内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

薬疹の診療

キューピーです。

 

病棟の看護師さんから「先生、薬疹みたいなんですが・・・」というコールは多いです。

 

僕も研修医1年目で初めて病棟当直をした日に、同じコールでパニックに陥った思い出があります。

 

そんな薬疹の診療についてまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【基本事項】

定義:経皮投与を除く全身投与により、体内に摂取された薬剤自体またはその代謝産物の直接的ないし間接的な作用によって誘導される皮膚粘膜病変。

・アレルギー、毒性、薬理作用など様々な発症機序が知られています。

・原因薬は多岐に渡りますが、特に抗菌薬やNSAIDsの頻度が高いとされます。

・浮腫性紅斑や丘疹を主症状とする丘疹紅斑型が最多ですが、あらゆる皮疹型を呈し得ます

・原因薬中止により速やかに軽快する軽症型が多くを占めますが、中止後も病勢が進行する重症型として以下が知られています。

-Stevens-Johnson症候群(SJS)

-中毒性表皮壊死融解症(TEN)

-薬剤性過敏症症候群(DIHS)

皮疹の性状だけで診断できるのは"固定薬疹"のみで、その他は内服歴/症状/検査等の情報が必須です。

・皮疹は体幹部(特に間擦部)から出現することが多いとされます。

・一般的に薬剤投与から1-2週間後に発症します。

薬疹既往がある患者に原因薬が投与された場合は、投与後直ちに発症します

・一方でDIHSは4週間前後に発症することが多いとされます。数年後の発症例もあるようです。

SJS/TENは数日-1週間程度と、比較的早期に発症する傾向があります。

 

【臨床所見】

①軽症-中等症の薬疹

・あらゆる皮疹型を呈し、発熱や掻痒感の有無/程度は症例により様々です。

・重要と思われる皮疹型について記載します。

丘疹紅斑型薬疹

-薬疹の臨床病型で最多とされます。

-大小の紅斑が体幹、四肢を中心に播種状に多発し、しばしば融合傾向を示します。

-様々な程度の掻痒感を伴うことが多いとされます。

-しばしば発熱も伴います。軽症例では伴いません。

-皮疹のみでは急性ウイルス性発疹症との鑑別は困難とされます。

※風疹、麻疹、伝染性単核球症、伝染性紅斑などで、ウイルス抗体価等で鑑別します。

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今日の臨床サポート より

 

固定薬疹

-同一薬剤摂取の度に同一部位に皮疹を繰り返す病態です。

-原因薬摂取後、数分-数時間といった短い時間で出現することが特徴です。

-口囲/口唇/外陰など皮膚粘膜移行部や四肢に好発する、類円形で境界明瞭な数cm大の紅色-紫色斑を呈します。

-灼熱感を伴い、水疱やびらんを伴うこともあります。

-色素沈着を残して治癒しますが、再発の度に色素沈着の度合いが増します。

-原因薬摂取を継続すると、多発する傾向があります。

-原因薬を摂取していない時は、単なる類円形の色素沈着局面であり、母斑や肝斑と誤診されやすいとされます。

-原因薬にはアセトアミノフェン、NSAIDs、総合感冒薬の成分、テトラサイクリンなどがあります。

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今日の臨床サポート より

 

②SJS/TEN

眼/口唇/外陰部など皮膚粘膜移行部広範囲に生じる紅斑/水疱/びらん/潰瘍を特徴とします。

顔面/頚部/体幹優位の全身に汎発する紅斑は隆起せず、中央部が暗紅色で、融合傾向を認めます。

・体表面積に占める表皮剥離の面積が10%未満のものをSJS10%を超えたものをTENとします。

38℃以上の発熱全身倦怠感といった全身症状を伴います。

・口腔内疼痛や咽頭痛のため、種々の程度に摂食障害を伴います。

・稀に喉頭粘膜障害や閉塞性細気管支炎、消化器粘膜障害(→消化管出血)を伴うことがあります。

・原因薬は抗痙攣薬(カルバマゼピン等)アセトアミノフェンアロプリノールが多いとされます。

※薬剤だけでなくHSVマイコプラズマ感染症の関連も示唆されています。

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薬疹(重症) Q2「スチーブンス・ジョンソン症候群」とはどんな病気ですか? より

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今日の臨床サポート より

 

