内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

腰椎穿刺のポイント

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キューピーです。

 

腰椎穿刺は研修医でも行う手技ですが、禁忌や合併症など注意点も多い手技になります。

 

特に禁忌例に関しては意外と見落としも多く、正確な知識を持つことが重要です。

 

また、合併症についても適切なマネジメントを行うことが重要です。

 

今回は腰椎穿刺について、より正確な内容をまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

腰椎穿刺 lumbar puncture - 医学事始 いがくことはじめ

 

【禁忌】

頭蓋内圧亢進:脳ヘルニアを起こす可能性があります。

※うっ血乳頭でもCTやMRIでmass lesionや脳浮腫がなければ施行することがあります。

血小板≦5万/μL:ただし緊急で必要性が高い場合は施行し得ます。

※≦2万/μLの場合でどうしても施行が必要ならば、施行直前に血小板輸血を行います。

PT-INR≧1.5:抗血栓薬については後述のコラムでまとめます。

穿刺部の感染:逆行性に髄膜炎脳炎を引き起こす可能性があります。

脳膿瘍:同じ中枢神経感染症の仲間ですが、脳ヘルニアのリスクとなります。

 

●コラム:抗血栓薬使用中の腰椎穿刺

・実は出血傾向によるリスクについては、まだ不明確な部分が多いようです。

アスピリン(バイアスピリン®)は休薬不要とされる傾向があります。

・原則としてその他の抗血栓薬は休薬期間を設ける必要があります。

・以下に脊髄くも膜下麻酔時の推奨休薬期間の一例を示します。

-NSAIDs(バイアスピリン®など):休薬の必要なし

-クロピドグレル(プラビックス®):7日間

-プラスグレル(エフィエント®):7-10日間

-シロスタゾール(プレタール®):42時間

-チクロピジン(パナルジン®):10日間

-チカグレロル(ブリリンタ®):5日間

-ワーファリン:PT-INR≦1.4になるまで

-リバーロキサバン(イグザレルト®, 10mg/日):22-26時間

-アピキサバン(エリキュース®, 5mg/日):26-30時間

-ダビガトラン(プラザキサ®):添付文書によると禁忌の可能性あり

(脊椎・硬膜外カテーテル留置中患者に禁忌と記載されています。)

-未分画ヘパリン:(静注)4-6時間、(皮下注)8-12時間

-アルガトロバン:4時間

など

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Regional anaesthesia and antithrombotic agents : European Journal of Anaesthesiology | EJA

 

【適応】

髄膜炎/脳炎の疑い

多発性硬化症などの脱髄疾患の疑い

・ギランバレー症候群/フィッシャー症候群の疑い

・脊髄疾患の疑い

・その他に診断のつかない神経疾患の鑑別目的

・薬物の髄腔内注入目的

 

【手順】

⓪腰椎穿刺の外観

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JAMA. 2006;296(16):2050

 

①穿刺体位

・術者が右利きであれば、一般的に被検者は左側臥位です。

・両膝を両腕で腹部に抱え込ませ、臍を覗き込むように頚部を前屈させます。

→この体位をとることで腰椎棘突起の間を十分に開かせることができます。

・なお背面全体がベッドに垂直に、脊柱は水平になるようにします。

→この垂直かつ水平が成功を左右する上で最も重要なポイントになります。

 

②穿刺部位決定

・左右の腸骨稜の上端を結ぶ線である"Jacoby線"上にL4棘突起を同定します。

L4/5棘突起を触って同定し、マーキングします。

棘突起間は触るとやわらかく落ち込む部分です。

一般的にL4/5で行い、うまくいかない場合はL3/4で行います。

・上記で難しい場合はL5/S1が最後の選択肢となります。

※原則としてこれ以外の部位では行わないようにします。

 

③消毒

・穿刺予定部位を中心にできる限り広い範囲を消毒します。

→基本的にはL4/5以外にもL3/4やL5/S1も含むように消毒します。

・消毒後に滅菌手袋を装着し、穴あきドレープをかけます。

 

④局所麻酔

・刺入部の皮膚を局所麻酔し、そのまま穿刺方向に針を進めます。

・やや頭側に向けると棘突起間をうまく通過することが多いです。

・ここで骨に当たったりする場合はうまく通過できる経路を探します。

 

