内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

脳梗塞の急性期治療

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●この記事は2021/7/18に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

脳梗塞への治療介入は早ければ早いほど良いと言われています。

 

"Time is brain"という言葉が存在するほどです。

 

今回は脳梗塞と診断がついた際の急性期治療を考えてみます。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

   

脳卒中治療ガイドライン2021→以下、2021GLと略します。

 

脳梗塞治療の一般化は難しい】

脳梗塞治療、特に抗血栓薬は使用法に施設間で非常に違いがある印象です。

・最初に想定した病型が誤っていて、途中で治療内容変更を検討することもあります。

→例えば、A to Aと思っていたら入院中にpAFが明らかになった場合など。

・また、症例ごとに背景も様々で、同じ診断でも異なる治療方針となることも経験します。

・例えば非軽症のATBIに対してDAPTとするか、SAPTとするか。

・SAPTとするならば、何を用いるか。

・バイアスピリン®単剤とするならば、200mg/日は初日だけとするか。

・上記に加えてアルガトロバンを用いるか。

・用いるならばDAPTに加えるか、SAPTに加える形にするか。

・BAD好発部位に生じたラクナ梗塞(様所見)にアルガトロバンを用いるか。

・NVAFでDOAC内服例のATBIに抗血小板薬を加えるか、加えるならば何を用いるか。

・また、今回は触れませんがIEやトルソー症候群、ESUSなども鑑別/検討します。

・薬剤では他にもエダラボンの使用でも施設差がある印象です。

・このように脳梗塞治療を一般化するのは極めて難しいものと思われます。

・この記事ではある程度堅いと(個人的に)感じるところを述べてみます。

・また、原則として2021GLの内容を軸にしていこうと思います。

・ただし最終的には症例ごとに検討する姿勢を忘れてはならないと思っています。

 

【rt-PA静注療法】

①基本事項

発症から4.5時間以内慎重に適応判断された患者に投与します。

2021GLでも推奨度Aと推奨度の高い治療です。

・4.5時間以内でも治療開始が早ければ早いほど予後が良いです。

来院から遅くとも1時間以内での治療開始が推奨されています。

・なおrt-PA静注療法後24時間以降は病型に合わせた抗血栓投与を検討します。

 

②適応

発症(または最終未発症確認時刻)から4.5時間以内である。

禁忌項目に該当しない

→上記2つを満たす場合が適応症例となります。

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※一例として、下線項目に該当する患者に投与を行う場合は特に慎重に検討します。

※下線項目や慎重投与項目該当時の対応は施設により差があります。

病院ごとの対応マニュアルにより慎重投与項目の扱いは比較的異なる印象です。

 

●コラム:DWI/FLAIRミスマッチはrt-PAの適応か

・発症時刻不明症例で、DWIの異常をFLAIRで認めない場合を指します。

→この場合、発症から4.5時間以内の可能性が高いとされています。

2021GLではrt-PAを考慮しても良い(推奨度C)とされています。

・従来よりこの根拠として"WAKE-UP trial"という試験が有名だと思います。

(NEJM 2018; 379: 611-622)

・このDWI/FLAIRミスマッチを考える際には以下の注意点があると思います。

"発見"から4.5時間以内か

-発症時刻不明でも発見時刻は分かるはずで、これを確認します。

→発見から4.5時間以上ならば、発症からも4.5時間以上経過している可能性が高いです。

-WAKE-UP trialなどでも、発見から4.5時間以内の症例を治療対象としています。

 

安全性の検証が不十分(という考えもある)

-WAKE-UP trialは当初の予定より小規模かつ早期に試験終了に至っています。

→十分な安全性が確認されたとは言い難いという意見もあります。

・上記とMRIの敷居の高い施設ということもあり、以前は投与に消極的な気持ちでした。

・ただ2021GLにも言及のある日本の"THAWS trial"も無視できないと思いました。

(Stroke 2020; 51: 1530-1538)

→有効性は示せなかったものの症候性頭蓋内出血と死亡率で有意差を認めませんでした。

→更にDWI-ASPECTS 9-10(小梗塞)を除外すると転帰改善も示唆されたようです。

(Stroke 2021; 52: 12-19)

