キューピーです。
アルコール依存症の診療は精神科領域の、専門性の高いものと考えます。
しかし、どのような科でもアルコール依存症を伴う患者が入院することはあります。
その際には離脱予防が特に重要となってきます。
今回は、アルコール依存症が併存する患者の入院管理に関してまとめてみました。
※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。
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目次
【参考文献】
【アルコール依存症とは】
・”アルコール使用障害(alcohol use disorder)”とも呼ばれます。
・強い飲酒欲求が制御できず、持続的に多量摂取を続け、耐性や離脱が生じ、社会生活に問題を来している状態を指します。
・臨床的には"CAGE法"による診断が簡便であり、幅広く用いられています。
-Cut down:飲酒を減らさないといけないと感じたことがある。
-Annoyed by criticism:他人から飲酒を批判され気に障ったことがある。
-Guilty feeling:飲酒につき罪の意識を感じたことがある。
-Eye opener:二日酔いをすっきりさせようと迎え酒をしたことがある。
→2つ以上該当でアルコール依存症(疑い)と考えます。
・アルコール依存症を疑った場合は、速やかに専門医受診とします。
・未治療の場合、一般的に入院での治療導入となります。
・入院期間は概ね2-3か月となるようです。
【アルコール離脱】
①診断
・長期かつ多量の飲酒の後、飲酒量の急な減量の際に、以下の2つ以上を生じるものです。
-自律神経系過活動(発汗、頻脈など) -手指振戦の増加
-不眠 -不安 -精神運動興奮
-嘔気や嘔吐 -幻覚や錯覚 -全般性強直間代発作
・多くは2-3日で治まるとされています。
・内科や外科などの他科入院では、最も問題になる症候群であると考えます。
②予防投薬
・投与例1:ジアゼパム(セルシン®)錠 2mg 4錠4× 10日分。
・投与例2:ロラゼパム(ワイパックス®)錠 0.5mg 4錠4× 10日分。
※1日量はそれぞれ20mg、3mgを極量とします。
・ベンゾジアゼピン系薬剤が第一選択となります。
・抗精神病薬はせん妄長期化のリスクもあり、少なくとも単独での使用は控えます。
③振戦せん妄
・離脱後3日頃に生じ、離脱症状から移行するイメージです。
※アルコール離脱の一部が振戦せん妄に移行するという考え方でよいと思われます。
・自律神経系過活動、知覚障害(幻覚など)、精神運動活動の変動(傾眠-興奮)を認めます。
・日常で行っている作業動作が見られる"作業せん妄"も症状の1つです。
・症状が強く、経口での投薬が困難な場合は静注が考慮されます。
・投与例:ジアゼパム(セルシン®)注 5mg 2分かけて 軽い傾眠状態になるまで反復。
→同時にBVMとフルマゼニル(アネキセート®) 0.2mgを準備しておきます。
※振戦せん妄の初期の治療目標は、興奮のコントロールとなります。
【ウェルニッケ・コルサコフ症候群】
①基本事項
・ウェルニッケ脳症:運動失調、眼球運動障害、意識障害を三徴とします。
・コルサコフ症候群:健忘、記憶障害、失見当識、作話を特徴とします。
・いずれもビタミンB1欠乏で生じる一連の病態とされています。
→ウェルニッケ・コルサコフ症候群と呼ばれます。
・予防のため、アルコール依存症患者に対する補液は、糖を含まないものでの開始が推奨されます。
・症状がなくても、アルコール依存症患者ではビタミンB1投与の閾値を低くします。
・ウェルニッケ脳症では頭部MRI(T2WIやFLAIR)で第3脳室周囲(視床内側)、第4脳室周囲、乳頭体に対称性の高信号域を認めます。
Wernicke脳症の画像診断(ビタミンB1不足)【画像診断チャンネル】アルコールによる脳障害
②ビタミンB1補充
・静注例:アリナミン®F50注 10A+生食100mL 30分かけて 3日間。
→反応があれば、250mg(5A)で3-5日継続します。
※ただし、日本では上記のような大量投与は保険適用外です。
・投与量についてはコンセンサスがなく、expert opinion中心との記載が目立ちました。
・自分で文献を渉猟した上で、上記のような投与量記載としました。