内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

胸部CTの読み方(肺野条件)

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キューピーです。

 

いよいよ肺野の読影を考えます。

 

なお、COVID-19の肺野所見はまた別記事でまとめるつもりです。

 

縦隔条件の読影については以下の記事をご覧ください。

 

pkun.hatenablog.com

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

読影手順】

・縦隔条件と同じく、自分の読影手順を決めておくと見逃しを防ぐことができます。

・参考文献の記載に倣うと以下の通りです。

肺野前1/3の領域→外側1/3の領域→後1/3の領域→両側主気管支→右上葉気管支→中葉気管支→下葉気管支→左上葉舌区の気管支→下葉の気管支

※肺野は左右別で見た方が見逃しが少なくオススメです。


見逃しを防ぐための胸部CTの読影の順序

 

【肺区域】

・呼吸器の専門医でないなら、上葉/中葉(舌区)/下葉の判断ができれば十分だと思いますが、せっかくなので区域の同定まで踏み込みます。

・まずは肺区域の大雑把な位置を覚えましょう。ブロンコ体操はとても有名ですね。


ブロンコ体操解説付き

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・個人的には右肺と左肺の違いをおさえておくと覚えやすいと思います。

-左肺はS7がなくS1と2ではなくS1+2がある

-右肺の中葉(S4と5)は左肺では舌区(S4と5)が該当する

-右肺はS4が外側でS5は内側左肺はS4が上でS5が下という関係である

・この解剖をおさえた上で、胸部CTでは各肺区域へ向かう気管支を同定することで大体の肺区域を把握することができます。

・気管支の同定法は例のごとく「画像診断チャンネル」様の動画を頼りにします。


胸部CTにおける肺区域の同定方法

・これで気管支の同定法を学んだら、また例のごとく「画像診断cafe」の胸部CT像をコロコロ転がして、自分で確認してみると肺区域の同定がよく分かると思います。

medicalimagecafe.com

 

【小葉中心領域と広義間質】

①小葉中心領域

・肺胞が複数集まり、1-2mm程度の肺小葉という構造を形成します。

肺小葉が10個前後集まって10-20mm程度の二次小葉という構造を形成します

二次小葉は小葉間隔壁で境されています

・肺動脈と気管支は伴走しており、末梢では二次小葉の中心に分布します。

・一方で肺静脈は小葉間隔壁に沿って走行します。

小葉中心領域は、二次小葉内の肺動脈と気管支が形成しており、二次小葉内に複数の小葉中心領域が存在しているイメージです(図)。

・胸部CTでは胸膜直下がspareされる(保たれる)ことも重要な所見になります。

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【肺炎の画像診断】胸部CTにおける小葉中心性分布とは? より画像引用

 

②広義間質

・広義間質とは、リンパ管が分布する領域を指します。

・具体的には小葉間隔壁胸膜下間質気管支血管周囲間質が含まれ、さらに具体化すると肺動脈、気管支、肺静脈、胸膜に分布する間質を示します。

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胸部CT画像を見る上で重要な肺の解剖とは?気道、実質、間質とは? より画像引用

 

【すりガラス影】

・Thin sliceで背景の血管または気管支が認識できる程度の淡い濃度上昇をすりガラス影(GGO:ground-glass opacity)と呼びます。

・原因は肺胞上皮の肥厚、間質のびまん性肥厚だけでなく、小葉中心性の微細な変化など多岐にわたります。

※従って「すりガラス影の鑑別疾患」というようなまとめ方は、あまりにも鑑別が多すぎて良いまとめ方ではないと思います。

・正常部と病変が不規則に入り混じる分布は斑状分布やモザイク状と表現します。

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【肺のCT画像あり】コンソリデーションとすりガラス影の違いは? 

