キューピーです。
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)は特別な場合を除き、見逃されることは少ないですが、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)は見逃される可能性が相対的に高いと言えます。
そんなNSTEMIの診断にあたっての注意点を勉強しました。
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目次
【参考文献】
【急性冠症候群(ACS)の分類】
・ACSの病態:冠動脈プラークの破綻、プラーク表層の内皮が剥がれるびらん、内腔に突出する石灰化結節などにより血栓が形成されたり、冠動脈の攣縮により血流が途絶することで生じます。
・ACSの分類:ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に分かれ、後者は非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)と不安定狭心症(UA)に分類されます。
・STEMI:持続的ST上昇を来すACSで、貫壁性の虚血を示唆し、一刻も早い再灌流が必要とされる病態です。
・NSTEMI/UA:ACSでSTEMIではないものを指し、心筋逸脱酵素の上昇を伴うものをNSTEMI、伴わないものをUAとします。いずれも心電図変化は必須ではないため、心電図変化が目立たなくても否定できません。
※高感度トロポニンの感度が非常に高く、純粋なUAの症例は減少傾向にあります。
【症状】
・ACSの典型的胸痛
-Onset:突然でなくても否定できない。
-Position:正中または胸骨背面で局在不明である。
-Quality:圧迫感や絞扼感。
-Radiation:上腕、背中、頚部、咽頭、歯、後頭部など。
-Severity:特に高齢者、女性、糖尿病患者では強くないこともある。
-Time:(MIなら)20分以上持続することが多い。
-Alleviating/Aggravating:労作で増悪、硝酸薬で改善する傾向がある。
※Aは参考所見。安静時痛が特徴だし、硝酸薬は禁忌の場合もある。
・非典型的だがACSを疑う症状
-悪心・嘔吐 -発汗 -しびれ -呼吸困難
-失神 -急性錯乱 -動悸 -ふらつき
※特に高齢者、女性、糖尿病患者に多い。
※MIと診断された1/3の症例で非典型的症状を示すとさえ言われる。
【心電図】
・心電図変化を認めないことが多いとされます。
・認める場合は、ST低下またはQ波を伴わない陰性T波が多いとされます。
・ST低下は特にV4-6に認めることが多いとされています。
・特に他の部位でST低下が目立つ場合は、ST上昇が隠れていないか注意します。
-例1:V1-3でST低下を認める場合は後壁梗塞の可能性を考えV7-9を確認する。
-例2:広範囲のST低下にaVRのST上昇があればLMTまたは3枝病変を考える。
・初回の心電図に異常のない場合でも、症状持続時は15-30分ごとに、症状間欠時は症状出現時に再評価を行います。
【心筋逸脱酵素】
・CK、CK-MB、ミオグロビン、トロポニンなどがあります。
・高感度トロポニンが最も重要です。以下の記事を参照ください。
【心エコー】
・ACSを疑い、特に心電図変化がなかった場合に心エコーは有用だとされます。
・LAD領域の急性期は心尖部のみに壁運動障害が見られるため、必ず心尖部四腔像も確認するようにします(長軸像や乳頭筋レベルの短軸像では心尖部が描出されないため)。
・大動脈解離を疑う上行大動脈の拡大や大動脈flap、肺塞栓症を疑う右室拡大がないことも確認するようにします。
Abnormal 4 ★中隔-心尖部梗塞
Abnormal 5 ★下壁梗塞
Case 79 ★大動脈解離(大動脈弁直上のflap)
Case 86 ★大動脈解離(大動脈弁輪拡張)
Case 53 ★肺塞栓症(右室心尖部過収縮(McConnell's sign))
【胸部X線】
・うっ血性心不全の存在診断や大動脈解離、気胸との鑑別に有効です。
大動脈解離 - 04. 心血管疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版 より画像引用
【TIMIリスクスコア】
・NSTEMIは先述の症状や検査から診断していきます。
・大雑把に言えば、それらしい症状を認める症例に心電図変化を確認(ない場合もあります)し、心筋トロポニンが陽性になれば診断となります。
・NSTEMI(またはUA)の患者の死亡/新規または再発性心筋梗塞/緊急PCIの可能性を予測するスコアに"TIMIリスクスコア"があります。
・この項目はNSTEMIのリスク評価だけでなく、NSTEMIの診断を行う際に(特に冠動脈疾患のリスクファクターなどは)"どのくらいNSTEMIらしいか"を評価することにも利用してよいのではないかと考えます。
※ただし、個人の意見です。
今日の臨床サポート より画像引用