内科医キューピーのつぶやき

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頭部CTの読み方(脳実質外病変)

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●この記事は2021/2/27に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

頭部CT読影について、3部作の最終回になります。

 

今回は脳実質外である脳溝、脳槽、脳室などを考えます。

 

これまでの記事はこちらです。

 

pkun.hatenablog.com

 

pkun.hatenablog.com

 

 

目次

 

 

【参考文献】

 

【脳実質外病変】

⓪基本事項

・頭蓋内で脳実質外の構造物は、主に髄膜血管です。

・脳実質外病変は、主にこれらの構造の隙間に生じた血腫や腫瘤です。

・その他の脳実質外の構造として大脳鎌や小脳テント静脈洞があります。

脳実質外チェックリスト

-頭蓋骨直下(特に中頭蓋窩)

→硬膜外血腫、硬膜下血腫、硬膜の腫瘍性病変。

-脳溝や脳槽の左右差

くも膜下出血、脳実質圧排による狭小化。

-大脳鎌や小脳テントの濃度や厚さ

→硬膜下血腫、硬膜の腫瘍性病変。

-脳室の偏位や変形

→脳実質圧排による偏位。

-脳動脈や静脈洞の高吸収域

→急性期脳梗塞、静脈洞血栓症動脈硬化

-トルコ鞍や鞍上部の異常

→下垂体線腫、下垂体卒中。

見逃しやすい所見 

-わずかな硬膜下血腫(脳溝が押されて対側より狭い)

-中頭蓋窩の硬膜外血腫

-シルビウス裂の左右差(SAHなど)

 

①出血病変

(0)基本事項

・脳実質外の出血は発症直後から脳実質より高吸収に描出されます。

・しかし"少量"/"時間経過がある"/"貧血がある"症例は脳実質と等濃度のこともあります。

・従って"高吸収を見つける"よりも"脳溝や脳槽の低吸収が見えるか"を意識して、左右差を確認しながら読影します。

 

硬膜外血腫

頭蓋骨直下に両凸レンズ状の高吸収として認められます。

※硬膜下血腫でも凸レンズ状のことがあり、形のみで確定診断はできません。

縫合線を超えないことがほとんどです。

・基本的に骨折に伴い生じるので、骨折線の有無を確認します。

※副鼻腔/乳突蜂巣に近いと空気の迷入を認めることがあり、骨折の補助所見となります。

受傷直後(1時間以内)のCTでは見過ごされやすいとされます。

意識障害→意識清明期(数分-数時間 lucid interval)→意識障害の経過が多いです。

→従って、厳密な頭部CTフォローが重要で、適切に治療できれば予後良好です。

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急性硬膜外血腫とは?症状からCT画像診断まとめ!

 


急性硬膜外血腫の画像診断、脳出血【画像診断チャンネル】

 

硬膜下血腫

頭蓋骨直下に三日月状の高吸収として認められます。

縫合線を無視して進展します。

contrecoup(受傷対側)に認めることもあり、回転運動でも生じることがあります。

意識清明期(lucid interval)は20%のみに認め、早期に対応されても予後不良です。

慢性硬膜下血腫のポイント

-血腫の吸収と再出血で高-低吸収のグラデーションが見られます。

-上記も含めて内部濃度が不均一であることが多いです。

-被膜の石灰化を認めることもあります。

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急性硬膜下血腫を徹底まとめ!CT画像のポイント!

 

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慢性硬膜下血腫とは?CT、MRI画像診断のポイントは?

