※この記事は2022/2/11に内容更新しました。
キューピーです。
"しびれ"を訴える方は非常に多いです。
四肢にしびれを訴える患者は2400/10万人という疫学データもあります。
また、系統だった診療が難しい領域でもある気がします。
今回は"しびれ"を訴える患者の診療を考えてみます。
※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。
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目次
【参考文献】
【しびれ】
・"しびれ"は主観的な感覚であり、正確に分類する必要があります。
・基本的には感覚神経の障害を反映した症状です。
・いわゆる"麻痺"を訴えていないか注意します。
→この場合は運動神経の障害であり、鑑別疾患も異なってきます。
・"しびれ"に関連する用語を以下にまとめます。
→一般的には"異常感覚"に当てはまることが多いです。
※dysesthesiaとparesthesiaは、反対の意味で用いられることがあります。
・感覚鈍麻(hypesthesia):感覚が鈍くなること。
・無感覚(anesthesia):感覚がなくなること。
・異常感覚(dysesthesia):外的刺激がないのに生じる自発的感覚(痛覚以外)。
・錯感覚(paresthesia):外からの感覚刺激とは異なって感じること。
・感覚過敏(hyperesthesia):感覚が過敏になること。
【しびれのred flag signs】
・注意するべきsignとそれぞれ鑑別を要する病態を記載します。
・突然発症(数分):血管障害などを鑑別します。
・急性発症(1週間以内):炎症性疾患や脱髄性疾患などを鑑別します。
・頭頚部外傷後発症:外傷に伴う器質的異常などを考慮します。
・顔面を含む分布:頭蓋内疾患などを鑑別します。
・多発性単ニューロパチー:血管炎などを鑑別します。
・しびれの範囲拡大:原因疾患の進行などを考慮します。
・発熱の合併:自己免疫疾患(血管炎など)や感染症などを鑑別します。
・頭痛/めまい/意識障害/構音障害/複視の合併:中枢神経系病変などを考慮します。
・筋力低下の合併:後遺する可能性があり、速やかに原因検索を行います。
・呼吸不全の合併:脳幹-上部頚髄病変やギランバレー症候群などを鑑別します。
・膀胱直腸障害の合併:脳/脊髄(特に馬尾)病変などを鑑別します。
【診療方針】
①基本方針
・問診や神経診察が重要になることが多いです。
→特に"しびれの分布"と"時間経過"を把握することが重要とされます。
・分布から鑑別疾患を挙げて、適切な追加診察や検査の方針を考えます。
②問診
・前述のようにまずは"しびれ"を正確に分類します。多くは"異常感覚"です。
→特に麻痺を訴えていないか注意します。
・red flag signs:前項で示したsignの有無を確認します。
・しびれの分布:診察も行い正確に把握します。デルマトームを意識します。
・時間経過:いつから、どのように範囲や症状が経過しているのか把握します。
・既往歴:悪性腫瘍、膠原病、胃切除、糖尿病、甲状腺機能低下症など。
・薬剤歴:抗癌剤、メトホルミン、制酸薬(VitB12欠乏)など。
・生活歴:飲酒、職業(有機溶剤による末梢神経障害)など。
ガイドライン|日本緩和医療学会 - Japanese Society for Palliative Medicine
③神経診察
・感覚障害の範囲と程度:最も重要です。デルマトームを意識します。
・MMT:筋力低下の合併の有無を確認します。
・腱反射/Babinski徴候:高齢者は生理的に腱反射が低下し得るので注意を要します。
・脳神経所見:異常を認めれば、頭蓋内疾患を考慮する根拠になります。
・失調:深部感覚や小脳の異常で認め、原因疾患の鑑別に役立ちます。
・歩行:痙性麻痺や下垂足など、原因疾患の鑑別に役立ちます。
・自律神経症状:起立性低血圧(立ちくらみ)や膀胱直腸障害を確認します。
④血液検査
・しびれの分布から鑑別となる疾患に対応する項目を選びます。
・中枢神経系病変:CT/MRI検査で疑われる疾患に対応する項目を選びます。
→例えば視神経脊髄炎を疑えば、抗AQP4/MOG抗体を提出します。
・多発性単ニューロパチー:MPO/PR3-ANCA、抗核抗体、抗SS-A/B抗体、抗CCP抗体、赤沈、クリオグロブリン(クリオグロブリン血症)、抗HIV抗体、ACE/リゾチーム、sIL-2R、IgG4など。
・多発ニューロパチー:HbA1c、ビタミンB1/B12、葉酸、甲状腺機能など。