より画像引用

 

コンソリデーション】

コンソリデーション(consolidation)は、背景の血管構造が認識できないような、軟部濃度と同等の吸収値をもつ陰影のことです。

※従来の浸潤影、均等影、融合影などを含んだ表現となります。

コンソリデーション内部に開存した気管支は気管支透亮像(air bronchogram)と呼ばれます。

・なお、コンソリデーションの基本病態は肺胞が水浸しになった状態です。多くは肺炎(炎症による浸出液)を示唆します。気管支透亮像は、コンソリデーションにより末梢気管支が可視化されたものを見ているのです。

 

①(細菌性)肺炎

・いわゆる肺炎(細菌性肺炎)とそうでない疾患を、胸部CTのみで完全に鑑別することは難しいとされています。

・以下のような所見が得られた場合、細菌性肺炎である可能性が高まります。

-葉レベルで広範に広がるコンソリデーション

-区域気管支を中心とした楔状コンソリデーション

-小葉中心性結節

・特に葉レベルのコンソリデーションは大葉性肺炎を示唆し、肺炎球菌クレブシエラレジオネラが起炎菌として考慮されます。

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https://nagoya-central-hospital.com/coordination/meeting/h220420.html より画像引用

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【CT画像あり】肺炎の画像診断のポイントは?どんな所見が有用? より画像引用

 

②器質化肺炎(OP:organizing pneumonia)

・CT所見など、細菌性肺炎との鑑別がしばしば問題になる疾患です。

下肺野優位に、胸膜下優位の斑状のコンソリデーションを認め、周囲にすりガラス影を伴うことも多いです。

多発することが多く、(特にCOPでは)自然消退や新規病変出現を繰り返す移動性陰影が特徴とされます。

・GGOが濃い帯状高吸収域で囲まれるReversed-halo signも特徴的な所見とされます(最近はOPに特異的ではないという報告もあります)。

※移動性陰影は慢性好酸球性肺炎にも認め、両者の鑑別はBALFなどで行います。

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特発性器質化肺炎(COP)のCT画像診断の特徴は?原因は? より画像引用

 

●器質化肺炎の臨床

・肺胞腔内の滲出物が器質化された状態であり、肺胞腔内や肺胞管内にポリープ状の線維化巣が存在する状態で、間質性肺炎の一種です。

原因不明のものをCOP(Cryptogenic OP)と呼び、原因があるものをsecondary OPと呼びます。6-7:3-4程度の割合とされます。

secondary OPの原因としては以下のようなものがあります。

-膠原病(PM/DM、RA、SjS)

-感染症(細菌、マイコプラズマ、ウイルスなど)

-誤嚥

-乳癌に対する放射線治療

-薬剤

-血液悪性疾患

・50歳以上に多く、性差はなく、数週間-数か月の急性-亜急性の経過をとることが特徴です。

・症状は発熱、咳嗽、呼吸困難、全身倦怠感などで臨床的には「抗菌薬不応性の細菌性肺炎様病態」がキーワードです。

ステロイドが有効で一般的に予後良好ですが、治療中止による再発が多いとされます。

 

【結節影】

・肺結節は大きさにより以下のように分類されます。

-3cm以上:腫瘤影

-5mm~3cm:結節影

-2mm~5mm:粒状影

※結節影の中でも、1cm以下の結節影は小結節と言われます。

 

①充実性結節影

・内部が充実成分のみの結節影を言います。

大きさ(最大径)が1cm以上ならば確定診断のための生検や手術が推奨されます。

6mm~1cmの場合は3か月後の経過フォローとします。

・フォロー中に最大径の2mm以上の増大を認める場合、確定診断のための生検や手術が推奨されます。

 

②すりガラス状結節(pure GGN)

・すりガラス影のみで描出される結節影を言います。

大きさ(最大径)が15mm以上ならば確定診断のための生検や手術が推奨されます。

15mm未満の場合は3か月後の経過フォローとします。

上皮内腺癌のこともあり、充実性結節影以上に粘り強く長期間フォローする必要があります

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CTで肺結節を見つけた!どうフォローすればいい?何ヶ月後? より画像引用

 

③部分充実型結節影(part solid nodule)

