内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

片頭痛の診療

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●この記事は2021/1/15に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

片頭痛はcommon diseaseです。

 

アジア人の調整有病率は男性 2%、女性 7.7%という報告があるようです。

 

今日はそんな片頭痛について勉強していきます。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【頭痛のred flag signs】 

片頭痛などの一次性頭痛は、原則として二次性頭痛を除外した上で診断します。

・そのため頭痛のred flag signsがあれば、二次性頭痛の可能性を検討します。

・まず①人生最悪の頭痛増悪傾向突然発症に注意します。

→いずれも認めなければ、一般的には緊急性が低いと考えられます。

・"SNOOP"も有名ですが、より感度が高いことが期待される"SNNOOP10"があります。

症候あるいは症状

関連する二次性頭痛の例

Systemic symptom

発熱,痙攣などの全身症状

感染等の非血管性頭蓋内疾患

カルチノイド,褐色細胞腫

Neoplasm in history

悪性腫瘍の既往

転移性脳腫瘍

Neurological dysfunction

神経症状(意識障害含む)

血管性や感染等の多くの頭蓋内疾患

Onset of headache

突然発症の頭痛

くも膜下出血

その他の頚部含む血管障害

Older age

高齢(50歳以上)

巨細胞性動脈炎,血管障害,腫瘍

その他多くの頭蓋内疾患

Pattern change or recent onset

いつもと異なる/新規発症

多くの頭蓋内疾患

Positional headache

体位性の頭痛

頭蓋内圧亢進症

頭蓋内圧低下症

Precipitated by exercise...etc

くしゃみ,運動などでの誘発

キアリ奇形

Papilledema

乳頭浮腫

頭蓋内圧亢進症

Progressive and atypical

進行性頭痛かつ非典型的症状

非血管性頭蓋内疾患

Pregnancy or puerperium

妊娠/産褥期

血管障害,硬膜穿刺後頭痛

PIH関連,静脈洞血栓症など

Painful eye

(自律神経症状を伴う)眼痛

トロサ・ハント症候群

眼科疾患(緑内障など)

Posttraumatic

外傷後に生じた頭痛

硬膜下/外血腫

血管障害など

Pathology of the immune system

(AIDSのような)免疫系の病態

日和見感染

Painkiller overuse

頭痛薬乱用

薬物乱用頭痛

Neurology.2019;92:134-44

頭痛をきたす重篤な疾患としては、以下に注意します。

-くも膜下出血 -髄膜炎 -脳出血 -頭部外傷

-頸動脈・椎骨動脈乖離 -静脈洞血栓症 -下垂体卒中

-一酸化炭素中毒 -巨細胞性動脈炎 -脳腫瘍

-脳膿瘍 -緑内障 -帯状疱疹 -子癇発作 など

 

【基本事項】

・10歳代の発症が多く、特に男性は大部分が30歳までに発症します。

・アジア人の調整有病率は男性 2%、女性 7.7%という報告があります。

女性の方が約4倍頻度の高い疾患です。

・"発作"的な頭痛で、"寝て起きたら治ってた"という患者も多いようです。

エストロゲンとの関連が深く、女性患者の半数は月経との関連を示します。

→他にも妊娠中期以降に発作が減少したり、HRTで増悪したりします。

・診断基準でも明らかですが、初回の頭痛発作のみでは確定診断できません。

→SNNOOP10にもあるように、"新規発症"の頭痛は二次性頭痛を鑑別します

 

【診断基準(国際頭痛分類第3版)】

①前兆のない片頭痛

A

B-Dを満たす頭痛発作が5回以上ある。

B

頭痛の持続時間は4-72時間(未治療または治療が無効の場合)

C

頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす

1.片側性

2.拍動性

3.中等度-重度の頭痛

4.日常的な動作(歩行や階段昇降など)で頭痛が増悪する

 あるいは頭痛のため日常的な動作を避ける

D

頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす

1.悪心または嘔吐

2.光過敏および音過敏

E

その他の疾患によらない

 