⑤穿刺

19-22G(21か22Gが多い)のスパイナル針を用います。

・針穴が上を向くように持ち、局所麻酔で確かめた経路で穿刺を行います。

・この時、背面に対して垂直に針が刺入していることが重要です。

※上下方向(天地方向)にずれていないか注意します。

・皮下→棘上靱帯→棘間靱帯→黄色靱帯→硬膜外脂肪→硬膜→くも膜→くも膜下腔に進みます。

・硬膜を穿通するときに膜が破れるような感覚と同時に、抵抗感が消失します。

・くも膜下腔に達したと思ったら内筒を抜き、髄液流出を確かめます。

・流出がなければ針を90°回転させたり、内筒を戻して数mm進めたりします。

・骨に当たる場合は針を皮下まで戻し、角度を変えて針を進めなおします。

頭側に15°程度傾けると成功しやすいとされます。

・被検者が足にしびれを訴える場合は、既にくも膜下腔に達しており馬尾を刺激しています。

→しびれを訴えられたら、それ以上針を進めてはいけません。

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⑥初圧測定と髄液採取

・髄液の流出をみたら、三方活栓と検圧管を接続して初圧を測定します。

・この時、リラックスさせた状態で測定を行います。

・また、腹式呼吸で液柱が上下すればくも膜下腔を穿刺できています。

・続いてスピッツに必要分の髄液を採取します。

穿刺時に血管損傷があった場合は、採取液の最初の部分に赤血球が混じります。

複数本の試験管に分割して採取するようにします。

 

⑦手技終了

・採取を終えたら針を抜去し、穿刺部を消毒して絆創膏を貼ります。

・手技後は、髄液の漏出を防ぐため頭を低くして1-2時間は床上安静とします。

 

【合併症】

①穿刺後頭痛(PDPH:Post-Dural Puncture Headache)

・硬膜穿刺による脳脊髄液漏出に起因し、腰椎穿刺後5日以内に出現する頭痛です。

リスク因子:女性、若年、PDPH既往、内筒を戻さないで抜去されたことなど。

性状:非拍動性の比較的強い頭痛で、両側性に後頭部や前頭部に好発します。

随伴症状:項部硬直、耳鳴り、聴力低下、光過敏、悪心など。

体位:坐位や立位で15分以内に増悪し、臥位で15分以内に軽快する傾向があります。

ICHD-3の診断基準では上記の特徴よりも腰椎穿刺との時間的関係を重視しています。 

経過:ほとんどの症例で1週間以内に自然軽快します。

治療:安静臥床、飲水励行(補液)、鎮痛薬。

→反応が乏しい場合に硬膜外自家血注入療法を施行します。施行48時間以内に頭痛が消失します。

 

②その他

血腫(硬膜下/外血腫など):前述のように出血傾向や抗血栓薬内服に注意します。

感染(硬膜外膿瘍/髄膜炎など):清潔操作および穿刺部感染の有無に注意します。

脳ヘルニア:基本的には施行前に頭部CTを行うことが推奨されます。

※細菌性髄膜炎疑いでは頭部CTに先行し得ますが、判断の難しいところもあります。

神経損傷:決められた椎間で行い、必要以上に針を進めないように注意します。

 

【検査所見】

⓪正常値と髄膜炎の所見

正常の腰椎部髄液(参考文献より)

外観:水様無色透明

初圧:75-170mmH2O(側臥位)

pH:7.34-7.43

細胞数:5/μL以下(全て単核球)

総蛋白:15-45mg/dL

糖:同時採血血糖値の1/2-2/3

 

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今日の臨床サポート

 

①髄液圧

初圧(側臥位)は75-170mmH2Oが正常範囲で、終圧は数cm低下します。

髄膜炎脳炎では髄液圧は上昇します。

・また、うっ血性心不全で上昇し、脱水で低下します。

・その他にも多数の鑑別がありますが、成書などを参照ください。

 