・すりガラス濃度の内部に充実部分を含む結節影を言います。

大きさ(最大径)が15mm以上またはそれ未満でも充実部分の最大径が5mm以上ならば確定診断のための生検や手術が推奨されます。

・そうでない場合は経過観察とされていますが、上記についてはエビデンスが低く、どちらかというと積極的に確定診断を行う方向性の方がよいと思われます。

・pure GGNと異なり浸潤癌を示唆します。粘り強い長期間のフォローが必要なのは同様です(年単位での緩徐な増大傾向の場合もあります)。

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CTで肺結節を見つけた!どうフォローすればいい?何ヶ月後? より画像引用

 

【腫瘤影】

・前述のように3cm以上の肺結節を腫瘤影と表現します。

・できるだけ2方向以上で病変全体を観察し、辺縁が外側に凸で丸い形態なら腫瘤影として問題ありません

・一方で陰影が丸くない場合、すなわち辺縁が内側へ凸だったり直線である場合は、腫瘤影というよりはコンソリデーションとした方がよいです

・腫瘤影が存在する場合、基本的には癌やその他の腫瘍性病変を疑い、組織学的検索を検討する必要があります。

・ただし、腫瘤影と判断しても必ずしも腫瘍性病変ではなく、器質化肺炎や円形無気肺などであることも少なくありません。

・以下に原発性肺癌を示唆する所見をまとめます。

 

①スピキュラ/胸膜陥入像

・いずれも肺腺癌に見られることの多い所見です(扁平上皮癌など他の病変でも見られ得ます)。

・スピキュラは、結節や腫瘤の辺縁から周囲に向かって棘状あるいは線状に数mm-1cm以上突出する構造で胸膜に達しないものを言います。

・胸膜陥入像は、結節や腫瘤より途切れることなく胸膜面に達する線状あるいは索状構造のことで、特に胸膜が引き込まれる所見が肺癌らしい所見です。

※画像は上がスピキュラ、下が胸膜陥入像です。

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The Radiology Assistant : Benign versus Malignant より画像引用

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肺癌とイレッサについて | 肺癌の発見から手術まで より画像引用

 

②ノッチ

・肺癌(特に扁平上皮癌や小細胞癌、転移性肺癌)で見られることが多いですが、良性病変でも見られる所見のため注意が必要です。

・辺縁が凸状である結節や腫瘤の境界にV字型の切れ込みが入った状態を言います。

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胸部CT道場36・飛び飛びに白くなる陰影32・結節影・腫瘤影3・悪性を示唆する所見2・分葉状・ノッチサイン(notching)・切れ込み: やさしイイ呼吸器教室

より画像引用

 

③閉塞性肺炎や無気肺を伴う腫瘤影

肺門型扁平上皮癌に多い所見です。

・気管支の狭窄や閉塞に伴う二次性の所見になります。

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/haigan/50/6/50_6_846/_pdf より画像引用

 

④リンパ節と一塊となった腫瘤

・特に肺門型小細胞癌で認めることの多い所見となります。

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/haigan/50/6/50_6_846/_pdf より画像引用

 

【多発小結節影】

・多発する小結節影を認めることはしばしばあり、この場合はその分布から鑑別疾患を絞り込むことができます。

・また明確な定義はありませんが、比較的大きさの揃った数mm以下の小結節影が多発する場合、しばしば多発粒状影と表現します。

 

①小葉中心性分布+非区域性

急性の過敏性肺臓炎で認める分布です。この場合、小結節影はすりガラス濃度です。

・上記に加えてair trappingを認めることが本症に特異的な所見です。

慢性の過敏性肺臓炎はIPF類似所見になります(ただし上肺野優位)。

RB-ILD(呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患)も小葉中心性のすりガラス濃度の小結節影の多発を認め、しばしば鑑別対象となります。

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過敏性肺臓炎とは?CT画像診断のポイントは? より画像引用

 

②小葉中心性分布+区域性

・鑑別疾患が多岐にわたるため1つずつ見ていきます。

・なお、非特異的な感染性細気管支炎でも小葉中心性分布かつ区域性の多発小結節影を認めます。

 

マイコプラズマ肺炎

小葉中心性分布かつ区域性の比較的濃度の高い多発小結節影を認めます。

中枢気管支-細気管支壁の肥厚も特徴的です(気道の線毛上皮に親和性が高いため)。

・また、時に広範なコンソリデーションを呈することもありますが、炎症の軽微な部分の小結節影を見ることで鑑別できます。

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【CT画像あり】マイコプラズマ肺炎とは?症状や検査、治療のまとめ

