内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

アナフィラキシーの診療

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キューピーです。

 

アナフィラキシーは緊急性の高い病態です。

 

また、若年者でもICU送りになり得る怖い病態です。

 

つつがなく診療が行われていることと思いますが、改めて勉強してみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【基本事項】

定義:アレルゲン等の侵入により急速に発症した重度の全身性アレルギー反応で、死に至る危険のあるもの。

急性期経過:アレルゲン曝露後、数秒-数時間(多くは5-30分)で発症します。数時間かけて自然軽快することが多いとされます。

二相性反応

-急性期症状の治癒後、発症から72時間以内(多くは8-10時間)に症状が再燃することです。

-頻度は約5%で、多くは軽症例(皮膚症状程度)ですが稀に重症例もあります。

-不十分な治療、遅発型IgE反応、アレルゲン再吸収など種々の機序が想定されています。

早期治療に寄与する有用な検査はないとされており、病歴のみで診断する必要があります。

 

【原因】

食物

卵、乳製品、小麦、甲殻類など

薬物

造影剤、抗菌薬、NSAIDs、局所麻酔薬など

昆虫毒

蜂など

ワクチン

卵などの交差反応

運動誘発性

小麦、甲殻類など特定食物摂取後2時間以内の運動負荷

特発性

原因不明(20%)

・上記は代表例でこの他にも原因はあります。

・"以前食べて問題なかった食物"でも、運動誘発性ヒスタミン中毒の可能性を考慮します。

ヒスタミン中毒:サバやマグロなどに含まれるヒスタミンが原因で生じます。

→治療はアナフィラキシーに準じます。原因食物を禁止する必要はありません。

※うまみ成分のヒスチジンが、鮮度の低下とともにヒスタミンに変化することで生じます。

 

●コラム:アレルゲンの交差反応

・原因物質のみでなく、以下のアレルゲンでは交差反応に注意します。

既知のアレルギー

その他のアレルゲン

危険度

メロン

バナナ、アボカド、スイカ

92%

甲殻類

その他の甲殻類

75%

ピーナッツ

ナッツ

59%

モモ

リンゴ、プラム、サクランボ、ナシ

55%

シラカバ・ブタクサ

リンゴ、モモ、メロン

55%

ラテックス

キウイ、バナナ、アボカド

35%

小麦

ライ麦、大麦

20%

牛乳

牛肉

10%

鶏肉

5%

 

【症状】

皮膚/粘膜症状:蕁麻疹、紅斑、掻痒感、口唇/眼瞼腫脹、結膜充血。

呼吸器症状:吸気性喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ、咳嗽、鼻汁/鼻閉、くしゃみ。

循環器症状:頻脈(稀に徐脈)、血圧低下。

消化器症状:腹痛、嘔吐、下痢、口腔内/咽頭違和感。

(・神経症:眠気、頭痛、不穏、意識消失など。)

※皮膚/粘膜症状は90%に見られ最多です。

皮膚/粘膜症状を認めないアナフィラキシーが約10%存在します。

 

【診断基準】

以下の3つの基準のうち1つを満たした場合に可能性が高い。

1.皮膚/粘膜症状が急に出現し、下記の1つ以上が続く。

 a.呼吸障害:呼吸困難、喘息、低酸素、ピークフロー低下

 b.血圧低下または虚脱/失神/失禁

2.アレルゲン物質疑いに曝露後、急激に以下の2つ以上を認める。

 a.皮膚/粘膜症状

 b.呼吸障害

 c.血圧低下または虚脱/失神/失禁など

 d.持続する消化器症状:腹痛、嘔吐

3.確定しているアレルゲン物質に曝露後、数分-3時間後に血圧低下を認める。

 a.小児(乳児含む):収縮期血圧低値または30%以上の低下

 b.成人:収縮期血圧90mmHg以下または30%以上の低下

※1歳未満:70mmHg以下 1-10歳:70+(2×年齢)mmHg以下

 

【初期治療】

⓪原因の停止

・被疑薬が投与中であれば速やかに停止します。

・虫刺傷で針などが残っている場合、すぐに除去します。

 

