内科医キューピーのつぶやき

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胸部CTの読み方(縦隔条件)

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キューピーです。

 

肺野のCTってとても難しいですよね。

 

異常所見があるのは分かるけど、一体どういう病態なのか・・・。

 

胸部CTの読み方を考えてみたいと思います。

 

そして今回は、肺野ではなく、縦隔条件で見るべきポイントに絞ってまとめます。

 

 

目次

 

 

【参考文献】

 

読影手順】

・どのような手順でもよく、自分で決めておくことで見落としを防ぐことができます。

・参考文献に記載の読影手順は以下の通りです。

脊柱管→乳腺→腋窩・胸骨傍・鎖骨周囲リンパ節→甲状腺→背部皮下組織

→心臓→胸膜と胸水→大動脈→縦隔・肺門リンパ節→肺動脈

・今回はこれに沿って、読影の際のポイントを考えていきます。

 

【脊柱管】

腫瘍や血腫など、明らかな異常所見がないか見ていきます。

・胸部CT、ましてや軸位断のみでは正確な診断は難しいと思うので、異常があるかどうかをチェックするくらいでよいと思われます。

 

【乳腺】

・基本的に乳腺の画像診断はマンモグラフィ、エコー、MRIで行っていくのでCTにとっては苦手な領域になると思います。

・左右差に注意しつつ、明らかな腫瘤や女性化乳房の所見がないか確認します。

※軽微な所見を拾うことは難しいと思われます。

・乳房腫瘤(葉状腫瘍)や女性化乳房の画像例を示します。

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女性化乳房の原因は?鑑別診断は? より画像引用

 

腋窩・内胸(胸骨傍)・鎖骨上/下リンパ節】

・いずれも乳癌の所属リンパ節となります。

・なお、腋窩リンパ節は以下のようにLevel Ⅰ-Ⅲまで分けられます。

-Level Ⅰ:小胸筋外側縁より外側

-Level Ⅱ:小胸筋背側および胸筋間

-Level Ⅲ:小胸筋内側縁より内側

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乳癌の所属リンパ節、腋窩リンパ節のレベル分類とは? より画像引用

 

甲状腺

腫瘤の有無や濃度をチェックします。

・腫瘤はCTのみでは性状の評価は困難ですので、超音波検査を行うようにします。

・濃度低下を認める場合は、甲状腺機能低下の可能性があります。

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甲状腺の腫瘤・結節をCTで指摘!検査はどうすればいい? より画像引用

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http://chtgkato3.med.hokudai.ac.jp/kougi/CT/CT2.pdf より画像引用

 

【背部皮下組織】

皮下腫瘤の有無などをチェックします。

・なお、軟部腫瘍は大部分が良性とされています。

 

【心臓】

心拡大(どの心腔が拡大しているか)心嚢水貯留冠動脈石灰化をチェックします。

・稀ですが心膜石灰化を認める場合は、収縮性心膜炎を考えます。

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心不全のCT画像診断のポイントは? より画像引用

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【保存版】心膜の構造の解剖は?心膜腔とは?イラストでわかりやすく!

より画像引用

 

【胸膜と胸水】

・胸膜については、胸膜の肥厚と石灰化をチェックします。

・胸膜肥厚では種々の鑑別がありますが胸膜炎石綿関連疾患腫瘍性(胸膜播種など)などの頻度が高いと思います。

・胸膜石灰化では陳旧性結核性胸膜炎陳旧性膿胸(慢性膿胸)陳旧性血胸石綿珪肺タルク曝露(悪性腫瘍の難治性胸水に対する胸膜癒着術で用いることが多いです)などが鑑別に挙がります。

※下図は上2つが癌性胸膜炎、最後の1つが陳旧性結核性胸膜炎です。

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【CT画像あり】胸膜炎とは?原因・症状・診断・治療の徹底まとめ! より画像引用

 

【大動脈】

※腹部領域も併せてまとめます。

 

①大動脈の解剖

上行大動脈:大動脈口から腕頭動脈分岐部まで。

大動脈弓部:腕頭動脈分岐部から第4胸椎のレベル(または大動脈峡部)まで。

大動脈峡部:大動脈の左鎖骨下動脈分岐直後の部分で、わずかにくびれを形成していることがあります。外傷性胸部大動脈損傷の好発部位です。

下行大動脈:大動脈弓部後部から横隔膜大動脈裂孔のレベルまで。

腹部大動脈:横隔膜大動脈裂孔のレベルから両側総腸骨動脈の分岐部まで。

 

②大動脈解離

定義:大動脈壁が中膜のレベルで2層に剥離し、動脈走行に沿って少なくとも1-2cm以上の長さで2腔になった状態。

分類:上行大動脈に解離が及べばStanford分類A型、解離がなければStanford分類B型とします。

・また真腔と偽腔の交通がない場合を偽腔閉鎖型、交通がある場合を偽腔開存型と呼びます。

・偽腔閉鎖型と偽腔開存型の画像イメージを載せておきます。

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【保存版】大動脈解離まとめ!症状・治療・CT画像所見のポイントは?

より画像引用

 

偽腔閉鎖型大動脈解離

単純CTで三日月状の淡い高吸収域が、大動脈壁に沿ってある程度の縦方向の広がりをもって存在していれば、偽腔閉鎖型と考えます。

・偽腔閉鎖型ではStanord分類に加えて、ulcr like projection(ULP)の有無を確認します。

ULP:偽腔の一部に造影剤が突出した状態です。解離の進行、再解離、破裂のリスクとなるため、ULPを認める場合は特に経過観察はご法度です

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【保存版】大動脈解離まとめ!症状・治療・CT画像所見のポイントは?

