内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

シーネを用いた外固定の方法

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●この記事は2020/12/13に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

四肢の骨折に対しては外固定が必要となります。

 

整形外科医であれば、完璧な固定が望まれるかもしれません。

 

しかし、非専門医はそれなりの外固定を行い、何とか無事に翌日の整形外科外来を受診させることが第一目標となります。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【救急外来での骨折診療】

・単純XPで(整形外科医でも)分からない骨折があります。

・特に局所の疼痛や腫脹が強い場合は、単純XPで骨折線がなくても骨折を疑います。

・このような背景から、骨折の見逃しは必然的に生じます。

これを念頭に置いて患者さんへの説明を行うことが最重要事項です

・以下に説明の一例を示します。

-明らかな骨折は見えませんが、初診時にはっきりしないこともあります。

-専門医の目で見ると見つかる微小な骨折が隠れている可能性もあります。

-時には専門医の目でも見えないこともあります。

-痛みが強いので本日は骨折がある前提で固定を行います。

-できれば明日、難しければできるだけ早く整形外科を受診してください。

・なお骨折評価のためのCTやMRIは、原則として救急外来での業務の範囲外と考えられていることが多いようです。

※整形外科医からの直接指示がある場合を除きます。

 

●コラム:整形外科領域のXPオーダー項目

・原則として左右を撮影して比較します。

・参考文献(京都ERポケットブック)より、洛和会音羽病院のオーダー例を抜粋します。

※一例であり病院により詳細部分は異なると思います。

頚椎

頚椎3R(正面,側面,開口位)

胸椎-腰椎-仙尾骨

胸椎/胸腰椎/腰椎/仙尾骨2R(正面,側面)

肋骨

胸部正面+肋骨2R(正面,側面)

胸骨

胸骨2R(正面,側面)

鎖骨

鎖骨2R(正面,肺尖位)

肩甲骨

肩甲骨2R(20°斜位,Yビュー)

肩関節

肩関節2R(20°斜位,軸位)

上腕骨

上腕骨2R(正面,側面)

肘関節

肘関節2R(正面,側面) 小児は4R(+両斜位)

前腕骨

前腕骨2R(正面,側面)

手関節

手関節2R(正面,側面)

舟状骨

舟状骨2R(正面,45°回内斜位)

手根-中手骨

手根-中手骨2R(正面,斜位)

手指骨

手指骨2R(正面,側面)

骨盤

骨盤正面

股関節

股関節2R(正面,Lauenstein)

大腿骨

大腿骨2R(正面,側面)

膝関節

膝関節3R(正面,側面,スカイライン)

下腿骨

下腿骨2R(正面,側面)

足関節

足関節2R(正面,側面,両斜位)

踵骨

踵骨3R(正面,軸位,アントンセン)

足趾骨

足趾骨2R(正面,斜位)

 

【外固定の適応】

四肢の骨折

アキレス腱断裂

槌指(突き指)

関節可動時痛の強い捻挫や打撲  など

→骨折が判然としなくてもシーネ固定を行うことは悪い選択ではありません。

転位の大きい骨折や末梢循環/神経障害等を伴う場合は適応外です。

→このような場合は、速やかに整形外科へのコンサルトを行います。

 

【ギプスとシーネ】

①ギプス

・元々は"石膏"を意味するドイツ語やラテン語が語源です。

・四肢に全周性に巻くことで、強固な外固定を行います。

・初療でギプス固定を行うと、患部の腫脹に伴い血行障害を引き起こします。

→進行するとコンパートメント症候群となってしまいます。

・従って、救急外来では基本的にギプス固定は行いません

 

②シーネ

・元々は"レール"を意味するドイツ語が語源です。

・全周性ではなく、片側のみに当てる固定です。

・板状のシーネに包帯を巻きつけて四肢に固定します。

・ギプスには劣りますが比較的強固な固定力を得られます。

・また、圧が逃れるスペースがありコンパートメント症候群のリスクが低いです。

・以上より外傷の初療に最も適した固定法であるといえます。

 

