内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

多発性硬化症(Multiple Sclerosis)

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※この記事は内容更新中です。

 

キューピーです。

 

多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)は近年増加傾向にあります。

 

そのため今後はより一層、診療の重要性が増すものと思われます。

 

今回は基本的な部分について、できる限り新しい情報を参考にまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

Lancet Neurol 2018;17(2):162-173

 

【基本事項】

PLoS Comput Biol 2017;13:e1005757

・MSは中枢神経系の炎症性脱髄性疾患の代表例です。

・日本では約14/10万人の有病率で、高緯度地域(北日本)で多いとされます。

20-30代に好発し、女性が2-3倍多いとされます。

・日本/世界とも有病率は上昇しており、特に女性の比率が高くなっています。

・遺伝/環境要因が関与する多因子疾患で、遺伝の影響は3割程度と推測されています。

環境要因:喫煙、EBV感染、VitD低値、日光照射の低減、肥満、有機溶剤など。

自然経過:上図の通りで、臨床的再発の前段階から自己免疫反応や脱髄を認め、疾患の進行とともに脳萎縮が進行するとされます。

臨床型:一次性進行型(PPMS)、再発寛解型(RRMS)、二次性進行型(SPMS)。

→日本では大部分(約85%)が再発寛解です。以降は再発寛解型を中心に述べます。

 

【症状】

球後視神経炎

-視力障害:片側性で、数日で進行することが多いとされます。

→1か月以内に回復することが多いとされますが、重度の視力障害が残ることもあります。

-視野狭窄:中心暗点が特徴的とされます。

-急性期には眼窩深部痛眼球運動時痛も伴い得ます。

眼球運動障害:両側のMLF症候群(病側の内転障害)も有名です。

感覚障害 ・筋力低下 ・運動失調 ・めまい

疲労 ・構音/嚥下障害 ・三叉神経痛

顔面神経麻痺 ・膀胱直腸障害 ・性機能障害

認知機能障害:注意障害、情報処理機能障害、長期記憶障害などで、43-70%で認めます。

抑うつ:生涯有病率は50-59%と高いです。

その他の精神症状:脱抑制/多幸/人格変化/幻覚/妄想など。

ウートフ現象:体温上昇により神経症状が発作性に増悪し、体温低下で改善します。

レルミット徴候:頚部を他動的に前屈させると、頚部-背中に電撃痛が放散します。

有痛性強直性攣縮:刺激により手指/前腕/下肢などに放散痛が生じ、異常感覚を伴うテタニー様の強直性攣縮発作です。

→数十秒-数分程度持続し、頻回に反復することも多いとされます。

※なお症状として24時間以上続く吃逆や悪心を認める場合、NMOを考慮します。

 

【診断基準】

①McDonald診断基準2017

Lancet Neurol 2018;17(2):162-173

・上図がMcDonald診断基準2017で、現時点の世界的な診断基準と言えると思います。

・上半分に記載の基準を満たし、かつMS以外の疾患が否定できる場合に診断します。

→CIS(後述)のためMSが疑われるものの、基準を完全には満たさない場合はpossible MSと診断します。

→臨床的にMS以外の疾患が考えられる場合、MSは否定的であると判断します。

診断基準の概略

2回以上の臨床的発作を認め、客観的臨床的証拠(e.g.神経学的所見)のある病変が2個以上であれば、検査を行わなくてもMSの診断となります。

客観的臨床的証拠のある病変が1個のみであっても、その他に炎症性脱髄イベントに特徴的な病歴上の症状/経過を過去に認めていれば、MSの診断となります。

※上記2つのパターンで診断した場合、検査は必須ではありませんが、基本的には頭部MRIは施行した上で診断することが望ましいとされます。

2回以上の臨床的発作を認め、客観的臨床的証拠のある病変が1個のみであっても、他の中枢領域に由来する臨床的再発またはMRIによって空間的多発性の証明ができれば、MSの診断となります。

臨床的発作回数が1回でも、客観的臨床的証拠のある病変が2個以上で、臨床的再発またはMRIによって時間的多発性の証明ができれば、MSの診断となります。なお、時間的多発性の証明は髄液オリゴクローナルバンド陽性で代替することが可能です。

臨床的発作回数が1回で客観的臨床的証拠のある病変が1個のみであっても、⑶や⑷の記載に準じた空間的多発性および時間的多発性(髄液オリゴクローナルバンド陽性含む)が証明できれば、MSの診断となります。

