内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

若年性脳梗塞の診療と脳動脈解離

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キューピーです。

 

脳梗塞というと動脈硬化や心房細動のある高齢者の疾患というイメージがあります。

 

しかし、意外と若年での発症例も多いです。

 

背景に特殊な病態も考慮されるため、通常通りの診療だけでは足りません。

 

ということで、若年者の脳梗塞の診療を考えたいと思います。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

 

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目次

 

 

【参考文献】

今日の臨床サポート(脳動脈解離)

 

【基本事項】

・若年性脳梗塞の"若年"は一般的には"50歳以下"と定義されます。

動脈硬化、心房細動など高齢者の脳梗塞で頻度の高いもの以外の原因も考慮します。

・原因で頻度が高いのは動脈解離もやもや病抗リン脂質抗体症候群などです。

・その他にも以下のような多くの原因を考慮しながら診療を行います。

 

非炎症性血管病変

-動脈解離 -もやもや病

-線維筋形成不全 -Marfan症候群

-外傷 -放射線治療

-CADASIL -CARASIL

-Fabry病 -ホモシスチン尿/血症

 

炎症性血管病変

-種々の血管炎 -ベーチェット病

-サルコイドーシス

-感染(結核/梅毒/HIV/VZVなど)

 

奇異性脳塞栓症

-卵円孔開存 -心房中隔欠損症

-肺静脈血栓症 -肺動静脈奇形

 

心原性脳塞栓症

-心房細動 -感染性心内膜炎

-左房粘液腫 -僧帽弁逸脱症

-拡張型心筋症 -人工弁置換術

 

赤血球/血小板/血液粘度異常

-多血症 -鎌状赤血球症 -サラセミ

-血小板増多症 -血小板機能亢進

-血栓性血小板減少性紫斑病

-骨髄腫 -マクログロブリン血症

-クリオグロブリン血症

 

凝固/線溶系異常

-抗リン脂質抗体症候群 -DIC

-プロテインC/S欠乏症

-アンチトロンビンⅢ欠乏症

 

悪性腫瘍

-トルソー症候群

-非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE)

-血管内悪性リンパ腫(IML(IVL))

 

血管攣縮

-片頭痛 -RCVS -くも膜下出血

-薬剤(エルゴタミン/トリプタン製剤など)

-子癇 -ポルフィリア

 

その他

-経口避妊薬(ピル) -妊娠

-脳静脈洞血栓症

 

【問診】

頭痛(特に後頚部痛):脳動脈解離を疑う重要な症状です。

動脈硬化リスク:高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などを確認します。

妊娠

既往歴:()内は疑うべき疾患です。

-片頭痛(CADASIL/Fabry病など) -悪性腫瘍

-膠原病 -放射線治療(頚動脈狭窄/閉塞)

-腹部手術歴(ポルフィリア)

-流産(抗リン脂質抗体症候群)

-四肢しびれや疼痛(Fabry病)

家族歴:以下があればCADASILやFabry病を疑います。

-脳卒中 -片頭痛

-精神疾患 -若年性認知症

内服薬経口避妊薬片頭痛薬、コカインなど。

 

【検査】

①採血

生化学

・ルーチン項目(肝腎機能、電解質など)

HbA1c

中性脂肪/LDLコレステロール/HDLコレステロール

・総ホモシステイン

・TSH/freeT3/freeT4

 

免疫

・抗核抗体

・抗SS-A/B抗体

・抗Sm抗体

MPO-ANCA/PR3-ANCA

・抗カルジオリピン抗体/抗β2GP1抗体/ループスアンチコアグラント

 

凝固

・PT/APTT/Dダイマ

・AT-Ⅲ活性

・フィブリンモノマー複合体

プロテインC/S

 

感染

・抗HIV抗体

・RPR/TPHA

 

尿沈渣

・マルベリー小体

・マルベリー細胞

 

②頭部MRI

・臨床的に少しでも脳動脈解離を疑うならば、必ずBPAS像を追加します。

→BPAS像は椎骨動脈解離の診断の際に有用です。

 

【脳動脈解離】

①基本事項

・脳動脈の解離により頭痛出血(SAH)虚血(脳梗塞/TIA)をきたすものです。

脳卒中の1%ですが、50歳以下に限れば4-5%を占めます。

→若年性脳卒中の原因で多く、若年者の脳梗塞やSAHでは必ず疑います

・また、脳梗塞(TIA)に頭痛を伴う場合にも必ず疑います

※”若年者の頚部-頭部の急性発症の頭痛”のみでも鑑別に挙げます。

 

②分類

成因による分類

外傷性:頚部回旋(美容院/整体/ゴルフや水泳など)によります。

医原性カテーテル操作、経口避妊薬内服など。

特発性

 

発症様式による分類

虚血性発症:日本では70%を占めます。一般に予後良好です。

出血性発症:一般に予後不良です。

無症候性

 

罹患動脈による分類

内頚動脈系椎骨動脈系に分類されます。

・更に頭蓋内頭蓋外に分類します。

・日本では頭蓋内椎骨動脈解離が最多で約60%を占めます。

内頚動脈系では前大脳動脈解離が比較的多い傾向があります。

頭蓋外は虚血性発症ですが、頭蓋内では虚血性/出血性のいずれの発症もあり得ます。

 