②前兆のある片頭痛

A

B-Dを満たす頭痛発作が2回以上ある。

B

少なくとも以下の1項目を満たす前兆があるが、運動麻痺(脱力)は伴わない

1.陽性徴候(例えばきらきらした光・点・線)および・または

 陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状

2.陽性徴候(チクチク感)および・または

 陰性徴候(感覚鈍麻)を含む完全可逆性の感覚症状

3.完全可逆性の失語性言語障害

C

少なくとも以下の2項目を満たす

1.同名性の視覚症状および・または片側性の感覚症状

2.少なくとも1つの前兆は5分以上かけて徐々に進展するかおよび・または

 異なる複数の前兆が引き続き5分以上かけて進展する

3.それぞれの前兆の持続時間は5分以上60分以内

D

“前兆のない片頭痛”の診断基準B-Dを満たす頭痛が、

前兆の出現中もしくは前兆後60分以内に生じる

E

その他の疾患によらない

 

●コラム:前兆について

・前兆は約30%に認め、その90%以上が視覚性前兆とされます。

・頭痛を認めない"頭痛のない片頭痛前兆"という病態もあります。

→こちらは高齢発症も多く、TIAやSAHなどが鑑別となります。

・診断基準にある視覚/感覚/失語症状以外にも以下の前兆が知られています。

-片麻痺片頭痛片麻痺を前兆とします。家族性と孤発性があります。

-脳幹性片頭痛:構音障害、回転性めまい、耳鳴り、失調等を前兆とします。

 

●コラム:不思議の国のアリス症候群

片頭痛では"不思議の国のアリス症候群"という病態を伴うことがあります。

・特に前述の脳幹性片頭痛で頻度が高い(11%という報告もあり)とされています。

・以下の4つの主要症状を特徴とします。

①身体像の奇妙な変化:身体の一部が大きくor小さく感じます。

②視覚的な物体の大きさや距離の変化

③空中浮遊の錯覚的感覚:浮いているような感覚を持ちます。

④時間的感覚の錯覚的変化:時間が早送りor遅く進む感覚を持ちます。

片頭痛のみでなく、EBV感染が病態に関与している可能性も想定されています。

・"ロメリジン(ミグシス®)"などの片頭痛を用いることも多いようです。

自然軽快する症例もありますが、その割合等は判然としません。


【実話】幻覚を見る幼児…? 不思議の国のアリス症候群とは【 漫画動画 】

 

【POUND】

・特にERなどの忙しい現場では、診断基準と照合するのは骨の折れる作業です。

・そこで優れたprediction ruleとして"POUND"が非常に有用です。

4項目以上該当で陽性尤度比 24と、片頭痛の可能性がかなり高まります。

陽性尤度比(LR+):有病者が無病者の何倍陽性になるか、という指標です。

-Palsatile:拍動性

-hOurs:4-72時間

-Unilateral:片側性

-Nausea:悪心・嘔吐

-Disabling:日常生活に支障あり

4項目以上:LR+ 24(可能性かなり高い)

3項目:LR+ 3.5

2項目以下:LR+ 0.41(可能性低い)

・ただし、忙しい現場であるほどred flag signsが隠れていないか注意します。

 

【鑑別疾患】

-minor leak(微小出血)を伴う動脈瘤

-脳動脈解離(内頚系→三叉神経眼神経領域痛、椎骨系→後頚部痛)

-脳出血 -静脈洞血栓症 -巨細胞性動脈炎 -脳腫瘍

-可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS) -副鼻腔炎 -緑内障

・上記をはじめとした器質性疾患除外のため、頭部MRI/Aが推奨されます。

・施設条件等で撮影できない場合は、最低でも頭部CTは施行すべき検査です。

・血管性疾患を疑った場合、採血項目に凝固系を忘れないようにします。

※一方で、米国頭痛学会は"片頭痛の診断基準を満たす安定している頭痛"では画像検査を行わないように推奨しています。

→医師の経験値も関連しますが、自信がない場合は画像検査を行うべきと考えます。

 

●コラム:可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)

・RCVS:Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndromeの略です。

・上記のように、片頭痛の鑑別疾患の1つとなります。

好発:若年-中年の女性に好発します。男女比は1:2-3と言われています。

病態:可逆的な脳血管の攣縮に伴って、激しい雷鳴頭痛をきたす疾患です。

リスク因子:妊娠/出産、薬剤(免疫抑制薬など)、血液製剤など。

誘因:性行為、排便、運動、咳など。

頭痛:雷鳴頭痛で両側後頚部が多く、1-3時間かけて軽減します。

→典型的には1-4週の間に反復し、間欠期にも軽度の頭痛が存在します。

その他の症状:悪心、光過敏、音過敏など。

合併症:SAH、脳出血、痙攣、PRES、脳梗塞など。

脳梗塞以外は発症から1週間以内の早期合併症です。

画像所見:MRAでの多発する血管攣縮が特徴です。

→20%が初回評価で所見を呈さないとされ、期間をあけた再評価が必要です。

経過:一般的に予後良好で、(画像所見は)3か月以内に自然に改善します。

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見逃してはならない怖い頭痛:RCVSと椎骨動脈解離 | ブログ