より画像引用

 

結核

小葉中心性分布かつ区域性の濃度の高い(濃厚な)多発小結節影を認めます。

※濃度の高さは肉芽組織の存在を反映しています。

・肺胞全体と細気管支が肉芽組織などで充満すると、小さな芽が枝にたくさん付いているように見え、これをtree-in-bud appearanceと呼びます。

空洞性病変も有名かつ特徴的な所見です。

・重症度が高いといわゆる肺炎像であるコンソリデーションも認めます。

・陰影はS1,2,6に好発します。換気血流比が高く酸素を要する結核菌に有利なことやリンパによるドレナージを免れやすいことなどが関係しているとされます。

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【保存版】肺結核のCT画像7選!特徴的な所見はこれ! より画像引用

medicalimagecafe.com

 

結核性抗酸菌症

・非結核性抗酸菌症の約70%がMAC症(M.avium+intracellare)で、15-20%がM.kansasiiによるものとされます。

・今回はMAC症の画像所見をまとめます。

MAC症の画像所見は5つに分類されますが、大多数を占める小結節・気管支拡張型の画像所見をおさえます。

小結節・気管支拡張型は基礎疾患のない中高年女性に好発し、以下のような胸部CT上の特徴があります。

-中葉や舌区に好発する

-小葉中心性の濃度の高い多発結節影

-tree-in-bud appearance

-気管支壁肥厚と拡張

-肺容積減少

-(時に)コンソリデーション

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【CT画像あり】非結核性抗酸菌症(NTM)とは?原因菌、症状、診断、治療まとめ!

より画像引用

medicalimagecafe.com

 

びまん性汎細気管支炎

「両肺びまん性に」小葉中心性分布かつ区域性の濃度の高い多発小結節影やtree-in-bud appearanceを認めます。

・進行すると細気管支拡張を認めますが、エリスロマイシン少量持続投与の登場で進行例は減少しました。

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びまん性汎細気管支炎とは?CT画像診断のポイントは? より画像引用

 

③ランダム分布

・多発結節影が広義間質や小葉中心性の範疇に含まれない分布で存在する場合に、ランダム分布(random distribution)と呼びます。

小葉中心性のように見える結節や胸膜に接する結節などが混在します。

 

多発肺転移

・担癌患者や症状の乏しい患者にランダム分布の多発小結節影を認めた時に疑います。

比較的大きさが不揃いで境界明瞭な結節であることが特徴です。

原発巣により特徴的な所見が異なりますが、専門医レベルとなるので割愛します。

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【解答・解説】乾性咳嗽を主訴に受診した60歳代女性|実践!画像診断Q&A|羊土社:レジデントノート - 羊土社 より画像引用

 

栗粒結核

・発熱患者にランダム分布の多発小結節影を認めた時に疑います。

大きさが1-3mmと小さく多発粒状影と表現した方が適切かもしれません

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http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/002050513j.pdf

より画像引用

 

④広義間質に沿った分布

・考えるべき疾患はサルコイドーシスです。

上中葉優位に分布する広義間質に沿った多発小結節影を認めます。これにより広義間質が肥厚しているように見えます。

・結節影(肉芽腫を反映)は非常に微小であるため、partial volume effectですりガラス影として認識されることもあります

中央が無数の小結節影により高濃度域となり辺縁を微小結節影がとり巻くgalaxy signが有名です。

両側肺門リンパ節腫脹(BHL)も有名な所見です。

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肺サルコイドーシスのCT画像診断(BHL,Galaxy sign) より画像引用

 

【広義間質のびまん性肥厚】

・広義間質の中でも、小葉間隔壁のびまん性肥厚を「小葉間隔壁肥厚」、肺動脈や気管支周囲の肥厚を「気管支血管束肥厚」と表現します。

・広義間質のびまん性肥厚を呈する代表疾患には癌性リンパ管症、肺水腫、悪性リンパ腫などがあります。頻度の点からも前2者をまとめます。

・なお、限局した小葉間隔壁肥厚(いわゆる軽度の間質性変化とか言われるもの)は日常的に見かけますが、軽微な所見であり鑑別には大きく寄与しません

→従って小葉間隔壁肥厚が広範囲に見られる場合のみ、有意な所見ととるべきと考えられます。

 