空間的多発性(DIS:Dissemination In Space)

以下のうち2領域以上で1個以上のT2高信号病変を認める。

-脳室周囲

-皮質あるいは皮質近傍

-テント下

-脊髄

Lancet Neurol 2018;17(2):162-173(一部改変)

時間的多発性(DIT:Dissemination In Time)

以下のいずれかを認める。

-ガドリニウムで造影される病変と造影されない病変が同時に存在する。

-ベースのMRIと比較して、新しいT2高信号病変あるいはガドリニウム造影病変を認める。

Lancet Neurol 2018;17(2):162-173(一部改変)

CIS(Clinically Isolated Syndrome)

-中枢神経炎症性脱髄を示唆する症状/他覚的所見が24時間以上持続する、急性~亜急性の単相性の発作です。

-発熱や感染を併発していないことも定義に含まれます。

-いわゆる典型的なMSの再発とほぼ同意義ですが、MSが知られていない患者(≒初回)の発作となります。

-CISの中でも頭部MRI異常例や髄液オリゴクローナルバンド陽性例は、再発の可能性が高いということが分かってきました。

→この事実から、最近の診断基準はCISでもMSの診断ができるようになっています。

-従ってCISでもMRIや髄液検査を行い、MSの診断ができないか検討する姿勢が重要です。

再発(Relapse)

-中枢神経炎症性脱髄を示唆する症状/他覚的所見がが、現在または過去に24時間以上持続して認められる急性増悪を繰り返すものです。

-発熱や感染を併発していないことも定義に含まれます。

 

多発性硬化症診断基準2015(厚生労働省)

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https://www.neurology-jp.org/guidelinem/msgl/koukasyo_onm_2017_18.pdf

日本特定疾患の申請の際などに使用されるため、知識をもっておく必要があります。

・McDonald診断基準2017と比較すると以下の点が異なります。

-髄液オリゴクローナルバンド陽性をDITの証明代わりにすることはできない。

-DISの証明に際して皮質病変は含まれない。

→このことからも、McDonald診断基準2017は感度を重視したものであると考えることができます。

 

MRI所見】

⓪基本事項

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Clinical and Experimental Neuroimmunology 2019;10(Suppl. 1):32–48

・上図は後述するMSに特徴的なMRI所見をまとめたものになります。

・MSの病変は、原則としてT2WI(FLAIR)で高信号を示します。

・脳室近傍/皮質/皮質直下病変はFLAIRが、後頭蓋窩はT2WIが検出しやすいとされます。

急性期病変(1か月が大まかな目安)造影されます。

初期はびまん性に造影され、経過とともににリング状に造影されるようになります。

→しばしば皮質側が開いたopen-ring signという特異的な所見を呈します。

※膿瘍病変との鑑別にも有用とされます。

DIR像:髄液と白質の信号を同時に抑制できる条件です。

MSの皮質病変の検出に優れています。

※皮質病変は脳萎縮高次脳機能障害に関連があるとされています。

 

①脳

ovoid lesion:側脳室壁に垂直に接するT2WIやFLAIRで高信号を示す病変です。

→特異度は低いものの、MSで認められる頻度の高い所見です。

Septal-callosal interface lesion脳梁下部から垂直に広がるFLAIRで高信号を示す病変です。

→FLAIR矢状断像が有用で、感度と特異度の高い所見とされます。

Dawson`s finger:FLAIR矢状断像で脳室周囲に指のように見える病変です。

juxtacortical lesion:皮質下白質のU-fiberに認める病変です。

T1 black hole:長期間持続するT1WIの低信号で、軸索障害や組織破壊を反映します。

 

●U-fiber(弓状繊維)とは

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美人呼吸器内科医も頭部MRIを読影する? しない? | medicaldirect.jp blog

大脳白質表層で、同一脳回の異なる部位や連続する脳回を連絡する神経線維です。

・鉄を含みT2WIでは低信号のUの字に描出されます。

・U-fiberが優先的に障害される疾患としてはPRESなどがあります。

 

②視神経

・視神経病変はDISの証明に用いることができないので注意します。

・通常は片側の視神経(特に後方)がT2WIで高信号となり腫大し、一部が造影されます。

・視神経周囲に脂肪があるため、脂肪抑制法であるSTIR像(特に冠状断)が見やすいです。

慢性期には視神経の萎縮を認め得ます。

 