・これらから個人的にはミスマッチ症例にも積極的に投与を検討したいと考えています。

 

●コラム:軽症例はrt-PAの適応か

2021GLCQとして記載が追加された項目になります。

適応を慎重に検討した上でrt-PAを考慮しても良い(推奨度C)とされています。

・そもそも"軽症"は"慎重投与項目"に記載があるので、禁忌ではないはずです。

・一方で現場では軽症例に合併症のリスクのあるrt-PAを使用するか迷うことも多いです。

→ちなみに、僕の現在の勤務先では軽症例は適応外とする施設方針です。

・なお2021GLでは"PRISMS trial"についての言及があります。

(JAMA 2018; 320: 156-166)

NIHSS≦5点を対象とし、rt-PAvs経口アスピリン(325mg/日)で比較しています。

→結論として90日後の機能転帰に有意差を認めませんでした。

→また有意差はないもののrt-PA群で症候性頭蓋内出血が多かったそうです。

・これを踏まえると"軽症例は投与しない方が良いのでは"と考えられます。

→しかしNIHSS≦2点が60%以上であったり、アジア人がほとんど含まれていなかったりといった問題点も挙げられています。

・個人的には"NIHSS≦2点ではどちらかというと消極的5点では積極的に考慮する"という気持ちです。

※あくまで個人の意見です。もちろん、施設方針を守るという姿勢が大前提です。

 

③投与の実際

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静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版

・出血傾向を考慮し、膀胱留置カテーテルはrt-PA投与前に留置します。

・また、Aライン留置や胃管挿入は基本的に行いません。

投与法:グルトパ® 0.6mg/kg 総量の10%を1-2分で投与後、残りを1時間で投与。

※詳細は上記の表を参照ください。シリンジポンプを用いて投与します。

・同時に投与前-投与後24時間は血圧コントロールを行います。

-目標収縮期血圧≦180mmHg, 拡張期血圧≦105mmHg。

※厳密にはrt-PA投与"前"基準はそれぞれ185, 110です。

-薬剤例:ニカルジピン20mg/20mL+生理食塩水20mL。

-開始:2mL急速静注後、2mL/hrより持続静注開始。

-調節:sBP>180 or dBP>105で1mL/hrずつ増量、MAX 15mL/hr。

-血圧測定:最初の2時間は15分毎, 以降8時間は30分毎, 24時間までは1時間毎。

・rt-PA投与中は15分毎にNIHSSを評価します。

・投与開始後に頭痛/嘔吐/血圧変化/神経症状増悪などを認めた場合

脳出血を考慮し、投与を中止し頭部CTを確認します。

脳出血の場合の対応はリンク先記事を確認ください。

 

機械的血栓回収療法】

①基本事項

・ステントリトリーバーや血栓吸引カテーテルを用いて、血栓の回収を行う治療法です。

・近年研究が盛んで、高い有効性が示されるようになりました。

脳梗塞治療のゴールドスタンダードとなりつつあると思います。

 

②適応

発症6時間以内/前方循環系

以下を全て満たす症例rt-PA静注療法に追加して施行します(推奨度A)。

-内頚動脈または中大脳動脈M1部の急性閉塞

-発症前modified Rankin Scale(mRS)スコアが0-1

-頭部CTまたはMRI DWIのASPECTS≧6点

-NIHSS≧6点

-年齢≧18歳

・以下に該当する場合には施行を考慮して良い(推奨度C)とされます。

-中大脳動脈M2部の閉塞

-発症前mRSスコア≧2

-ASPECTS<6点

-NIHSS<6点

 

