内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

片頭痛の診療

●この記事は2021/11/27に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

片頭痛はcommon diseaseです。

 

日常臨床でも比較的よく遭遇します。

 

今日はそんな片頭痛について勉強していきます。

 

頭痛の診療ガイドライン2021発刊に合わせて、内容を更新しています。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版

 

 

【基本事項】

・日本の年間有病率は8.4%で、前兆なしが5.8%、前兆ありが2.6%です。

・特に20-40歳台の女性に多く、30歳台女性の有病率は約20%にものぼります。

・多くは加齢に伴い改善傾向となりますが、年間約2.5%慢性片頭痛(後述)に移行します。

・後述の診断基準からも明らかですが、初回の頭痛発作では確定診断できません。

→SNNOOP10(後述)にもあるように、"新規発症"の頭痛は二次性頭痛を鑑別します。

誘発/増悪因子

-精神的因子:ストレス、ストレスからの解放、疲労、睡眠の過不足。

-内因性因子:月経周期。

-環境因子:天候の変化、温度差、におい、音、光。

-ライフスタイル因子:運動、欠食、性的活動、旅行。

-食事性因子:空腹、脱水、アルコール、特定の食品。

前兆のある片頭痛患者の卵円孔開存(PFO)の有病率は約50%です。

→PFOは前兆のある片頭痛のリスクを約3倍高めると報告されています。

45歳未満の女性の前兆のある片頭痛では、脳梗塞のリスクが軽度増加する可能性があります。

※ただし、この年齢層の虚血性脳卒中の年間発症率は極めて低いとされます。

前兆のある片頭痛では、エストロゲン含有の経口避妊薬は原則禁忌です。

前兆のない片頭痛でも、慎重投与です。原則として禁煙を推奨します。

女性患者の約半数で、発作が月経周期に関連して生じます。

→ICHD-3では月経時頭痛などとしてサブタイプ分類も為されています。

※治療は概ね通常の片頭痛に準じます。

 

【診断基準(国際頭痛分類第3版(ICHD-3))】

①前兆のない片頭痛(1.1)

A

B-Dを満たす頭痛発作が5回以上ある

B

頭痛の持続時間は4-72時間(未治療または治療が無効の場合)

C

頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす

1.片側性

2.拍動性

3.中等度-重度の頭痛

4.日常的な動作(歩行や階段昇降など)で頭痛が増悪する

 あるいは頭痛のため日常的な動作を避ける

D

頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす

1.悪心または嘔吐

2.光過敏および音過敏

E

ほかに最適なICHD-3の診断がない

 

②前兆のある片頭痛(1.2)

A

BおよびCを満たす発作が2回以上ある

B

以下の完全可逆性前兆症状が1つ以上ある

①視覚症状 ②感覚症状 ③言語症状

④運動症状 ⑤脳幹症状 ⑥網膜症状

C

以下の6つの特徴の少なくとも3項目を満たす

①少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展する

②2つ以上の前兆が引き続き生じる

③それぞれの前兆症状は5-60分持続する

④少なくとも1つの前兆症状は片側性である

⑤少なくとも1つの前兆症状は陽性症状である

⑥前兆に伴って、あるいは前兆出現後60分以内に頭痛が発現する

D

ほかに最適なICHD-3の診断がない

 

●前兆について

定義:5-60分持続し、発作前60分以内に生じる完全可逆性の再発性中枢神経症状。

・前兆の発現前-発現時には、大脳皮質の局所脳血流の減少が生じています。

種類:視覚症状、感覚症状、言語症状、運動症状、脳幹症状、網膜症状。

・前兆は約30%に認め、その90%以上が視覚症状(特に閃輝暗点)とされます。

閃輝暗点:固視点付近にジグザグ形が現れ拡大し、閃光で縁取られ、様々な程度の暗点を残します。

感覚症状:チクチク感が一側の身体/顔面/舌に波及します。感覚鈍麻のみの場合もあります。

言語症状:通常は失語です。頻度は高くありません。

※視覚症状、感覚症状、言語症状を典型的前兆と呼びます。

運動症状:脱力で、"片麻痺片頭痛"を考慮します。

脳幹症状:構音障害、回転性めまい、耳鳴、難聴、複視、運動失調、意識レベル低下。

→このうち2つが2回以上みられる場合、"脳幹性前兆を伴う片頭痛"を考慮します。

網膜症状:単眼の視覚症状(閃輝暗点/視覚消失)で、"網膜片頭痛"を考慮します。

・なお典型的前兆のみで頭痛を伴わないものも存在し、ほとんどが視覚性前兆です。

高齢者(特に前兆のある片頭痛からの進展が多い)に多く、TIAてんかんが鑑別です。

→積極的に脳波頭部MRIを検討しますが、積極的な治療は要さないことが多いです。

 

