内科医キューピーのつぶやき

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頭部CTの読み方(脳実質病変・脳ヘルニア)

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●この記事は2021/2/19に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

今回の記事では頭部CTにおける脳実質の見方をまとめてみます。

 

また脳実質病変に起因して起こることがある脳ヘルニアについてもまとめました。

 

頭部CT読影でのキモとなる部分だと思います。

 

前回(下記記事)の続きです。

pkun.hatenablog.com

 

 

目次

 

 

【参考文献】

 

【基準線】

・基準線とは撮像された横断像の角度を決定する線です。

位置決め画像をみることで、その画像の基準線を確認することができます。

・頭部CTでは一般にOM lineという眼窩中心と外耳孔を結ぶ線を用います。

・基準線が異なる場合、同一患者の画像でも病変の位置がずれて見えるため、読影の前に確認することが必要です。

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CTの見方から脳出血と脳梗塞の違いまで徹底網羅! | リハアイデア

 

【解剖】

①脳実質

・脳の解剖はとてつもなく難解です。

・従って全てを把握するのではなく、"要所"を押さえて、後はその都度参考書等を参照する方法が現実的と思います。

前頭葉/頭頂葉/側頭葉/後頭葉の把握基底核の解剖が"要所"となります。

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中心溝

前頭葉頭頂葉の境界で、この前方に中心前回、後方に中心後回が存在します。

・特に中心前回を主座とするのが一次運動野であり、錐体路の出発点となります。

・中心溝の同定は重要なため、以下のような様々なヒントを駆使して行います。

-上前頭溝は中心前溝と合流するため、そのすぐ後ろが中心溝です。

-中心溝は枝分かれがありません

※中心前溝や中心後溝は他の溝と合流するため、枝分かれがあります。

-中心前回は中心後回よりも幅が太く、一部が後方へ突出するような形態を呈します(precentral knob sign)。

→僕自身は上前頭溝の同定からの流れをよく用いています。

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頭頂後頭溝

頭頂葉後頭葉の境界です。脳梁背側にある帯状回の背側にあります。

・頭頂後頭溝の同定は比較的難しく、図のように側脳室体部の断面で同定します。

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リハビリテーション専門職に必要な脳画像の見方【脳溝を見分ける】 | ヒポログ

 

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※上図はMRI T2WIですが、青:前頭葉、赤:頭頂葉、黄:後頭葉です。

 

シルビウス裂(外側溝)

・(頭部CT上は)前頭葉と側頭葉の境界として重要です。

・波打つようにみえる島皮質へ向かう脳溝で、同定は比較的容易です。

中心溝を同定するスライスよりも尾側で同定する脳溝になります。

・シルビウス裂の腹側に運動性言語野(ブローカ野)背側に感覚性言語野(ウェルニッケ野)が存在することは、機能解剖上重要です。

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脳葉の同定の実際

・基本的には前述の中心溝/頭頂後頭溝/シルビウス裂は同定できるようにします。

・それを頼りとしますが、極論は各スライスを暗記するほかありません。

→3つの脳溝で大まかに同定を行い、最終的に判断に迷ったら参考書等を確認します。

・これを繰り返すことで各スライス(脳室の形などを目印とするとよいと思います)で見えている領域を暗記することが一番よい方法ではないでしょうか。

 

基底核

第3脳室やMonro孔が見えるスライスで多くの構造が同定でき、重要です。

脳出血の好発部位でもあり、機能解剖上も重要になってきます。

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※上図はMRI T2WIですが、

オレンジ:尾状核、赤:被殻、青:淡蒼球、緑:内包、ピンク:視床です。

 

②脳室

側脳室

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イヤーノート 2022 内科・外科編 | 岡庭 豊 |本 | 通販 | Amazon

・前角、体部、三角部、後角、下角に分けられます。

前角:Monro孔より前方に伸びる部分です。

体部:Monro孔より後方から視床後端までの部分です。

※第3脳室のスライスではほとんどが三角部へ移行していると考えます。

三角部:側脳室体部の後方に位置し、体部、後角、下角が合流して内腔が広くなった部分です。側脳室脈絡叢の生理的石灰化がよくみられます。

後角:三角部から後頭葉に伸びる部分で、サイズや形状には個人差があります。

 

