●この記事は2021/1/8に内容更新しました。
キューピーです。
と同時に、救命できる疾患としても重要です。
今回は心筋梗塞の初期治療を整理してみます。
"MONA"が超有名ですが、優先する順に入れ替えてまとめていこうと思います。
※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。
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目次
【参考文献】
【初期治療】
①Aspirin(抗血小板薬)
⑴投与例
・バイアスピリン®錠100mg 2錠 咀嚼服用
に加えて
・プラスグレル(エフィエント®)錠20mg 1錠 内服
または
・クロピドグレル(プラビックス®)錠75mg 4錠 内服
⑵投与禁忌(バイアスピリン®)
・アスピリン喘息
・重篤な出血性病変
・大動脈解離が疑われる場合
※アスピリン喘息が疑われる場合も、プラスグレルやクロピドグレルは投与します。
⑶解説
・アスピリン投与による予後改善効果は大規模臨床試験で証明されています。
・そのため初期治療で最も重要で、禁忌がなければできるだけ早期に投与します。
・またアスピリンとプレスグレルorクロピドグレルの併用で、更に心血管イベントを減らすことが証明されています。
・一方でCABGを行った場合、プラスグレルorクロピドグレルは出血リスクや再手術増加と関連する可能性も示唆されています。
・なおプラスグレルvsクロピドグレルでは、プラスグレルの方が効果が出やすく、心血管イベントをより減らす反面、出血リスクがより高まる傾向が示唆されています。
・従って、以下のような使い方が落としどころと考えられます。
-禁忌がなければバイアスピリン®は早期に咀嚼服用させる。
-多枝病変疑いでCABGの可能性がある場合は、2剤目の内服は待つ。
→結局PCIを行うことになった場合にカテ室で内服させる。
-多枝病変が疑われない場合はERでの2剤目内服を考慮する。
-2剤目は基本的にはエフィエント®を選択する。
-出血リスクの高い透析患者や抗凝固療法中の患者はプラビックス®を考慮する。
※基本的に循環器内科医に確認してからの投与が望ましい。
②O2(酸素)
⑴適応
・低酸素血症(SpO2≦90%)
・ショック
・心不全徴候あり
※上記がなければルーチンの酸素投与は推奨されません。
⑵指示例
・SpO2≦90%で酸素1L/分の投与開始
・SpO2≧95%で1L/分ずつdown、off可能
・SpO2≦90%で1L/分ずつup
⑶解説
・以前と異なり、現在は低酸素のないACS患者への酸素投与の有効性のエビデンスはありません。
・むしろ心筋障害を引き起こす可能性も示唆されており、90%台後半での投与は避けた方が無難だと思われます。
・なお、状況に応じてNPPVや気管挿管/人工呼吸管理への移行も考慮します。
③Nitrate(硝酸薬)
⑴投与例
・ニトログリセリン(ニトロペン®)舌下錠0.3mg 1錠 舌下投与
または
・ニトログリセリン噴霧剤(ミオコールスプレー®)0.3mg 1噴霧 舌下投与
※いずれも症状改善なければ5分後に1回まで追加投与可能です。
⑵投与禁忌
・収縮期血圧<90mmHgまたは通常より30mmHg以上の血圧低下
・高度徐脈(<50bpm)または頻脈(>100bpm)
・右室梗塞
・ED治療薬(シルデナフィルなど)服用後24時間以内
・重症大動脈弁狭窄症(慎重投与)
⑶解説
・硝酸薬は静脈系と動脈系を拡張し前負荷と後負荷を軽減します。
・冠動脈拡張作用もあり、症状改善に対して速効性も期待できます。
・ただし、硝酸薬による予後改善効果のエビデンスは微妙で、禁忌も多いため反射的に投与する薬剤ではないと考えます。
・特に右室梗塞は見落としがちなので、下壁梗塞が疑われたら必ず右側胸部誘導(V3R~V6R)を確認するようにします。
●コラム:右室梗塞
・概念:右冠動脈の右室枝より近位部で閉塞が起きた場合に生じます。
・診断:右側胸部誘導(V3R~V6R)のST上昇が有用で、特にV4Rにおける0.1mV以上のST上昇は感度/特異度ともに高い所見とされます。
※右冠動脈による梗塞では下壁梗塞を来すため、下壁梗塞を認める場合は必ず右室梗塞の確認が必要になります。
・病態:右室梗塞により右室機能が高度に低下すると、心拍出量の低下から心原性ショックとなります。一方で左室拡張末期圧は上昇しないため、肺水腫は稀です。
・治療:補液+再灌流療法です。ニトログリセリンや利尿薬は原則禁忌となります。
虚血性心疾患の心電図|各疾患の心電図の特徴(1) | 看護roo![カンゴルー]
より画像引用
★下壁梗塞+右室梗塞の心電図
医療関係者の皆さま|持田製薬株式会社 より画像引用
④Morphine(モルヒネ)
⑴投与例
・モルヒネ塩酸塩注10mg(/1mL)+生食9ml 2-4mg静注
→10分後ごとに2-8mg追加投与可能です。
※50mg/5mL+生食45mlの組成でも同じです(1mg=1mL)。
⑵投与禁忌
・血圧低値
・呼吸不全
・嘔吐が強い症例
※特に下壁梗塞は迷走神経緊張から血圧低下や嘔吐を引き起こしやすいです。
⑶解説
・基本的に硝酸薬で症状が改善しない場合に投与を検討します。
・ただし副作用である血圧低下や悪心/嘔吐も問題となりやすく、使用により予後を悪化させたという研究もあります。
・従って疼痛のため血圧が著明に高い場合や不穏になっている場合など、症状を選んで慎重に使用していくべき薬剤です。
※病態を考慮すると右室梗塞への使用も避けるべきと考えます。