●慢性片頭痛

ICHD-3診断基準(1.3)

A.片頭痛様または緊張型頭痛様の頭痛が月に15日以上の頻度で3か月を超えて起こり、BとCを満たす。

B.「前兆のない片頭痛」の診断基準B-Dを満たすか、「前兆のある片頭痛」の診断基準BおよびCを満たす発作が併せて5回以上あった患者に起こる。

C.3か月を超えて月に8日以上で、下記のいずれかを満たす。

-1.前兆のない片頭痛の診断基準CとDを満たす。

-2.前兆のある片頭痛の診断基準BとCを満たす。

-3.発症時には片頭痛であったと患者が考えており、トリプタンか麦角誘導体で改善する。

D.ほかに最適なICHD-3の診断がない。

・慢性片頭痛は、頭痛が月≧15日(月≧8日は片頭痛の特徴)3か月以上起こります。

・有病率は1.4-2.2%とされ、反復性片頭痛が2.5%/1年で進行します。

→診断に際しては、後述する頭痛ダイアリーが重要になります。

薬剤の使用過多による頭痛(MOH)との鑑別や併存が問題となり得ます。

リスク因子:女性、肥満、薬剤使用過多、頭痛緩和/予防が不十分、ストレスなど。

治療:原則として通常の片頭痛治療で用いる発作予防薬の使用を検討します。

→発作治療薬は、MOH予防のため週2日以下の使用にとどめます。

 

不思議の国のアリス症候群

片頭痛では"不思議の国のアリス症候群"という病態を伴うことがあります。

・特に脳幹性前兆を伴う片頭痛で頻度が高いとされています。

・以下の4つの主要症状を特徴とします。

①身体像の奇妙な変化:身体の一部が大きくor小さく感じます。

②視覚的な物体の大きさや距離の変化

③空中浮遊の錯覚的感覚:浮いているような感覚を持ちます。

④時間的感覚の錯覚的変化:時間が早送りor遅く進む感覚を持ちます。

片頭痛のみでなく、EBV感染が病態に関与している可能性も想定されています。

自然軽快する症例もあるとされますが、その割合等は判然としません。

 

【治療】

①頭痛ダイアリー

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頭痛ダイアリーとは|頭痛オンライン - 沢井製薬

・上記のように、頭痛や薬剤服用などについて記載します。

月経時片頭痛慢性片頭痛の診断、薬物乱用頭痛の予防にも役立ちます。

 

②発作治療薬

(0)基本事項

・頭痛の診療ガイドライン2021を軸に考えます。

・対処法として静かな暗室での休養疼痛箇所の冷却入浴を控えることも重要です。

治療薬の種類アセトアミノフェン、NSAIDs、トリプタン、エルゴタミン、制吐薬。

・上記から支障の重症度に応じて治療薬を選択する方法が推奨されています。

→この方法を"stratified care(層別治療)"と呼びます。

・GLではこれに段階的治療であるstep careを組み合わせた投与法が推奨されています。

軽-中等度:まずはNSAIDsを使用し、無効例でトリプタンを使用します。

中等-重度:最初からトリプタンを使用します。

→トリプタンで不十分な場合には、NSAIDsとトリプタンの併用を考慮します。

・いずれでも悪心/嘔吐に対する制吐薬の併用は有用です。

・治療効果判定は、服用2時間後の頭痛消失または明らかな軽減とします。

頭痛発現後可及的速やかに内服させ、同じ薬剤で3回は効果を試します。

前兆期の内服でも支障はないものの、無効である可能性があります。

 