※単ニューロパチーは絞扼性/圧迫性がほとんどで、血液検査の意義は乏しいとされます。
⑤CT/MRI
・特に頭蓋内疾患や脊髄疾患の精査のために行います。
・突然発症、顔面を含むしびれ、片側上下肢のしびれなどでは、必須の検査です。
・その他の画像検査として、神経超音波検査も近年注目されています。
⑥電気生理学的検査
・神経伝導検査(NCS):末梢神経障害が疑われる場合に考慮します。
・体性感覚誘発電位(SEP):障害部位が判然としない場合に考慮します。
・いずれも小径線維の障害(small fiber neuropathy)の検出は難しいとされます。
【しびれの分布による鑑別疾患】
⓪全身疾患(分布に関わらず常に鑑別)
・血管疾患:急性動脈閉塞症、慢性動脈閉塞症(特に下肢)など。
・電解質異常:低Ca血症、低Mg血症、低K血症など。
・精神疾患:パニック障害、身体表現性障害、うつ病、過換気など。
※反復する感覚発作は、てんかんの他にTIAが鑑別となります。
①顔面を含むしびれ
⑴脳実質内病変
・脳血管障害:脳卒中、脳血管奇形など。
・脳腫瘍:原発性および転移性。
・炎症性疾患:サルコイドーシス、ベーチェット病、SLE、血管炎など。
・C2-4の頚髄障害
・脳幹部の外傷
⑵脳実質外病変
・小脳橋角部/橋前槽病変
-SCAやAICAによる三叉神経圧迫(≒特発性三叉神経痛)
-腫瘍(神経鞘腫や髄膜腫など)
・メッケル腔/三叉神経節
-腫瘍(三叉神経鞘腫や髄膜腫など)
-腫瘍浸潤 -骨髄炎
-サルコイドーシス
-Grandenigo症候群(中耳炎の錐体への波及)
・海綿静脈洞部
-腫瘍 -血管障害 -感染症
-サルコイドーシス
-特発性(トロサ・ハント症候群)
・頭蓋骨/三叉神経の通過する孔
-腫瘍(髄膜腫や神経鞘腫など) -腫瘍浸潤
-骨病変(線維性骨異形成症やPaget病)
-上顎洞の炎症や悪性腫瘍
-歯科領域の膿瘍
-オトガイしびれ症候群(numb chin syndrome)
※V3神経障害で、腫瘍浸潤や歯科疾患によります。
・その他の三叉神経障害
-帯状疱疹 -歯科処置合併症
-自己免疫性三叉神経ニューロパチー
(SjS/SLE/MCTD/SSc/血管炎など)
-FOSMN
●コラム:FOSMN
・FOSMN:Facial Onset Sensory and Motor Neuronopathyです。
・2006年に初めて報告された緩徐進行性の運動神経障害です。
・顔面(三叉神経領域)の非対称性感覚障害が初発症状となります。
→感覚障害は頭部、頚部、上部体幹、上肢に広がることもあります。
→その後に下位運動ニューロン障害や球症状などを呈します。
・変性細胞でTDP-43陽性であることやSOD1変異も報告されています。
→いずれもALSとの共通項であり、関連性が示唆されます。
・一方で免疫性機序を疑う病理所見もあり、免疫療法(特にIVIg)が有効であった報告もあります。
・生存期間は数年-20年程度でALSよりは良好ですが、進行の速い症例もあります。
②片側上下肢のしびれ
・頭蓋内疾患:脳血管障害、脱髄性疾患、脳腫瘍など。
・頚髄疾患:頚椎症性脊髄症、血管障害、脱髄性疾患、腫瘍、炎症性疾患など。
※詳細な疾患名は①も参照ください。
③上肢単独のしびれ
・頚椎症(頻度は多い)
・手根管症候群(頻度は多い)
・橈骨/尺骨神経障害
・多発性単ニューロパチー
・頭蓋内疾患:脳血管障害など。
・頚椎症以外の頚髄病変:MSなど(頻度は少ない)。
※頚椎症と手根管症候群が圧倒的に多く、両者が合併していることもあります。
④下肢単独のしびれ
・多発ニューロパチー(靴下型)
・腰椎症
・足根管症候群(後脛骨神経の圧迫)
・閉鎖神経の絞扼性障害(外傷/骨盤内腫瘍/閉鎖孔ヘルニアなど)
・大腿神経の絞扼性障害
・むずむず脚症候群(PD/鉄欠乏/腎機能障害など)
・多発性単ニューロパチー
・頭蓋内疾患
・腰髄病変
⑤体幹のしびれ
・脊髄病変:脱髄性疾患、炎症性疾患、血管障害、腫瘍など。
※体幹に限局する場合は脊髄中心部障害が疑われます。
・帯状疱疹
・糖尿病性ニューロパチー(頻度は少ない)
・体表に分布する末梢神経の絞扼性障害
・頭蓋内疾患(上下肢を含む半身の分布となる傾向)
⑥手袋靴下型のしびれ
・多発ニューロパチー
・頚椎症±腰椎症(頻度は少ない)
⑦ばらついた分布のしびれ
・多発性単ニューロパチー
●コラム:多発性単ニューロパチーの原因疾患
・免疫が介在するものが大半を占めます。
→特に血管炎は緊急で対応する必要があります。
・血管炎:PAN、MPA、GPA、EGPA、クリオグロブリン血症など。
・膠原病:RA、SLE、SjS、SSc、PM/DM、MCTDなど。
