内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

子どもの腹痛

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キューピーです。

 

小児の腹痛も比較的多い主訴となります。

 

まずは浣腸を行うところが成人診療との大きな相違点となります。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【基本事項】

・特に急性の経過では緊急疾患の可能性もあり、必ず受診を推奨します。

・3歳未満は「お腹が痛い」と言えませんが、保護者が気付くことが多いようです。

・小児の腹痛の原因は便秘症が最も多いといわれています。

→多くの場合、まず浣腸を行うことから診療が開始となります。

次いで腸炎(ウイルス性/細菌性)が多いとされています。

6歳未満では腸重積症4歳以上では虫垂炎も重要な鑑別疾患です。

・診察の際は鼠径部(鼠経ヘルニア)や陰嚢(12歳以上の男子 精巣捻転)も確認します。

・腸蠕動音の亢進/減弱は鑑別には大きく寄与しないようです。

・左腹部痛は便秘症、右腹部痛は虫垂炎や腸重積症を考えますが例外もあります。

 

【検査を行う基準】

①血液検査/ルート確保

・以下の場合は血液検査とルート確保を行います。

-浣腸しても腹痛が改善しない/再燃した

-右下腹部圧痛または反跳痛

-中等症以上の脱水(皮膚蒼白/ツルゴール低下/口腔内乾燥/大泉門陥凹など)

-発熱が72時間以上持続

-腸重積症

-精巣捻転/卵巣捻転疑い

-IgA血管炎疑い

-糖尿病性ケトアシドーシス疑い(多飲・多尿/ケトン臭/循環不全など)

項目:血算、生化学(CRP,電解質,AST/ALT,BUN/Cr,LDH)、静脈血ガス。

※IgA血管炎疑いでは凝固系(13因子含む)、尿検査、溶連菌迅速検査等も考慮します。

 

②迅速検査

・大前提として下痢や嘔吐を伴う場合に検査を検討します。

・以下のようなキーワードがあれば、検査を施行します。

-冬/カキを食べた/周囲で流行:ノロウイルス(保険適用:3歳未満)

-春/周囲で流行:ロタウイルス(ワクチン接種者は不要)

-周囲で流行:アデノウイルス

 

③便培養/便潜血

・大前提として下痢や血便など、細菌性腸炎を疑う場合に検討します。

・"CRP≧4mg/dL""1週間以内に加熱不十分や鶏肉/豚肉や卵を摂取"などで行います。

カンピロバクターサルモネラ腸管出血性大腸菌などが想定されます。

※井戸水摂取や川崎病様所見があれば、エルシニアも考慮します。

 

④腹部エコー検査

腸重積症において、確定診断可能な最も重要な検査になります。

上行-横行結腸を輪切りにするようにプローブを当てます。

6歳未満(特に3歳未満)の腹痛では必ず所見を探すようにします。

→重積した腫瘤の横断面をtarget sign、縦断面をpseudokidney signと呼びます。

虫垂炎は専門医でなければCTでの診断となることが多いのではないでしょうか。

f:id:p_kun:20201108150737j:plain

a:target sign b:pseudokidney sign

小児エコーの最新動向 - 新。超音波診断 Vol.02 - 東芝メディカルシステムズ株式会社 - inNavi Suite より画像引用

 

⑤腹部CT検査

Alvarado score≧7点卵巣捻転を疑う場合に施行します。

診断未確定(感染性腸炎疑い)で、腹痛が2-3日持続する場合も施行します。

※思春期女子では、先立つ妊娠反応検査が推奨されます。

 

【帰宅/再診/入院とする基準】

①帰宅とする基準

・浣腸で腹痛が改善した場合

・細菌性/ウイルス性腸炎疑いで、脱水所見なく腹痛が自制内の場合

・慢性腹痛(1か月以上)の場合

※慢性腹痛や慢性便秘症(排便≦2回/週+排便時痛)は待機的に小児科コンサルトです。

 

②再診とする基準

・浣腸で改善した腹痛が再燃した場合

腸炎疑いで帰宅後、腹痛が自制外となったり2日後も腹痛が持続する場合

・飲水が困難となった場合

※便培養を提出した場合は、結果判明日に合わせて再診予定とします。

 