トリプタン総論

・トリプタンは選択的セロトニン受容体作動薬です。

・本邦では以下の5種類が使用可能です。

-スマトリプタン/イミグラン®:錠剤、点鼻薬、皮下注射薬。

-ゾルミトリプタン/ゾーミック®:錠剤、口腔内崩壊錠。

-エレトリプタン/レルパックス®:錠剤、錠剤、口腔内崩壊錠。

-リザトリプタン/マクサルト®:錠剤、口腔内崩壊錠。

-ナラトリプタン/アマージ®:錠剤。

・種類により、作用する受容体や薬物動態が少しずつ異なります。

→そのため、ある種類が無効でも、他の種類が有効なことがあります。

・ただし、トリプタンが無効である症例も約1/3存在します。

・また、片麻痺片頭痛脳幹性前兆を伴う片頭痛では推奨されていません

禁忌:虚血性心疾患(異型狭心症含む)、脳血管障害(TIA含む)、末梢血管障害、コントロール不良の高血圧症、重篤な肝機能障害。

併用禁忌:エルゴタミン、他のトリプタン、MAO阻害薬(中止後2週間以内も含む)。

※製剤により、抗HIV薬も併用禁忌薬に含まれます。

副作用不整脈(特にWPW症候群)、虚血性心疾患、倦怠感、悪心/嘔吐、眠気など。

※以下の各論は主に参考文献を参考にした記載となっています。

 

スマトリプタン(イミグラン®)

・日本で最初に認可されたトリプタンです。

効果発現時間の目安:錠剤で45-60分、皮下注射薬で10分です。

非経口薬(特に皮下注射薬)重症発作に有効とされます。

非経口薬適応例(頭痛の診療ガイドライン2021)

-重度の発作のため日常/社会生活に多大な支障をきたす場合

-頻回の嘔吐などで経口薬内服が困難な場合

※上記と群発頭痛にはスマトリプタン在宅自己注射も適応です。

投与例

-イミグラン®錠 50mg 頓用 2時間以上あけて 最大200mg/日。

※50mgで効果不十分の場合、次回から100mg/回投与に増量可。

-イミグラン®点鼻薬 20mg 頓用 2時間以上あけて 最大40mg/日。

-イミグラン®注 3mg 皮下注 1時間以上あけて 最大6mg/日。

 

その他のトリプタン製剤

ナラトリプタンは効果発現時間が遅いものの、効果持続時間が長いです。

→例えば、発作消失後にすぐに発作が出現する場合に適しています。

リザトリプタンはプロプラノロールと併用禁忌です。

エレトリプタンは効果はマイルドなものの、忍容性に優れます

効果発現時間の目安

-ゾルミトリプタン:45-60分 -ナラトリプタン:4時間

-リザトリプタン:30分 -エレトリプタン:30分

投与例

-ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®)錠 2.5mg 頓用 2時間以上あけて 最大10mg/日。

※2.5mgで効果不十分の場合、次回から5mg/回投与に増量可。

-ナラトリプタン(アマージ®)錠 2.5mg 頓用 4時間以上あけて 最大5mg/日。

-リザトリプタン(マクサルト®)錠 10mg 頓用 2時間以上あけて 最大20mg/日。

-エレトリプタン(レルパックス®)錠 20mg 頓用 2時間以上あけて 最大40mg/日。

※20mgで効果不十分の場合、次回から40mg/回投与に増量可。

 

●重症発作/発作重積の急性期治療

発作重積片頭痛の診断がついている患者で、重度の頭痛が72時間以上持続するもの。

・発作重積でなくても、重症発作はしばしばER受診の契機になります。

・この場合、嘔吐もあり病歴聴取も難しいことが多く、速やかに治療を開始します。

※ただし、SAHなどの危険な二次性頭痛を必ず除外することが前提となります。

治療

-補液:嘔吐による脱水の改善と、治療薬による低血圧等に備えるためです。

-スマトリプタン3mg皮下注:頭痛再燃に注意します。

-制吐薬:メトクロプラミド10mg静注かプロクロルペラジン5mg筋注が有効です。

-片頭痛再燃が懸念される場合に考慮する薬剤

ハロペリドール静注

プロポフォール静注

デキサメタゾン静注(10-24mg)

 