③脊髄

1-2椎体以下の長さが多く、横断面の半分以下を占めることが多いとされます。

・特に頚髄および側索や後索が好発部位とされます。

 

●NMOのMRI所見

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Neuromyelitis optica (NMO). | Download Scientific Diagram

・NMO:NeuroMyelitis Opticaです。

・MSと同様に原則としてT2WIで高信号を呈します。

脊髄:胸髄に好発し、3椎体以上で脊髄中央、横断面で半分以上を占めることが多いです。

視神経:片側の全長1/2以上にわたり、腫大することが多いです。

→両側性の視力障害では視交叉病変を認め得、慢性期には視神経萎縮を認め得ます。

:延髄最後野(吃逆や嘔吐)、両側視床下部(過眠症)、広範な白質病変など。

※なおMcDonald診断基準2017では、MS疑いの患者で、臨床的にNMOSDを示唆する特徴(両側視神経炎/重篤な脳幹障害/長い脊髄病変/大きな脳病変/脳病変の欠如)を認める場合やアジア人/小児などMS以外の疾患の高リスクグループには抗AQP4抗体や抗MOG抗体の積極的な測定が推奨されています。

※抗MOG抗体関連疾患についてはリンク先の記事も参照ください。

 

ADEMMRI所見

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Acute disseminated encephalomyelitis (ADEM) | Radiology Case | Radiopaedia.org

ADEM:Acute Disseminated EncephaloMyelitisです。

ADEMについてはリンク先の記事も参照ください。

皮質下白質や深部白質に好発するT2WI高信号病変の散在を認めます。

病変の辺縁は不明瞭であることが多いです。

小児のMSとADEM鑑別のポイント

①広範な両側性病変の欠如

②T1 black holeの存在

③2個以上の脳室周囲病変

→2つ以上を満たす場合はMSの可能性が高いとされます。

 

【その他の検査】

①血液検査

・現在のところ、血液検査でMSに疾患特異的なマーカーは存在しません

→従って、基本的には他疾患との鑑別が主目的となります。

・特に抗AQP4抗体抗MOG抗体の確認はほぼルーチンで行うことも多い印象です。

・その他は症例ごとの鑑別により異なります。例えば以下のような項目を確認します。

-抗NF155抗体(CCPDで陽性を示すことが多い)

-抗核抗体

-抗SS-A/B抗体

-抗カルジオリピン抗体/ループスアンチコアグラント/抗β2-GPⅠ抗体

-抗好中球細胞質抗体(C-ANCA/P-ANCA)

-可溶性IL-2レセプター(sIL-2R)

-HBVスクリーニング(HBs抗原/HBc抗体/HBs抗体/DNA定量)

-白血球数(特にリンパ球数)

-肝機能 -腎機能  など

※後4者は治療に際しての検査項目になります。

 

②髄液検査

・髄液検査でもMSに疾患特異的なマーカーは存在しません

→血液検査と同様に、他疾患との鑑別のために重要な検査です。

・また、McDonald診断基準2017ではオリゴクローナルバンド(OCB)DITにおいて重要です。

細胞数:急性期に軽度の単核球増多(<50/μL)を認めることがあります。

→NMOSDではしばしば>50/μLの増多を認め、多形核球優位にもなり得ます。

総蛋白:急性期に増加することもありますが、軽度(<100mg/dL)にとどまります。

IgG index:上昇(>0.6-0.7)します。髄液腔でIgGが産生されることによります。

OCB:日本では60-70%で陽性です。髄膜炎/神経梅毒/SSPE/PML等でも陽性になり得ます。

→NMOSDではOCBの陽性率は10-20%で、IgG indexも低い傾向にあります。

※MSの診断に際して、感度/特異度ともOCBの方がIgG indexよりも高いとされます。

MBP:急性期に上昇しますが、他の脱髄疾患でも上昇し特異的ではありません。

GFAP:NMOSDで急性期に増加し得るため、鑑別のために確認することがあります。

IL-6:NMOSDで著明に増加し得るため、鑑別のために確認することがあります。

※MSでは原則として髄液IL-6は正常範囲内であることが多いとされます。

JCV DNA:鑑別としてPMLが疑われる場合やDMDの副作用関連で確認することがあります。

 

③神経生理学的検査

・VEP(Visual Evoked Potential)、ABR(Auditory Brainstem Response)、SEP(Somatosensory Evoked Potential)、MEP(Motor Evoked Potential)が行われ得ます。