③症状

頭痛:重要な症状で以下の特徴があります。

-“突然”かつ”激しい”頭痛である傾向があります。

-裂けるような痛みで、解離の進展に伴い頚部から頭部へ移動します。

-SAH発症の場合、激しい頭痛の前に頚部-頭部の疼痛を認めることがあります。

※SAHによる頭痛の前に解離による疼痛を認めるということです。

Horner症候群:特に内頚動脈解離で認める傾向にあります。

-交感神経遠心路の障害により生じます。

-縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹を3徴とします。

-その他に顔面の発汗低下や紅潮も認めます。

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Atlas of Ophthalmology

虚血症状:通常の脳梗塞に準じます。椎骨動脈系ではめまいをきたし得ます。

出血症状:通常のSAHに準じ、頭痛や意識障害などを認めます。

 

●コラム:Wallenberg症候群

椎骨動脈やその枝である後下小脳動脈(PICA)閉塞により生じます。

頭蓋内椎骨動脈解離に伴い出現することが多いとされます。

延髄外側の障害であり、この部位に準じた症状をきたします。

-前庭神経核:めまい、眼振など。

-舌咽/迷走神経運動核(疑核):球麻痺症状(構音/嚥下障害、嗄声など)。

-舌咽/迷走神経感覚核(孤束核):障害側の味覚障害

-下小脳脚:障害側の上下肢失調。

-三叉神経脊髄路核:障害側の顔面温痛覚障害。

-交感神経下行路:障害側のHorner症候群。

-外側脊髄視床:健側の頚部以下の温痛覚障害。

 

④診断(画像所見)

・侵襲の少ない検査としてMRI/A(造影含む)CTアンギオ(CTA)が有用です。

CTAは特に椎骨動脈解離についてMRI/Aより感度が高いとされます。

・CTAでは動脈狭窄や拡張、動脈瘤の合併などを確認します。

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【脳卒中】脳動脈解離|脳の病気 | 福岡脳神経外科病院|医療法人 光川会

 

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椎骨動脈解離とは?症状・原因は?CT、MRI画像診断まとめ!

 

動脈解離のMRA/MRI所見

-シーケンスはMRA脂肪抑制T1WIT2WI造影MRA(特に元画像)が重要です。

-短期間での所見の変化は本症を示唆する重要な所見です。

-血管の拡張や狭窄が唯一の画像所見であることも少なくありません。

-動脈拡張:本症に特異的な所見です。

-動脈狭窄:非特異的で動脈硬化やRCVSなどとの鑑別を要します。

→元からの低形成との鑑別にはBPAS像が有用です(下画像参照)。

-pearl and string sign:拡張と前後の狭窄で、特異的です。頻度は高くありません。

-内膜フラップ(intimal flap):造影MRA元画像(次点でT2WI)で確認し得ます。

-二重腔(double lumen):造影MRA元画像(次点でT2WI)で確認し得ます。

→偽腔関連の所見は造影MRA元画像のみで描出可能な場合も多いです。

-壁内血腫:三日月あるいは半月状で脂肪抑制T1WIでの高信号が最も重要です。

 

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椎骨動脈解離とは?症状・原因は?CT、MRI画像診断まとめ!

 

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椎骨動脈の破格・正常変異とは?低形成とは?

 

⑤治療

安静・血圧コントロール

虚血性/出血性発症とも安静および血圧コントロールを行います。

※虚血性発症でも、動脈瘤形成予防の目的があるためです。

目標例収縮期血圧≧160mmHgの時、前値の80%を目標に降圧。

エビデンスなどは乏しく、具体的な目標は医師や施設によりばらつきのある印象です。

・SAH発症でも降圧目標について、確定的なエビデンスはなさそうです。

 

血栓療法

虚血発症例ではエビデンスは弱いですが、抗血栓療法を検討します。

動脈瘤形成を伴う場合は出血リスクが高いため、原則として禁忌と考えます。

・また、頭蓋外動脈解離では出血性発症はないため、適応例の多いものと考えます。

・塞栓性か血行力学性か不明な場合、抗凝固/抗血小板療法の有意差は証明されていません。

・なおrt-PA静注療法は頭蓋外では考慮し得ますが、確立されてはいません。

投与例1:プレタール®OD錠 100mg 2錠2×。

投与例2:プラビックス®錠 75mg 1錠1×。

投与例3:バイアスピリン®錠 100mg 1錠1×。

投与例4:ヘパリン10000U/10mL+生食 38mL 2mL/hr(=10000U/日)。

投与例5:ワーファリン®錠 1mg 3錠/日。

※抗血小板薬では出血合併症の頻度の高いアスピリンは、避けた方が良いかもしれません。

 

外科的治療

適応:出血性(SAH)発症例、内科的治療に抵抗性の虚血性発症例、動脈瘤併存例など。

・手術療法や血管内治療が選択肢となり、症例ごとに検討していきます。

※特に出血性発症では、速やかに脳外科医にコンサルトします。

 

⑥フォローアップ

急性期に抗血栓療法を開始している場合、3か月後にMRI/Aで評価します。

→画像所見が正常化していれば、治療を終了します。

→画像所見が残存していれば、6か月後に再度MRI/Aで評価します。

・なお、急性期にも動脈瘤形成の確認のため画像検査を繰り返します