内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

脳波レポートの書き方

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キューピーです。

 

意識障害てんかんなどにおいて、脳波は重要な役割を果たします。

 

その際にどこに注目してレポート作成するか、自分なりにまとめてみました。

 

まだまだ勉強中の身であり、基本的な部分のみになります。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

脳波の手習いシリーズ

EEGpedia

特集 成人患者への持続脳波モニタリング | Neuroモニタリング倶楽部

脳波の賦活法(臨床神経生理学 42巻6号 371-377)

臨床神経 2018;58:626-630

代謝性・中毒性脳症の脳波(臨床神経生理学 47巻1号 40-46)

Seizure Volume 13, Issue 4, June 2004, Pages 270-276

脳波判読のポイント

脳波を楽しく読むためのミニガイド

 

・参考文献について、少し記載させていただきます。

・上記の脳波判読オープンキャンパスは特に素晴らしい参考書でした。

・基礎事項から丁寧に解説が示され、自分のような初学者にもわかりやすかったです。

・この記事ではあくまでレポート作成について主眼を置いています。

→脳波の読み方などの基本的な部分も含めて、参考文献を是非参照ください。

・著者の音成先生のAntaa slideも脳波を全く勉強したことのない方にオススメです。

 

【基本事項】

・レポート作成に際して、以下に注目します。

背景活動:びまん性脳症、睡眠深度、光過敏性の評価などにつながります。

突発波:再現性のあるspike(全般/焦点発作を示唆)の有無を確認します。

非突発波:焦点性の徐派(局所異常を示唆)の有無を確認します。

・これらの所見をまとめたら、それぞれに解釈を与えてレポートとします。

・なお、対象患者は成人であることを想定しています。

 

【背景活動】

①後頭部優位律動(PDR)

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脳波の手習いシリーズ(well organized PDR)

・PDR:Posterior Dominant Rhythmです。

安静閉眼後頭部に出現するアルファ帯域の律動波のことを呼びます。

アルファ帯域は8-13Hz未満です。

・周波数と波形が一定で持続することを"律動性"と呼びます。

・"優位律動"とは背景活動で最も時間的に多く出現する周波数成分のことです。

・PDR評価の際は"安静閉眼時"かつ"十分な覚醒時"の脳波を選択します。

評価項目

周波数:アルファ帯域である。

振幅:単極誘導(MP)で20μV以上である。

連続性:閉眼後に数秒以上持続し、漸増漸減を伴う。

分布:後頭部(-頭頂部)に限局している。

反応性:開眼や知覚刺激で抑制される(α-attenuation)。

左右差:周波数(<1Hz)や振幅(≦50%)で左右差がない。

→上記の全てを満たせば"正常のPDR"とされます。

※小児は成長とともに徐々に周波数が増して8歳で8Hzに達します。

※一方で高齢者も周波数が低くなる傾向があります。

 

評価判定

正常(well organized PDR):全評価項目が正常である。

軽度異常(poorly organized PDR):1つの項目で正常を逸する。

異常(disorganized PDR):複数項目(特に周波数や連続性)で正常を逸する。

高度異常(lack of PDR):背景活動としてPDRを認めない。

 

lack of PDRを認める病態例

-昏睡

-てんかん重積

-脳炎/脳症の活動期

-代謝性脳症

-蘇生後(低酸素)脳症 など

※群発-抑制(burst-suppression)や電気的脳無活動(ECI)などを認め得ます。

 

●コラム:脳波の組織化(organization)

・平均的な基礎律動と比較して正常かどうかの判定で用いられる表現です。

・PDRとそれが覚醒度の変化により適切に変化するかどうかで判定されます。

脳機能評価の観点で重要な所見となり得ます。

→一方で近年ではfunctional MRIや脳血流SPECTなども台頭しています。

→そのため、organizationは脳機能評価の主役とは言いにくい状況となっているようです。

 