 

コラム:subdural window

・薄く広がる硬膜下/硬膜外血腫は、頭蓋骨の高吸収のために通常の頭部CTのウインドウ(レベル40/幅80)では指摘が難しい場合があります。

・そのようなときはウインドウ幅を広げると確認しやすくなります。

subdural window:レベル70-80/幅150-300

・また、随伴所見である圧排による脳溝や脳槽の狭小化にも注目します。

 

コラム:硬膜下液体貯留(硬膜下水腫)

硬膜下に脳脊髄液と等濃度の低吸収域を認め、硬膜下水腫と呼ばれます。

原因:外傷(くも膜断裂)、慢性硬膜下血腫の吸収や希釈、髄膜炎後変化。

・経過不明の場合は、基本的には異常と考えて経過観察を行います。

・高齢者の高度脳萎縮とは、低吸収の中の皮質静脈描出の有無で鑑別します。

→くも膜下腔開大では皮質静脈を確認できますが、硬膜下水腫では認めません。

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慢性硬膜下血腫と硬膜下水腫の関係は?|Web医事新報|日本医事新報社

 

くも膜下出血

・急性期SAHの典型例は、脳槽や脳溝に沿った高吸収域として描出されます。

ペンタゴン:鞍上槽、脚間槽-橋前槽、迂回槽、シルビウス谷等の脳底槽からシルビウス裂や大脳縦裂に広がることで形成されます(図)。

動脈瘤の局在/血腫量/破裂の方向などから、ペンタゴンとならないことも多いです。

合併症:再出血(24時間以内)、脳血管攣縮(3日-2週間)、正常圧水頭症(数週-数か月)。

読影の際は以下のポイントに注意します。

-脳槽や脳溝の左右差に注目して読影する。

-髄液(0-5HU)と脳実質(20-40HU)のコントラストに着目する。

脳実質とのコントラストが不明瞭な場合、髄液吸収値上昇=SAHが存在と考える。

-上記のようにSAHを吸収値(高吸収)で評価しない

-特に出血後3日以降では高吸収→等吸収に変化する。

-また貧血(Hb≦10g/dL)でも高吸収を呈さない

→貧血の判断は静脈洞の吸収値(正常なら高吸収)が参考になる。

-付随所見水頭症脳梗塞(血管攣縮)、脳室内血腫、脳内血腫など。

→これらを認める場合は常にSAHの存在も疑いながら読影する。

-慢性期のSAHで血腫が吸収されると水頭症所見が唯一の所見となり得る。

niko-niko sign:側脳室下角の開大。水頭症合併例で早期から認め得る。

-後方循環系の動脈瘤破裂では後頭蓋窩のみに所見を認めることもある。

-中脳周囲SAH:脳幹周囲の静脈破綻による予後良好のタイプ。

→全SAHの10%と言われ、血腫は脳幹腹側に限局する傾向がある。

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くも膜下出血の画像診断、原因、症状、治療まとめ

 

niko-niko sign

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非典型的なクモ膜下出血(SAH)の画像診断

 

中脳周囲SAH

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特殊なSAHとは?中脳周囲くも膜下出血、外傷性くも膜下出血など

 

外傷性SAH

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外傷性くも膜下出血の症状、CT画像診断まとめ!

 

見逃されやすいSAH


くも膜下出血(SAH)の画像診断【画像診断チャンネル】

 

②血管の異常

hyper dense MCA sign:early CT signの1つです。

静脈洞内高吸収域:静脈洞血栓症です。随伴所見の静脈性梗塞や出血にも注意します。

動脈瘤:特に巨大脳動脈瘤(≧2.5cm)はCTでも指摘し得ます。

 

hyper dense MCA sign

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静脈洞血栓症

脳静脈洞血栓症のCT、MRI画像診断のポイントは?

 

動脈瘤

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巨大脳動脈瘤の画像診断(giant aneurysm)

 

③硬膜下/硬膜外膿瘍

髄膜炎や脳膿瘍に合併することがあり、稀ですが死亡率の高い疾患です。

原因副鼻腔炎(特に前頭洞炎)、乳突蜂巣炎、中耳炎、外傷など。

症状:発熱、頭痛などが主体です。

CT所見:硬膜下/硬膜外の低吸収の液貯留(辺縁に造影効果あり)。

MRI:DWI high、ADC 低下が特徴的な所見です。

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耳展 56:3;111~119, 2013

 


硬膜下蓄膿(硬膜下膿瘍)の画像診断【画像診断チャンネル】脳膿瘍

 

④充実性腫瘍

髄膜腫

・くも膜細胞由来で、脳実質外腫瘍で最も多い腫瘍です。

好発部位:円蓋部、蝶形骨部、傍矢状部、大脳鎌など。

所見:硬膜に接し、通常は脳実質より高吸収です。しばしば石灰化を伴います。

※稀ですが脳実質と等吸収や低吸収のこともあります。

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【CT,MRI画像あり】髄膜腫の手術適応の基準は?症状や治療、再発まとめ

 

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髄膜腫とは?CT,MRI画像診断のポイントは?