コラム:透明中隔腔とVerga腔

・前角-体部は脳弓で左右に隔てられています。

・胎生期に脳弓の間に透明中隔腔という空間があり、これが遺残することがあります。

透明中隔腔がMonro孔を超えて、背側へ進展したものをVerga腔と呼びます(動画)。

・いずれも正常変異で異常所見とはとりません。

※図はT2WI 黄:透明中隔腔、オレンジ:脳弓

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透明中隔腔とVerga腔の画像診断【画像診断チャンネル】

 

第3脳室

・間脳(視床)を正中で隔てる扁平な空間です。

・前上方でMonro孔を介し左右の側脳室と、尾側で中脳水道を介し第4脳室と交通します。

 

第4脳室

・小脳と橋、延髄に囲まれたひし形の空間です。

・Magendie孔やLuschka孔を通り、くも膜下腔へとつながります。

 

③脳槽

くも膜下腔が局所的に広くなった空間を脳槽と呼びます。

・約20の脳槽が存在しますが、まずは以下に示す脳槽をチェックするようにします。

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【保存版】頭部CTの見方まとめ!実際の画像を見ながら。

 

【脳実質の異常:高吸収域】

⓪基本事項

・脳実質に大脳皮質や基底核に比して高吸収域を認めた場合、高吸収の程度を評価します。

・大きく3段階に分けて、その中で鑑別を進めていきます。

 

①高度(骨と同程度)の高吸収域

石灰化を意味します。以下の病態が鑑別となります。

-生理的石灰化淡蒼球、脈絡叢、松果体、小脳歯状核、大脳鎌、くも膜顆粒など。

-血管性病変:正常血管、脳動静脈奇形や脳動脈瘤など(血管壁)。

-腫瘍性病変:石灰化を伴う上衣腫、乏突起膠腫、髄膜腫、膠芽腫など。

-その他副甲状腺機能低下症、結節性硬化症など。

・生理的石灰化は一般に高齢者に見られます。

若年者の生理的石灰化は背景に何らかの疾患がないか意識する必要があります。

・上記病態の鑑別のため、追加でMRIやCTAが施行されることも多いです。

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頭部CTで脳の生理的石灰化はどこに起こる?

 

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公益財団法人 福島県保健衛生協会 人間ドックオプション検査

 

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乏突起膠腫の症例と病理 | 脳外科医 澤村豊のホームページ

 

②中等度の高吸収域

60-80HU程度で、急性期血腫(≒脳出血)を示唆します。

※Ht 100%の血腫のCT値が94HUで、血腫は理論上95HUを超えません

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脳出血とは | 医療法人 翠清会梶川病院 【脳神経疾患専門病院】

 

●コラム:脳出血CTのポイント

高血圧性かそれ以外の二次性か、CT所見から鑑別を試みます。

二次性の原因:脳動脈瘤、出血性梗塞、静脈洞血栓症、脳動静脈奇形、もやもや病、脳腫瘍、アミロイドアンギオパチー、凝固異常など。

部位被殻視床、小脳、脳幹以外の血腫は二次性脳出血を疑います。

※皮質下出血も高血圧性の好発部位ですが、二次性の可能性もあります。

血腫周囲所見:高血圧性では周囲に軽度の浮腫(低吸収域)を伴います。

二次性では腫瘍や炎症の場合、血腫の背景に低吸収域(主病変)を認めます。

※この場合、低吸収域が優位となることが特徴です。

随伴所見:腫瘍や脳動脈奇形からの出血(二次性)では石灰化を伴うことがあります。また、凝固異常やアミロイドアンギオパチーでは時相の異なる出血が多発することがあります(等吸収域の出血が混在)。

 ・脳出血のCT所見の経時的変化

-超急性期(24時間以内):高吸収

-急性期(1-3日):高吸収

-亜急性期(3-14日):(3-7日)等吸収、(7-14日)辺縁から低吸収化

-慢性期(14日以降):低吸収

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脳出血の頭部CTにおける経過・経時的変化は?画像診断のポイント!