・多巣性運動ニューロパチー(MMN)
・atypical CIDPの多巣性脱髄性感覚運動型(MADSAM)
・サルコイドーシス
・アミロイドーシス
・CMV感染症
・悪性腫瘍(傍腫瘍症候群)
・IgG4関連疾患
・糖尿病
など
●コラム:多発ニューロパチーの原因疾患
・靴下型or手袋靴下型で緩徐進行性、感覚神経優位のことが多いです。
→急速進行や筋力低下がある場合はred flag signsと認識します。
・栄養障害性:ビタミンB1欠乏、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏。
・遺伝性:シャルコー・マリー・トゥース病、家族性アミロイドポリニューロパチー。
・炎症性:ギランバレー症候群、CIDP、膠原病。
・腫瘍性:M蛋白血症、悪性リンパ腫、傍腫瘍症候群。
・重症疾患多発ニューロパチー(critical illness polyneuropathy:CIP)
など
【代表疾患各論】
①脳卒中
(0)基本事項
・頭頂葉感覚野、視床、橋や延髄などの障害でしびれを生じます。
・突然発症の場合、必ず鑑別に挙げて頭部CT/MRIによる評価を行います。
・感覚障害が診断に重要な脳卒中もあり、これについて述べます。
⑴純粋感覚性脳卒中(pure sensory stroke)
・いわゆるラクナ症候群の1つで、運動麻痺や失調を伴わないことが特徴です。
・顔面-上下肢を含む半身に自覚的な異常感覚(しびれ)を生じます。
・他覚的な感覚障害は伴う場合も伴わない場合もあります。
・原因となる病変局在は視床が多いです。
⑵手掌口症候群(COS:Cheiro Oral Syndrome)
・pure sensory strokeの1つとも考えられる症候群です。
・症状:同側の口周囲と手指のしびれ。
・病巣:(症状と反対側の)視床、中心後回、橋など。
※視床が多く、後外側腹側核(VPL)と後内側腹側核(VPM)の境界部の障害とされます。
・症状にはバリエーションがあり、両側性や片側口周囲と対側の手指に生じるものもあります。
→特に後者は"交差性手掌口症候群"と呼ばれ、延髄病変が示唆されます。
※Wallenberg症候群の軽症型の可能性が指摘されています。
⑶Wallenberg症候群
・椎骨動脈やその枝である後下小脳動脈(PICA)閉塞により生じます。
・頭蓋内椎骨動脈解離に伴い出現することが多いとされます。
・延髄外側の障害であり、この部位に準じた症状をきたします。
-舌咽/迷走神経運動核(疑核):球麻痺症状(構音/嚥下障害、嗄声など)。
-舌咽/迷走神経感覚核(孤束核):障害側の味覚障害。
-下小脳脚:障害側の上下肢失調。
-三叉神経脊髄路核:障害側の顔面温痛覚障害。
-交感神経下行路:障害側のHorner症候群。
-外側脊髄視床路:健側の頚部以下の温痛覚障害。
②頚椎症
(0)基本事項
・概念:加齢変性により、頚椎に椎間板膨隆/靭帯肥厚/骨棘形成が生じた状態です。
→脊髄や神経根が圧迫されて障害を起こすと、神経症候をきたします。
→それぞれ"頚椎症性脊髄症"と"頚椎症性神経根症"と呼ばれます。
・手のしびれをきたす疾患として、手根管症候群とともに2大主要疾患とされます。
・症候性の頚椎症は50歳以降に多く、特に男性に好発します。
・頚椎XP:アライメント、椎間腔狭小化、脊柱管狭窄などを確認します。
→C5椎体中間のレベルで脊柱管前後径≦12mmまたは脊柱管/椎体前後径(Torg-Pavlov 比)≦75%ならば、脊柱管狭窄と判断します。
・頚椎MRI:椎間板突出、黄色靭帯膨隆による脊髄圧迫、髄内T2WI高信号などを確認します。
・髄液検査:頚髄圧迫による髄液流通障害で、蛋白上昇を認めます。細胞数は正常です。
・筋電図:障害髄節の支配筋に神経原性変化を認めます。
・神経伝導検査:異常を認めないため、末梢神経障害との鑑別に有用です。
・保存的治療:後屈位を避けます。頚部まで固定できる大きい枕を使用、頚椎カラーも有用です。
⑴障害高位と神経症候
左:臨床神経 2012;52:469-479やBrain and nerve 2014;66(12):1429-1439等を参考に作成
右:頸椎神経根障害の症状memo - つねぴーblog@内科専門医
・頚椎症は神経症候から障害高位を推定することができ、診療の醍醐味の1つです。
・頚椎と頚髄には1.5髄節のずれがあり、神経根も図のようにずれて走行します。
・椎間-髄節-神経根の高位の対応関係を示します。
C3/4椎間-C5髄節-C4神経根
C4/5椎間-C6髄節-C5神経根
C5/6椎間-C7髄節-C6神経根
