内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

鼻出血の診療

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キューピーです。

 

"鼻血が止まりません"という主訴でのER受診は意外と多いです。

 

そんなので来るなよ!と思うかもしれませんが・・・。

 

当の本人はパニック状態なんですよね。

 

実は、僕自身も30分止まらない鼻血を経験したことがあります。

 

(症例ではなく、僕の鼻血が止まらなかったという意味です(笑))

 

その時のことを思うと、受診したくなる気持ちがよく分かります。。。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

J Laryngol Otol. 2017 Dec;131(12):1035-1055

 

【基本事項】

10歳以下50歳以上に好発するとされます。

・70%以上は鼻中隔前方の"キーゼルバッハ部位"からの出血です。

→この場合は圧迫のみで止血が得られることが多いです。

後方出血(約10%)は止血困難のため、専門的な対応を要することが多いです。

・しばしば不安→血圧上昇→出血持続という悪循環を呈することがあります。

・主訴が"吐血"や"喀血"でも、実は鼻出血である場合があります

・診察の際はゴーグル装着を含む感染予防策を実施します。

・症例により、耳鼻咽喉科医への緊急紹介が必要となることがあります。 

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大人と子どもで違う原因。意外と知らない鼻血のこと | 社会福祉法人 恩賜財団 済生会

(一部画像改変)

 

【原因】

機械的刺激(乾燥がリスク)

・外傷(頭蓋底骨折→髄液漏に注意)

・鼻炎/鼻中隔彎曲症

・出血性鼻茸

・若年性鼻咽腔血管線維腫(JNA)

・上顎洞癌

・多発血管炎性肉芽腫症

・Osler病(AD=家族歴あり)

・von Willebrand病(AD=家族歴あり)

・その他の出血性素因

-抗血栓薬内服 -肝腎機能障害 -白血病

-ITP -再生不良性貧血 -DIC -血友病 etc...

→原因検索のためAMPLEや外傷歴家族歴鼻出血の既往は聴取します。

 

【初期対応】

①ABC+vital signs確認

・特にAやCの異常がないか注意します。

異常を認める場合はモニターを装着し、その安定化を最優先します。

・Cの異常を認める場合、ルート確保時に可能であれば採血も施行します。

血算(貧血)生化学(肝/腎機能)凝固(PT-INRやAPTT)を確認します。

 

②圧迫止血

大部分の鼻出血は圧迫で止血されるため、まずは圧迫止血を試みます。

・可能であれば圧迫を行う直前に鼻鏡でキーゼルバッハ部位を確認します。

→自信がなければ圧迫止血を(前方出血の)診断的治療としてもよいと考えます。

手順

-鼻をかんでもらい、鼻腔内に凝血塊がない状態にします。

-5000倍希釈アドレナリンに浸した綿球を鼻内に挿入します。

-座位で顎を引いた前傾姿勢をとってもらいます。

-ガーゼの上から鼻翼をつまみ、15分間続けてもらいます。

-口腔や咽頭に垂れ込む血液は洗面器などに吐いてもらいます。

-15分間、一度も手を離さずに続けてもらいます。

※前傾姿勢でも大量に垂れ込む場合は、後方出血の可能性を考えます。

・止血を行っている最中に病歴を聴取し、必要に応じて採血を行います。

・止血された場合は、更に15分程度の経過観察を行い、問題なければ帰宅とします。

→帰宅当日の入浴は控えてもらいます(シャワーは可)。

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左:応急手当Web│目・耳・鼻・のど│鼻血

右:見てわかる鼻の病気 耳鼻咽喉科内藤クリニック

 

●コラム:5000倍希釈アドレナリンの作り方

・ボスミン®綿球の鼻内挿入は必須ではないですが、止血効果が高まります。

作り方:ボスミン®外用液 0.1%を生食で5倍に希釈します。

・この時の"5000倍"の考え方を記載します。

-ボスミン®外用液の組成は、アドレナリン 1mg/1mLです。

-すなわち1mLに1mgのアドレナリン成分を含有しています。

-なお水1mLは1gです。従って1mg/1gという表記も可能と考えます。

→1mg/1000mg、すなわちボスミン®外用液は1000倍希釈です。

-これを5倍希釈すれば、5000倍希釈アドレナリンが作成できます。

※厳密には水でなければ1mL=1gでないですが、許容できる誤差と考えます。

・ちなみに、希釈せずに1000倍のまま用いても大きな問題はなさそうです。

(添付文書にも無希釈でも使用可能との記載があります。)