 

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痙攣で搬送された40歳代男性|実践!画像診断Q&A|羊土社:レジデントノート 

※図1では左側頭葉に脳室穿破と正中偏位を伴う高吸収域を認め脳出血を疑います。比較的若年で高血圧性脳出血の好発部位としてはやや非典型的であり、二次性脳出血の可能性もあります。呼吸状態が不安定でありMRIではなくCTAが撮影されたようです。MCAの動脈瘤を認め、同部の破裂に伴う二次性脳出血が疑われました。

 

③軽度の高吸収域

・脳実質よりわずかに高吸収の場合、細胞密度の高い腫瘍が示唆されます。

鑑別:転移性腫瘍や膠芽腫の頻度が高く、稀に悪性リンパ腫、胚腫、髄芽腫など。

・造影を含むMRIでの精査が必要となります。

※転移性脳腫瘍や膠芽腫などは低吸収域を呈することもあります。

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脳神経外科の病気:転移性脳腫瘍 | 病気の治療 | 徳洲会グループ

 

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 脳神経疾患画像診断レクチャー(悪性リンパ腫)

 

【脳実質の異常:低吸収域】

⓪基本事項

・しばしばCTのみでの鑑別が難しくMRIでの精査を要します。

皮髄境界が不明瞭となる病変も低吸収域を示す病変と考えます。

→この皮髄境界の不明瞭化は特に見逃しやすく注意を要します。

低吸収を示す病態

-細胞内浮腫 -血管性浮腫

-壊死(陳旧性脳梗塞など) -血管周囲腔

-嚢胞性病変 -脳腫瘍(水成分が多い/細胞密度が乏しい)

細胞内浮腫:細胞への酸素供給低下で生じます。

→急性期脳梗塞、活動性炎症、低酸素性虚血性脳症、MELASなど。

血管性浮腫:BBB障害により血清蛋白質が細胞外腔に漏出して生じます。

→亜急性期脳梗塞、脳腫瘍/脳膿瘍/脳挫傷の周囲浮腫、静脈洞血栓症や硬膜動静脈瘻による静脈性うっ血、PRES、MELASなど。

・脳実質の低吸収域では上記の病態を鑑別していく必要があります。

 

脳梗塞

超急性期(24時間以内):early CT signを認めます。6時間以降に低吸収が目立ち始めます。

急性期(1-7日):梗塞領域の低吸収が明瞭化します。

陳旧性(1か月以降):壊死や瘢痕化による低吸収を示し、周囲の脳回萎縮や脳室の代償性拡大を認めます。

・陳旧性脳梗塞は、有用な臨床情報がなく、診断した場合にそれ以上の画像精査を行わないため、基本的には除外診断となります。

(超急性期)

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(急性期)

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(陳旧性)

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【画像あり】脳梗塞はCTでわかるの?MRIの方がよい?

 

●コラム:early CT sign

(ⅰ)early CT signとは

・頭部CTにおいて、脳梗塞巣は発症6時間以降に低吸収域として認められるようになり、発症24時間以降に鮮明に認めるようになります。

・この脳梗塞発症6時間以内に認める頭部CT所見をearly CT signと呼びます。

・early CT signは基本的にMCA領域脳梗塞(特に心原性脳梗塞)で同定できます。

→その理由として、以下のようなことが挙げられます。

-心原性脳梗塞の好発部位で、梗塞範囲が広範になりやすい。

-レンズ核(被殻+淡蒼球)や島皮質の支配血管で、所見が分かりやすい部位である。

-MCA領域は骨のアーチファクトが少なく読影しやすい。

・early CT signの中心病態は、虚血による細胞性浮腫に伴う灰白質の低吸収化です。

レンズ核や(島)皮質は白質よりも常に高吸収に描出されるため、early CT signの検出が行いやすいのです。

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early CT signの画像診断は?CTで脳梗塞を診断する!