C6/7椎間-C8髄節-C7神経根
⑵頚椎症性脊髄症
(ⅰ)病態
・脊髄が圧迫される病態で、髄節症候(灰白質障害)と索路症候(白質障害)を認めます。
・髄節症候:上肢感覚障害(後角)、上肢運動障害(前角)。
・索路症候:下肢腱反射亢進/痙性麻痺(錐体路)、温痛覚障害(脊髄視床路)、深部覚障害(後索)、排尿障害。
・臨床的に"服部分類"で表されることもあります。
Ⅰ型:脊髄中心部障害(上肢筋委縮/運動障害/腱反射低下/感覚障害)。
Ⅱ型:Ⅰ型+後側索部(下肢腱反射亢進/痙性麻痺)。
Ⅲ型:Ⅱ型+前側索部(下肢・体幹温痛覚障害)
→一般的にⅠ型からⅢ型へ順に進行し、髄節症候が先行することが多いとされます。
※Ⅰ型は髄節症候であり、Ⅲ型になるにつれて索路症候が加わります。
(ⅱ)初発症状
・上肢のしびれでの発症が多く、疼痛を伴うことは少ないとされます。
※神経根痛を伴いやすい神経根症との相違点としても重要です。
・片側性/両側性あるいは急性/慢性のいずれでも発症し得ます。
・時には上肢の筋力低下や筋萎縮のみが進行していく場合もあります。
→頚椎症性筋萎縮と呼ばれ、前根や前角の選択的障害によります。
・いずれにしても服部Ⅰ型(髄節症候)での発症が大半を占めます。
(ⅲ)感覚障害
・上肢感覚障害の範囲が髄節から予測されるより広範である傾向があります。
→C3/4椎間で上肢全体、C4/5で手全体、C5/6で母指以外の指に認めることが多いです。
・C3/4椎間障害では後索障害により両手指の深部覚障害が目立つことがあります。
→pseudo atetosisや母指さがし試験異常などが生じ得ます。
・服部Ⅲ型まで進展すると下肢体幹の温痛覚障害を認めます。
→この場合、下肢の末梢から始まることが多いとされます。
(ⅳ)運動障害
・髄節障害により上肢の髄節性の筋力低下や筋萎縮を呈します。
・多椎間障害であれば、比較的広範囲に認めます。
・服部Ⅱ型に進展すると下肢の痙性麻痺を認めます。
(ⅴ)腱反射
・原則として障害髄節レベルの腱反射は低下し、それより下位の腱反射は亢進します。
・白質障害が軽度の場合は、下位レベルの腱反射亢進が不明瞭なこともあります。
・また変形性腰椎症をしばしば合併し、下肢腱反射が低下していることがあります。
・橈骨逆転反射:橈骨端を叩打すると腕橈骨筋反射が生じず、手指屈曲が生じる現象です。
→C5,6髄節の脊髄症で認める所見とされます。
→腕橈骨筋腱反射消失(髄節症候)とC8髄節の手指屈筋反射亢進(索路症候)によります。
→髄節症候と索路症候を同時に捉えているため、高位診断に有用な所見とされます。
(ⅵ)手術適応例
・進行性の運動麻痺(筋力低下)を認める場合
・運動麻痺(筋力低下)により日常生活に支障をきたす場合
(ⅰ)初発症状
・一側の"神経根痛"で発症することが多いとされます。
→最も特徴的な症状で脊髄症との鑑別にも重要です。
・前根(運動線維)や後根(感覚線維)への刺激により生じます。
・後根刺激:神経痛様の刺すような激痛が支配領域に放散します。
・前根刺激:筋緊張が筋内の感覚神経を刺激し、筋肉痛様の痛みが支配筋に生じます。
・初発部位としては頚部や肩甲骨周囲部の疼痛が多いとされます。
・C7神経根障害例では一側の大胸筋部に疼痛を認めることがあります。
→特に左側の場合にはpseudo angina pectorisとも呼ばれています。
・神経根痛は安静で軽快せず、咳/排便など脊柱管内圧を上昇させる行為で増強します。
・急性/慢性いずれの発症様式もあります。
→急性の場合、激しい神経根痛に続いて上肢に運動感覚障害を呈します。
→いわゆるneuralgic amyotrophyと類似の経過となり得るので、鑑別が必要です。
(ⅱ)感覚障害
・神経根痛に続く形で、一側上肢のしびれを認めることが多いとされます。
・自覚的なしびれは必ずしも神経支配領域に一致しないこともあります。
・他覚的な感覚障害はC6-母指、C7-中指、C8-小指が良い指標とされます。
・C5 の単独支配領域は肩関節のやや下方の上腕外側にあります。
→意識して診察を行わないと感覚障害が見逃されやすい場所でもあります。
(ⅲ)運動障害
・前根障害により支配筋の運動障害が生じます。
・感覚障害が目立たず、筋萎縮を主症候とする症例もあります。
→筋萎縮は必ず限局性で、C5障害による三角筋/上腕二頭筋萎縮が多いとされます。
(ⅳ)腱反射
・障害高位の腱反射は低下or消失し、その他の腱反射は正常です。
・C5/C6-上腕二頭筋腱反射、C7(/C8)-上腕三頭筋腱反射の低下or消失を認めます。
(ⅴ)Jackson testとSpurling test
