内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

失語の診療

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キューピーです。

 

特に脳卒中診療では、麻痺や感覚障害と同じくらい失語症状に出くわします。

 

しかし、麻痺などと違いとっつきにくい症候でもあります。

 

各種失語と対応する病変の画像なども絡めながら、失語についてまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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【参考文献】

 

【基本事項】

概念:獲得された言語知識が、大脳病変によって後天的に障害された状態です。

原因:脳血管障害(最多)、脳腫瘍、外傷、てんかんなど。

・言語能力の優位性は、右利きで99%、左利きで60%が左大脳半球にあります。

→失語ではほとんどの場合、左大脳半球に障害部位があります。

 

【言語中枢】

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言語中枢とは - コトバンク

ブローカ野(44(+45)野):言語の運動面に関わり、前頭葉の下前頭回後方に位置します。

ウェルニッケ野(22野):言語の聴覚的理解に関わり、側頭葉の上側頭回後方に位置します。

角回(39野):言語の視覚的理解などに関わり、頭頂葉に位置します。

弓状束:ブローカ野とウェルニッケ野を連絡する線維束で、伝導性失語に関与します。

→上記の部位はいずれも中大脳動脈(MCA)の灌流領域です。

 

【失語の分類】

 

自発言語

口語理解

書字理解

復唱

音読

自発書字

書取

全失語

非流暢

×

×

×

×

×

×

ブローカ失語

非流暢

×

×

×

×

×

ウェルニッケ失語

流暢

×

×

×

×

×

×

伝導性失語

流暢

×

×

×

×

健忘性失語

流暢

正常

正常

正常

超皮質性運動性失語

非流暢

正常

×

×

超皮質性感覚性失語

流暢

×

×

反響言語

×

×

×

純粋語聾

正常

×

正常

正常

正常

正常

×

純粋失読

正常

正常

×

×

×

正常

正常

純粋失書

正常

正常

正常

正常

正常

×

×

 

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今日の臨床サポート

 

①全失語

病巣:シルビウス裂周辺の前頭葉頭頂葉、側頭葉の言語野全域。

※多くの場合、MCA全領域にわたる異常所見を認めます。

併存症状:高度の片麻痺、感覚障害、同名半盲などを伴いやすいです。

・言語の表出面と理解面の全てが著明に障害されます。

回復期ブローカ失語に移行することがあります。

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脳血管障害の神経症候 飯塚病院神経内科 山田 猛

 

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105A60 | medu4でゼロから丁寧に医学を学ぶ

 

ブローカ失語

病巣:下前頭回(中心前回の前方)、中心前回。

※多くの場合、ブローカ野から下前頭葉-頭頂葉にわたる異常所見を認めます。

併存症状:通常は顔面と上肢の片麻痺などを伴いやすいです。

理解力は比較的良いものの、自発言語、復唱、音読など表出面の強い障害を認めます。

・また韻律(抑揚やリズム)の障害失文法(助詞の脱落など)なども見られます。

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脳血管障害の神経症候 飯塚病院神経内科 山田 猛

 

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左(CT):いろいろな脳梗塞

右(DWI):107I74 | medu4でゼロから丁寧に医学を学ぶ

 

ウェルニッケ失語

病巣:上側頭回、角回。

併存症状同名半盲を伴いやすいです。片麻痺は伴いにくいとされます。

頭頂葉に及ぶと初期に観念運動失行を伴うことがあります。

言語の聴覚的理解の障害を認めます。

視覚的理解(読むこと)の障害も種々の程度で伴います。

・病識を欠き、話が一方的となることも多く意思疎通が困難です。

復唱困難語健忘(物の名称が出てこない)も伴います。

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脳血管障害の神経症候 飯塚病院神経内科 山田 猛

 

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左:いろいろな脳梗塞

右:106D38 | medu4でゼロから丁寧に医学を学ぶ

 

④伝導性失語

病巣:弓状束、縁上回やウェルニッケ野の深部(比較的小さな病巣が多い)。

・他の言語症状に比べて、復唱が障害されていることが特徴です。

・言語理解は可能で、自発言語も流暢性のことが多いです。

※非流暢性のこともあります。

発語や仮名の書字の際に字性錯誤(例:とけい→とけん)がみられることが特徴です。

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⑤健忘性失語

病巣:縁上回を中心とした下頭頂葉

併存症状:ゲルストマン症候群(失算/失書/手指失認/左右失認)や構成失行など。

著しい語健忘(物の名称が出てこない)を特徴とします。

※語健忘は全ての失語で多少は見られますが、その程度が大きいということです。

理解力や復唱はよく保たれますが、話の内容は語健忘のため空虚となります。

その他に下記のような症状も認め得ます。

錯語:語性錯語や字性錯語などがあります。

 -語性錯語:とけい→めがねのように他の単語に間違えることです。

 -字性錯語:とけい→とけんのように発音を間違えることです。

保続:同じ言葉を何度も繰り返すことです。質問を変えても同じ答えになります。

迂言:すいか→甘くて丸い果物のように、語健忘を補うために別の言い方をします。

以下の画像は"縁上回"の同定や病変に関するもので、必ずしも健忘性失語と関係ないです。

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CTから読みとる高次脳機能障害:108医B44 - 医療関係資格試験マニア

 

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左:https://www.youtube.com/watch?v=PIA1SCiwOmA

右:111A22 | medu4でゼロから丁寧に医学を学ぶ

 

⑥超皮質性運動性失語

病巣:ブローカ野の前方、前大脳動脈灌流域。

運動性失語ですが、復唱が保たれることを特徴とします。

ブローカ失語の回復期にみられることもあります。

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脳血管障害の神経症候 飯塚病院神経内科 山田 猛

 

⑦超皮質性感覚性失語

病巣:側頭-頭頂-後頭葉接合部領域。

※病巣との対応は、完全には確定していない面もあります。

復唱は保たれますが、語義理解が乏しいです。

→そのため相手の発言をそのまま繰り返す"反響言語"が特徴的です。

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109B59 | medu4でゼロから丁寧に医学を学ぶ

 

●コラム:その他の失語の責任病巣

・頻度は高くないですが、その他の種類の失語の責任病巣を示します。

純粋語聾:下前頭回、中心溝付近。

純粋失読後頭葉内側、脳梁膨大部、後頭葉後下部など。

純粋失書:中側頭回後部、中前頭回後部、角回、縁上回など。

 

【失語の予後】

病巣部位病巣の大きさが重要ですが、以下の因子も知られています。

予後良好因子:若年、左利き。

言語聴覚士を主体としたリハビリで緩徐ながら改善も見込めます

→特にチーム医療の実践が重要な症候の1つと思います。