 

(ⅱ)hyper dense MCA sign

・MCAの塞栓性血栓が高吸収域として描出されます。

動脈硬化による血管壁石灰化と鑑別は難しいです。

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(ⅲ)レンズ核の不明瞭化

・発症後1-2時間で見られます。

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Acute brain attack 911

 

(ⅳ)島皮質の不明瞭化や皮髄境界の不明瞭化

・発症後2-3時間で見られます。

※島皮質はinsular ribbonと呼ばれます。

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Acute brain attack 911

 

(ⅴ)脳溝の消失・脳実質腫脹

・発症後3時間で見られます。

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Acute brain attack 911

 

(ⅵ)脳梗塞のCT所見の経時的変化

超急性期(-24時間):early CT sign、(6時間-)低吸収+腫脹

急性期(1-7日):低吸収+腫脹

亜急性期(1-4週間):低吸収~等吸収(fogging effect)

慢性期(1か月-):低吸収+萎縮

fogging effect:亜急性期に一度低吸収化していた梗塞巣の濃度が上昇し、周囲の脳実質と区別がつきにくくなります。これをfogging effectと呼びます。

 

②単純ヘルぺス脳炎

好発部位:側頭葉内側、島皮質、前頭葉下方、帯状回

所見:低吸収域、脳実質の腫脹、脳溝の狭小化、皮髄境界の不明瞭化。

・一側性の場合も両側性の場合もあります。

脳腫瘍との鑑別を要しますが、特に低吸収域の中に高吸収域を見れば脳腫瘍を疑います。

MRI:最も早期にDWIで高信号(+ADC低下)、続いてT2WI/FLAIRで高信号を示します。

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EMA症例78:10月症例解説 | EM Alliance

 

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単純ヘルペス脳炎の診療

 

③低酸素性虚血性脳症

概要:心肺蘇生後などに脳への十分な酸素供給が得られないことで生じます。

所見:大脳のびまん性腫脹、脳溝の狭小化、皮髄境界や基底核の不明瞭化。

※低酸素による細胞内浮腫を反映した所見です。

pseudo SAH:腫脹に伴う脳実質の低吸収化によるくも膜下腔の相対的高吸収です。

white cerebellum sign:重症例で大脳のびまん性低吸収域により小脳や脳幹が相対的高吸収を呈します。

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Pseudosubarachnoid hemorrhage | Radiology Reference Article | Radiopaedia.org

 

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低酸素脳症のCT、MRI画像診断のポイントは?

 

④脳腫瘍

・低吸収を呈する脳腫瘍として以下が挙げられます。

嚢胞や壊死を伴う腫瘍:転移性脳腫瘍、血管芽腫、毛様細胞性星細胞腫、膠芽腫

細胞密度の乏しい腫瘍:びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、乏突起膠腫。

※乏突起膠腫、転移性腫瘍や膠芽腫などは前述のように高吸収も呈し得ます。

・腫瘍が不明瞭でも周囲の血管性浮腫が低吸収域を示すことも多いです。

脳炎との鑑別に際しては、一部高吸収域を見れば脳腫瘍を強く疑います。

 

⑤脳膿瘍

所見:膿瘍-境界明瞭な低吸収域、周囲血管性浮腫-低吸収域。

原因:血行性、副鼻腔炎や乳突洞炎の進展、化膿性髄膜炎、脳外科手術後など。

→頭部CTでも副鼻腔炎や乳突洞炎の有無などは確認します。

MRI:T1 low/T2 high、DWI high/ADC低下を示します。

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N Engl J Med. 2014 Jul 31;371(5):447-56

※Aが単純CTで境界明瞭な膿瘍の低吸収域と周囲の血管性浮腫による低吸収域を認めます。Bは造影T1WI、CはDWI、DはADC mapです。

 

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脳膿瘍のMRI画像診断のポイントは?