③入院とする基準

・浣腸を施行しても腹痛が自制外の場合

・脱水所見を認めたり飲水できない場合

・腸重積症/虫垂炎/精巣捻転/卵巣捻転/IgA血管炎の場合

 

【便秘症】

①基本事項

小児の腹痛の原因で最多です。

嘔吐下痢血便がないことを確認します。

※これらを認める場合は他の鑑別疾患を考慮します。

・上記がなければ、同日に排便があっても便秘症による腹痛の可能性があります。

・便秘症が多いことから小児の腹痛診療は、まず浣腸を行うことから始まります。

グリセリン浣腸 2mL/kg(1回120mLを超えないこと)

 

②浣腸後の対応

・浣腸後の便は必ず確認します。

血便であれば細菌性腸炎か腸重積症を考えます。

※IgA血管炎も血便ですが、紫斑がなければ診断ができないとされています。

・腹痛がすぐに改善しないこともあり、30分程度は経過観察します。

・腹痛再燃時は再診、再燃しない場合は便秘症だと事後診断になります。

 

③慢性便秘症か確認

基準:"排便≦2回/週かつ排便時痛"が1か月以上持続すること。

・慢性便秘症は長期フォローを要するため、待機的に小児科コンサルトとします。

・"機能性"の慢性便秘症は1歳以降ならば95%を占めるとされています。

 

④母乳性便秘

乳児期で、完全母乳栄養で、腹部膨満感がなく体重増加良好で、機嫌の良い場合に最も考慮されます。

説明例:"苦しそうでなければ7日に1回便が出れば大丈夫です" "離乳食を開始すれば回数は増えてきます"。

 

⑤処方

整腸薬

下痢にも便秘にも有効とされます。

処方例1酪酸菌製剤(ミヤBM®) 1日50mg/kg 分3 7日分。

処方例2:乳酸/ビフィズス菌製剤(ビオフェルミン®) 1日100mg/kg 分3 7日分。

 

鎮痛薬

生後3か月以上であれば、アセトアミノフェンが使用できます。

処方例カロナール®細粒 1回10-15mg/kg 6時間あけて 5回分。

※1回500mgを超えないように注意します。

 

【ウイルス性胃腸炎

①基本事項

嘔吐や下痢が腹痛に先行することが一般的です。

※特に下痢を認めない場合は、安易にウイルス性胃腸炎と診断しないようにします。

ノロ/ロタ/アデノウイルスは迅速検査ができます。

※検査基準などは前述しています。

・他にもエンテロウイルスなど種々のウイルスが起炎ウイルスとなります。

・一般的に発熱と嘔吐は2日以内に治まり下痢は1週間でピークを迎えます。

 

②脱水の評価

・嘔吐/下痢を認めている小児では、必ず脱水の評価を行います。

軽症では経口補水液中等症以上では輸液が一般的な対応です。

・以下の5項目を組み合わせて、総合的に評価します。

 

身体所見

重症:意識レベル低下や活気不良、血圧低下。

※血圧低下:収縮期血圧<70+年齢×2。10歳以上は90未満です。

中等症以上:以下の所見が参考となります。

-大泉門の陥凹 -両目のくぼみ -泣いているが涙が出ない

-口腔粘膜の乾燥 -尿量低下(保護者に確認) -ツルゴール低下

-頻脈 -四肢冷感 -多呼吸だが陥没呼吸がない

 

体重変化

・特に新生児や乳児であれば母子手帳を確認します。

直近の体重と現在の体重の体重減少率から、以下の評価とします。

-重症:10%以上

-中等症:6-9%

-軽症:3-5%

 

下痢と嘔吐の回数

下痢

-軽症:1日数回 -中等症:1日10回未満 -重症:1日10回以上

嘔吐

-軽症:1日1-2回 -中等症:1日5回未満 -重症:1日5回以上

 

静脈血液ガス

HCO3-<15mEq/Lは重症脱水を示唆します。

BE

-軽症:-5~10mmol/L -中等症:~-15mmol/L -重症:<-15mmol/L

 

哺乳量

・新生児や乳児であれば哺乳量を尋ねます。

1日に体重(kg)×100mL以上飲めていれば、脱水になりにくいそうです。

 