【外固定の原則】

①2関節固定

・骨折部の上下2関節を含めた"2関節固定"が原則です。

・例えば前腕骨骨折ならば、肘関節と手関節の2関節を含めた外固定を施します。

例外は足関節骨折で、下腿までの固定でよいとされます。

※膝関節までの固定が必要ないということです。

・また、2関節固定が理想ではあるものの実臨床ではそうならない例もあります

 

②良肢位での固定

・基本的には良肢位での外固定を行うようにします。

・良肢位とは"各関節を長期間固定していても拘縮が起こりにくい肢位"です。

救急外来では必ずしも良肢位に拘りすぎず、安静による疼痛軽減を第一に考えます

・これは固定肢位修正が必要でも、後日の整形外科外来で行えばよいからです。

・なお、肩関節と股関節はシーネを用いての外固定ができません

・救急外来での固定肢位の目標を示します。

-手指(DIP,PIP関節):伸展位。軽度屈曲していても構いません。

-手指(MP関節):軽度屈曲位(屈曲30°)。伸展ゼロでも構いません。

※手指に関しては"コップを持った時の手の形"のイメージです。

-手関節:軽度背屈(伸展20°)。伸展ゼロでも構いません。

-肘関節:屈曲90°。前腕回内回外については中間位です。

-肩関節:軽度外転位(外転20°)。

-足趾:伸展位。決まった角度での固定は困難で、安静目的の固定となります。

-足関節:底背屈中間位(0°)。アキレス腱断裂は底屈30-45°です。

-膝関節:伸展位-軽度屈曲位(屈曲30°)。

-股関節:軽度屈曲位(屈曲30°)、軽度外転位(外転10°)。

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【準備物品】

・綿付きシーネ(例:オルソグラス®,ライトスプリント®など)

・弾性包帯

・シーネ切断用のハサミ

・水道水が入ったバケツ(水温は30℃未満)

※綿付きでないシーネ(キャストライト®など)の場合は、あらかじめ接触部分の身体に綿包帯を巻いておきます。

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オルソグラスⅡ 添付文書より

 

【シーネを用いた外固定の方法】

①シーネのサイズ選択

上肢は3号(7.5cm)下肢は4号(10cm)が基本です。

・当てる部位の1/3-1/2周のものを選択します。

・弾性包帯のサイズもシーネと同じ幅のものを選択します。

 

②シーネの当て方(外固定の流れ)

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 オルソグラスⅡ 添付文書より

ポイント1:原則としてカットは水につける前に完了しておきます。

※水につけてからカットを追加することがないようにします。

ポイント2:綿付きシーネごと濡らしても中身を取り出して濡らしても、どちらでもよいとされていますが、基本的に中身を取り出して濡らします。

ポイント3:温水を用いないようにします。

ポイント4:濡らした後は固く絞るようにします。

※冷水を用いたり絞ることで硬化が遅くなるため、余裕を持って作業ができます。

 

③包帯の巻き方

約半分ずつ重なるように巻きます。

遠位(末梢)から近位(中枢)へ向かって巻きます。

※逆方向に巻くと浮腫を増悪させてしまいます。

前腕は回外方向に、足関節は外反方向に巻きます。

※逆方向に巻くと良肢位(回内回外中間位/背屈0°)を保てません。

 

④モールディング

・弾性包帯を巻いた後、最後に行う作業です。

・直線状になっているシーネを、四肢の曲線に沿うように包み込み軽く圧迫します。

・これをシーネの端から端まで数回に分けて行います。

・モールディングと同時に、固定する関節を目標とする肢位や角度にします

・これらはシーネが硬化するまで行います。硬化まで約5-10分程度です。

※シーネが加熱されて暖かくなると、硬化が終了しつつあるサインです。火傷するほどの熱さにはならないことを説明します。

 

参考動画


【捻挫、骨折 シーネ固定】 応急処置~保存療法まで対応可能

※骨折の場合はU字型よりL字型の方がよいと思われます。

 