①癌性リンパ管症

広義間質の肥厚、すなわち小葉間隔壁/気管支血管束/胸膜の肥厚を認めます。

・特に亀甲状と呼ばれる多角形の小葉間隔壁や胸膜の肥厚が特徴的です。

・腫瘍進展に伴うリンパ管閉塞(→肺水腫)や肺胞出血(血管浸潤などによる)は、胸部CTではすりガラス影として認めます。

・随伴所見としては胸水貯留肺門/縦隔リンパ節腫大を認めることが多いとされています。

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小葉間隔壁、気管支血管束、胸膜が肥厚する広義リンパ路病変の鑑別診断

より画像引用

medicalimagecafe.com

 

②肺水腫

・画像所見から以下の2つに分類されます。

-間質性肺水腫:気管支血管束肥厚、平滑な左右対称の小葉間隔壁肥厚がみられます。

-肺胞性肺水腫:間質性肺水腫が進行して、肺胞腔に液体貯留を生じた状態です。すりガラス影やコンソリデーションとして出現し、典型例では両側対称性に肺門周囲に出現します(butterfly shadow)。内部には気管支透亮像(air bronchogram)を伴います。

※陰影は内層優位(外層にはリンパ流があり速やかに滲出液が除去される)、荷重側優位に分布します。

・肺水腫は原因が重要で、まずは大きく心原性肺水腫と非心原性肺水腫に分けます。

-心原性肺水腫:心拡大や肺血管拡張といった心不全の所見を伴います。

-非心原性肺水腫心不全所見のない肺水腫を見た時に疑います。ARDS、薬剤性肺炎、急性好酸球性肺炎などの鑑別疾患があります。

 

心原性肺水腫

広義間質の肥厚内層優位のすりガラス影やコンソリデーションとair bronchogramを認めます。

・また心不全を反映して心拡大肺血管拡張胸水貯留などを伴います。

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肺水腫のCT画像診断、原因(心原性、左心不全)は? より画像引用

 

ARDS(急性呼吸窮迫症候群)

・病期により画像所見が変化してくるため、病期を知る必要があります。

-滲出期(3-7日):両側の広範なすりガラス状陰影、背側のコンソリデーション。

-増殖期(7-21日):上記の進行に加えて、牽引性気管支拡張や肺容量減少。

-線維化期(21日):上記進行と粗大な網状影や小嚢胞。

・肺障害から半日程度で画像所見を認めますが、滲出期などの早期の段階では胸部CT所見のみでARDSの診断をつけることは難しいと思われます。

・胸部CTを経時的に評価し、肺水腫所見の中に牽引性気管支拡張の所見が出現することを確認しなくてはなりません。

※従ってARDSは胸部CTよりもその他の臨床所見で診断をつけることになります。

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http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/002050502j.pdf

より画像引用

 

【索状影】

厚さ1-3mmで長さ5cmまでの不整形陰影で、隣接する肺実質や気管支血管束の歪みを伴う陰影を指します。

・基本的に線維化などの陳旧性炎症性変化板状無気肺が原因となります。

・板状無気肺は、肺の一部が容積や膨張性の低下により板状になった状態のことで、気道閉塞、圧迫、癒着、瘢痕などで生じます。

 

【荷重部高吸収域】

・肺実質が自分の重さでわずかにつぶれ、荷重部位が淡い高吸収域をきたした陰影を荷重部高吸収域と呼びます。

特に吸気不十分な場合にしばしば観察される所見になります。

・仰臥位で背側に観察されますが、腹臥位にすると消失します。

※画像は上が仰臥位で下が腹臥位です。腹臥位で右肺底部の結節影が見やすくなっています。

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これって間質性肺炎?CT画像は全て正しいとは限らない! - 読影を中心にRadioGraphica -診療放射線技師のバイブル- より画像引用

 