②外観

正常:無色透明か非常に淡い黄色で、浮遊物は認めません。

赤色:新鮮な出血。

キサントクロミ:陳旧性出血、黄疸、髄液蛋白増加(≧150mg/dL)など。

日光微塵:試験管を斜めに持ち軽く振りながら日光を投射させ、黒い背景で観察します。

→液中に浮遊物が観察される状態を日光微塵と呼び細胞数増加(≧200/μL)を示唆します。

混濁:細胞数増加(≧500/μL)。

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一般検査 | 南奈良総合医療センター | 南和広域医療企業団

 

③細胞

正常:5/μL以下で全て単核球です。

・これ以上の細胞数増加を髄液細胞増多(pleocytosis)と呼び、中枢神経病変を示唆します。

髄膜炎における細胞数の所見は⓪を参照ください。

HAMでは花冠状核のリンパ球寄生虫による髄膜炎では好酸球増加を認めます。

 

④蛋白

正常:腰椎部で15-45mg/dLで、脳室に向かって上行するに連れて低下します。

蛋白細胞解離:蛋白が高く細胞数が正常である所見で、以下の疾患を示唆します。

→ギランバレー症候群、CIDP、脊髄腫瘍、糖尿病など。

蛋白増加をきたす疾患

-各種感染/炎症性疾患 -脳卒中(脳梗塞含む)

-脊髄くも膜下腔の閉塞 -脱髄疾患

-末梢神経疾患(ギランバレー症候群など多数)

-代謝性疾患((副)甲状腺機能低下、尿毒症、肝性脳症など)

-外傷 -高血圧性脳症

-神経ベーチェット病 -サルコイドーシス

など

蛋白低下をきたす疾患

-良性頭蓋内圧亢進症 -甲状腺機能亢進症

-急性水中毒 -小児(2歳以下)

-髄液大量摂取

 

⑤IgG indexとオリゴクローナルバンド

※本項の検査項目は、いずれも特に多発性硬化症で重要です。

IgG index:髄液IgG×血清Alb/血清IgG×髄液Alb

→正常上限は0.34-0.85で、これ以上は多発性硬化症などを示唆します。

※髄液内産生によるIgG増加を鑑別するための指標になります。

オリゴクローナルバンド:髄液蛋白電気泳動でγ-グロブリン領域に濃染した数本のバンドが出現するものです。

→ある抗原に対する強い液性免疫応答の存在を示唆し、以下の疾患が示唆されます。

-脱髄性疾患:多発性硬化症視神経脊髄炎、副腎白質ジストロフィー

-感染症髄膜炎、神経梅毒、SSPE、PML、HAM、HIV-1感染

-末梢神経疾患:ギランバレー症候群、多発神経炎、慢性脱髄性ニューロパチー

-その他:脳血管障害、SLE、脳腫瘍など

 

⑥ミエリン塩基性蛋白(MBP)

髄鞘破壊亢進を反映し、神経ベーチェット病多発性硬化症の急性増悪を示唆します。

・その他に以下の疾患で高値を示します。

-多発性硬化症 -視神経脊髄炎

-SSPE -神経梅毒

-脳炎 -神経ベーチェット病

-ギランバレー症候群 -CIDP

-HAM -頭部外傷

-脳梗塞急性期 -AIDS

 

⑦糖

正常:同時採血血糖値の1/2-2/3です。

・蛋白とは逆に脳室の方が腰椎部より濃度が高いとされます。

髄膜炎以外に低血糖サルコイドーシスSLEなどで低値を示し得ます。

脳炎では単純ヘルペスやムンプスの25%で低値を示し得ます。

 

⑧病原微生物検索

・細菌検出のため、強力に遠心を行い沈査から塗抹標本作成および培養を行います。

・なお髄膜炎は低温で死滅しやすく、培養検体は37℃で保つ必要があります。

真菌性を疑う場合は墨汁染色とSabouraud培地での培養を行います。

→クリプトコッカス髄膜炎は約半数で墨汁染色陽性を示します。

結核を疑う場合は髄液PCRや培養で陽性を確認すれば、確定診断となります。

→ただし陽性率はあまり高くなく、検査陰性でも否定はできません。

単純ヘルペス脳炎/髄膜炎を疑う場合はHSV DNAのPCRが有用です。

その他:クリプトコッカス抗原、ADA(結核性)、RPRやFTA-ABS(神経梅毒)など。