 

【治療】

①頭痛日記

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頭痛ダイアリーとは|頭痛オンライン - 沢井製薬

・上記のように、頭痛や薬剤服用などについて記載します。

・隠れた病態の発見や薬物乱用頭痛の予防にも役立ちます。

 

②発作治療薬

トリプタン製剤が第一選択です。

・種々のトリプタン製剤があり、どれが有効かは個人差が大きいです。

頭痛後早く内服するほど有効ですが、前兆時の内服は無効の可能性があります。

禁忌:虚血性心疾患(異型狭心症含む)、脳血管障害(TIA含む)、末梢血管障害、コントロール不良の高血圧症、重篤な肝機能障害。

併用禁忌:エルゴタミン系薬剤、MAO阻害薬(中止後2週間以内も含む)。

軽症例ではNSAIDsやアセトアミノフェンも有効です。

・悪心が強い場合はナウゼリン®等の制吐薬も使用可能です。

妊婦ではアセトアミノフェンが第一選択になります。

→どうしてもトリプタンを用いるなら、スマトリプタンが最も安全と思われます。

 

スマトリプタン(イミグラン®)

・日本で最初に認可されたトリプタン製剤です。

効果発現時間:錠剤で45-60分、皮下注製剤で10分です。

・特に皮下注製剤は90%の症例に有効とされ、自己注射用キットもあります。

投与例

-イミグラン®錠 50mg 頓用 2時間あけて 最大200mg/日。

-イミグラン®点鼻薬 20mg 頓用 2時間あけて 最大40mg/日。

-イミグラン®注 3mg 皮下注 1時間あけて 最大6mg/日。

 

その他のトリプタン製剤

ナラトリプタンは効果発現時間が遅いものの、効果持続時間が長いです。

→発作消失後にすぐに発作が出現する場合に適しています。

リザトリプタンは最も有効性が高いとされています。プロプラノロールと併用禁忌です。

エレトリプタンは効果はマイルドなものの、忍容性に優れます

効果発現時間

-ゾルミトリプタン:45-60分 -ナラトリプタン:4時間

-リザトリプタン:30分 -エレトリプタン:30分

投与例

-ゾルミトリプタン(ゾーミックRM®)錠 2.5mg 頓用 2時間あけて 最大10mg/日。

-ナラトリプタン(アマージ®)錠 2.5mg 頓用 4時間あけて 最大5mg/日。

-リザトリプタン(マクサルトRPD®)錠 10mg 頓用 2時間あけて 最大20mg/日。

-エレトリプタン(レルパックス®)錠 20mg 頓用 2時間あけて 最大40mg/日。

 

③発作予防薬

適応

-月に2回以上の片頭痛発作がある場合

-発作治療薬のみでは日常生活に支障をきたす場合

-発作治療薬を使用できない場合

-永続的な神経障害をきたし得る特殊な片頭痛の場合

投与例

-アミトリプチン(トリプタノール®) 10(-60)mg/日 就寝前。

-バルプロ酸(デパケン®R) 400(-600)mg/日 分2or分1。

-プロプラノロール(インデラル®) 20(-60)mg/日 分2。

-ロメリジン(ミグシス®) 10(-20)mg/日 分2。

低用量から開始し、有害事象がなければ、十分な効果が得られるまで増量します。

2-3か月かけて薬剤の効果を判定し、6か月程度は予防療法を継続します。

→コントロール良好になれば予防薬は漸減-中止とします。

・国際的にはバルプロ酸が最もよく使われていると言われています。

妊婦に予防薬を用いるならプロプラノロールを選択します。

※ただし、妊娠により症状は改善傾向になります。

プロプラノロールはリザトリプタンと併用禁忌です。

・近年、CGRP(やその受容体)を標的とした抗体製剤の研究が進められています。

→一部は発作に使用可能で、トリプタン製剤禁忌例で良い適応となるかもしれません。

片頭痛のフォローアップは重症度に応じて1週間-3か月ごとに行います。

6か月以上発作がない場合は、終診とすることも考慮します。