 

脳挫傷

好発部位前頭葉や側頭葉の底部など。

※陥没骨折では骨折直下に脳挫傷を生じます。

所見:皮質/皮質下の低吸収(血管性浮腫)と皮質優位の高吸収(出血)を認めます。

→これらの混在はsalt and pepper appearanceと呼ばれます。

・時間経過で脳浮腫や出血が増大することがあり、経過観察が重要です。

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【保存版】脳挫傷とは?症状やCT画像、治療方法をわかりやすく解説!

 

⑦静脈洞血栓症

疫学:全脳卒中の0.5-1%を占め、若年(特に女性)に好発します。

※妊娠や経口避妊薬をはじめ、多くの場合は血栓素因が発症に関連します。

症状:頭痛、乳頭浮腫、複視(外転神経麻痺)、片麻痺、失語、痙攣など。

→特に大半で頭痛を認め、初発症状となることも多く、頭痛の鑑別に挙げることが重要です。

合併症:静脈性梗塞(動脈支配と異なる領域)、脳出血など。

好発部位:上矢状静脈洞が最多で、横静脈洞やS状静脈洞が続きます。

所見:静脈洞近傍の皮質/皮質下の低吸収域(血管性浮腫)、脳出血

hyperdense vein血栓を反映した静脈洞や皮質静脈の高吸収域を指します。

MRI:FLAIRの急性期血栓 high、梗塞部のDWI high(ADCは様々/T2WI high)、MRVの閉塞。

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脳静脈洞血栓症のCT、MRI画像診断のポイントは?

 

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 血栓止血誌 2014; 25 (3) :399-403

 

⑧可逆性後頭葉白質脳症(PRES)

・PRES:Posterior Reversible Encephalopathy Syndromeです。

・名前の通り、多くの場合は可逆性であり予後良好と考えられています。

病態:急激な血圧上昇や過灌流による血管透過性亢進、血管内皮障害による血管性浮腫。

※一部で脳血管攣縮による細胞内浮腫の関連も考えられています。

原因:高血圧、腎障害、輸血、子癇、免疫抑制剤など。

症状:頭痛、視力障害、痙攣、麻痺など。

好発部位:頭頂後頭葉。ただしその他の大脳や脳幹、小脳にも病変を認め得ます。

※血圧自動調節能の低い椎骨/脳底/後大脳動脈、穿通枝領域に好発します。

所見:脳腫脹、皮質/皮質下の低吸収域、脳溝狭小化、皮髄境界不明瞭化。

合併所見:限局的な出血やくも膜下出血を伴うことがあります。

MRI:T2WI high、DWI iso/ADC上昇の所見が特徴的です。

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Posterior reversible encephalopathy syndrome (PRES) | Radiopaedia.org

 


PRESのMRI画像診断【画像診断チャンネル】(posterior reversible encephalopathy syndrome)

 

⑨MELAS

・Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis and Stroke-like episodesです。

※直訳すると"ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、脳卒中様エピソード"です。

母系遺伝で、2-10歳での発症が多いとされます。

症状脳卒中様発作(頭痛/嘔吐/痙攣/片麻痺/視力障害など)、感音性難聴、糖尿病など。

所見:血管支配に一致しない低吸収域、基底核の石灰化、小脳の萎縮など。

好発部位後頭葉頭頂葉など。

MRI:T1WI low/T2WI highやDWI highなど。

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症例4:診断と解説

 

⑩血管周囲腔の拡大

・血管周囲腔はレンズ核線条体動脈など穿通枝の腔隙で、内部に間質液を含みます。

・この拡大はしばしば陳旧性ラクナ梗塞と誤診されます。

好発部位基底核の下1/3(特に前交連)。その他に深部白質、大脳脚、小脳歯状核。

ラクナ梗塞は基底核の上2/3に好発します。上下は頭尾のことだと思われます。

所見:円形-楕円形の水濃度に近い低吸収域。

MRI:T1WI low/T2WI high。T2WIやFLAIRで周囲に高信号を伴わないことがラクナ梗塞との鑑別点です。

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紫で囲まれた部分が前交連です。

 

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脳MRIで見られる血管周囲腔とは?画像のポイントは?