②覚醒時の全般性徐波

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脳波の手習いシリーズ

PDRとともにびまん性脳症の判定に寄与する所見です。

・”十分に覚醒している時”に”MPで全般性(Fz/Cz/Pz)に分布”する徐波です。

※8割程度の電極が含まれていればよい(≒後頭部は含まれなくてもよい)とされます。

・なお”舌筋のアーチファクト”や”耳朶の活性化”の除外も重要です。

評価項目

覚醒度:完全覚醒のみ。roving eye movementも参考にする。

周波数:8Hz未満。シータ波に比してデルタ波は明らかな異常である。

振幅:50μV以上を有意な所見とする。

開閉眼:開眼時にも出現すると異常度が高まる。

 

評価判定

覚醒度

-完全覚醒(閉眼時のみ):軽度-中等度

-完全覚醒(開眼時も含む):中等度

-drowsyである時期のみ:正常範囲

周波数

-シータ波:軽度-中等度

-デルタ波:中等度

※⑴と⑵それぞれの判定をびまん性脳症の評価に用います。

 

舌筋のアーチファクト

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特集 成人患者への持続脳波モニタリング | Neuroモニタリング倶楽部

-舌運動電位とも呼ばれ、舌筋の運動で生じる全般性の高振幅徐波です。

-脳波にしては全誘導で均一であることが鑑別のポイントです。

→一般的に異常脳波は、その距離に応じて減衰して記録されます。

-また(正常な)背景活動から突如、逸脱して出現し得ることもポイントです。

-同時記録のビデオで口元の運動(会話など)の有無を確認することも重要です。

 

耳朶の活性化

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脳波の手習いシリーズ

-MPでの基準電極である耳朶電極(A1/2)に高電位が混入した場合に生じます。

-この場合、MPで広範囲に下向き波形(陽性波)が記録されます。

-特に側頭葉てんかんにおいて耳朶電極付近でspikeが生じた場合が重要です。

-鑑別にはMP以外のモンタージュの確認が有用です。

-特にAV誘導では(側頭葉てんかんなら)側頭部が最大の局所徐波が確認できます。

 

③びまん性脳症の判定

・①と②の結果に基づき、びまん性脳症の判定を行います。

※なお、全般性徐波の異常度は②に記載の通りです。

PDRの異常度

-well organized PDR:正常

-poorly organized PDR:軽度

-disorganized PDR:中等度

-lack of PDR:高度

 

びまん性脳症の判定

-すべて正常:正常

-すべて軽度:軽度のびまん性脳症

-中等度が1つ:軽度-中等度のびまん性脳症

-中等度が2つ以上:中等度のびまん性脳症

-高度あり:高度のびまん性脳症

 

④睡眠脳波

基本事項

睡眠段階

背景活動

特徴的波形

Stage W

覚醒段階

背景活動はアルファ波

ベータ波や瞬目/筋電図の混入あり

PDR

Stage 1

入眠期

アルファ波の減少と背景活動平坦化

速波

VST POSTS

roving eye movement

Stage 2

軽睡眠期

徐波化

(デルタ波:全体の20%以下)

spindle

K complex

Stage 3

中等度睡眠期

徐波化

(デルタ波:全体の20-50%)

spindle

Stage 4

深睡眠期

徐波化

(デルタ波:全体の50%以上)

spindleの消失

Stage REM

REM睡眠期

低振幅のシータ波や速波

(Stage1に類似も筋電図混入は少ない)

急峻な眼球運動(REM)

脳波判読オープンキャンパスより一部改変引用

・覚醒度が落ちるとアルファ波消退徐波化し、最終的にデルタ波が主体となります。

通常の記録(30分間)ではStage2までしか至らないとされています。

DSAPDRやspindleを探すと、大まかな睡眠段階を判定できます。

・睡眠脳波では再現性のある明らかな左右差を認める場合に異常と考えます。

・入眠直後にREM期所見を認める場合、sleep onset REM(SOREM)と呼びます。

ナルコレプシーや生活リズムの乱れ(睡眠後退症候群など)で認める所見です。

・また、睡眠脳波(non-REM期)においててんかん性放電が出現しやすいとされます。

 

POSTS(睡眠後頭部一過性陽性鋭波)

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脳波の手習いシリーズ

・POSTS:Positive Occipital Sharp Transient of Sleepです。

時期/分布:Stage1(Wからの移行期含む)に両側後頭部に出現します。

波形:4-6Hzの陽性鋭波(MPで下向き)で単発/連続いずれでも出現し得ます。

 

spindle(紡錘波)