①アドレナリン(ボスミン®)筋注

適応:全身性蕁麻疹または抗原曝露+ABCDいずれかの症状。

※俗に言う"Dr林のABCD"です。呼吸器症状、ショック、消化器症状を確認します。

※適応基準は他にありますが、即座に判断できるという意味でこれが良いと思います。

投与量:成人 0.3mg(-0.5mg)、小児 0.01mg/kg(-0.3mg)。

投与部位/経路/体位:大腿外側広筋/筋注/仰臥位。

※具体的には"大腿近位1/3前外側"です。なお皮下注は最高血中濃度到達が4倍遅いです。

※皮下脂肪が厚い患者では、長い針を使って確実に筋注となるようにします。

・効果が乏しい場合は5-15分ごとに反復投与可能です。通常は2回目までに効果が出ます。

※16-36%で2回以上の投与が必要であったという報告があります。

・上記の投与方法であれば、禁忌となる場面はないと考えてよいと思われます

 

●コラム:アドレナリン筋注無効時の対応

グルカゴン静注

投与例:グルカゴンGノボ静注用1mg(小児は0.02-0.03mg/kg)+生食20ml 5分かけて。

※効果が乏しければ5分ごとに反復投与可能です。

アドレナリン筋注を2回繰り返しても効果が乏しい場合に使用します。

特にβ遮断薬服用(内服/点眼)中の患者に効果を示しますが、そのような場合もまずはアドレナリン筋注を優先します。

・急速静注では催吐作用があるため、必ず緩徐静注とします。

 

β刺激薬吸入

投与例:ベネトリン®︎0.5ml+生食2ml ネブライザー 20分あけて3回まで。

・アドレナリン筋注を2回繰り返しても、喘鳴が残存する症例に使用可能です。

 

アドレナリン持続静注

投与例:アドレナリン1mg+生食100mL 50-100mL/hrで開始。

小児:アドレナリン[0.6×体重(kg)]mg+生食100mL 1mL/hrで投与。

アドレナリン筋注が無効かつ重症のショック症例で考慮します。

・投与量等もはっきりと確立されておらず、投与に慣れた医師が行うべきと考えます。

 

②ABC異常への対応

※本来は最優先されますが、アナフィラキシーではアドレナリン筋注が最優先です。

A気管挿管喉頭浮腫が強く困難時は輪状甲状靱帯切開を行います。

B:酸素10L/分で投与します。

C:細胞外液 10分で10mL/kg投与します。両足挙上、妊婦では左側臥位とします。

 

③抗ヒスタミン

投与例:ポララミン®5mg+ガスター®20mg+生食50ml 15分かけて。

・上記のようにH1ブロッカーとH2ブロッカーを併用することが推奨されます。

・議論の余地がありますが、主に皮膚症状への効果が期待されます。

・即効性も議論の余地がありますが、比較的速やかに症状改善を認めると考えます。

 

ステロイド

投与例:ハイドロコートン®200mg+生食50ml 30分かけて。

・急性期治療としての効果は期待できません。

・二相性反応予防目的に投与し得ますが、これについてもエビデンスは微妙です。

アスピリン喘息の存在を考慮し、上記のごとくリン酸エステル型を選択します。

※個人的には、投与の意義は薄いと考えます

 

【初期治療後の注意点】

10時間(ショック症例では24時間)程度の経過観察が必要であり、基本的に入院とします。

・帰宅とする場合は、以下の項目を満たすか確認します。

-二相性反応が起こる可能性が低い(≒重症例や再発例ではない)。

-症状やvital signが改善している。

-原因が判明している。

-経過を観察できる人が存在する。

-医療機関へアクセス不良ではない。

-医師、患者(家族)とも帰宅に対して不安がない。

・上記を満たさず帰宅する場合は、二相性反応のリスクを必ず説明して了承を得ます。

・また、原因精査も併せてアレルギー専門医(やかかりつけ)でのフォローを依頼します。

・帰宅時に内服の抗ヒスタミン薬を3日分程度処方することも可能です。

 

【エピペン®について】

・アドレナリン薬効量を速やかに筋注できる注入器との組み合わせ製剤です。

アナフィラキシー再発時の治療に重要であり、適応があれば処方を検討します。

適応

-避けがたい原因によるアナフィラキシーの既往

※食物、ラテックス、吸入アレルゲン、昆虫毒など。

-運動誘発性アナフィラキシーの既往

-原因不明のアナフィラキシーの既往

-喘息+アナフィラキシーの既往

用量:0.3mg。ただし体重15-30kgでは0.15mgです。

使用法

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※処方のためには処方医師として登録が必要であり、事前に講習を受ける必要があります。