●コラム:経口補水療法

軽症脱水に対して、非常に有効な治療法と位置付けられています。

飲ませるものOS-1®、アクアライト®、水で2倍に薄めたりんごジュース。

※手に入らない場合はスポーツドリンクでも代替できます。

飲ませる量(CDCガイドライン)

-3~4時間で50~100mL/kgを投与します。

-下痢や嘔吐の度に30分かけて60(体重<10kg)/120(体重≧10kg)mL投与します。

-最初は5分おきに5mL、吐かなければ10mLに増やします。

-途中で寝てしまった場合でも1時間以内には起こして、投与再開します。

※乳児は母乳や粉ミルクをそのまま継続します(1回量を減らし回数を増やします)。

・なお、経口補水療法を開始して6時間後を目安に、水分や塩分が多めの食事を再開することが推奨されているようです。

 

③処方

五苓散

高い制吐効果が認められています。

用量:0.15g/kg 分3 2日分。

用法:20mL程度の湯に混ぜて電子レンジで20秒加熱し溶解させます。これに氷を入れて冷やし、小さじ1杯程度から飲ませます。

※嘔吐しても、30分経過したら再開します。嘔吐しても制吐効果を見込めるようです。

 

ドンペリドン(ナウゼリン®)坐剤

・制吐薬は五苓散が第一選択ですが、嘔吐が強く内服できない場合に選択されます。

用量:1回10mg(3歳未満)/30mg(3歳以上) 8時間以上あけて使用 3回分。

 

整腸薬

下痢にも便秘にも有効とされます。嘔吐が強い場合は必須薬ではありません。

処方例1酪酸菌製剤(ミヤBM®) 1日50mg/kg 分3 7日分。

処方例2:乳酸/ビフィズス菌製剤(ビオフェルミン®) 1日100mg/kg 分3 7日分。 

 

【細菌性腸炎

カンピロバクター

・原因菌として最多です。

感染源:加熱不十分な鶏肉、豚肉、生野菜。

潜伏期間:2-5日。

症状:発熱、下痢、血便。

・合併症としてギランバレー症候群が有名です(頻度は1/3000)。

 

サルモネラ

感染源:加熱不十分な鶏卵や鶏肉、その他の食肉、ミドリガメ

潜伏期間:12-36時間。

症状:発熱、下痢、血便(カンピロバクターと同じ)。

 

腸管出血性大腸菌

感染源:加熱不十分な牛肉、生野菜、ヒト-ヒト感染。

潜伏期間:3-5日。

症状:下痢、血便。

出席停止:感染の恐れがなくなるまで(≒便培養2回陰性)。

・溶血性尿毒症症候群(HUS)の合併リスクがあり、危険な起炎菌です。

 

④処方

整腸薬

下痢にも便秘にも有効とされます。

処方例1酪酸菌製剤(ミヤBM®) 1日50mg/kg 分3 7日分。

処方例2:乳酸/ビフィズス菌製剤(ビオフェルミン®) 1日100mg/kg 分3 7日分。

 

鎮痛薬

生後3か月以上であれば、アセトアミノフェンが使用できます。

処方例カロナール®細粒 1回10-15mg/kg 6時間あけて 5回分。

※1回500mgを超えないように注意します。

 

ホスホマイシン

エビデンスがはっきりしていませんが、非専門医では用いたほうがいいようです。

必ず便培養を提出してから投与を開始します。

処方例:1日40mg/kg 分3 5日分。

ビオフェルミンR®やラックビーR®との飲み合わせが悪いとされています。

 

【腸重積症】

①基本事項

・基本的には6歳未満(特に3歳未満)で考慮します。

間欠的腹痛(乳児は間欠的不機嫌)嘔吐血便を三徴とします。

乳幼児が外来の待合で泣いていたら腸重積症を必ず考慮します。

・三徴が初診時に揃うのは多くても半数程度で、血便がなくても除外できません。

・従って"腸重積症は除外が難しい疾患"で、初療上の脅威となります。

・疑わしい場合は積極的に腹部エコー検査を行うようにします。

 

②診断

・以下に"小児腸重積症の診断基準(試案)"を示します。

   A

・腹痛ないし不機嫌

・血便(浣腸を含む)