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脳波の手習いシリーズ

時期/分布:Stage2に左右対称に全般性(C/Pで最大の傾向)に出現します。

波形:12-14Hzの群発として出現します。

 

VST(頭蓋頂鋭一過性波)

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脳波の手習いシリーズ

VST:Vertex Sharp Transientsです。

・なおVSTにspindleが後続したものをK complex(K複合)と呼びます。

時期/分布:Stage1(-2)に頭蓋頂(C)で最大です。左右対称であることが多いです。

波形:高振幅(100-300μV)の鋭波で常同性は高くありません。

※患者内で波形の変動を認め得るということです。小児は特に高振幅になります。

 

SOREM

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脳波判読のポイント

・通常の記録(30分間)ではREM睡眠期の脳波を認めることはありません。

入眠直後にREM期所見を認める場合、sleep onset REM(SOREM)と呼びます。

ナルコレプシー生活リズムの乱れ(睡眠後退症候群など)で認める所見です。

・REM睡眠期の背景活動はStage1と類似しているため、見落としやすいです。

→鑑別には急峻な眼球運動を反映した角膜電位のアーチファクトが有用です。

MPでF7/8で逆位相を呈する台形様波形を呈する特徴があります。

※角膜電位は陽性であり、右注視時はF8で陽性(下向き)波となります。

・なお、眼球運動に伴い外直筋の筋電図(F7/8やFp1/2のspike)も混入し得ます

 

⑤賦活脳波

基本事項

光刺激過呼吸などによる脳波の変化を確認します。

・今回は光(閃光)刺激について述べていきます。

・これは強い光を閉眼した被検者の眼前で点滅させる方法です。

・1-30Hz程度の点滅光で約10秒間刺激し、10秒間の経過観察後に次の刺激に移ります。

縦つなぎのBPで後頭部に注目すると観察が容易とされます。

 

光駆動(photic driving)

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脳波の賦活法(臨床神経生理学 42巻6号 371-377)

正常反応です。

光刺激と同期あるいは調和関係にある周波数の波が出現することです。

調和関係:例えば1回の光刺激に2または3回の光駆動反応を認めることです。

※高次同調駆動(2nd/3rd harmonic driving)と呼ばれます。

・一側半球の光駆動が乏しい場合、同側後頭部の局所異常が示唆されます。

・光駆動の分布が広い(頭頂部を超える)場合は、光感受性が高い可能性があります。

 

光突発反応(PPR)

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臨床神経 2018;58:626-630

・PPR:Photo-Paroxysmal Responseです。

特発性全般てんかんで認めやすく、光感受性発作を示唆する異常所見です。

光刺激で誘発されるspikeで、多くは全般性棘徐波複合を呈します。

ミオクローヌスてんかんでは多棘(徐)波を呈します。

左右同期性に出現し、15-18Hzの光刺激で誘発されやすいとされます。

・光刺激終了後も持続する場合、よりてんかん発作を有する確率が高いとされます。

 

コラム:過呼吸賦活

・20-25回/分で3-4分間、強制的に過呼吸を行わせる方法です。

過呼吸により呼吸性アルカローシス→脳血管収縮→徐波化(build up)を生じます。

参考文献には成人例では過呼吸賦活をルーチン化していないと記載があります。

・その理由として以下が挙げられていました。

-異常を呈しやすい欠神てんかんは小児に好発すること。

-賦活後に傾眠状態となりやすく、覚醒度低下による徐波と区別が難しいこと。

-特に高齢者では脳虚血を誘発するリスクを伴うこと。

→しかし実際にルーチンとしている施設もあり、評価法につき記載します。

build up過呼吸に伴い振幅増大や徐波化を認めることを指します。

→正常であれば1分以内に元の背景活動に戻ります。

→通常は小児に認める所見で、成人では目立ちません。

big build up:著明な徐波を示すことで、てんかん患者に多く認めます。

※ただし健常者にも認め得る所見で、これのみで異常と断定はできません。

※特に小児では健常児でも多く認める傾向があります。

re-build up:build upが消失した後に再度徐波化する所見で、もやもや病に特徴的です。

過呼吸賦活は脳血管収縮をきたすため、既に診断のついたもやもや病には禁忌です。

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脳波の手習いシリーズ(build up)

