内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

更年期障害の診療

キューピーです。

 

更年期障害は頻度がとても高い病態と考えられています。

 

また、症状についてもかなり多岐に渡ることが分かってきています。

 

今後、診療の機会は更に増加すると考えられ、一度しっかりとまとめようと思いました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

↓1日1クリックお願いしますm(__)m

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

 

 

目次

 

 

【参考文献】

 

【基本事項】

定義:更年期症状の中で日常生活に支障を来す病態。

更年期症状:更年期に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しないものを指します。

更年期:閉経の前後5年の計10年間を指します。概ね40-60歳の範囲に収まります。

※20-30歳代や60歳代以降の女性の新出の愁訴は、更年期障害でない可能性が高いです。

閉経:12か月間月経がないことで確定されます。日本人の中央値は50.5歳です。

・重要なことは"除外診断であること"と"日常生活に支障を来すこと"です。

・ライフサイクルの中で更年期症状は必発であり、日常生活に支障を来していなければ治療の必要はありません。

・病態はまだ明らかではありませんが、血清エストロゲン濃度の"ゆらぎ"に心理的因子や社会的因子が複合的に関与して発症に至ると考えられています。

 

【診断】

更年期障害には確立した診断基準がありません。最も重要なのは"除外診断"であることです。

・"40-60歳の女性が不定愁訴を訴えている場合"に、ひとまず疑います。

※更年期であることは年齢で推測する以外に、"月経周期が不規則になってきた"ことや"最終月経から数年経過している"ことなども参考になります。

・疑った場合は症状確認と除外診断を心がけます。

症状確認:"日本人女性の更年期症状評価表"が広く用いられています。

f:id:p_kun:20201120193026g:plain

女性の更年期障害について:ワタシのカラダ相談室-持田製薬株式会社 より

※日本人は"腰痛・肩こり"や"疲労"が最も多く、次いで"うつ・不安・不眠"が多い特徴があります。

鑑別疾患:症状に応じてあらゆる疾患が鑑別対象ですが、特に以下の疾患に注意します。

-甲状腺機能異常(亢進/低下)

-気分障害(特にうつ病)

-薬剤の副作用(サプリメント含む)

→初診時は甲状腺機能含む採血内服薬聴取うつ病症状があれば2週間以上持続するか確認します。

エストロゲンなどの女性ホルモン値は、測定の意義がありません。

 

参考:DSM-5におけるうつ病(大うつ病性障害)の診断基準

f:id:p_kun:20201120200237j:plain

第4章 認知症の予防 3.うつ予防との関わり | 公益財団法人 長寿科学振興財団 より

 

【治療】

治療目標:自覚症状の改善。多数の症状がある場合は、最も辛い症状の改善を目指します。

・薬物治療を開始する前に、傾聴食/運動習慣の改善を促します。

・傾聴を行うだけで症状が改善することもしばしば経験されるようです。

・生活習慣の改善、特に肥満の改善も症状改善に役立つことが知られています。

・以下に薬物療法について概説します。

 

漢方薬

非専門医が治療介入せざるを得ない場面では、最も開始しやすい薬剤と考えます。

エビデンスは不十分ですが、実臨床では広く使用されており、一定の有効性が想定されます。

・種々の処方がありますが、特に"三大漢方婦人薬"と呼ばれる以下の処方が用いられます。

-当帰芍薬散:体力が低下しており、冷え症で貧血傾向があり、頭痛/めまい/肩こりのある女性。

-加味逍遙散:虚弱体質で疲労感を訴えやすく、不眠や不安等の精神症状のある女性。

-桂枝茯苓丸:体力があり、赤ら顔でのぼせを訴える女性。

 

②ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)

※基本的には、産婦人科医による投薬が望ましいと考えます。

更年期障害に対して高い有効性が証明されており、最も有効な薬物療法です。

特にホットフラッシュや発汗などの血管運動神経症に対して、強いエビデンスがあります。

・また、エストロゲン減少に伴う脂質異常症骨粗鬆症に対しても有効性が証明されています。

有子宮女性に対するエストロゲン単剤投与は子宮内膜増殖症や子宮体癌のリスクを高めるため、黄体ホルモンを併用します。

子宮摘出後の女性にはエストロゲン単剤投与を選択します。

・黄体ホルモン併用により乳癌リスクが上昇することが知られていますが、5年未満の施行ならばリスクは上昇しないとされています。

→基本的には、"乳癌への影響は小さい"という捉え方が主流です。

・また、静脈血栓症の高リスク患者に対しては"経皮的"エストロゲン製剤の選択が推奨されています。

エストロゲン製剤の肝臓での初回通過効果で、凝固因子産生が促進されるためです。

禁忌

-重度の活動性肝疾患 -現在の乳癌とその既往 -現在の子宮内膜癌/低悪性度子宮内膜間質肉腫

-原因不明の不正性器出血 -妊娠の疑い -急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往

-心筋梗塞および冠動脈の動脈硬化性病変の既往 -脳卒中の既往

慎重投与

-子宮内膜癌の既往 -卵巣癌の既往 -子宮筋腫/子宮内膜症/子宮腺筋症の既往

-肥満 -60歳以上または閉経後10年以上の新規投与

-血栓症リスクあり -冠攣縮および微小血管狭心症の既往

-慢性肝疾患 -胆嚢炎および胆石症の既往 -重度の高トリグリセリド血症

-コントロール不良な糖尿病 -コントロール不良な高血圧症 

-片頭痛 -てんかん -急性ポルフィリン症 -SLE

エストロゲン製剤:子宮摘出後の女性であればこれのみの投与となります。

-例1:エストラーナテープ®0.72mg 入浴後1枚貼付 2日毎に貼替。

-例2:ディビゲル®1mg 1包/日 毎日塗布。

-例3:プレマリン®錠0.625mg 1錠/日 毎日内服。

黄体ホルモン製剤:有子宮女性であれば、上記に併用する必要があります。

-例1:デュファストン®錠5mg 1錠1×(持続的併用法)/2錠2×(周期的併用法)。

-例2:プロペラ®錠2.5mg 1錠1×(持続的併用法)/2錠2×(周期的併用法)。

持続的併用法と周期的併用法

f:id:p_kun:20201122123319j:plain

http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/HRT201603.pdf より

 

向精神薬

※基本的には、精神科医による投薬が望ましいと考えます。

・まず、向精神薬が必要と判断される症例は精神科医に紹介します。

・やむを得ず非専門医が治療を開始する場合は、SSRIを選択します。

SSRIはうつ症状のみならず、ホットフラッシュ等の血管運動神経症状にも有効性が示されています。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬も使用される傾向にありますが、デメリットが大きいため避けます。

-例1:レクサプロ®錠10mg 1錠/日 夕食後。

-例2:パキシル®錠10mg 1錠/日 夕食後。

 

【初診後の管理】

2週間-1か月の間隔で再診とします。

・"日本人女性の更年期症状評価表"による治療効果判定を行います。

3か月の診療で改善が認められない場合は、更年期外来を開設している施設へ紹介します。

・症状の安定化が得られれば、再診間隔を3か月程度まで延長できます

・また、治療を適宜終了することも可能です。

・HRTは脂質異常症骨粗鬆症への効果からも、長期継続も考慮されます。

HRTを長期継続する場合は、年1回の血液検査子宮内膜細胞診と経腟エコーマンモグラフィと乳腺エコーを行います。

※上記からもHRTは基本的に産婦人科医による施行が望まれます。