発症6時間以上/前方循環系

以下を全て満たす症例に施行し得ます。

-内頚動脈または中大脳動脈M1部の急性閉塞例

-発症から24時間以内

-NIHSS≧10点

-DWI-ASPECTS≧7点

※NIHSSとDWI-ASPECTSについては2021GLに明記されていません。

・時間に関しては16時間以内で推奨度A、16-24時間以内で推奨度Bとなっています。

・また、適応につき"神経徴候と画像診断に基づく治療適応判定"が前提となります。

→すなわち神経徴候と虚血コア体積にミスマッチがあることを証明しなければなりません。

→海外(米国)研究ではNIHSSRAPID systemという解析ソフトウェアが用いられます。

→日本ではソフトウェアは十分普及しておらず、DWI-ASPECTSなどで代替されます。

→この際、虚血コア体積≦25mL=DWI-ASPECTS≧7点などと換算します。

→これを踏まえて、上記のような適応を記載しました。

※僕の現在の勤務先の施設方針と一致しています。

 

後方循環系(脳底動脈閉塞)

脳底動脈の急性閉塞では適応を慎重に検討し、治療を検討して良い(推奨度C)とされます。

2021GLに言及のあった"BASILAR"は発症24時間以内の症例の前向き登録研究です。

(JAMA Neurol 2020; 77: 561-573)

→90日後のmRSスコアは内科治療に比して有意に良好で、死亡率も低かったようです。

・個人(施設)的には発症24時間以内であれば、積極的な施行を検討しています。

・なお、rt-PA静注療法の適応があれば、先立って施行しています。

 

●コラム:血栓回収にrt-PAを併用するべきか

・大前提として2021GLでは併用を推奨しています(前述の②⑴参照)。

・一方で以下のような記載もあります。

→ICA/M1/M2近位部の急性閉塞でrt-PAを投与せずに血栓回収を考慮しても良い(推奨度C)。

・根拠として言及があるのは"DIRECT-MT"という多施設共同無作為化試験です。

(NEJM 2020; 382: 1981-1993)

→90日後の機能転帰において血栓回収単独はrt-PA併用に非劣勢を示しました。

・この研究のみならば"rt-PAを併用しなくてもよいのでは"と考えたくなります。

→しかし2021GLではDIRECT-MTにおいて初回造影時の再開通率が併用群で高かったことにも言及しています。

→結局、"出血リスクや閉塞部位などから症例ごとに検討する必要がある"と結ばれています。

・なお2021GLには言及がありませんでしたが日本の"SKIP study"も有名です。

(JAMA 2021; 325(3): 244-253)

→こちらは機能転帰において単独群は併用群に非劣勢を示せませんでした。

・このように現時点では報告にもばらつきがある印象があります。

→基本的には適応症例ではrt-PA静注療法の併用を検討するのが無難だと思います。

※個人の意見です。もちろん、症例ごとに検討する姿勢が重要だと思います。

 

●コラム:modified Rankin Scale

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https://www.jsts.gr.jp/guideline/350_351.pdf

 

●コラム:DWI-ASPECTSとは

・ASPECTS:Alberta Stroke Program Early CT Scoreです。

脳梗塞の早期虚血性変化の範囲の判定に用います。

・CTまたはDWIを用いますが、DWI-ASPECTSはDWIを用いたものです。

評価断面1レンズ核視床を通る軸位断。

評価断面2:断面1より2cm頭側のレンズ核が見えなくなった最初の断面。

→この2断面でMCA領域を11か所に区分し、減点法で病変範囲を表します。

・目安としてASPECTS 7点がMCA領域の約1/3に相当します。

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C:尾状核 L:レンズ核

IC:内包(膝/後脚のみ) I:島皮質

W:深部白質(放線冠)

M1-3:断面1のMCA領域

M4-6:断面2のMCA領域

※CTのASPECTSではWを除いた10点満点になります。

※以下のリンク先で演習が可能です。

CT & DWI 初期虚血変化読影トレーニング

 

【心原性脳塞栓症】

①基本事項

・原因としては非弁膜症性心房細動(NVAF)が最多で、約80%を占めます。

突然発症皮質症状(共同偏視/失語/半側空間無視など)が多いです。

DダイマBNPの上昇は診断の補助となります。

BNP>140 pg/dLが他の病型との鑑別のカットオフ値とされます。

・TOAST分類における以下の塞栓源心疾患が塞栓源の参考になります。

高リスク塞栓源

-人工弁 -AFを伴うMS -AF(孤立性除く)