※画像では腫瘍外側面に石灰化を伴っています。

 

神経鞘

三叉/顔面/聴神経などの脳神経の走行部位で認めます。

所見:腫瘍自体は脳実質と等吸収のこともあり、骨によるアーチファクトも強く分かりにくい場合もしばしばです。

→随伴所見の内耳道拡大橋前槽や第4脳室の左右差や偏位などに注目します。

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医師国家試験 110D36

※左のCTでは右内耳道の拡大を認めます。右の造影MRIでは小脳橋角部に腫瘍を認めます。

 

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総説 聴神経腫瘍 仙台医療センター医学雑誌 Vol.2 April 2012

 

⑤くも膜嚢胞 

・ほとんどが無症状で、ADPKD患者で合併が多いとされます。

好発部位:中頭蓋窩(図)、小脳橋角部など。

所見:脳脊髄液と同濃度の病変で、脳実質の偏位や圧排所見に注目します。

MRI:T1 low、T2 highでFLAIRでlowです。

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くも膜嚢胞の症状や原因、CT・MRI画像所見は?

 

⑥下垂体卒中

・主に既存の下垂体腺腫に出血や梗塞が生じた病態を言います。

症状:頭痛、嘔吐、眼球運動障害、視野障害意識障害、下垂体機能低下症など。

※頭痛は突然の強い頭痛で"thunderclap headache(雷鳴頭痛)"と呼ばれます。

リスク因子:外傷、妊娠、分娩、経口避妊薬、高血圧など。

所見:(下垂体腺腫を反映する)下垂体腫大を認め、出血の有無により吸収値は様々です。

治療:視力障害や意識障害を認める場合は緊急手術の適応となります。

empty sella:病的意義の無いトルコ鞍の拡張で、脳脊髄液と等吸収であることを鑑別点とします。

※empty sellaは、稀に下垂体前葉機能低下症や高PRL血症を伴うこともあります。

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EMA症例107:3月症例解説 | EM Alliance

 

【脳室】

水頭症と脳萎縮の鑑別

・両者とも脳室開大を認めるため、鑑別を行う必要があります。

→最も単純な鑑別法として、脳溝や脳槽に注目します。

水頭症では脳が頭蓋骨に押し付けられ、脳溝が消失します

脳萎縮では脳実質の容積が減少するため、脳溝や脳槽が拡大していきます

・その他に水頭症の特徴(MRI含む)として、以下があります。

⑴側脳室下角の開大(2mm以上で病的開大)

⑵側脳室前角および後角が丸みを帯びて開大

⑶両側側脳室前角の壁で形成される角度が脳委縮に比して狭い

脳梁の平滑な伸展挙上および菲薄化(矢状断)

⑸(急速進行性の場合)T2WIやFLAIRでの側脳室周囲白質の高信号域

※CTでは低吸収域として認めます(PVL)。

⑹Evans index(前角の最大幅/同一平面上の最大頭蓋内板距離)>0.3

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正常圧水頭症とは?画像診断(NPH、DESH、Evans index)のポイントは?