③発作予防薬

適応

-月に2回以上の片頭痛発作がある場合

-生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合

-発作治療薬のみでは日常生活に支障をきたす場合

-発作治療薬を使用できない場合

-永続的な神経障害をきたし得る特殊な片頭痛の場合

投与例

-プロプラノロール(インデラル®) 20(-60)mg/日 分2。

-バルプロ酸(デパケン®R) 400(-600)mg/日 分2or分1。

-アミトリプチン(トリプタノール®) 10(-60)mg/日 就寝前。

-ロメリジン(ミグシス®) 10(-20)mg/日 分2。

-ガルカネズマブ(エムガルティ®)皮下注 120mg/月(初回のみ240mg)。

-フレマネズマブ(アジョビ®)皮下注 225mg/4週または675mg/12週。

-エレヌマブ(アイモビーグ®)皮下注 70mg/4週。

・上記のうちアミトリプチン以外は、予防薬として日本で保険適用されています。

※アミトリプチンは、厚労省通知により適応外使用が認められています。

・また、ロメリジン以外はGLで推奨"強い"、エビデンス"A"になります。

※ロメリジンは推奨"弱い"、エビデンス"B"です

低用量から開始し、有害事象がなければ、十分な効果が得られるまで増量します。

・十分な効果とは"発作頻度または日数の50%以上の減少"とするのが一般的です。

2-3か月かけて効果を判定し、忍容性が良ければ6-12か月程度は継続します。

→コントロール良好になれば予防薬は漸減-中止も可能とされます。

プロプラノロールリザトリプタンと併用禁忌です。

妊娠可能年齢の女性の場合、バルプロ酸は第一選択としません

CGRP関連抗体薬ではガルカネズマブフレマネズマブエレヌマブが保険適用です。

→いずれも高価であり、厚労省の最適使用推進ガイドラインでは以下の記載です。

投与対象となる患者:以下の1-4を全て満たす。

1.ICHD-3を参考に診療し、前兆のあるorない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、または慢性片頭痛であることが確認されている。

2.本剤の投与開始前3か月以上において、1か月あたりのMHDが平均4日以上である。

3.睡眠、食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメント等の非薬物療法及び片頭痛発作の急性期治療等を既に実施している患者であり、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている。

4.本邦で既承認の片頭痛発作の発症抑制薬(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジン等)のいずれかが、下記のうちの1つ以上の理由によって使用又は継続できない。

⑴効果が十分に得られない

⑵忍容性が低い

⑶禁忌、又は副作用等の観点から安全性への強い懸念がある 

※MHD(Migraine Headache Days):片頭痛(疑い)が起こった日数のこと。

・なおCGRP関連抗体薬は、既存の予防薬との併用も可能です(エビデンスは不十分)。

片頭痛のフォローアップは重症度に応じて1週間-3か月ごとに行います。

6か月以上発作がない場合は、終診とすることも考慮します。

※フォローアップ指針はエキスパートオピニオンであり、正解はないと思います。

 

④妊娠/授乳中の治療

片頭痛は妊娠可能年齢の女性に好発するため、重要な項目になります。

・一般的に妊娠中は片頭痛が軽減する傾向にあります。

・なお、片頭痛患者では妊娠中の心血管疾患が増加する可能性が指摘されています。

妊娠初期(特に4-12週)は器官形成期のため、薬剤使用をできる限り避けます

・また、13週以降は胎児機能障害/胎児毒性が問題になります。

発作治療薬アセトアミノフェンが推奨されます。

※トリプタンは安全性未確立ですが、催奇形性率増加の報告はありません。

→リスクとベネフィットを考慮して、慎重に使用を検討します。

発作予防薬:原則使用せず、使用する場合はβ遮断薬か少量のアミトリプチンが推奨されます。

※β遮断薬のうち、プロプラノロールやメトプロロールが選択肢になります。

※少量とは30mg/日以下で、アミトリプチンは分娩3週間前には中止します。

授乳中の薬剤に際しては、国立成育医療研究センターのサイトが参考になります。

→例えばNSAIDs(アスピリン除く)、スマ/エレトリプタンなどが安全です。

 