-左房血栓 -SSS -AMI(4週未満)

-左室血栓 -拡張型心筋症 -IE

-左室壁運動消失 -左房粘液腫

中等度リスク塞栓源

-生体弁 -AFを伴わないMS -孤立性AF

-僧帽弁逸脱 -僧房弁輪石灰化

-心房粗動 -左房もやもやエコー

-心房中隔瘤 -卵円孔開存

-非細菌性心内膜炎 -うっ血性心不全

-左室壁運動障害 -AMI(4週-6か月)

※孤立性AF:60歳未満で臨床/心エコー所見で高血圧を含む心肺疾患のないもの。

 

②急性期血行再建療法

・発症から間もない受診が多く、適応例が多いです。

IEはrt-PA静注療法の慎重投与に該当するため、必ず鑑別します。

 

③抗凝固療法

(0)基本事項

2021GLに沿うと最も記載が難しくなるのが、急性期の抗凝固療法です。

ヘパリンDOAC(適切な時期に開始という条件付き)とも推奨度Cです。

・実際に治療開始時期や治療内容に悩むことも多い印象があります。

大梗塞では発症早期の投与を見送ることが多い点はある程度一致していると思います。

→臨床経過や頭部CTで出血転化の有無を評価しながら、投与開始時期を検討します。

 

ヘパリン

投与例:ヘパリン 10000単位/10mL+生食14mL 1mL/hrで開始。

目標例:APTTが使用前値の1.5-2.0倍となるようにします。

・特に出血性梗塞も認めやすい心原性の場合、慎重に使用する必要があります。

例えば発症24時間後にCTで出血が無いことを確かめてから開始します。

心原性で唯一適応のある点滴の抗凝固薬でもあります。

→このため、日本では実臨床で使用される頻度が比較的高いです。

・ただしエビデンス等を考慮し、個人的にはAF症例で積極的には使用していません

 

DOAC(Direct Oral AntiCoagulant)

NVAFが原因の場合の2次予防目的で用います。

急性期の開始時期はまだ研究段階で、以下は経験的な記載です。

→発症2週間以内の開始が目安で、出血リスクが高くなければ発症同日の開始も選択肢です。

・なおアピキサバンCcr<50の症例において、有意に大出血リスクが少ないです。

→特にCKD患者の場合は、個人的にはアピキサバン(エリキュース®)を好んでいます。

投与量

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 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン

HAS-BLEDスコア

-Hypertension(収縮期血圧>160mmHg):1点

-Abnormal renal & liver function(肝腎機能障害):各1点

-Stroke(脳卒中):1点

-Bleeding(出血):1点

-Labile INRs(不安定なINR):1点

-Elderly(65歳以上):1点

-Drugs or alcohol(薬剤またはアルコール依存症):各1点

※肝機能障害:慢性肝障害or検査値異常(総Bil>正常上限×2、AST/ALT/ALP>正常上限×3)

※腎機能障害:慢性透析、腎移植、血清Cr≧2.26mg/dL

※出血:出血歴、出血傾向(出血素因・貧血など)

※不安定なINR:INR高値orTTR<60%

※薬剤:NSAIDs、抗血小板薬

→3点以上で出血高リスクと考えます。

重大な出血因子

-年齢≧75歳

-低体重≦50kg

-腎機能障害

-抗血小板薬併用

-管理不能な高血圧

→いずれかを認める場合は、より出血リスクが高いと考えます。

 

ワルファリン

(ⅰ)使用場面

2021GLには急性期における使用の記載はありません。

脳梗塞に限らず一般論として、以下ではワルファリンを使用し得ます。

-弁膜症性心房細動(リウマチ性僧帽弁疾患or機械弁置換術後)

-CCr<15mL/分の高度腎機能障害時

※ただし、出血リスクが高まるため添付文書上はワルファリンも禁忌です。

-生体弁術後3か月間(DOACのエビデンスが不十分のため)

 

(ⅱ)目標PT−INR

・弁膜症性心房細動:2.0−3.0

・非弁膜症性心房細動:≧70歳は1.6-2.6、<70歳は2.0-3.0

 