 

【突発波(spike)】

①基本事項

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脳波 レジデントが押さえておきたい2つのPOINT | Antaa Slide

発作間欠期のてんかん性放電を総称してspikeと呼びます。

てんかんに対して極めて特異度の高い所見であり、重要です。

→全般性なら全般発作、局所性なら焦点発作が示唆されます。

spikeのポイント

必須条件:spike成分が背景活動から逸脱して目立つ。

重要条件:後続徐波(after-slow)を伴う。

経験的あるいは参考的特徴

-spike成分は上行脚の方が下行脚より急峻である。

-spike成分の下行脚の谷は基線より深く位置することが多い。

-後続徐波の振幅はspike成分の振幅の50%以上であることが多い。

脳波判読オープンキャンパスより引用 

 

記載事項

波形

-棘波(spike)

-多棘波(polyspike)

-鋭波(sharp wave)

-棘徐波複合(spike&wave complex)

-突発性速波(paroxysmal fast)

出現様式

-単発性 -反復性

-周期性 -同期性

分布

-局所性(regional)

-全般性(generalized)

※最大点も記載する。

出現頻度

記載例:spike,regional Rt frontal(F4 max),1-3/page

 

全般性/局所性判定の注意点

-MPでF/C/P/Oの3領域異常が含まれるか。

-耳朶の活性化ではないか。

-左右半球間で再現性のある振幅の左右差はないか。

-二次性両側性同期の可能性はないか。

 

●コラム:鋭一過性波(STsSharp Transients)

spike様でも前述の条件を十分に満たさない波形をしばしば認めます。

・この場合、再現性が確認できなければSTsと判定します。

※再現性があればspikeと判定することもあります。

STsは”偶発的に尖ってみえる波形”程度であくまで”正常亜型”と考えます。

STsのみでは(spikeと異なり)原則としててんかんを示唆しません

→これはspikeの高い特異度を保持するために重要な考え方になります。

※spikeに近く判断に迷うSTs症例の診断は、しばしば臨床判断に委ねられます。

STsの具体例

-後続徐波が低振幅である。

-spike成分が低振幅で、背景から逸脱していない。

-spikeとして条件を満たしそうだが、再現性がない。

 

②周期性放電

基本事項

・前述の出現様式に”周期性”があります。

一定周期で出現し、インターバルには原則として背景活動を認めることを特徴とします。

病態によっては背景活動が抑制されるものもあります。

※なお”反復性”は周期が一定ではなく、インターバルに背景活動を認めません。

周期性放電は、概して以下の特徴を持つ波形です。

-比較的定型的な波形が周期性に出現する。

-通常は急性/亜急性の高度の脳症を示唆する。

-背景病態ごとに周期や波形の特徴がある。

 

周期性放電の種類と背景病態

分布

周期性放電

種類

背景病態

全般性

GPD

PSIDDs

Creutzfeldt-Jakob病(CJD)

PLIDDs

亜急性硬化性脳炎(SSPE)

三相波

代謝性脳症

群発-抑制

低酸素脳症

中毒

薬剤性(バルビツールなど)

一側性

LPD

LPDs/BiPDs

急性破壊性病変(脳血管障害など)

感染症(ヘルペス脳炎など)

代謝性脳症

非痙攣性てんかん重積(NCSE)

持続性部分てんかん

脳波判読オープンキャンパスより一部改変引用

・GPD:Generalized Periodic Discharge。

・LPD:Lateralized Periodic Discharge。

・PS(L)IDDs:Periodic Short(Long)-Interval Diffuse Discharges。

・BiPDs:Bilateral Periodic Discharges。

※必ずしもてんかんと関連のないことに注意します。

 

LPD(PLEDs)

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脳波を楽しく読むためのミニガイド

 

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Periodic-Lateralized-Epileptiform-Discharges-PLEDs-plus

・前述のLPDは従前のPLEDsに該当します。

・PLEDs:Periodic Lateralized Epileptiform Dischargesです。

1-2秒の周期で棘/鋭波が一側性に限局して出現します。

ヘルペス脳炎脳卒中などの急性疾患でしばしば認めます。

・なお各放電間に低振幅速波(ベータ波)を認めるものをPLEDs plusと呼びます。

NCSEなどのてんかん(重積)と関連し得る所見と言われています。

 