【各論1】

①手関節(前腕)のシーネ

適応:橈骨/尺骨遠位端骨折、手根骨骨折、手関節捻挫など。

シーネの範囲:手掌皮線-肘窩から指2本分遠位まで。

母指球部分に切れ込みを入れると手指運動が妨げられません。

橈骨遠位端骨折で転移が大きい場合、整復できるとベターです。

→一方の手で母指と示指を持ち、もう一方で上腕の肘付近を持って、緩徐に強い力で母指と示指を牽引することで整復します。

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合成スプリント: BSN medicalによる掌側からの手関節の固定

 

②肘関節のシーネ

適応:上腕骨遠位部骨折、橈骨/尺骨近位部-骨幹部骨折、肘靱帯損傷など。

※橈骨/尺骨骨幹部骨折は、固定肢位が難しかったり、コンパートメント症候群が発生しやすいため、即時の整形外科コンサルトが基本です。

シーネの範囲:中手骨頭-肘-腋窩から指2本分遠位まで。

※肘で直角に折り返し、重なった2か所に線を引き、これに沿ってパッドを切ります。

→ここが折り返しの目印となります(図)。

・手首から包帯を巻き始め、肘関節内側には尺骨神経が存在するため、ゆるめに巻くようにします

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合成スプリント: BSN medicalによる背外側からの肘関節固定

 

③足部のシーネ

適応:足趾の骨折、中足骨骨折など。

シーネの範囲:踵を除いた足底から趾尖をまわって足背まで。

※踵の荷重は問題ないため、踵は含みません。

※特に中足骨骨折では、④足関節のシーネでも可能です。

 

④足関節のシーネ

適応:足関節周囲の骨折(脛骨/腓骨遠位端骨折等)、踵骨骨折、アキレス腱断裂など。

シーネの範囲:爪先から下腿後面の膝窩2横指遠位付近まで。

・足関節脱臼を伴う場合には、速やかな整復を要します。

・アキレス腱断裂では尖足位で固定します。

 ※踵底部を中心に10cmの蝶型の切れ込みを作ると皮膚潰瘍予防になります(図)。

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合成スプリント: BSN medicalによる後部からの足関節強化固定

 

⑤膝関節と下腿のシーネ

適応:脛骨/腓骨骨幹部骨折など。

※大腿骨遠位端骨折や脛骨高原骨折は即時整形外科コンサルトが推奨されます。

シーネの範囲:爪先から下腿後面に沿いできるだけ大腿近位まで。

※④をさらに延長するイメージです。

膝関節は軽度屈曲位(10-20°)が良肢位です。足関節は底背屈0°です。

膝関節後面のシーネが腓骨頭に当たらないように注意します

※腓骨神経麻痺が発生することがあるためです。

 

【各論2】

①上腕骨近位-骨幹部骨折の固定

・整形外科医はストッキネットを用いた固定を行いますが、マニアックであり非整形外科医が行うにはハードルがやや高めです。

・非整形外科医は、まずは三角巾とバストバンドを用いた固定を習得します。

・これは三角巾固定後にバストバンドで患肢上腕と体幹(患肢前腕の直上)を固定する方法で、肩関節の内外旋や屈曲の制限となります。

鎖骨骨折(クラビカルバンド使用が多い)にも適用可能です。

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三角巾のつりかた | 看護師転職サイトランキング より画像引用


誰でも簡単! 三角巾の使い方(腕の吊り方)

 

②ニーブレース固定

適応:膝蓋骨骨折、ACL/MCL/半月板損傷など。

膝蓋骨が半円の中心に来るようにして、図の順にファスナーで伸展位固定を行います。

・膝蓋骨は非荷重骨ですが、松葉杖処方も併用するのが無難だと思います。

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ニーブレース|商品情報|アルケア株式会社(医療関係者向け) より画像引用

 