(ⅲ)投与例

・ワーファリン® 1-3mg/日とします。

・高齢者(特に≧75歳)には1mg/日からの開始が推奨されます。

・投与開始初期は、逆に凝固能が亢進してしまうとされています。

→開始初期は橋渡し的なへパリンを併用を検討します。

※ただし前述のようにヘパリン自体の推奨度も高くありません。

 

④脳保護薬

投与例:エダラボン(ラジカット®)30mg/100mL 1日2回 30分かけて。1-2週間。

発症後24時間以内の投与開始が推奨されています。

禁忌:高度腎機能障害(CCr(eGFR)<15)、過敏症既往。

副作用:肝/腎機能障害、心不全、DICなど。

フリーラジカルを除去することで脳保護作用を示すとされています。

2021GLでは推奨度Bで、適応例なら使用すべきと考えます。

・ただし腎機能障害例には注意が必要で、禁忌でなくても慎重に投与を検討します。

※腎機能が増悪し得ます。特にBUN/Cr比が高い症例で致命的になり得ます。

 

⑤脳浮腫治療薬

投与例1:グリセオール®200mL 1日2-3回 2時間かけて。7-10日間。

投与例2:マンニットール®300mL 1日4回 30分かけて。

グリセオール®の方がよく用いられる印象です。

・水/Na負荷による心不全増悪に注意します。

・(少なくとも短期的な)生命予後改善効果がある可能性が高いと考えます。

頭蓋内圧亢進症状やそれに準ずる画像所見を認める症例に投与を検討します。

頭蓋内圧亢進症状

-頭痛 -嘔吐 -うっ血乳頭

-Cushing現象(収縮期血圧↑/脈拍↓)

-意識障害 -動眼神経麻痺

-外転神経麻痺(複視) など

 

⑥抗潰瘍薬

投与例1:オメプラゾール20mg+生食50mL 1日2回。

投与例2:ランソプラゾール15mg 1錠/日。

2021GLでは高齢/重症例誤嚥のリスクを検討した上での投与が推奨度Bです。

・個人的にはアスピリンを使用する場合はPPIを必ず併用します。

・その他の抗血栓薬の場合でも、やはり基本的には併用を行うことが多いです。

・一方で胃酸抑制による誤嚥性肺炎リスク増加も有名です。

誤嚥性肺炎のリスクが高い症例でも悩みますが、やはり併用を行うことが多いです。

H2受容体拮抗薬誤嚥リスクがやや低く、検討の余地はあると思います。

 

●コラム:開頭外減圧療法

保存的治療で脳ヘルニアの進行が防げない場合、救命のために行います。

適応

テント上(推奨度A)

-中大脳動脈灌流域を含む一側大脳半球梗塞で下記を全て満たす。

年齢:18-60歳

NIHSS:15点を超える

NIHSSの1aが1点以上(=完全覚醒ではない)

CTでMCA領域の梗塞が50%以上orMRI DWIで梗塞範囲が145cm³を超える

症状発現後48時間以内

※60歳以上でそれ以外全てを満たす場合は推奨度Cです。

 

テント下(小脳梗塞)

-画像検査で水頭症を認め、これによる中等度の意識障害を認める場合。

→脳室ドレナージ術を考慮します(推奨度C)。

-画像検査で脳幹部圧迫を認め、これによる重度の意識障害を認める場合。

→速やかな開頭外減圧術を考慮します(推奨度B)。

 

【アテローム血栓脳梗塞(ATBI)】

①基本事項

・ATBI:AtheroThrombotic Brain Infarctionです。

・脳主幹動脈のアテローム硬化による狭窄や閉塞が原因となります。

血栓/塞栓性/血行力学的機序の3つの機序が単独または複数で関わります。

・塞栓性機序は動脈原性塞栓(A to A)に該当します。

→特に内頚動脈病変によるMCA閉塞椎骨動脈病変によるPCA閉塞などが重要です。

急速に発症し、数時間から数日にわたり階段状に進行することが多いです。

TIAの先行が20-30%にみられるという報告があります。

 