 

③ガーゼパッキング

圧迫止血が無効の場合はガーゼ挿入を試みます。

手順

-長い(1m強)リボンガーゼを準備します。

※リボンガーゼは1枚のガーゼを1/16程度の幅に切断したものです。

-ガーゼを5000倍希釈アドレナリンに浸します。

-続いてゲンタシン®軟膏も染み込ませます。

※黄ブ菌によるtoxic shock syndrome予防目的です。

-鼻腔内をキシロカイン®スプレー(1-2回噴霧)で麻酔します。

(4%キシロカイン®外用液を用いる場合、使用量は2-5mLです。)

-患者を背もたれがある場所で座位にし、頭部が逃げないようにします。

-ガーゼを鼻用鑷子(図)で鼻腔の奥(挿入長10cm程度)にいれます。

-ガーゼが層状になるように、重ねて挿入していきます。

-取り出しやすいようにガーゼの先端を少し鼻孔から出しておきます。

-上記を施行し、15分経過したら取り出して鼻腔内を観察します。

→止血が得られていれば、再度同じ手順でガーゼ挿入を行います。

-ガーゼが鼻腔内に入り込まないように、綿球で栓をします。

・基本的にはパッキングしたまま帰宅させ、翌日に耳鼻咽喉科外来受診とします。

・詰めたガーゼが出てくる場合は、引っ張らずに切断するように指導します。

ガーゼパッキングが無効の場合は、後方出血の可能性を考えます。

緊急で耳鼻咽喉科コンサルトが必要となります。

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ルーツェ鼻用ピンセット - 日本フリッツメディコ | FEED VET

 

耳鼻咽喉科コンサルト

・ここまでで止血が得られなければ、緊急で耳鼻咽喉科コンサルトとします。

・コンサルト基準の詳細は、次項にまとめます。

・待ち時間が発生する場合、後述の【その他の止血法】を試してもよいかもしれません。

 

耳鼻咽喉科コンサルトが必要な場面】

①緊急コンサルト

・ABCの異常を伴う場合

・ガーゼパッキングで止血が得られない場合

・明らかな凝固能異常(PT-INRやAPTT)を伴う場合

 

②翌日の外来フォロー

・ガーゼパッキングで止血が得られた場合

※可能であれば圧迫止血が有効だった症例も翌日の受診を勧奨します。

 

【その他の止血法】

①圧縮型医療用スポンジ(アイバロン®/メロセル®)

使用目的はガーゼパッキングと同じになります。

→止血できたら翌日の耳鼻咽喉科外来受診とします。

・圧縮型のスポンジで、鼻内で水分を吸収して膨張します。

使用法(添付文書)

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※ゲンタシン®軟膏の塗布を忘れないように注意します。


救急外来での鼻出血パッキング法 Nasal packing by non ENT Doctor in ER

 

②止血用バルーン(エピスタットキット®)

・前方だけでなく後方出血に対してもパッキングが可能です。

※従って、耳鼻咽喉科の診察が必要な症例で適応となるべきです。

使用法

-キット全体にキシロカイン®ゼリーを塗り、鼻腔に真っすぐ挿入します。

-白いバルブに10mL程度の空気を注入し、先端のバルーンを膨らませます。

-前方に軽く牽引し、バルーンを後鼻孔に嵌頓させます。

-緑のバルブにも空気(-30mL)をゆっくり注入し、前方パッキングも行います。

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③膀胱留置カテーテル

尿カテで後方出血に対するパッキングを行うことができます

※エピスタットキット®同様、耳鼻咽喉科が必要な症例に適応となるべきと考えます。

手順

-10-14Frのサイズの膀胱留置カテーテルを用意します。

-カテーテルキシロカイン®ゼリーを塗ります。

-10cm程度、鼻腔に挿入します。10cm以上挿入しないように注意します。

-5-8mL程度、空気をバルーンに注入し、前方に軽く牽引します。

-先端はペアン等でクランプし、皮膚との接触部にはガーゼを挟みます。

※褥瘡を予防する目的です。

-前方パッキングはできないため、前述のガーゼパッキングを併用します。

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今日の臨床サポート 鼻出血

 

④その他

・止血用ゼラチンスポンジ(スポンゼル®)は鼻腔挿入により、止血効果が期待できます。

→圧迫効果は弱いため、圧迫止血等に併用するとよいと考えます。

・その他にもバイポーラ等による焼灼、血管結紮術などがあります。

放射線科医の協力のもと、経動脈的塞栓術が施行されることもあります。