③DIHS

・特定の薬剤内服開始から4週間前後(2-6週間)で発症します。数年後の発症例もあるようです。

・最大の特徴は原因薬剤中止後も2週間以上、症状が遷延することです。

顔面を含む全身に播種性紅斑丘疹または多形紅斑様皮疹を生じ、次第に融合します。

顔面浮腫を伴います。また、丘疹は眼囲を避け、鼻周囲や口囲に高度な傾向があります。

・時に出血のため紫斑様の所見を呈することもあります。

・典型例は発熱(≧38℃)リンパ節腫脹肝機能障害白血球増加(異型リンパ球/好酸球)を伴います。

原因薬は基本的に以下のいずれかに限られます。

-カルバマゼピン -フェニトイン -ゾニサミド -ラモトリギン

-バルプロ酸 -ジアフェニルスルフォン -サラゾスルファピリジン

-メキシレチン ジルチアゼム -アロプリノール

-ミノサイクリン -ピロキシカム

・またHHV-6を中心とするヘルペスウイルス科(CMV/EBV等)の再活性化も病態に寄与します。

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薬疹(重症) Q3「薬剤性過敏症症候群とはどういう病気ですか?」 より

 

【検査】

①軽症-中等症の薬疹

採血:急性ウイルス性発疹症との鑑別を要する場合は行います。

薬剤リンパ球刺激試験(DLST):特に感度の低さが問題となります。

パッチテスト:Ⅳ型アレルギーに対する検査法です。

内服誘発試験:上記で診断が確定できない場合に行います。

 

②SJS/TEN

採血:血算/生化学/ASO/HSV等ウイルス抗体価/マイコプラズマ抗体価を提出します。

便潜血検査:消化管出血を合併し、致死的になる場合があるためです。

細隙灯顕微鏡検査:眼科医により角膜/結膜障害等の眼病変の評価を行います。

皮膚生検:SSSSやトキシックショック症候群等との鑑別にも有効です。

DLST:安全に原因薬の推定を行うことができます。治療開始前に検体採取を行います。

・内服誘発試験やパッチテスト等は安全性の観点で議論の余地があります。

※安全性に留意した上で行われる場合もあります。

 

③DIHS

採血:肝機能障害、白血球増多(≧11000)、好酸球増多(≧1500)、HHV-6 IgG抗体価(ペア血清≧4倍)、免疫グロブリン(特にIgG)低下といった主要所見を確認します。

※保険適用外ですが、血清TARC値≧10000pg/mLはDIHSを強く示唆します。

原因薬推定はSJS/TENに準じます

※DLSTが急性期に陰性、軽快期以降長期に陽性となる特徴があります。

 

【治療】

①軽症-中等症の薬疹

・原因と推定される薬剤の投与を中止します。

・治療薬はステロイド外用薬を使用します。

-例1:マイザー®軟膏(ベリーストロング) 1日2回塗布 1-2週間。

-例2:リンデロン®V軟膏(ストロング) 1日2回塗布 1-2週間。

・掻痒感を認める場合はヒスタミン薬の内服を併用します。

-例1:ビラノア®錠 20mg 1錠分1 就寝前の空腹時 1-2週間。

※空腹時:概ね食事の1時間前または2時間以上後です。

-例2:タリオン®錠 10mg 2錠分2 朝夕食後 1-2週間。

※ビラノア®錠より眠気の副作用が出やすいとされます。

・発熱を伴ったり、掻痒感が強い場合はステロイド内服を選択します。

-例:プレドニン®錠 5mg 4錠分2 朝昼食後 4-5日で10mgずつ漸減。

※固定薬疹の場合は基本的に使用しません。

・全身症状、粘膜症状や肝機能障害など重症薬疹の可能性があれば、直ちに専門医へ紹介します。

 

②SJS/TEN

※専門医による治療介入が望ましいと考えます。

・できる限り早期にステロイド全身投与を開始します。

重症例ではステロイドパルスによる治療開始も考慮されます。

・重度の眼病変や呼吸障害を伴えば、それだけで重症と判断できます。

※皮疹評価も含む重症度スコア評価は、非専門医には困難と思われます。

・治療目標は皮疹の上皮化の完了です。

・ただし後遺症として眼病変や稀に慢性呼吸器病変が残存することがあります。

-例1:プレドニン®錠 1mg/kg/日 病勢に合わせて漸減。

-例2:ソル・メドロール注 1000mg/日 3日間。

※パルス後はプレドニゾロン 1mg/kg/日で開始し漸減していきます。

・上記のほかにステロイド点眼薬は必須です。感染予防のための皮膚粘膜の洗浄も重要です。

・病勢がコントロールできない場合は、免疫グロブリン製剤や血漿交換療法が選択肢となります。

 

③DIHS

※専門医による治療介入が望ましいと考えます。

ステロイド全身投与を行います。ステロイドパルスは原則行いません。

-例:プレドニン®錠 0.5-1mg/kg/日 5-10mg/週ずつ漸減。

※CMV再活性化を認める場合はガンシクロビル(デノシン®)投与も検討します。