②急性期血行再建療法

・rt-PA療法で一度改善しても、原因となるプラークは存在し続け得ます。

→この場合、早期の増悪や再発することがあるため、治療後の経過観察が重要です。

・頚部や脳動脈の2か所に高度狭窄や閉塞を認めるものをタンデム病変と呼びます。

→この場合、近位と遠位のどちらを先に治療するべきか、明確に定まっていません。

 

③抗血栓

経口抗血小板薬

投与例:プラビックス®75mg 1錠/日+バイアスピリン®100mg 1錠/日。

初回はプラビックス®300mg/日、バイアスピリン®200mg/日とします。

発症48時間以内の開始が推奨されています。

・上記のDAPTは特に軽症例では明確に推奨されています(推奨度A)。

・なお、長期間のDAPTは単剤より出血合併症を増加させることが知られています。

DAPTは長期間行いません2021GLでは1か月以内と期間が明記されています。

非軽症例では明確な推奨がなく、SAPTとする場合もあります。

※DAPTとすることもありますし、アルガトロバンを併用することもあります。

→SAPTでいくならば、2021GLに沿ってバイアスピリン®が手堅いと思います。

初回は200mg/日で、以降の急性期は100-200mg/日とします。

2021GLでは新たにプレタール®200mg/日も考慮して良い(推奨度C)と明記されました。

→低用量アスピリンとの2剤併用(DAPT)についても考慮して良いと記載があります。

→個人的には、他の抗血小板薬のアレルギー症例などの場合に検討しています。

 

コラム:シロスタゾール(プレタール®)を含むDAPTの長期投与

・上記でDAPTは1か月以内と記載しましたが、2021GLではこんな記載もあります。

・(長期投与について)頚部や頭蓋内動脈狭窄/閉塞や血管危険因子を複数有する非心原性脳梗塞には、シロスタゾールを含む抗血小板薬2剤併用は妥当である(推奨度B)。

・根拠の1つに"CSPS.com"に関する言及があります。

(Lancet Neurol 2019; 18: 539-548)

頚部や頭蓋内主幹動脈の≧50%狭窄2つ以上の血管危険因子を持つ症例を対象としています。

アスピリンorクロピドグレル単剤とこれらにシロスタゾールを併用した群を比較しています。

→結果として併用群で脳梗塞再発率が有意に低く、出血性脳卒中発症率に差はなかったそうです。

→ハイリスク症例の慢性期においてシロスタゾールを含むDAPT継続は選択肢と思います。

 

オザグレルNa

投与例:キサンボン®注80mg+生食100mL 2時間かけて 1日2回。

発症日(遅くても発症5日以内)に開始し、7-14日間継続します。

内服および経鼻胃管困難症例で投与を考慮します。

・ただし2021GLにも"日常診療で推奨しうる高品質なデータに乏しい"との記載もあります。

→なお推奨度Cです。個人的には使用を極力控えたいと思っています。

・トロンボキサンA2合成阻害により抗血小板作用を示します。

禁忌:出血(出血性脳梗塞脳出血など)、脳塞栓症、重篤意識障害を伴う脳梗塞、過敏症既往など。

 

アルガトロバン

投与例:スロンノン®HI注60mg/12mL+生食36mL 2mL/hrで2日間持続静注。

→続けて、スロンノン®HI注10mg/2mL+生食100mL 3時間かけて 1日2回 5日間。

医師により使用法や頻度が大きく異なる印象のある薬剤です。

2021GLでは推奨度Cとなっています。

・原則として発症48時間以内の非心原性/非ラクナ梗塞に用います。

→後述するラクナ梗塞では推奨がないということになります。

※しかし、実臨床では(特にBADと鑑別しきれない)ラクナ梗塞に投与されることも経験します。

※"発症48時間以内"は実臨床でも厳守されていると思います。

・大別すると以下のような使用法があると思います。

-DAPTと併用しての使用。

-SAPTと併用しての使用。

-内服困難症例での使用。

-DAPTやSAPT治療時に増悪した症例での使用。

・抗トロンビン作用による抗凝固作用を示します(抗凝固薬です)。

禁忌:出血、脳塞栓症、重篤意識障害を伴う脳梗塞、過敏症既往など。

 