片頭痛てんかん

①基本事項

片頭痛てんかんは相互に関連しており、双方向で罹患リスクが上昇します。

・また、両者とも発作性の神経疾患間欠期には症状がありません

→頭痛の診療ガイドライン2021には以下の共通点が挙げられています。

-発作前に前兆としての局在神経症状がある。

-発作後の一過性の後症状がある。

-抗てんかん薬が有効である。

-てんかん片頭痛(様頭痛)をきたす遺伝性疾患がある。

・一方で相違点として、発作の時間経過が挙げられています。

てんかん:前兆から発作開始まで数十秒から数分です。

片頭痛:前兆から発作開始まで数十分から1時間程度で、頭痛のピークまで数時間以上です。

・なお片頭痛の脳波異常としては、徐波化光刺激に対する抑制が特徴的です。

 

片頭痛前兆により誘発される痙攣発作

ICHD-3診断基準(1.4.4)

A.1種類のてんかん発作診断基準を満たす痙攣発作で、Bを満たす。

B.前兆のある片頭痛患者において、頭痛発作中か発作後1時間以内に起こる。

C.ほかに最適なICHD-3の診断がない。

・いわゆる”migralepsy”とも呼ばれる病態とほぼ同義とされます。

・ただしこの病態は、多くの場合、実は後頭葉てんかんであるという見解もあります。

→そもそもmigralepsyが存在するか否かについて、議論の余地があるものと考えます。

・また、てんかん性/片頭痛性視覚前兆を比較した報告もあります。

-持続時間はてんかん性で短く、5分がカットオフ値として適切である。

-てんかんでは同側の視野に出現し、突発することが多い。

-片頭痛ではしばしば出現側が変わり、比較的緩徐に進展することが多い。

 

てんかん発作による頭痛

ICHD-3診断基準(7.6)

A.Cを満たす全ての頭痛。

B.患者はてんかん発作を持っているか、最近発症した。

C.原因となる証拠として、以下の両方が示されている。

-1.頭痛は痙攣発作と同時または直後に発現した。

-2.頭痛は痙攣発作の後に自然に消失した。

D.ほかに最適なICHD-3の診断がない。

・上記は7.6.1「てんかん発作時頭痛」と7.6.2「てんかん発作後頭痛」に分類されます。

てんかん発作時頭痛

-部分てんかん発作中に引き起こされ、痙攣発作終了と同時または間もなく消失します。

-てんかん性放電と同側に起こります。

-また、頭痛が唯一のてんかん発作の症状である”てんかん片頭痛”もあります。

-てんかん片頭痛も、頭痛と発作時突発性脳波異常が同側に出現します。

てんかん発作後頭痛

-てんかん発作後3時間以内に起こり、発作終了後から72時間以内に自然軽快します。

-側頭葉/前頭葉てんかんの40%以上に認め、後頭葉てんかんの60%程度に認めます。

-特に強直間代性痙攣後に起こりやすいとされます。

 

【ERにおける片頭痛診療】 

⓪基本事項

・前述のように重症発作/発作重積はしばしばER受診の契機になります。

・従って、ERで片頭痛患者を診療する機会も時々あります。

・そのような場合に役立つと思われる情報を記載します。

 

①頭痛のred flag signs

片頭痛の内容に移る前に、二次性頭痛の除外について確認します。

片頭痛などの一次性頭痛は、原則として二次性頭痛を除外した上で診断します。

・そのため頭痛のred flag signsがあれば、二次性頭痛の可能性を検討します。

・まず①人生最悪の頭痛増悪傾向突然発症に注意します。

→いずれも認めなければ、一般的には緊急性が低いと考えられます。

・"SNOOP"も有名ですが、より感度が高いことが期待される"SNNOOP10"があります。

症候あるいは症状

関連する二次性頭痛の例

Systemic symptom

発熱,痙攣などの全身症状

感染や非血管性頭蓋内疾患

カルチノイド,褐色細胞腫

Neoplasm in history

悪性腫瘍の既往

転移性脳腫瘍

Neurological dysfunction

神経症状(意識障害含む)

血管性や感染等の多くの頭蓋内疾患

Onset of headache

突然発症の頭痛

くも膜下出血

その他の頚部を含む血管障害

Older age

高齢(50歳以上)