 

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認知症とは - 認知症予防財団

 

水頭症の原因

機能性水頭症

髄液の過剰産生による水頭症です。

・代表例に脈絡叢乳頭腫があります。

2歳以下の小児水頭症で発症することが多く、20%は悪性です。

好発部位:側脳室(小児)、第4脳室(成人)など。

所見:等吸収-高吸収で、石灰化を伴うこともあります。造影効果があります。

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脳神経外科の病気:脈絡叢乳頭腫 | 病気の治療 | 徳洲会グループ

 

非交通性水頭症

髄液の脳室系の通過障害による水頭症です。

通過障害の好発部位:Monro孔、中脳水道、第4脳室など。

・障害部位より中枢側の脳室開大が起こるので、障害部位を推測できます。

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臨床神経 2011;51:590-594

※側脳室や第3脳室の拡大は認めるものの第4脳室は正常であり、Cでは中脳水道に膜性の隔壁を認め、閉塞部位と考えられます。
 

交通性水頭症

髄液の脳室外の通過障害や吸収障害による水頭症です。

※くも膜下腔など脳室外での通過障害やくも膜顆粒での髄液吸収障害などによります。

代表例くも膜下出血髄膜炎、外傷、静脈洞血栓症など。

特発性正常圧水頭症も含まれますが、これは次項でまとめます。

 

③正常圧水頭症(NPH)

・交通性の機序で発生する水頭症を指します。

→その中でも特に原因のないものは特発性正常圧水頭症(iNPH)と呼ばれます。

症状:歩行障害(歩隔拡大やすり足歩行)、認知障害、尿失禁。

髄液所見:圧正常(<20cmH2O)、細胞数正常、蛋白質正常。

タップテスト:20-30mlの髄液を排除します。本症では症状改善を認めます。

・なお本症を見たら、SAHに伴う続発性正常圧水頭症は必ず除外します。

正常圧水頭症の画像所見

-Evans index>0.3

-高位円蓋部くも膜下腔、脳溝の狭小化(最重要。特に冠状断)

※脳萎縮との鑑別に最も有用な所見です。

-冠状断での脳梁角<90°

-脳底槽やシルビウス裂の拡大

-PVLやPVHの有無は問わない

DESH:高位円蓋部で狭小化、シルビウス裂や脳底槽で拡大する不均等なくも膜下腔の所見。

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正常圧水頭症とは?画像診断(NPH、DESH、Evans index)のポイントは?

 

【アーチファクト】

①病的所見との鑑別のポイント

薄いスライス厚の画像を確認:部分容積効果の影響を除外できます。

部分容積効果(partial volume efect):CT値がボクセル内の平均値となる効果です。

多方向で確認:軸位断だけでなく矢状断や冠状断でも確認します。

臨床像との整合性を確認:外傷歴のない脳挫傷などはアーチファクトも疑います。

MRI:特に後頭蓋窩は骨に囲まれ、脳幹や小脳の評価はしばしばCTでは困難です。

→その際はMRIによる精査も考慮します。

 

②金属アーチファクト

歯科矯正金属動脈瘤クリッピング術後コイル塞栓術後などで認めます。

・金属デバイスから放射状にアーチファクトが発生します。

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Ai E-learningシステム(β版)

 

ストリークアーチファクト

X線減弱の強い方向に沿うストリーク状(筋状)のアーチファクトです。

・頭部では厚い頭蓋骨のある後頭蓋窩(小脳や脳幹)に認めることが多いです。

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国家試験対策にCTアーチファクトを覚えよう!! | ギモンらど!!

※別のアーチファクトの説明ですが"ストリーク状"のイメージです。

 

④ビームハードニングアーチファクト

X線が物質を透過した際に、低いエネルギーはより多く吸収されます。

→これによりX線の線質が変化する現象です。

・頭部CTでは頭蓋骨の直下でCT値が変化する現象として観察されます。

→この際、低吸収域にも高吸収域にも変化し得ます。

低吸収化した場合、脳梗塞や脳腫瘍などと間違えないようにします。

高吸収化した場合、血腫などと間違えないようにします。

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国家試験対策にCTアーチファクトを覚えよう!! | ギモンらど!!

 

⑤モーションアーチファクト

意識障害、不穏状態、小児などでは体動によるアーチファクトが出現し得ます。

・場合により鎮静下での撮影も考慮し得ます。

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国家試験対策にCTアーチファクトを覚えよう!! | ギモンらど!!