④脳保護薬

投与例:エダラボン(ラジカット®)30mg/100mL 1日2回 30分かけて。1-2週間。

発症後24時間以内の投与開始が推奨されています。

禁忌:高度腎機能障害(CCr(eGFR)<15)、過敏症既往。

副作用:肝/腎機能障害、心不全、DICなど。

フリーラジカルを除去することで脳保護作用を示すとされています。

2021GLでは推奨度Bで、適応例なら使用すべきと考えます。

・ただし腎機能障害例には注意が必要で、禁忌でなくても慎重に投与を検討します。

※腎機能が増悪し得ます。特にBUN/Cr比が高い症例で致命的になり得ます。

 

⑤スタチン

投与例1:アトルバスタチン(リピトール®)10mg 1錠/日。

投与例2:ロスバスタチン(クレストール®)5mg 1錠/日。

投与例3:ピタバスタチン(リバロ®)2mg 1錠/日。

※クレストール®は腎機能障害患者において減量が必要です。

・スタチンの作用として血小板凝集能改善や血管内皮機能改善効果なども想定されています。

→実臨床では急性期からの投与を検討することも多い印象があります。

・一方で2021GLでは急性期からのスタチン投与は推奨度C(考慮しても良い)です。

→理由として有効性を検証した"大規模な"臨床試験が乏しいことが挙げられています。

・またどの種類どれだけの用量で投与するべきか、ということも定まっていません

・AF合併例での有効性を示すデータもあり、心原性を対象とするかも研究の余地があるようです。

・なお発症前にスタチンを内服していた症例では、急性期に中止しないようにします。

2021GLにも記載があり、中止した場合に予後が悪化し得るとされています。

・慢性期の再発予防ではLDLコレステロール<100mg/dLが目標になります(推奨度B)。

※冠動脈疾患合併患者では<70mg/dLも検討します(推奨度C)。

 

⑥抗潰瘍薬

投与例1:オメプラゾール20mg+生食50mL 1日2回。

投与例2:ランソプラゾール15mg 1錠/日。

2021GLでは高齢/重症例誤嚥のリスクを検討した上での投与が推奨度Bです。

・個人的にはアスピリンを使用する場合はPPIを必ず併用します。

・その他の抗血栓薬の場合でも、やはり基本的には併用を行うことが多いです。

・一方で胃酸抑制による誤嚥性肺炎リスク増加も有名です。

誤嚥性肺炎のリスクが高い症例でも悩みますが、やはり併用を行うことが多いです。

H2受容体拮抗薬誤嚥リスクがやや低く、検討の余地はあると思います。

 

ラクナ梗塞】

①基本事項

高血圧による細動脈硬化を基盤とした単一の細動脈閉塞による、穿通枝領域の小梗塞です。

・一般に直径1.5cm以下の小病変として同定/定義されます。

・病態は高血圧性脳出血とオーバーラップしており、合併も多いです。

・多くは数時間-数日で梗塞が完成しますが、進行性に症状が増悪する症例も認めます。

→小梗塞とはいえ血栓療法が必要になります。

ラクナ症候群:病巣部位により特徴的な症状を呈します。

Pure motor stroke

-症状:半身麻痺、構音障害、患側への舌偏位、錐体路徴候など。

-病巣:内包や放線冠(レンズ核線状体動脈)、橋底部(橋傍正中枝)など。

 

Pure sensory stroke

-症状:半身のしびれ/他覚的感覚障害。

※運動麻痺や失調症を伴わないことが特徴です。

-病巣視床後腹側核(視床膝状体動脈)など。

 

Ataxic hemiparesis

-症状:一側上下肢の軽度の麻痺、同側の運動失調。

※麻痺は下肢遠位部に強く、運動失調の程度は麻痺より強い傾向があります。

-病巣:内包や放線冠(レンズ核線状体動脈)、橋底部(橋傍正中枝)など。

 