【肺野低吸収域】

正常の肺野よりさらに黒く描出される領域です。

肺気腫、ブラ、肺嚢胞、空洞性病変などが含まれます。

 

肺気腫・ブラ

肺気腫:通常上葉優位に存在し、多発、小さい、小葉中心性の透過性亢進といった特徴があります。また、壁は薄いためCTでは同定できません。

ブラ:胸膜下に見られることの多い1cm以上の気腫性病変で、厚さ1mm未満の壁を有します。肺気腫と合併することが多いです。

肺気腫とブラは、胸部CTでは主に壁の有無で鑑別されます

※以下は、肺気腫の画像とブラの動画です。

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胸部CTの適応と基本的読影3: やさしイイ呼吸器教室 より画像引用


肺尖部ブラのCT画像

 

ブラとブレブの違い

・これらは胸部CTでは区別できないため、画像所見を述べるときは基本的に「ブラ」で統一されています。

ブラ:胸膜下に見られることの多い1cm以上の気腫性病変で、厚さ1mm未満の壁を有します。肺気腫と合併することが多いです。

ブレブ:臓側胸膜内に存在する小さな気腔で、径が1cmに満たないものをいいます。

・ブラは肺胞破壊に伴い、肺実質内にできた気腔です。一方でブレブは臓側胸膜内にできた気腔です。

・ブラは肺気腫の延長のような病態ですから喫煙者に多いと考えられます。一方で若年者の自然気胸の原因はブレブが大半だと推測できます。

 

肺嚢胞

・周囲と明確に分離され、直径1cm以上の円形で、薄い壁を有する病変です。

・上記の定義だと、ほとんどブラと同じです。(特に臨床的には)ブラとブレブの総称として用いる場合もあります。

・従って、あえて肺嚢胞という言葉を使う場面は臨床的には少ないと考えてもよいのではないかと思います。

・あえて用いる場合、肺尖部以外、あるいはより内層に存在するものに対して使用することが多いようです(肺尖部に存在するならブラと表現)。

・また、複数の嚢胞が見られる場合は嚢胞性肺疾患を疑い、Langerhans細胞組織球症、リンパ脈管筋腫症、Birt-Hogg-Dube病などを鑑別に挙げます。

 

②空洞性病変

・空洞性病変(cavity)とは、肺嚢胞より厚く1mm以上の不規則な壁をもつ空気を満たした病変のことを言います。

・鑑別疾患には結核(/非結核性抗酸菌症)肺膿瘍真菌症(アスペルギルスやクリプトコックス)肺扁平上皮癌転移性肺腫瘍多発血管炎性肉芽腫症敗血症性肺塞栓症などが挙げられます。

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空洞病変の鑑別 : ピクトグラムでわかる呼吸器内科 より画像引用

 

敗血症性肺塞栓症

両側びまん性の辺縁不明瞭な結節影やコンソリデーションを認め、特に結節影は空洞性病変を高率に伴うことが特徴です。

・病変はランダム分布(多発肺転移や栗粒結核と同じ)であるため、胸膜直下にも認めることも特徴です。

概念:細菌塊による肺動脈塞栓で、肺梗塞や膿瘍形成を生じる病態です。

原因:CRBSI、IE、肝膿瘍、皮膚軟部組織感染症、Lemierre症候群、歯性感染症など。

※本症を見たら、心エコーでIEの評価は必ず行います。

症状:発熱は多くの症例で認めます。胸痛(約3割)、咳嗽(約2割)、喀血(約1割)などの呼吸器症状は認めない例も多く、症状のみから疑うことは比較的難しいです。

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敗血症性肺塞栓症とは?CT画像診断のポイントは?


