登録後28日以内に死亡しました。

(RR 0.83;95%CI 0.74-0.92、P < 0.001)

予後改善効果は、侵襲的人工呼吸管理を必要とした患者で最大でした。

→登録後28日以内の死亡についてデキサメタゾン群29.0% vs 対照群40.7%です。

(RR 0.65;95%CI 0.51-0.82、P < 0.001)

・登録時に酸素投与を必要とした患者でも予後改善効果が示唆されました。

→登録後28日以内の死亡についてデキサメタゾン群21.5% vs 対照群25.0%です。

(RR 0.80;95%CI 0.70-0.92、P = 0.002)

・登録時に酸素投与を要しなかった患者では予後改善効果はみられませんでした

(RR 1.22;95%CI 0.93-1.61、P = 0.14)

→このことから酸素投与を必要とする中等症Ⅱ以上で適応があります。

 

バリシチニブ

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、元々国内では関節リウマチに適応があります。

N Engl J Med. 2021;384(9):795-807に関する記載があります。

・COVID-19の入院患者1033人を対象にしたRCTです。

レムデシビル(10日以内)に加えて、バリシチニブ(14日以内)かプラセボが投与されました。

→バリシチニブ群の回復までの期間の中央値は7日(プラセボ群は8日)でした。

(回復率比 1.16;95%CI 1.01-1.32、P=0.03)

・また15日目の臨床状態の改善のオッズは30%高い結果でした。

(オッズ比 1.3;95%CI 1.0-1.6)

・更に登録時に高流量酸素または非侵襲的人工呼吸を受けた患者の回復までの期間は、併用群で10日、対照群で18日でした。

(回復率比 1.51;95%CI 1.10-2.08)

デキサメタゾンとバリシチニブの優位性の検証は現在行われている最中です。

 

カシリビマブ/イムデビマブ

・いわゆる中和抗体薬です。

medRxiv. 2021:2021.05.19.21257469の記載があります。

重症化リスク因子を1つ以上持つCOVID-19外来患者4057人を対象としたRCTです。

・本薬剤の単回投与で、プラセボ群に比して、COVID-19による入院/全死亡が71.3%/ 70.4%有意に減少しました。

・また、症状が消失するまでの期間(中央値)もプラセボ群に比して4日短い結果でした。

重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者に適応があります。

 

②レムデシビル

適応例:中等症以上のCOVID-19症例。

※ただし重症例に対する有効性は否定されつつあります。

投与例

-1日目:ベクルリー®100mg 2V+注射用水38mL+生食60mL 1日1回、1時間かけて。

-2日目以降:ベクルリー®100mg 1V+注射用水19mL+生食80mL 1日1回、1時間かけて。

-5(-10)日間投与します。原則として5日間の投与が推奨されます。

-体重40kg未満の小児には、点滴静注薬は推奨されません。

禁忌:過敏症既往。

副作用:肝/腎障害、過敏症、悪心など。

 

デキサメタゾン

適応例:中等症Ⅱ以上の(=酸素投与を要する)COVID-19症例。

経口投与例:デカドロン®錠4mg 1.5錠 1日1回。

静注投与例:デキサート®6.6mg+生食50mL 1日1回、30分-1時間かけて。

※①のエビデンスで言及した研究では6mg/日となっており、静注例は少し過量です。

体重<40kgでは0.15mg/kg/日への減量を、過体重では症例毎に用量を検討します。

妊婦/授乳婦にはデキサメタゾンよりプレドニゾロン40mg/日の投与が推奨されています。

血糖値測定リスク因子のある症例での消化性潰瘍予防も検討します。

 

●メチルプレドニゾロンの効果

・現場ではCOVID-19に対してメチルプレドニゾロン(mPSL)も使用される印象です。

・mPSLはデキサメタゾン(DX)よりも有効である可能性も示唆されています。

・その理由として例えば肺組織移行性やSARSへの有効性などが挙げられています。

・以下、BMC Infect Dis 21, 337 (2021)(イランで行われた三重盲検のRCT)です。

・対象は18歳以上でSpO2<92%の入院症例93人です。

・mPSL群(2mg/kg/日→5日毎に投与量半減) vs DX群(6mg/日を10日間)で比較しています。

※いずれも静脈内投与で標準治療が併用されました。

→臨床症状スコア、入院期間、人工呼吸管理の必要性でmPSL群が有意に低下していました。

→死亡率もmPSL群で低下(8人vs15人)しましたが、統計学的有意差は認めませんでした。

→ただし、筆者はそもそもコルチコステロイドとしての換算量が多いことが理由となった可能性もあると述べています。

→その他にサンプルサイズの小ささ等もlimitationに挙げられていました。

・例えばこの研究から、mPSLの使用が予後改善に繋がる可能性が示唆されます。

中等症Ⅱ以上では以下の如くDXの代わりにmPSLも検討できるのではないでしょうか。

投与例:mPSL 2mg/kg+生食100mL 1日1回、1時間かけて。5日毎に半減-中止。

 

④バリシチニブ

適応例:中等症Ⅱ以上の(=酸素投与を要する)COVID-19症例。

投与例:オルミエント®錠4mg 1錠 1日1回。最長14日間。

レムデシビルと併用します。その他の薬剤との併用について有効性と安全性は未確立です。

腎機能障害例:eGFRが30≦ <60は2mg/日、15≦ <30は2mg/48時間です。

禁忌:過敏症既往、活動性結核、好中球数<500/mm³、妊婦、eGFR<15、リンパ球数<200/mm³。

副作用感染症、消化管穿孔、血球(好中球/リンパ球/赤血球)減少、肝機能障害、間質性肺炎、PE/DVTなど。

→使用時は必ず血栓塞栓症の予防を行います。

 

⑤カシリビマブ/イムデビマブ

適応例:重症化リスク因子を有する中等症Ⅰ以下の(=酸素投与を要さない)COVID-19症例で、症状発現から7日以内。

※原則として成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児が対象となります。

リスク因子例

-≧50歳 -BMI≧30 -心血管疾患(高血圧含む)

-慢性肺疾患(喘息含む)  -慢性肝疾患

-CKD(透析含む)  -1型または2型糖尿病

-免疫抑制状態(免疫抑制薬内服含む)

投与例:カシリビマブ600mg/イムデビマブ600mg+生食50mL 30分かけて。

禁忌:過敏症既往。

副作用:過敏症など。

変異株によっては効果が期待できない可能性もあります。

※詳細はロナプリーブ®適正使用ガイドも参照ください。

 

⑥ヘパリン

適応例:中等症Ⅱ以上で出血リスクの高くないCOVID-19症例。

中等症Ⅰ以下では血栓予防として理学療法(離床、間欠的空気圧迫法など)を行います。

・特に肥満不動D ダイマー高値(正常上限≧3倍)血栓症の高リスク症例です。

投与例1:ヘパリンNa 10000単位/10mL+生食38mL 2mL/hrで持続静注。

投与例2:ヘパリンCa 5000単位 1日2回 皮下注射。

・いずれも10000単位/日で、行動が制限され不動となっている患者は持続静注とします。

・あくまで予防用量であり、APTT延長を目標とする必要はありません

APTT過延長血小板減少がないか、適宜採血検査で確認します。