VEP:P100の潜時延長(や振幅低下)を認めることがあります。

→視力低下や画像所見が不明瞭な症例でも異常を認め得るため、有用な検査です。

ABR:ⅢorⅤ波の消失、Ⅰ-ⅢorⅤ波の延長を認めることがあります。

→異常を認める頻度は高くなく、有用性は低いと考えられています。

SEP:上肢はN13or20、下肢はN20orP37の遅延や消失を認めることがあります。

→その他にCSCT(N13-N20orN20-P37の潜時差)の遅延も脱髄評価に重要な所見です。

→感覚障害を伴わなくても異常を認め得るため、有用な検査です。

※SEPの電極配置については微妙な施設差等もありますが、以下に例を示します。

-上肢:Erb点(N9)、C7棘突起(N13)、対側の手の感覚野上の頭皮(N20)に置きます。

-下肢:L4棘突起(N17)、Th12棘突起(N20)、足の感覚野上の頭皮(P37)に置きます。

-末梢神経大径有髄線維から脊髄後索/内側毛帯/視床/大脳感覚野までの評価になります。

MEP:運動野刺激での反応消失やCMCTの遅延や波形異常を認めることがあります。

→無症状でも異常を認め得るため、有用な検査です。

※MEPについてはリンク先の記事も参照ください。

 

【治療】

⓪基本事項

・治療は大きく以下の3つに分かれます。

急性期治療ステロイドパルス療法や血漿浄化療法があります。

再発/進行予防治療DMD(Disease-Modifying Drug, 疾患修飾薬)を用います。

対症療法:詳細はガイドライン(GL)等を参照ください。

 

①急性期治療

(0)基本事項

ステロイドパルス療法が第一選択で、症状改善が乏しい場合は1-2クール追加します。

→奏功しない場合や副作用が問題となる場合は血漿浄化療法(PP)を検討します。

※PPは長期的な予防効果はなく、進行型MSには原則として行いません。

急性期治療再発率症状改善に対する長期的な有効性は不明です。

→そのため、DMDを投与する必要があるのです。

 

ステロイドパルス療法

・GLでは推奨度/エビデンス1A+の治療法となります。

投与例:メチルプレドニゾロン 1000mg 1日1回2時間かけて点滴 3-5日間。

・経口ステロイドの後療法を行うこともあります。

投与例プレドニゾロン 40-60mg/日 数週間かけて漸減中止。

副作用:以下に示しますが、パルス療法は短期間のため忍容性は高いとされます。

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血漿浄化療法(PP:PlasmaPheresis)

・GLでは推奨度/エビデンス1B+の治療法となります。

ステロイドパルス療法無効例副作用が問題となる症例に適応となります。

※長期的な予防効果はないため、進行型MSは適応となりません。

種類:単純血漿交換療法(PE)、二重膜濾過法(DFPP)、血漿吸着療法(IAPP)。

→この中でも特にPEはRCTで有効性が確認されています。

施行頻度:隔日で2-3回/週、7回/月まで施行可能で、3か月まで保険適用が認められます。

→連日の施行は血中フィブリノゲンを著明に低下させるため、基本的には控えます。

相対的禁忌

-出血症状脳出血、肺出血、消化管出血、止血困難部位の出血など。

-循環不全状態心不全、致死性不整脈など。

-感染症重篤感染症など。

-低体重:小児や高齢者などで体重20kg以下など。

副作用

-低血圧 -低蛋白血症

-発熱/悪寒戦慄 -溶血

-低Ca血症 -血小板減少

-悪心/嘔吐 -蕁麻疹など

 

②再発/進行予防治療

(0)基本事項

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脳画像解析プログラム icobrainを用いた多発性硬化症の臨床応用

※グラチラマー酢酸塩-GA、フマル酸ジメチル-DMF、フィンゴリモド-FTY、ナタリズマブ-NTZ。

・フィンゴリモドの商品名として、ジレニア®の他にイムセラ®も有名です。

・上記に加えて2021年3月にオファツムマブ(ケシンプタ®,OFA)が製造販売承認されました。

・原則として1剤の使用で、組み合わせて使用しません。

・一般的に早期にDMDを開始することで死亡/神経学的に有利とされています。

・また効果の高い薬剤の方がSPMSへの移行を優位に抑制したという報告があります。

→一方で安全性も考慮しなければならず、症例ごとに検討する必要があります。

※少なくとも、効果が乏しいDMDを漫然と継続することは避けるようにします。

 

