内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

【COVID-19】SARS-CoV-2ゲノム解析から第1波と第2波のウイルスの違いを考える

にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ

キューピーです。

 

先日、信頼性の高い疫学データから第2波の現状について考察してみました。

 

今回はもう1つ信頼性の高い、興味深いデータを用いて考察してみようと思います。

 

疫学データ考察の記事↓

 

pkun.hatenablog.com

 

コロナの武漢欧州型などと聞いたことはありませんか?

 

今回用いるのは、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の日本におけるゲノム(≒遺伝子)データです。

 

大変な仕事かと思いますが、国立感染症研究所のグループがWeb上でデータ公開していますので、これを用いて考察をします。

 

専門性の高い分野ですが、今回は医学を全く学んでいない人でも分かりやすいように簡単に記載するように心がけました!!

 

そのため、専門家の方からみるとツッコミどころもあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 

それでも難しい!という方は「記事の要点まとめ」の項目だけで理解はできます

 

以下のサイトから詳細な情報を得ることができます。

 

www.niid.go.jp

 

 

目次

 

 

【ゲノムとは?】

・ゲノムとは、簡単に言えばその個体の持つ全遺伝情報です。

SARS-CoV-2は一本鎖プラス鎖RNAウイルスという種類で、その遺伝情報はこのRNAと呼ばれる構造にあります

・人間の場合は、言わずと知れたDNAがその役割を果たしています。

RNAは「リボヌクレオチド」という構造が繋がったものになります。

・リボヌクレオチドリボース(糖の一種)リン酸塩基という3つの成分から成り立っています。

・この「塩基」には4種類あり、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)があります。

・この塩基の並び方(塩基配列と言います)で、遺伝情報が決まってくるのです。

SARS-CoV-2は約29900個のリボヌクレオチドが繋がってできており、これは塩基配列が約29900にも及んでいることを意味します。

・図示すると分かりやすいと思います。このGACU...という並びが、SARS-CoV-2では約29900個連なっているということです

f:id:p_kun:20200825220611p:plain

核の機能・タンパク質の合成|細胞の構造と機能(3) | 看護roo![カンゴルー]

より画像引用

 

塩基配列の意味は?】

・ここはかなり簡潔に書きます(厳密に言うと正確ではない、というか間違っているのですが、大まかにこのような理解で今回は問題ないので、これでご容赦願います)。

塩基3つでアミノ酸1つを生み出します

※例:GCU→アラニ

アミノ酸がいくつか合体すると蛋白質ができます

蛋白質でウイルスのからだが作られます

・以上です。RNAがウイルスの特徴を決定づける所以が分かったと思います。

※人間もそうですね。DNAが人間の特徴を決定づけます。

・ところで「遺伝子」とは、蛋白質1つを作るための塩基配列を言います。

・例えばアラニン(アミノ酸の一種です)3つで作られる蛋白質が存在するとします。

→GCUGCUGCUという並びの部分がその蛋白質の遺伝子に相当することになります。

SARS-CoV-2のゲノムには11種類の遺伝子が存在するとされています

・ここまでで、難しい医学的な話は終わりです。厳密には正確な情報ではありませんので、気になった方は是非勉強してみてください。オススメの教科書を貼っておきます。

 

【なぜゲノム解析をしているのか?】

・実は、クラスター対策のためです。

・ウイルスには変異が起こる、とよく聞いたことがあると思います。

・その変異は、このRNA、更に細かくみれば「塩基の変異」なのです。

・つまり、同じ塩基配列SARS-CoV-2に感染した患者は、同じクラスターで発生した可能性が非常に高いと言えます。

・もちろん、クラスター対策は患者がどこへ行ったかという「事情聴取」が基本となりますが、その補助としてゲノム解析が行われているのです。

 