・頚椎症性神経根症で、感度は低いものの特異度の高い身体所見です。
・特にSpurling testの方がエビデンスが強い傾向にあるようです。
・Jackson test:頭部を後屈させ、下方に圧迫します。
・Spurling test:頭部を後屈+側屈させ、下方に圧迫します。左右で行います。
→障害部の神経の支配領域に沿った疼痛やしびれの誘発/増強があれば陽性です。
(ⅵ)手術適応例
・4か月の保存的治療に抵抗性の場合
・C5,6神経根障害で上肢帯の筋力低下を認める場合
・C8神経根障害で手内在筋の筋力低下や下垂指を認める場合
※神経根症は大部分が短期-長期経過で自然軽快するため、保存療法が大原則です。
③腰部脊柱管狭窄症
(ⅰ)基本事項
腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 - 整形外科 - 受診案内 - 聖路加国際病院
・概念:腰椎の加齢変性で、神経路である脊柱管や椎間孔が狭小化して神経を圧します。
→ただし完全な病態は未解明で、定義について完全な合意は得られていません。
・50歳以上の男性に好発し、高齢者で下肢のしびれや歩行障害の原因として最多です。
(ⅱ)症状
・初期には臀部や下肢のしびれや疼痛が立位/歩行時のみ出現します。
→特に臥位/座位での安静時の診察では、他覚的異常所見を認めないことも多いとされます。
・進行すると下肢筋力低下や排尿障害などを呈することもあります。
・最も重要な神経性間欠性跛行は以下の分類がなされています。
腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 - 整形外科 - 受診案内 - 聖路加国際病院
-神経根型:障害神経根支配領域に片側性の臀部/下肢の疼痛を認めます。
-馬尾型:臀部/下肢や会陰部にしびれが両側性に生じます。
-混合型:神経根型+馬尾型を呈します。
-いずれも症状は立位歩行で増悪し、前屈で軽減することが特徴です。
→自転車をこいだり、シルバーカーを押すのは楽といった訴えがあります。
※血管性間欠性跛行合併例もあるため、ABIは必須の検査になります。
(ⅲ)診察
・診断に直結するレベルの特異性の高い診察所見はありません。
・Kempテスト:膝関節を伸展させながら体幹を患側に側屈+後屈させます。
→側屈した側の下肢痛が誘発/増強した場合を陽性とします。
・SLRテスト:仰臥位で一側の下肢を伸展挙上させます。
→70°未満で下肢放散痛が出現したら陽性です。
→L4/5やL5/S1の椎間板ヘルニアで陽性になりやすく、本症では陰性が多いです。
・足背動脈触診:血管性間欠性跛行を呈するPADとの鑑別に有用です。
・その他:下肢の神経学的所見として、下肢腱反射やMMTも確認します。
(ⅳ)診断サポートツール
・初版から最新版でもガイドラインに記載のあるサポートツールです。
・合計点数が7点以上だと腰部脊柱管狭窄症の可能性が高いと考えます。
→7点をカットオフにした場合、感度92.8%で特異度72.0%と報告されています。
(ⅴ)腰椎MRI
左:腰部脊柱管狭窄症の診断と治療 - 整形外科 - 受診案内 - 聖路加国際病院
・画像検査としてはMRIが最適とされます。
・椎間板膨隆、黄色靱帯肥厚、椎間関節変性肥大など、変性狭窄状態を確認します。
・Redundant Nerve Roots:馬尾が屈曲蛇行して一塊に見える所見で、予後不良因子です。
・なお画像所見で異常を認めても、必ずしも症候性ではないことに注意します。
→腰部脊柱管狭窄症の診断は、症候学を最優先することが推奨されています。
(ⅵ)治療
・PGE1製剤:馬尾型や混合型の症状を呈する場合に有効性が示されています。
→投与例:リマプロストアルファデクス®5μg 3錠3×。
・神経ブロック:短期間の疼痛改善やQOL改善に有用とされます。
・手術適応例
-(2か月程度の)保存的治療に抵抗性の場合
-明らかな下肢筋力低下を認める場合
-膀胱直腸障害を認める場合
※安静時の下肢しびれは手術後も消失しにくいとされています。
●コラム:坐骨神経痛
・定義:臀部、下肢後面あるいは外側面に放散する疼痛(あるいは症候群)。
→坐骨神経の圧迫や刺激で生じ、疾患名ではなく"症状名"と理解します。
・腰椎MRI:坐骨神経痛の原因診断のために特に重要な検査です。
・治療:原因治療、鎮痛薬(NSAIDs,プレガバリンなど)、神経ブロックなど。
→基本的には原因を特定して、原因に対する治療を行うことが重要です。
・原因:腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症の頻度が多いとされます。