フマル酸ジメチル(テクフィデラ®,DMF)

用量:120mg 2Cap1日2回で開始し、1週間後に1回240mg1日2回に増量します。

禁忌:過敏症既往。

副作用:潮紅(22%)、下痢/悪心(10%以上)、リンパ球減少(2.2%)、PML、感染症、急性腎不全、肝機能障害など。

→潮紅や消化器症状を認めた場合、1か月程度1回120mg1日2回に減量できます。

→1回240mg1日2回に再増量して忍容性を認めない場合は、本剤の投与を中止します。

治療中の検査/観察事項

-全血球数(リンパ球数含む)の測定を、少なくとも3か月に1回行います。

-定期的に腎機能および肝機能検査を行います。

-PML発症のリスクが高まり得るため、リンパ球数に応じて以下の対応とします。

リンパ球数が6か月以上継続して500/mm³未満→投与中止を考慮します。

リンパ球数が6か月以上継続して500-800/mm³→投与の可否を慎重に検討します。

-新規の神経症状(認知機能障害含む)を定期的に確認します。

※PMLとMSの症状は類似することがあるため、常に注意します。

-重篤感染症が認められた場合には本剤を休薬または中止します。

 

フィンゴリモド(イムセラ®/ジレニア®,FTY)

用量:0.5mg 1Cap1日1回。

禁忌:過敏症既往、重篤感染症、妊婦。

併用禁忌:生ワクチン、クラスⅠa(プロカインアミド/キニジンなど)又はクラスⅢ(アミオダロンなど)抗不整脈薬。

副作用感染症(45.3%)、徐脈性不整脈、黄斑浮腫(0.6%)、PML、肝機能検査値異常(29.2%)、リンパ球減少(5%以上)、頭痛(5%以上)、下痢(5%以上)など。

徐脈性不整脈について、初回投与後少なくとも6時間バイタルサインの観察を行い、初回投与前及び初回投与6時間後12誘導心電図を測定することが推奨されます。また、初回投与後24時間心拍数及び血圧の測定に加えて、連続的に心電図をモニターすることが望ましいとされます。

リンパ球減少について、200/mm³を下回った場合は2週間後に再検し、引き続き200/mm³を下回った場合は投与を中断します。

→その後は慎重に経過観察を行い、600/mm³以上まで回復した場合は投与再開を慎重に検討します。

黄斑浮腫について、投与開始3-4か月後眼底検査を含む眼科学的検査を実施し、患者が視覚障害を訴えた場合にも眼科学的検査を実施します。

→黄斑浮腫が確認された場合には、原則として投与を中断します。

治療スケジュール

ムセラ®適正使用ガイド

 

ナタリズマブ(タイサブリ®,NTZ)

適応:他のMS治療薬で十分な効果が得られない又は忍容性に問題がある場合、もしくは疾患活動性が高い場合に使用します。

用量:1回300mg 4週に1回1時間かけて点滴静注します。

禁忌:過敏症既往、PML既往、高度の免疫抑制状態、重篤感染症

副作用感染症(11.9%)、頭痛(5%以上)、過敏症(3.6%)、PML(0.4%)、小脳顆粒細胞障害(JCVによる)、肝障害、急性網膜壊死など。

・治療開始前に必ず抗JCV抗体(インデックス 抗体価)を確認します。

→NTZ関連PMLのリスク因子として抗JCV抗体陽性2年以上の投与免疫抑制薬の治療歴が挙げられます。

治療スケジュール/抗JCV抗体測定によるPML発現率の推定

タイサブリ®適正使用ガイド

 

ナタリズマブにおけるEID(Extended Interval Dosing)

・NTZの投与間隔を4週ごとではなく6週ごとにする方法です。

PMLのリスク大幅に軽減できる可能性が示唆されています。

・一方でMSの再発抑制効果大きく減弱しないと考えられています。

・上記の点から、今後注目される投与法であると考えられます。

 

【評価基準】

①EDSS(Kurtzke総合障害度スケール)

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多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13) – 難病情報センター

・EDSS:Expanded Disability Status Scale of Kurtzkeです。

・MSの総合障害度急性期治療のアウトカムの評価指標として頻用されます。

機能別障害度(FS)を組み合わせて0(無症状)-10(死亡)まで20段階のスコアリングします。

・NMOSDやその他の脱髄疾患の評価にも用いられています。

・また進行型MS(PMS)における症状進行の評価尺度としてもしばしば用いられます。

 