より画像引用

 

偽腔開存型大動脈解離

・偽腔開存型大動脈解離は単純CTでは指摘困難です

造影CTで真腔と偽腔および大動脈内部に隔壁(flap)が指摘されれば、偽腔開存型と考えます。

・真腔と偽腔は隔壁裂孔(tear)で交通しており、上流のtearを入口部(entry)、下流のtearを再入口部(re-entry)と呼びます。

・偽腔開存型は動脈径が拡大することが多く、最大短径を確認するようにします。

真腔と偽腔の見分け方:通常は偽腔の方が広いです。また、大動脈弁の直上は真腔です。これらを頼りに見分けます。

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【保存版】大動脈解離まとめ!症状・治療・CT画像所見のポイントは?

より画像引用

 

モーションアーチファクト

・大動脈解離がないのに、モーションアーチファクトによって上行大動脈内腔の隔壁構造があるように見えることがあります。

・臨床所見と対比したり、肺動脈や肺実質などにもブレが生じている場合はモーションアーチファクトを疑います。

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救急:救急領域における2管球型128-slice MSCTの有用性─救急初期診療と胸部血管病変の診断 中川淳一郎(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター)- シーメンス・ジャパン株式会社 - inNavi Suite より画像引用

 

③大動脈の壁在血栓

動脈硬化では、分厚い壁在血栓をしばしば認めます。

・また、しばしばアテローム潰瘍を認めます。

・これらを認める場合、ULPを有する偽腔閉鎖型大動脈解離と造影CT所見が類似し得ますが、単純CTでは三日月状の高吸収域は認めないため鑑別できます

 

④大動脈瘤

・大動脈が全周性に拡張し正常径の1.5倍以上に拡張した場合を紡錘状瘤、一部分のみがコブ状に突出した場合を嚢状瘤とします。

・明確に区別できない場合は、嚢状瘤として取り扱ってよいとされます。

・また腹部大動脈は3cm、胸部大動脈は2cmが正常径であり、紡錘状の拡張である場合、それぞれ4.5cm3cmを超えると瘤であると判断します。

・そして動脈径は基本的に外膜から外膜までの最大短径で論じます。

※大動脈は蛇行しており、スライスと直行する面を捉えることは困難です。この場合、長径は交差する角度によって変わるため、常に一定である最大短径を目安とするのです。

 

胸部大動脈瘤

・胸部大動脈の最大短径が4.5cmを超えると胸部大動脈瘤と考えます。

・一般的に最大短径が6cmを超えると侵襲的治療の適応となります。

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【画像あり】胸部CTの読影方法・見方〜基礎編〜 より画像引用

 

腹部大動脈瘤

・腹部大動脈の最大短径が3cmを超えると腹部大動脈瘤と考えます。

・一般的に最大短径が5cmを超えると侵襲的治療の適応となります。

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腹部大動脈瘤の手術 - 診療科・部門案内 - 藤沢市民病院 より画像引用

 

動脈瘤破裂

・大動脈瘤破裂が発生した場合、ほとんどは病院にたどり着く前に死亡します。

・病院へたどり着き、CT撮影ができた場合は、大動脈周囲に存在する臓器や血腫が破裂部位を覆い、腹膜腔への破裂には至っていない状態(sealed rupture)が多いようです。

・また血腫は胸部なら縦隔腹部なら後腹膜に認めます。

切迫破裂:破裂が迫っている場合、CTで壁在血栓内の高吸収域(crescent sign)を認めることがあります。これは動脈壁の全層破綻はないものの動脈壁内に新たな血腫が出現していることを意味します。

※下図は白矢印が壁在血栓、黒矢印がcrescent signです。*は後腹膜血腫です。

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Crescent sign in abdominal aortic aneurysm | BMJ Case Reports より画像引用

 

⑤上腸間膜動脈血栓塞栓症

・急激な腹痛で発症し、造影CTを撮影しないと診断できず、致死率も高いため重要な疾患です。特徴的な症状がなく、診断に難渋することもあります。

血栓症と塞栓症がありますが、両者の特徴は以下の通りです。

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上腸間膜動脈閉塞症とは?血栓症・塞栓症、CT画像、治療まとめ! より画像引用

・造影CTではSMAの造影欠損smaller SMV sign(SMA径>SMV径)を認めます。

・さらに腸管虚血を示唆する所見として、腸管壁造影効果減弱腸管の菲薄化腸管壁内ガスおよび門脈ガスを認めることがあります。

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上腸間膜動脈閉塞症とは?血栓症・塞栓症、CT画像、治療まとめ! より画像引用

 

【縦隔・肺門リンパ節】

・肺癌の転移、結核などの感染症、サルコイドーシスなどと関連します。

・以下のツールが本当に便利です。縦隔リンパ節に全て色を付けてみると、縦隔リンパ節の占める範囲を理解することができます。

medicalimagecafe.com

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肺サルコイドーシスのCT画像診断(BHL,Galaxy sign) より画像引用

 

【肺動脈】

①肺動脈(幹)拡張

肺動脈幹の径の正常上限は30mmで、これ以上は肺動脈拡張とします。

上行大動脈よりも肺動脈幹が太くなっている場合、肺動脈幹の拡張を疑うきっかけとなります。

・肺動脈幹の拡張は、肺高血圧症や肺動脈血栓塞栓症などでみられます。

 

②肺動脈血栓塞栓症

・造影CTで肺動脈内に造影不良域を認める場合に疑います。

・二次所見として右心系の拡大などの右心負荷所見が見られた場合、特に緊急の治療を要します。

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肺動脈血栓塞栓症(肺塞栓症)のCT画像診断のポイントは? より画像引用


肺動脈血栓塞栓症(肺塞栓症,PE,PTE)の画像診断【画像診断チャンネル】