-腰椎椎間板ヘルニア -腰部脊柱管狭窄症 -腰椎すべり症
-梨状筋症候群(梨状筋による坐骨神経圧迫)
④手根管症候群
(0)基本事項
・最も頻度の高い単ニューロパチーで、正中神経が手根管内で圧迫される病態です。
・多くは特発性で、中年以降の女性に両側性に認めることが多いとされます。
・リスク因子:妊娠、透析、肥満、甲状腺疾患、関節リウマチ、糖尿病、先端巨大症など。
・その他に職業等による手の使い過ぎや橈骨遠位端骨折などの外傷も関連し得ます。
⑴症状
・母指から環指橈側半分のしびれや疼痛が最も典型的な症状です。
・特に初期では示指と中指の症状が強い傾向があります。
・ring finger splitting:環指で橈側のみに感覚障害を認めることです。
→(手根管症候群と断定できないものの)正中神経障害の確認に有用です。
・症状が全指、前腕、上腕に放散することもあり、注意が必要です。
・手使用時や夜間から早朝(起床時)にかけて増悪する傾向があります。
・flick sign:手を振ると症状が緩和する現象です(感度47%/特異度62%)。
・その他に手指のこわばりなどを自覚することもあります。
⑵診察
・Tinel sign:手根管部をたたき、正中神経領域にしびれ/疼痛があれば陽性です。
・Phalen test:手関節を1分程度掌側に90°屈曲し、症状が増悪すれば陽性です。
・猿手(母指球の筋委縮):左右差をみます。進行期でみられる傾向があります。
・短母指外転筋(APB)のMMT:純粋な正中神経支配筋です。
・いずれの所見も単独では診断精度は高くなく、総合して考えます。
⑶検査
・神経伝導検査:リンク先記事を参照ください。臨床的な重症度と必ずしも一致しません。
・神経超音波検査/MRI:占拠性病変の確認に特に有用です。
・頚椎XP:頚椎症との鑑別や合併の確認に有用です。
⑷治療
・約30%が自然軽快するという報告があります。手の使用頻度軽減も有効です。
・内服治療:ビタミンB6/12、NSAIDs、プレガバリン、ステロイドなど。
→投与例:ビタミンB12(メチコバール®)500μg 3錠3×。
・手関節固定(スプリント):夜間のみの装着も可能です。約3週間で効果判定をします。
・手術適応例
-3~6か月の保存的治療に抵抗性の場合
-筋力低下や筋萎縮を認める場合
-占拠性病変による場合
→手術時期を逃さないために診断がついたら早期の整形外科紹介が重要です。
⑤肘部尺骨神経障害
(0)基本事項
・肘関節周囲における尺骨神経の絞扼性神経障害で、広義の肘部管症候群です。
・手根管症候群に次いで2番目に多い絞扼性神経障害とされます。
・原因:特発性、腫瘍、変形性関節症、外傷後変形、スポーツ(野球や柔道)など。
※外傷後変形:上腕骨外顆骨折後の外反肘、上腕骨顆上骨折後の内反肘など。
⑴症状・診察
左(3種):「肘部管症候群」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
右(Froment徴候):「尺骨神経麻痺」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
・小指と環指の尺側1/2のしびれ(感覚障害)が典型的な初期症状です。
・種々の手内筋の筋力低下や筋萎縮を生じます。
→MMTでは第1背側骨間筋(FDI)、小指外転筋(ADM)、手関節屈曲(尺側手根屈筋)に注目します。
・かぎ爪変形(鷲手):環指/小指のMP関節過伸展とPIP/DIP関節の屈曲によります。
・Froment徴候:母指と示指で紙を把持させて、強く引きます。
→母指IP関節を屈曲させて(長母指屈筋の作用で)紙を保持したら陽性です。
・good luck sign:示指と中指をクロスさせるサインができない場合は手内筋麻痺を疑います。
・Tinel sign:肘の内側をたたき、尺骨神経領域にしびれ/疼痛があれば陽性です。
⑵検査
・神経伝導検査:リンク先記事を参照ください。
・肘関節XP(3方向-正/側/肘部管):骨折、偽関節、腫瘍などを確認します。
・MRI:占拠性病変の他、特にT2WIの脂肪抑制で障害神経が高信号になります。
・頚椎XP:頚椎症との鑑別や合併の確認に有用です。
⑶治療
・筋萎縮がなく、症状や検査所見が軽微なものは保存的治療の適応となり得ます。
→安静、装具固定、内服治療(ビタミンB12/NSAIDsなど)があります。
・ただし手術適応となることが多いため、基本的には整形外科への紹介が望ましいと考えます。
⑥橈骨神経麻痺
・橈骨神経は上腕骨の背側から前面に巻き付くように走行します。