②認知機能障害の評価基準

BRAIN and NERVE 2016;68:375-381

43-70%のMS患者で何らかの認知機能障害を認めるとされます。

・特に注意障害情報処理機能障害などが多く、一般的なHDS-RやMMSEでは十分な評価ができないと考えられています。

・従ってMSの認知機能評価においては、それに適したバッテリーを用いる必要があります。

→欧米では上表で示したMACFIMSBRB-NBICAMSなどが広く使用されています。

・一方で日常臨床で用いるにはやや煩雑であり、特に注意や情報処理のドメインだけの評価を目的とする場合はSDMT(Symbol Digit Modalities Test)PASAT(Paced Auditory Serial Addition Test)が有用であり、短時間でのスクリーニングが可能とされます。

SDMT:対応表を参照しながら、特定の図形に対応する数字を90秒の間にできる限り早く答える検査です。

PASAT:2秒ごと(PASAT-2)または3秒ごと(PASAT-3)に音声提示される1桁の数字を前後で加算して答える検査です。

 

【二次性進行型多発性硬化症(SPMS)】

①基本事項

PLoS Comput Biol 2017;13:e1005757

・SPMS:Secondary Progressive MSです。

・2001-2016年の北海道の調査でRRMSが84%SPMSが14%を占めたと報告されています。

・RRMSで早期に潜在的な神経変性(脱失や軸索障害)を伴い得ることが知られています。

silent progressionPIRA(Progression Independent of Relapse Activity)と呼ばれます。

・RRMSの一部では再発寛解を繰り返しつつ、再発によらず神経障害が緩徐に進行します。

→これをSPMSと呼びます。日本よりも欧米で多い傾向にあります。

移行のリスク因子:高齢発症、男性、初回発作後の不十分な回復、脊髄脳幹症状など。

 

②診断

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Neurology 2014;83(3):278–286をもとに作成

・上図が診断の理解に役立ちます。

障害進行:3(or6or12)か月以上持続する再発によらない悪化。

→期間も含めて明確な基準はなく、複数の基準が提唱されています。

→以下はMSbaseを用いた報告における障害進行の定義です。

-過去3か月にわたり以下のEDSSにおける再発によらない症状進行を認める。

EDSS 0の場合1.5、1-5.5の場合1、>5.5の場合0.5以上の進行

-EDSS≧4およびFSの錐体路徴候≧2。

BRAIN 2016:139;2395–2405

・なおSPMSの診断は容易ではなく、確定診断までに数年を要するという報告もあります。

・またRRMSでもsilent progression脳萎縮の進行が存在するとされます。

→従って、そもそもRRMSとSPMSの明確な線引きも難しいものと考えられます。

・なお、SPMSを疑う際は、MSの診断が誤りでないか検討することも重要とされます。

 

③治療

DMDではNTZやFTYのような効果の高い薬剤の方が、SPMSを抑制でき得るとされます。

→一般的には早期に十分な効果のある薬剤を導入することが重要とされます。

・また、近年シポニモド(メーゼント®)オファツムマブ(ケシンプタ®)がSPMSに適応となっています。

・まだ研究途上の部分もあり、今後の更なる報告が待たれます。

 

●一次進行型多発性硬化症(PPMS)

PLoS Comput Biol 2017;13:e1005757

・PPMS:Primary Progressive MSです。

再発とは独立した進行性障害を認め、特に進行性の脊髄障害が多いとされます。

・北海道十勝地方において、MSの約2%を占めるという報告があります。

→RRMSやSPMSと比べると頻度の稀な病型と考えられます。

・RRMSに比して男性の割合が高く(1:1程度)、好発年齢は35-40歳とやや高齢です。

脳病変:RRMSに比して小さく少ない傾向があり、造影効果を伴うことが少ないとされます。

→その一方で皮質病変は多く、脳萎縮も強い傾向があります。

脊髄病変:RRMSに比して大きい傾向があります。

※ただし2椎体以下、横断面の半分以下が多く、この点はNMOとの鑑別に有用です。

・日本での診断基準については【診断基準】②多発性硬化症診断基準2015(厚生労働省)を参照ください。

・治療薬として、2017年にオクレリズマブFDAに承認されています。

※詳細なエビデンスはN Engl J Med 2017;376:209-220を参照ください。