【日本のコロナのゲノムは?】

・ここからが本題です。図が完璧で分かりやすいので先に掲載します。

・この図の「●」の部分が塩基配列が同じである「ゲノム上のクラスター」になります。

・各クラスターの距離が近いほど、塩基配列の違いが少ないことを意味します。

・●が大きいほど、そのゲノムのSARS-CoV-2に感染した患者が多いことを意味します。

f:id:p_kun:20200825224500p:plain

・図にも記載がありますが、SARS-CoV-2の変異速度は24.1塩基変異/ゲノム/年、すなわち1年間で24.1か所で塩基の変異が起こる速度で変異が生じています

・まず、左の青い部分が武漢のウイルス株を起点として、1月初旬に日本各地で発生したクラスタです。

・複数発生していることが分かります。これらは消失に転じており、現在はこの青い領域のゲノムのSARS-CoV-2は認めていません

3月下旬に欧州系統ゲノムのクラスターが全国で同時多発的に発見されました。これが図のピンクの部分に該当します。

・そして、4月上旬に首都圏からの出張を起点として、全国各地の地域に根差したゲノムクラスターが存在していることが発見されます。

→これが図のオレンジ部分そしてこれこそが第1波に相当します

・この第1波の際のゲノムは、欧州系統から1,2塩基変異を伴っていました

・皆さんもご存じの通り、第1波の際の「自粛生活」が功を奏す形となり、この第1波のゲノムを持つSARS-CoV-2は収束へ向かうこととなります。

・6月は比較的落ち着いていましたが、6月中旬よりゲノムの観点からみると突然、欧州系統から6塩基変異を有するゲノムのクラスターが全国各地に拡散されていることが確認されます。これが図のそして第2波に相当します

・24.1塩基変異/ゲノム/年であるSARS-CoV-2にとっては、3か月で6塩基変異はちょうど適合しており、この第2波のSARS-CoV-2は欧州系統由来であることが分かります。

・なぜ「突然」という表現なのかというと、第1波のゲノムクラスターから突然6塩基変異が出現しているからです。つまり、その中間(つなぎ役)のゲノムのSARS-CoV-2が見つかっていません

・なぜこんな現象が起きているのか?それは、この中間のゲノムの感染者は、無症状や極軽症であったために、COVID-19と診断されていない可能性が高いと考えられます。

・つまり、第2波の前の落ち着いていたと思われた時期に、無症状感染者が感染をつないでおり、首都圏からの出張などを契機に全国へ拡散、全国規模での第2波が発生したと考えられました。

 

【日本のコロナのゲノムまとめ】

第1波の前武漢由来のゲノムクラスターが全国で散発的に発生し、現在は消失している。

第1波:欧州由来のゲノムを幹として、1,2塩基程度の変異を伴った地域特有のゲノムクラスターが全国規模で発生した。

第1波収束後:無症状感染者が、気づかない間に感染をつないでいた。

第2波:上記のため欧州由来のゲノムから6塩基変異を伴ったゲノムクラスターが全国規模で発生。ゲノムが「欧州由来のゲノムから6塩基変異」に収束できる点からは1か所(確率的には東京)に端を発していると考えられる。

 

【考察】

※これ以降は個人の意見です。さらに一歩引いた視点で読んでください。

・さて、ゲノムの視点から見ると僕たちは「第2波」を消し去らなくてはなりません。

・つまり、ゲノムの視点では第2波ではなく、第1波がずっと続いているのです・・・。

(疫学上の)第2波でも欧州由来のゲノムをベースとしたSARS-CoV-2が蔓延しています

(疫学上の)第2波の戦犯(呼び方が好ましくないですが、分かりやすさを重視します)は、第1波収束後に感染対策を怠った無症状患者(おそらく若者)です。

・ですが、これを戦犯などとしてしまってはもう普通に生活ができません。仕方がないと考えるしかないでしょう・・・。

・改めてこのウイルスの厄介さが分かる結果となりました。

・しかし、希望もあります。

ウイルスの変異は明らかに起こり続けています弱毒化の可能性も十分あり得ます

・これについては全く予測できないので、神様に祈ることしかできません。

・あと、個人的な意見ですが、国と国の渡航制限はまだ重要だと思いました。

・せっかくある国で弱毒化変異ウイルスのみになったのに、他の国の弱毒化していないウイルスが輸入されたら、全く無駄になってしまうからです。

 

【記事の要点まとめ】

・第1波は欧州由来から1,2塩基変異で地域ごとに特徴あり、第2波は欧州由来から6塩基変異で地域差は少ない(おそらく東京に端を発する)。

・第1波から第2波への架け橋となるゲノムのSARS-CoV-2が見つかっていない。恐らくこのゲノムのSARS-CoV-2に感染した人の多くが無症状であり、気づかずに感染リンクを広げてしまった。

・つまり無症状でも感染対策を行わないと、原理的には収束は不可能である。

・塩基変異が起こっている=弱毒化の可能性あり。ただし、これは後から判明することであり、現時点では評価不可能。

・国-国間の渡航制限をしないと、日本のSARS-CoV-2が弱毒化しても再び非弱毒化ウイルスを輸入してしまう可能性あり。

 

 

ウイルス側からみた考察の記事でした。

近いうちに宿主(ヒト)側からみた考察、すなわち集団免疫説の記事を書くつもりです。