→上腕中央部で圧迫を受けやすいです(橈骨神経麻痺)。
・また肘外側部で分岐し後骨間神経として走行します。
→肘屈側で圧迫を受けやすいです(後骨間神経麻痺)。
・原因(上腕部):外傷(上腕骨骨幹部骨折など)、圧迫(Saturday night palsy)など。
・原因(後骨間神経麻痺):腫瘍/腫瘤、外傷、神経炎、過剰な運動など。
・下垂手:手関節背屈および全指MP関節の伸展障害によります。
・下垂指:手関節背屈が保たれた下垂手のイメージで、後骨間神経麻痺で認めます。
・感覚障害:手背橈側で認め得ますが、通常は軽度です。
※後骨間神経麻痺では感覚障害を認めません。
・本症ではBarre徴候が陽性となり得ます(手指屈曲+前腕回内)。
→しばしば運動野の手の領域の脳血管障害が重要な鑑別疾患として挙げられます。
→その他の神経所見を伴う場合などは強く疑い、頭部画像検査の閾値を低くします。
・検査:概ね手根管症候群や肘部尺骨神経障害と同様に考えます。
・治療:外傷/腫瘍によるものや3か月程度の保存的治療無効例は手術を考慮します。
→基本的には整形外科への紹介が望ましいと考えます。
⑦外側大腿皮神経障害
7.外側大腿皮(がいそくだいたいひ)神経痛|日本脊髄外科学会
・L1-3神経の知覚枝が合流して骨盤内を走行し、鼠径靱帯と縫工筋に挟まれるように骨盤外に出ます。
→鼠径靱帯下を通過する際に外側大腿皮神経が圧迫される病態です。
・4.3/10000人と有病率は比較的高く、糖尿病患者では5倍以上に増加します。
・中高年に好発し、左右差はなく、両側例もあります。
・誘因:肥満、妊娠、きつい下着やベルト、周辺部の手術、骨盤外傷など。
・症状:大腿上部外側のしびれや疼痛。純粋な感覚神経で、運動障害は認めません。
→立位/歩行で症状が誘発されることもあり、間欠性跛行との鑑別を要します。
※約70%に腰痛を合併し、これに伴う筋緊張が誘因となり得るとする報告もあります。
・Tinel sign:上前腸骨棘内側の通過部をたたき、支配領域にしびれ/疼痛があれば陽性です。
・確定診断には神経ブロックによる症状消失の確認が有用です。
※神経ブロックの合併症として大腿神経麻痺に注意します。
・治療:誘因除去、鎮痛薬、神経ブロックなどによる保存的治療で約90%が軽快します。
→保存的治療の無効例で手術を考慮します。
⑧(総)腓骨神経障害
・膝窩で坐骨神経から総腓骨神経が分岐し、更に浅/深腓骨神経に分岐します。
→特に総腓骨神経は腓骨頭の後ろを巻きつくように走行します。
→この腓骨頭部分での圧迫による発症が多く、本項では総腓骨神経障害を考えます。
・原因:以下のように多岐に渡ります。
-圧迫:全身麻酔時、シーネ固定、習慣的な足組みなど。
-外傷:鈍的外傷、腓骨頭骨折など。
-血管性:血管炎など。
-その他:糖尿病、ハンセン病など。
・症状:下腿外側-足背-小趾以外の足趾背側のしびれや疼痛、下垂足(前脛骨筋筋力低下)など。
・検査:概ね手根管症候群などの絞扼性神経障害と同様の考え方です。
・なお後述のようにL5(L4)神経根症や脳血管障害などとの鑑別を要します。
・治療:外傷/腫瘍によるものや3か月程度の保存的治療無効例は手術を考慮します。
●コラム:一側性下垂足の鑑別
・L5(L4)神経根症、脳血管障害、上円錐症候群などが鑑別疾患に挙げられます。
・発症様式などから脳血管障害が否定できない場合、必ず画像検査を行います。
・L5(L4)神経根症は最大の鑑別疾患となり、両者の鑑別点は以下とされます。
-腰椎変性疾患では腰下肢痛の合併が多い。
-腓骨神経障害では腓骨神経支配筋以外の麻痺を認めない。
→L5神経根症では例えば後脛骨筋(足の底屈→内反)の筋力低下を認める。
⑨糖尿病性多発ニューロパチー
(0)基本事項
・糖尿病患者の約1/3が神経障害を有し、多発/多発単/単ニューロパチーが含まれます。
・なお耐糖能異常の段階でニューロパチーが生じているとされ、注意が必要です。
・今回は特に頻度が高い糖尿病性多発ニューロパチーについてまとめます。
・小径神経線維優位に障害され、感覚/自律神経障害が主症候になります。
→運動神経障害は後期に出現し、感覚→自律→運動神経障害の順に出現する傾向です。
・急速進行、上肢優位、左右差、運動神経障害優位は、他疾患を考える徴候です。
・病態:未解明ですが、代謝障害と微小血管障害の関連が想定されています。
⑴症状
・初発症状:足趾や足底部のしびれ/疼痛が多く、上肢は無症状の傾向があります。
・進行に伴い手袋靴下型のしびれ/疼痛/感覚鈍麻や自律神経障害を認めます。
・更に進行すると(特に下肢遠位部の)筋力低下/筋萎縮も認め得ます。