PSIDDs/PLIDDs(PSD)

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脳波の手習いシリーズ

・前述のPSIDDsやPLIDDsはまとめてPSDとも呼ばれます。

・PSD:Periodic Synchronous Dischargeです。

周期性に棘/鋭波が全般性に出現します。

・PSIDDs(=CJD)は短周期、PLIDDs(=SSPE)は長周期に出現します。

→具体的には前者は1秒後者は3秒前後の周期との記載がありました。

 

三相波

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脳波の手習いシリーズ

軽度-中等度の肝性脳症でしばしば認めます。

その他の背景病態:腎不全、糖代謝異常、電解質異常、低酸素脳症、脳血管障害、甲状腺機能低下症、敗血症など。

→肝性脳症に限らず、幅広い内科疾患に伴う意識障害で認めます。

分布:多くは左右同期性の全般性で、前頭部を最大とします。

波形:陰性-陽性-陰性(上-下-上)の3相で1相目は振幅が小さい傾向があります。

A-P delay:前方から後方領域にかけて潜時が遅れる現象です。

・上記全て(特にA-P delay)を満たすことは多くないとされます。

・なお、三相波の背景活動は全般性徐波であることが多いとされます。

 

群発-抑制(burst-suppression)

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脳波の手習いシリーズ

不規則な群発性の脳活動周期的に出現し、その間の背景活動は抑制されます。

低酸素脳症などの重篤意識障害で出現し、一般的に予後は不良です。

 

③突発性速波活動(paloxysmal fast)

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Seizure Volume 13, Issue 4, June 2004, Pages 270-276

速波としてのspike成分が連続して出現するものです。

・周波数は10-25Hzで持続は2-10秒ほどで睡眠時に認めやすいとされます。

・突発波の最後は後続徐波で終わり、excessive betaなどとの鑑別点となります。

・特に5秒以上持続するものは強直発作との関連が示唆されているようです。

 

【非突発波(局所徐波)】

・局所徐波は、局所性の異常の存在を示唆する非特異的な所見です。

・焦点てんかんでも認め得ますが、その他の多くの病態で認めます。

病的意義が高まるポイント

-覚醒度の高い状態(特に開眼時)にも認める。

-周波数が遅い(デルタ波である)。

-振幅が大きい(≧50μVを異常と判定)。

-持続性である(刺激などで抑制されない)。

-ベータ波の振幅低下も伴う。

→特に持続性のデルタ波ベータ波異常も伴う場合は”大脳皮質”異常が示唆されます。

 

記載事項

連続性

-持続性:全体の50-70%以上で認める。

-間欠性:上記を満たさない。

律動性

-律動性:同じ波形/周波数が数秒以上持続している。

-半律動性:律動性と不規則性の中間である。

-不規則性:波形/周波数とも同じものが持続していない。

分布

-全般性

-局所性

周波数

-シータ波

-デルタ波

記載例:intermittent irregular delta slow,F4 max,3-5/page

 

コラム:TIRDA(側頭部間欠性律動性デルタ活動)

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TIRDA (temporal intermittent rhythmic delta activity) - EEGpedia

・TIRDA:Temporal Intermittent Rhythmic Delta Activityです。

・局所徐波でありながら、側頭葉てんかんとの関連を示唆する重要な所見です。

左右いずれかの側頭葉に律動的なデルタ波が間欠的に出現します。

・棘徐波複合が、電極までの減衰で徐波のみ残存したものと考えられています。

→完全に減衰されない場合は、徐波の前にspike成分を認め得ます

 

【総合判定】

①基本事項

・これまでの背景活動、突発波、非突発波の所見化から最終的な判定を行います。

・記載の通り、背景活動→突発波→非突発波の順に確認していくとスムーズです。

 

②正常(normal)

背景活動は正常突発波も非突発波も認めない脳波です。

 

③軽度異常(mildly abnormal)