 

大脳白質病変

MRI所見が重要ですが、頭部CTで低吸収域を示す病変であるため記載します。

・主に虚血性変化であり、高度だと脳卒中や認知機能障害のリスクになります。

→本症最大のリスク因子である高血圧症の積極的治療を考慮し得ます。

・以下の2種類に大別されます。

-深部皮質下白質病変(DSWMH)

-脳室周囲病変(PVH)

 

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慢性虚血性変化とは?大脳白質病変とは?MRI画像診断は?

MRI所見

-T1WI:等-軽度低信号

-T2WI:やや淡い高信号

-FLAIR:明瞭な高信号

→FLAIRが最も特徴的です。ラクナ梗塞よりも明瞭な高信号を呈します。

→T1WIで低信号が明瞭でなければ、より大脳白質病変を疑います。

-以下のようなGrade分類が為されます。

 

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脳ドックのガイドライン2008

 

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脳MRIの慢性虚血性変化とは?イラストと画像でわかりやすく解説!

 

【脳ヘルニア・シフト】

⓪基本事項

・脳ヘルニアの読影では、冠状断再構成像があると役に立ちます。

・また、脳槽の狭小化などが重要な所見になるので、参考画像を載せておきます。

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【保存版】頭部CTの見方まとめ!実際の画像を見ながら。

 

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危険な切迫性脳ヘルニアとは?CT画像診断のポイントは?

 

①大脳鎌下ヘルニア(帯状回ヘルニア)

最も頻度が高い脳ヘルニアです。

一側の大脳半球病変により、大脳鎌の下方から帯状回が健側へ移動します。

随伴所見:患側の側脳室の狭小化(健側の側脳室は軽度拡大のみ)。

→進行した場合、中脳水道圧迫に伴い鉤ヘルニアを生じ得ます。

患側or健側のACA圧迫により、脳梗塞を合併することもあります。

・本症自体で重篤な症状をきたすことは稀です。

・しかし、重篤な鉤ヘルニアに先んじて生じるため、臨床的には重要です。

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危険な切迫性脳ヘルニアとは?CT画像診断のポイントは?

 

②鉤ヘルニア(下行性テント切痕ヘルニア)

一側の大脳半球病変により、テント切痕から鉤や海馬傍回が内側下方へ移動します。

随伴所見:脚間槽や両側迂回槽の狭小化、患側の側脳室の狭小化(健側は拡大)など。

duret hemorrhage:圧迫された脳幹に生じた出血のことを指します。

PCA圧迫により、脳梗塞を合併することもあります。

進行すると無呼吸などを経て死亡に至るため、臨床的に重要です。

3徴候:中脳圧迫による意識障害動眼神経麻痺、健側の麻痺。

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危険な切迫性脳ヘルニアとは?CT画像診断のポイントは?

 

③中心型ヘルニア

両側性または中心部病変により、両側視床の下方偏位や中脳の圧迫を認めます。

※鉤ヘルニアを合併することもあります。

随伴所見基底核視床の変形、鞍上槽/脚間槽/両側迂回槽の狭小化など。

・中脳の高度圧迫により、進行すると死亡に至ります

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Brain herniation imaging

 

④大後頭孔ヘルニア(小脳扁桃ヘルニア)

後頭蓋窩病変により、小脳扁桃大後頭孔へ嵌入します。

随伴所見:くも膜下腔の狭小化。

→後頭蓋窩は骨によるアーチファクトが強く、CTでの診断がしばしば困難です。

→後頭蓋窩病変を有する場合、下方(軸椎下縁レベル)まで撮影するようにします。

※診断にはMRI矢状断が有用です(撮影の時間的余裕がない可能性も高いです)。

PICA圧迫による小脳梗塞水頭症を合併することがあります。

・延髄圧迫により、進行すると死に至ります

 

⑤上行性テント切痕ヘルニア

後頭蓋窩病変により、小脳虫部がテント切痕に向かって上行します。

軸位断での診断がしばしば困難であり、冠状断などが有用です。

随伴所見:四丘体槽の狭小化、中脳の前方偏位など。

SCA圧迫による小脳梗塞脳幹圧迫症状を生じることがあります。

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Brain herniation imaging