・自律神経障害
-起立性/食事性低血圧 -神経因性膀胱 -勃起障害
-消化管蠕動障害 -下痢/便秘 -発汗異常
⑵簡易診断基準
・なおアキレス腱反射低下や振動覚低下は大径神経線維の障害を反映します。
→早期では異常を認めないことや他の末梢神経障害でも認め得ることに注意します。
・また、本診断基準では重症度評価は困難であることも注意します。
・自律神経機能検査の代表例としては、心拍変動検査(CVRR)が挙げられます。
・CVRR:呼吸によるRR間隔変動(吸気でせまい)で自律神経障害を評価します。
平均値の一例
-30~59歳の健常人:3.4%
-60歳以上の健常人:2.8%
-30~59際の糖尿病患者:2.2%
-60歳以上の糖尿病患者:1.7%
⑶治療
・厳格な血糖コントロール:神経障害の発症/進行の抑制に有効です。
※ただし1型糖尿病では明らかですが、2型糖尿病では十分な検証がなされていません。
・エパルレスタット:神経障害の進行抑制効果が得られる場合があります。
→神経障害が中等度以下かつ罹病期間3年以内など、非進行例で投与を検討します。
・鎮痛薬:以下に第一選択薬の投与例を示します。
-三環系抗うつ薬:トリプタノール®10mg 1(-3)錠1×就寝前。
-SNRI:サインバルタ®20mg 1(-2)Cap1×朝食後。
-プレガバリン:リリカ®75mg 2(-4)Cap2×朝夕食後。
-どれが適しているかは個人差も大きいとされます。
●コラム:糖尿病性単ニューロパチー
・病態:動脈硬化等による血管狭窄/閉塞の影響が大きいものと考えられています。
・外眼筋麻痺(動眼/滑車/外転神経)、顔面神経麻痺が多いとされます。
・その他に尺骨神経障害や腓骨神経障害など種々の神経障害を認め得ます。
・最も多いのは外眼筋麻痺で、特に動眼神経麻痺が多いとされます。
→糖尿病性では散瞳を認めない(=瞳孔は正常)傾向にあることが鑑別点です。
・糖尿病性単ニューロパチーは大部分の症例で3か月以内に自然軽快するとされます。
⑩ビタミンB12欠乏
(0)基本事項
・原因
-摂取不足:菜食主義、アルコール中毒、中心静脈輸液など。
-内因子欠乏:胃摘出後、悪性貧血(抗胃壁細胞/内因子抗体)など。
-回腸吸収障害:回腸切除後、brind loop syndromeなど。
-薬剤性:H2受容体拮抗薬、PPI、メトホルミン(長期使用)など。
・ビタミンB12欠乏により、神経症状をきたすことがあります。
・亜急性連合脊髄変性症、多発ニューロパチー、認知機能障害、視神経障害などを呈します。
→特に多発ニューロパチーが多く、多発ニューロパチー全体の8%を占めるという報告もあります。
※本項では、しびれに関連する多発ニューロパチーについてまとめます。
⑴診断
・左右対称性の遠位部/感覚障害優位の多発ニューロパチーを呈する傾向があります。
・他の多発ニューロパチーに比して、上肢からの発症が多いという報告もあります。
・ただし、症状のみで他の多発ニューロパチーと鑑別することは困難とされます。
→多発ニューロパチーを疑った場合、必ず血液検査でビタミンB12欠乏を確認します。
・検査値:基準値では、組織内欠乏を評価できません(神経内科61(4):329-333)。
≦100pg/mL:欠乏あり。
≧400pg/mL:欠乏なし。
100-400pg/mL:血中ホモシステイン値が高値なら欠乏あり。
⑵治療
・ビタミンB12の補充を行います。
・経口と筋注で貧血/神経障害の治療効果に差はないと報告されています。
(Blood;92(4):1191-8)(Clin Ther;25(12):3124-34)
・投与例:メチコバール®錠500μg 3錠3×毎食後。
・ビタミンB12欠乏の原因そのものにも、可能であれば治療介入します。
※なお葉酸欠乏と判断し葉酸を単独で投与すると、神経症状が増悪し得ます。
●コラム:亜急性連合性脊髄変性症
しびれの原因を探る!|実践!画像診断Q&A|レジデントノート - 羊土社
・ビタミンB12欠乏により生じる脊髄後索/側索の脱髄変性疾患です。
・頚髄-胸髄に好発し、前項の多発ニューロパチーに伴うことも多いとされます。
・銅欠乏性脊髄症とも類似し、必ず鑑別します。
・原因や治療については前項(多発ニューロパチー)に準じます。
・MRI:T2WIの後索の逆V字型高信号が特徴的です。側索に高信号を認めることもあります。
・症候
-後索障害:深部感覚障害(Romberg徴候陽性など)。
-側索障害:Babinski徴候陽性、腱反射亢進(特にPTR)、痙性対麻痺など。
※多発ニューロパチーを合併すると、ATRは減弱する傾向です。