・特異度は高くないものの、非特異的な異常所見を認める場合です。

-軽度のびまん性脳症のみ

-間欠性の局所徐波のみ

-SOREM

-excessive beta:ベンゾジアゼピン系薬物使用と関連して認めます。

※振幅≧50μVの速波を記録の≧50%で認める所見です。

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代謝性・中毒性脳症の脳波(臨床神経生理学 47巻1号 40-46)

 

④中等度異常(moderately abnormal)

特異度の高い異常高度の脳機能障害を示唆する場合です。

-中等度のびまん性脳症

-てんかん性放電(spike)

-PLEDs,PSD,三相波

-局所性の連続性不規則徐波:同部の大脳皮質異常を示唆します。

-局所性の速波の振幅低下:同部の大脳皮質異常を示唆します。

 

⑤高度異常(markedly abnormal)

・特異度の高い異常のうち、予後不良である所見を認める場合です。

-高度のびまん性脳症(下記事項を内包)

-群発-抑制(burst-suppression)

-全般性の振幅低下:昏睡患者で高度のびまん性脳障害を示唆します。

-電気的大脳無活動(ECI):臨床的に脳死に対応します。

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脳波の手習いシリーズ

 

⑥記載例

脳波判読オープンキャンパスの記載例を部分的に改変して記載します。

背景活動:poorly organized PDR、覚醒時の間欠性全般性デルタ波あり

睡眠脳波:正常

賦活脳波:正常反応

突発波:spike,regional Rt temporal,T4 max,1/5 pages

局所徐波:intermittent irregular theta slow(6-7Hz),T4 max,1/5pages

総合判定:moderately abnormal(中等度異常)

→中等度のびまん性脳症、右側頭部の焦点てんかんおよび同部の局所異常を示唆する。

 

●コラム:正常亜型の脳波

①基本事項

・正常範囲(境界域とも)であるものの異常と間違いやすい所見を述べます。

・ただし、所見によってはてんかん等との関連を示唆されるものもあります。

・また、所見の解釈は変遷しているため今後も所見の意義が変わる可能性があります。

・記載のもの以外の正常亜型(精神運動発作異型やSREDAなど)も知られています。

 

②phantom spike(6Hz棘徐波)

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6 Hz spike-and-wave bursts (WHAM and FOLD) - EEGpedia

6Hz(4-7Hz)の棘徐波複合の短い(1-2秒)群発です。

全般性ですが前頭部や後頭部優位で出現することがあります(後述)。

spike成分が徐波成分に比して低振幅であることが特徴です。

てんかんとの関連が示唆されており、Hughesによる以下の分類が重要です。

→特にWHAM typeの関連が強く、その要素を多く含むほど関連性が強まります

WHAM type

Waking state:覚醒時

High amplitude:高振幅

Anterior:前頭部最大

Male:男性

 

FOLD type

Female:女性

Occipital:後頭部最大

Low amplitude:低振幅

Drosy state:軽眠時

 

wicket spike(ウィケット棘波)

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Wicket spikes - EEGpedia

側頭中部に好発する、背景リズムを崩さずに出現する6-11Hzのspike様波形です。

・一般的に後続徐波は伴わず安静-傾眠時に出現します。

単発/群発ともあり、両側に独立(=左右で同期しない)して出現します。

30歳以上の中高年に出現し、病的意義はありません

 

④SSS(Small Sharp Spikes,小鋭棘波)

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Small sharp spikes (SSS or BETS) - EEGpedia

・睡眠時良性てんかん形一過波(BETS:Benign Epileptiform Transient of Sleep)とも呼ばれます。

睡眠Stage1(-2)に好発する広く分布する小さい(≦50μV,≦50ms)spikeです。

片側/両側いずれもあり、後続徐波を伴うこともあります。

頻度の高い(20%)正常亜型で、病的意義はありません

 

⑤若年性後頭部徐波

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成人および高齢者の脳波(臨床神経生理学 42巻6号 387-392)

・英訳はPosterior Slow Waves of Youthです。

25歳未満PDRとともに認める徐波で、病的意義はありません

必ずPDRに併存するため、開眼などでPDRが抑制されれば出現しません。

その他の生理的な局所徐波

-若年性前頭部徐波:10-20代の覚醒-軽睡眠期に認める。

-高齢者側頭部徐波:60歳以上の覚醒-軽睡眠期に認める。