③Sugar tong splint

適応:橈骨遠位端骨折、三角骨骨折。

シーネの範囲:手掌皮線から肘を回り中手骨頭まで。

・中手骨頭-肘の2倍の長さで採寸し、真ん中に両側から2cm程度の切込みを入れます(図)。

・非専門医なら前項の"手関節(前腕)のシーネ"で十分だとは思います。

※角砂糖ばさみ(sugar tong)で前腕をつかんでいるように見えるのが名前の由来です。

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Sugar Tong Splint Technique

 

④Thumb Spica Splint

適応:舟状骨骨折、第1中手骨骨折、ゲームキーパー母指(母指MP関節尺側側副靱帯損傷)。

ゲームキーパー母指:母指が過伸展するような受傷機転の時に疑います(図)。

シーネの範囲:母指先端-前腕の中央まで。

・母指側は先端を半円状にカットできるとより良いです。

・画像や動画のように、母指を包み込むようにシーネ固定を行います。

・固定肢位はグラスで乾杯をするような肢位になります。

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ゲームキーパー母指 スキーヤー母指 より画像引用

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Thumb Spica Splint Kit より画像引用


Thumb Spica Splint

 

⑤Radial gutter Splint

適応:第2/3中手骨骨折、示指/中指基節骨骨折。

シーネの範囲:示指先端-前腕の中央まで。

示指-手関節まで中心を縦方向に外綿ごとカットします(図)。

・カットで二股となった部分を示指と中指の手掌と手背から挟むように固定します。

・固定肢位は手関節30°背屈MP関節90°掌屈PIP/DIP関節20°掌屈位となります。

※この際に母指/環指/小指はフリーになるようにします。

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Radial Gutter Splint application

 

⑥Ulnar gutter splint 

適応:第4/5中手骨骨折、環指/小指基節骨骨折。

シーネの範囲:小指先端-前腕の中央まで。

・尺側から、環指と小指を手掌と手背から挟むようにシーネ固定を行います。

・固定肢位は手関節30°背屈MP関節90°掌屈PIP/DIP関節20°掌屈位となります。

※この際に母指/示指/中指はフリーになるようにします。

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Fracture Fridays: Can’t put a finger on it – PEMBlog より画像引用


Ulnar gutter Splint

 

【外固定の合併症】

・シーネ固定を行った際は、翌日の整形外科受診と合併症について、患者に伝えておく必要があります。

特に腓骨神経麻痺は頻度の高い合併症と言われています。

 

①皮膚潰瘍

・皮下に骨がよく触れる以下のような部位で好発します。

-腓骨頭 -踵部

-尺骨頭 -足関節外果/内果

 ・これらの好発部位を避けるようにシーネ固定を行うか、この部位の包帯をできるだけ緩く巻くようにします。

 

②腓骨神経麻痺

・前述のように腓骨頭圧迫による腓骨神経麻痺が最も好発する合併症です。

初期症状:第1-2趾間の知覚鈍麻。

進行期の症状:母趾の伸展障害や足関節の背屈障害などの運動麻痺。

・初期症状の段階で圧迫解除されれば重症化することはありません。

・一般的には予防が重要で、シーネが腓骨頭に当たっていないか必ず確認します。

 

③コンパートメント症候群

・四肢の筋、血管、神経などは骨と筋膜に囲まれた筋区画(コンパートメント)に分けられます。

・外傷で組織圧が高まっている状態で、更にシーネを強く巻きすぎると、コンパートメント内の循環障害が発生し、機能障害や組織壊死が生じます。

基本的には下腿で発生するので、下腿のシーネ固定時に注意を要します。

※小児では上腕骨顆上骨折や前腕骨骨折に伴い発生することもあります。

初期症状:疼痛(特に他動的な伸展時)や腫脹。

主な症状:5P(疼痛/蒼白/脈拍消失/感覚異常/麻痺)。

※ただし脈拍消失は必発でなく、脈を触れるからと減張切開を躊躇すると、重症化の原因となってしまいます。