敗血症性肺塞栓症(septic emboli)のCT画像診断【画像診断チャンネル】

 

【気管支拡張】

・所見が目立つ場合、気管支拡張症を考慮します。以下のような特徴です。

-概念:炎症などにより気管支が非可逆的に拡張した病態です。

-原因:感染(肺結核MAC症など)、遺伝性(Kartagener症候群など)、ABPA、DPB、膠原病などがあります。

-症状:喀痰、血痰・喀血、咳嗽、呼吸困難、発熱など。

-治療:エリスロマイシン少量持続投与など。

・診断には胸部CTが重要です。末梢側の気管支が中枢側より拡張していたり、伴走する肺動脈より明らかに太い場合に気管支拡張を考慮します。

・気管支拡張は形態学的に①円柱状②静脈瘤状③嚢胞状に分類され、後者ほど重症とされます。はっきりと区別できないことも少なくありません。

・拡張した気管支と(そのため気管支より小さく描出される)肺動脈が指輪状に見えることがあり、Signet ring signと呼びます。

・また、しばしば気管支壁肥厚や気管支内液体貯留・粘液栓を伴います

※牽引性気管支拡張は気管支の辺縁が不整でコークスクリュー様で、壁の肥厚や液体貯留は原則認めない点で、上記のような炎症性の気管支拡張とは区別されます。

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Signet ring sign | Radiology Reference Article | Radiopaedia.org より画像引用

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気管支拡張症とは?CT画像診断のポイントは? より画像引用

※上から円柱状、静脈瘤状、嚢胞状。

 

【通常型間質性肺炎(UIP)】

・IPF(特発性肺線維症)はIIPs(特発性間質性肺炎)で最も頻度が高く、予後不良の疾患です。

・IIPsの確定診断は原則として外科的肺生検を要しますが、IPFだけは典型的な画像所見を認める場合、臨床所見と合わせて生検なしで確定診断とすることができます。

IPFは画像所見は、UIP patternを呈します。IPFが臨床診断ならば、UIPは画像・病理診断ということになります。

・なおUIP patternを呈する疾患はIPFのみでなく膠原病肺や慢性過敏性肺臓炎などでも見られるため、IPF診断の際にはこうした二次性の疾患を除外する必要があります。

・UIPの胸部CT上の特徴を示します。

-両側性で胸膜直下、下葉優位に陰影を認める。

-蜂巣肺が最も特異度の高い所見である。

-網状影を認める。

-牽引性気管支拡張を認める。

-時間的空間的不均一性を認める(=蜂巣肺、網状影、牽引性気管支拡張、すりガラス影などが混在する)。

・それでは、特徴的な各画像所見について細かく見ていくことにします。

 

①網状影

・気管支や肺動静脈、小葉間隔壁などの既存の構造と関連付けることのできない線状陰影の集合です。

・細い/太いもの、まっすぐ/曲がっているものなど様々な形態を含みます。

・網状影のみだと鑑別疾患はIPF慢性過敏性肺臓炎塵肺膠原病喫煙関連疾患薬剤性肺炎など多岐にわたります。

・また時折、肺底部にわずかな網状影やすりガラス影を認めますが、この鑑別疾患には初期のIPF荷重部高吸収域初期の喫煙関連間質性肺炎(AEF)初期の膠原病肺や慢性過敏性肺臓炎などが挙げられます。

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通常型間質性肺炎(UIP/IPF)のCT画像診断のポイントは?ガイドラインは?

より画像引用

 

②牽引性気管支拡張

気管支周囲の肺の線維化によって気管支が牽引されて拡張した状態です。

・炎症性の気管支拡張と異なり、不整なコークスクリュー様の形態で、壁肥厚は基本的に伴いません

・網状影とともに認める場合はIPF膠原病慢性過敏性肺臓炎などが鑑別疾患となります。

ARDSの画像所見としても重要でした(前述)。

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通常型間質性肺炎(UIP/IPF)のCT画像診断のポイントは?ガイドラインは?

より画像引用

 

③蜂巣肺

胸膜下にやや厚い隔壁を有する直径3-10mm大の嚢胞状の気腔が、いくつかの層を成して集簇している所見です。

・明確な蜂巣肺を認める場合、それだけでUIP patternと診断できるほど特異度の高い画像所見となります。

・二次性の原因が除外出来る場合、IPFに対してかなり特異度の高い所見と言えます。

※牽引性気管支拡張とは、上下のスライスを辿ることで区別します。

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通常型間質性肺炎(UIP/IPF)のCT画像診断のポイントは?ガイドラインは?

より画像引用