・腹部腫瘤ないし膨満

   B

・嘔吐

・顔面蒼白

・ぐったりとして不活発

・ショック状態

・腹部X線検査で腸管ガス分布の異常

   C

・注腸造影,超音波,CT,MRIなどで特徴的所見

疑診:"Aから2つ" "Aから1つ+Bから1つ" "Bから3つ以上

確診:疑診+C

間欠的腹痛/不機嫌を認める場合は、それだけで疑診とします。

・上記で疑診の場合は腹部エコー検査を行います。

・診断がつけば採血/ルート確保を、つかなくても注腸造影を考慮します。

 

③対応

疑診段階で専門医コール(?)でもよいのではないかと思います。

鎮静下で注腸的に整復を試みます。整復中は腹部を圧迫しないようにします。

・整復不成功の場合、2-4時間に再度整復を行う(DRE)か、手術となります。

・整復成功の場合でも、一晩は経過観察入院となります。

※整復は専門医が行うことが望ましいと考えます。

 

虫垂炎

①Alvarado Score

腹痛の小児(4歳以上)を診察する場合は、必ずAlvarado Scoreをつけます。

心窩部から右下腹部への痛みの移動

1点

食欲不振

1点

嘔気・嘔吐

1点

右下腹部の圧痛

2点

反跳痛

1点

37.3℃以上の発熱

1点

白血球数10000/μL以上

2点

好中球分画75%以上

1点

3点以下虫垂炎は否定的(感度95%)

7点以上:急性虫垂炎疑い(陽性的中率72%)

右下腹部痛や腹膜刺激症状を認める場合は、必ず採血し、全項目を評価できるようにします。

※そうでない場合は、前述の採血基準にかからなければ必ずしも必要ないようです。

・7点以上の場合、腹部CTを必ず撮影します。

・4-6点の場合、腹部CTは必須ではありませんが、虫垂炎の可能性を考慮しながら診療を継続します。

 

②治療方針

・施設の指針により手術を行うか抗菌薬投与のみかどうか、幅があるようです。

一般的に穿孔、膿瘍形成を伴う場合は手術はほぼ必須と考えられます。

・また、糞石を伴う場合は穿孔のリスクが高く、手術となる傾向にあります。

※ただし、糞石についてはエビデンスが強固ではありません。

・"小児の虫垂炎"というだけで専門医コンサルトしてよいと考えます。

※訴訟リスクが高いと考えられるためです。

 

【精巣捻転/卵巣捻転】

①精巣捻転

12-18歳に好発します。就寝後1-2時間で起こることが多いとされます。

突然発症で、陰嚢の強い痛みと発赤を生じます。

・思春期の突然発症の腹痛では、必ず陰嚢を視診します。

※恥ずかしくて言えないこともあるためです。

発症6時間で壊死が進行するため、速やかに泌尿器科コンサルトとします。

 

②卵巣捻転

6歳以降の女児の鋭い下腹部痛の場合に鑑別に加えます。

・卵巣捻転疑いは、Alvarado score≧7点と並んで小児の腹部CT適応となる病態です。

腹部単純CTで卵巣嚢腫を認めた場合は、速やかに産婦人科コンサルトとします。

※なお、11歳以上の女子の下腹部痛では必ず妊娠を鑑別に加えます。

→卵巣捻転確認目的でCTを撮る際も、可能な限り妊娠反応検査を行います。

 

【その他の腹痛】

①糖尿病性ケトアシドーシス

多飲多尿ケトン臭四肢冷感などの末梢循環不全を認めたら疑います。

→疑い例では採血を行い、pHと血糖値を確認します。

対応高血糖+アシドーシスを認めたら専門医コンサルトとします。

 

②IgA血管炎

腹痛に下腿の紫斑を伴う場合に疑います。

3-10歳に好発します。

・腹痛は50-65%に認めるとされていますが、認める場合は自制外で激烈な痛みであることが多いとされています。

・紫斑を伴わず腹痛だけで発症する場合もありますが、この場合は診断不可能です。

対応:腎予後への配慮を要するため、専門医コンサルトとします。

 

③機能性腹痛

学童期以降で、1か月以上続く腹痛は基本的に緊急性に乏しいとされています。

・多くの場合機能性腹痛であり、待機的に専門医コンサルトとします。

クローン病潰瘍性大腸炎は鑑別に挙がります。