Dysarthria clumsy hand syndrome

-症状:一側の手の脱力と巧緻運動障害、構音嚥下障害。

※構音嚥下障害は強い傾向にあります。上半身の症状が中心のtypeです。

-病巣:内包や放線冠(レンズ核線状体動脈)、橋底部(橋傍正中枝)など。

 

Sensorimotor stroke

-症状:半身麻痺と半身の感覚障害。

※⑴+⑵のイメージです。

-病巣視床+内包、橋外側(まれ)、被殻(まれ)など。

視床と内包の血管支配は異なりますが、MCAやPCAの灌流域境界の多様性が影響していると考えられています。

 

手掌口症候群(COS:Cheiro Oral Syndrome)

-症状:同側の口周囲と手指のしびれ。

-病巣視床後腹側核(視床膝状体動脈)、中心後回、橋など。

-症状にはバリエーションがあり、両側性片側口周囲と対側の手指に生じるものもあります。

→特に後者は"交差性手掌口症候群"と呼ばれ、延髄病変が示唆されます。

※Wallenberg症候群の軽症型の可能性が指摘されています。

 

②急性期血行再建療法

・適応であればrt-PA静注療法は行います。

一般的に血栓回収療法の適応にはなりません

 

③抗血小板療法

経口抗血小板薬

投与例:バイアスピリン®100mg 1-2錠/日。

初回は200mg/日とします。

発症48時間以内の開始が推奨されています。

・非心原性ですのでDAPTも選択肢となります(特にBADと紛らわしい症例)。

→やはり期間は1か月以内が原則だと思います。

・また高血圧性脳出血と病態が重なることから、プレタール®も好まれることがあります。

投与例:プレタール®100mg 2錠2×。

 

オザグレルNa

投与例:キサンボン®注80mg+生食100mL 2時間かけて 1日2回。

発症日(遅くても発症5日以内)に開始し、7-14日間継続します。

内服および経鼻胃管困難症例で投与を考慮します。

・ただし2021GLにも"日常診療で推奨しうる高品質なデータに乏しい"との記載もあります。

→なお推奨度Cです。個人的には使用を極力控えたいと思っています。

・トロンボキサンA2合成阻害により抗血小板作用を示します。

禁忌:出血(出血性脳梗塞脳出血など)、脳塞栓症、重篤意識障害を伴う脳梗塞、過敏症既往など。

 

④脳保護薬

投与例:エダラボン(ラジカット®)30mg/100mL 1日2回 30分かけて。1-2週間。

発症後24時間以内の投与開始が推奨されています。

禁忌:高度腎機能障害(CCr(eGFR)<15)、過敏症既往。

副作用:肝/腎機能障害、心不全、DICなど。

フリーラジカルを除去することで脳保護作用を示すとされています。

2021GLでは推奨度Bで、適応例なら使用すべきと考えます。

・ただし腎機能障害例には注意が必要で、禁忌でなくても慎重に投与を検討します。

※腎機能が増悪し得ます。特にBUN/Cr比が高い症例で致命的になり得ます。

 

⑤抗潰瘍薬

投与例1:オメプラゾール20mg+生食50mL 1日2回。

投与例2:ランソプラゾール15mg 1錠/日。

2021GLでは高齢/重症例誤嚥のリスクを検討した上での投与が推奨度Bです。

・個人的にはアスピリンを使用する場合はPPIを必ず併用します。

・その他の抗血栓薬の場合でも、やはり基本的には併用を行うことが多いです。

・一方で胃酸抑制による誤嚥性肺炎リスク増加も有名です。

誤嚥性肺炎のリスクが高い症例でも悩みますが、やはり併用を行うことが多いです。

H2受容体拮抗薬誤嚥リスクがやや低く、検討の余地はあると思います。

 

●コラム:T2*の微小出血と脳出血リスク

ラクナ梗塞の病態は高血圧性脳出血とオーバーラップしています。

・出血リスク評価にはMRIのT2*における微小出血の検出が有用とされています。

・特に抗血小板薬内服中の患者が微小出血を2個以上有すると脳出血リスクが高まるという報告もあります。

→このような症例で、時に抗血小板薬よりもリスク管理を優先することがあります。

・この場合、特に血圧管理を徹底します。

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