巨細胞性動脈炎,血管障害,腫瘍

その他多くの頭蓋内疾患

Pattern change or recent onset

いつもと異なる/新規発症

多くの頭蓋内疾患

Positional headache

体位性の頭痛

頭蓋内圧亢進症

頭蓋内圧低下症

Precipitated by exercise...etc

くしゃみ,運動などでの誘発

キアリ奇形

Papilledema

乳頭浮腫

頭蓋内圧亢進症

Progressive and atypical

進行性頭痛かつ非典型的症状

非血管性頭蓋内疾患

Pregnancy or puerperium

妊娠/産褥期

血管障害,硬膜穿刺後頭痛

高血圧性脳症,静脈洞血栓症など

Painful eye

(自律神経症状を伴う)眼痛

トロサ・ハント症候群

眼科疾患(緑内障など)

Posttraumatic

外傷後に生じた頭痛

硬膜下/外血腫,くも膜下出血

血管障害など

Pathology of the immune system

(AIDSのような)免疫系の病態

日和見感染

Painkiller overuse

頭痛薬乱用

薬物乱用頭痛

Neurology.2019;92:134-44

頭痛をきたす重篤な疾患としては、以下などが挙げられます。

-くも膜下出血 -髄膜炎 -脳出血 -頭部外傷 -RCVS

-頚動脈/椎骨動脈乖離 -静脈洞血栓症 -下垂体卒中

-一酸化炭素中毒 -巨細胞性動脈炎 -脳腫瘍

-脳膿瘍 -緑内障 -帯状疱疹 -子癇発作 など

 

②POUND

・特にERなどの忙しい現場では、診断基準と照合するのは骨の折れる作業です。

・そこで優れたprediction ruleとして"POUND"が非常に有用です。

4項目以上該当で陽性尤度比 24と、片頭痛の可能性がかなり高まります。

陽性尤度比(LR+):"有病者が無病者の何倍陽性になるか"という指標です。

-Palsatile:拍動性

-hOurs:4-72時間

-Unilateral:片側性

-Nausea:悪心・嘔吐

-Disabling:日常生活に支障あり

4項目以上:LR+ 24(可能性かなり高い)

3項目:LR+ 3.5

2項目以下:LR+ 0.41(可能性低い)

・ただし、忙しい現場であるほどred flag signsが隠れていないか注意します。

 

③鑑別疾患

-minor leak(微小出血)を伴う動脈瘤

-脳動脈解離(内頚系→三叉神経眼神経領域痛、椎骨系→後頚部痛)

-脳出血 -静脈洞血栓症 -巨細胞性動脈炎 -脳腫瘍

-可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS) -副鼻腔炎 -緑内障

脳神経内科ゴールデンハンドブック(改訂第3版)より引用

・上記をはじめとした器質性疾患除外のため、頭部MRI/Aが推奨されます。

・施設条件等で撮影できない場合は、最低でも頭部CTは検討するべき検査です。

※米国頭痛学会は"片頭痛の診断基準を満たす安定している頭痛"では画像検査を行わないように推奨しています。

→判断は容易ではなく、CT等が普及している日本では画像検査を行うべきと考えます。

 

●可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)

・RCVS:Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndromeの略です。

・上記のように、片頭痛の鑑別疾患の1つとなります。

好発:若年-中年の女性に好発します。男女比は1:2-3と言われています。

病態:可逆的な脳血管の攣縮に伴って、激しい雷鳴頭痛をきたす疾患です。

リスク因子:妊娠/出産、薬剤(免疫抑制薬など)、血液製剤など。

誘因:性行為、排便、運動、咳など。

頭痛:雷鳴頭痛で両側後頚部が多く、1-3時間かけて軽減します。

→典型的には1-4週の間に反復し、間欠期にも軽度の頭痛が存在します。

その他の症状:悪心、光過敏、音過敏など。

合併症:SAH、脳出血、痙攣、PRES、脳梗塞など。

脳梗塞以外は発症から1週間以内の早期合併症です。

画像所見:MRAでの多発する血管攣縮が特徴です。

→20%が初回評価で所見を呈さないとされ、期間をあけた再評価が必要です。

経過:一般的に予後良好で、(画像所見は)3か月以内に自然に改善します。

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