内科医キューピーのつぶやき

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腹部CTの読み方(消化管)

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キューピーです。

 

以前に腹部の実質臓器のCT読影の記事を書きました。

 

今回は、残りの消化管です。

 

前回同様参考画像は付しませんので、是非参考文献を購入してみてください。

 

すごく分かりやすいので、オススメです。

 

 

目次

 

 

【参考文献】

 

【上部消化管(食道-十二指腸)】

①基本事項

食道の解剖

頚部食道:食道入口部(輪状軟骨下縁)-胸骨上縁

胸部上部食道:胸骨上縁-気管分岐部下縁

胸部中部食道:気管分岐部下縁-食道胃接合部までの1/2の点

胸部下部食道:胸部中部終点-食道裂孔

腹部食道:食道裂孔-食道胃接合部

 

胃の解剖

・食道側から胃底部胃体部胃角部前庭部幽門前部幽門と分けます。

・腹側壁を前壁、背側壁を後壁と呼びます。

・他に位置を表す際は小弯側大弯側という単語も用います。

・胃壁には多数の粘膜ヒダがあり、特に胃体部で目立ちます。

・粘膜ヒダは胃が虚脱すると目立ちますが、拡張すると引き伸ばされるため目立たなくなります。

 

十二指腸の解剖

球部下行部水平部上行部からなります。

・球部以外は後腹膜腔に存在します。

・Treitz靱帯を超えると空腸になります。

 

②食道壁肥厚

進行食道癌を考えます。

層構造が不明瞭で造影増強効果を有する壁肥厚を示します。

・早期食道癌をCTで指摘することは難しいとされています。

 

③胃壁肥厚

層構造が不明瞭+造影増強効果あり

・食道と同様に進行胃癌を考えます。

・やはり食道同様、早期胃癌はCTで指摘することは困難です。

胃壁の正常な粘膜ヒダが厚くみえることもありますが、ヒダ状であることや層構造が不明瞭化していないことで鑑別します

 

胃の浮腫性肥厚+潰瘍形成

胃潰瘍を示す所見です。

浮腫性壁肥厚とは、粘膜の造影増強効果と粘膜下層の肥厚・水濃度に近い低吸収域を認める場合に用いる言葉です。

・浮腫性壁肥厚に加えて、陥凹(深部まで及ぶ組織欠損)を呈する場合に胃潰瘍と考えます。

 

広範囲な胃の浮腫性壁肥厚

急性胃粘膜病変急性胃アニサキス好酸球性胃炎を疑う所見です。臨床的には夜間救急で、アニサキスを疑う決め手となることも多い気がします。

・広範囲でない場合は、普通の胃炎である可能性も考慮します。

 

④十二指腸下行部内側の憩室

・特にVater乳頭周囲にみられやすく、傍乳頭憩室と呼ばれます。

・頻度の高い憩室ですので、意識して観察するようにします。

 

【下部消化管(小腸-直腸)】

①基本事項

小腸の解剖

・空腸と回腸に分けられますが、明確な境界はありません。

・空腸は小腸の口側約2/5で左上腹部に位置します。

・回腸は小腸の肛門側約3/5で右下腹部に位置します。

 

結腸の解剖

・盲腸と上行結腸の境界は回盲部弁上唇の高さです。

・上行結腸-横行結腸移行部は結腸肝弯曲部、横行結腸-下行結腸移行部は結腸脾弯曲部と呼ばれます。

・上行結腸と下行結腸は後腹膜に固定されており、後面は腹膜に覆われていません。

 

直腸の解剖

・臨床的にRs、Ra、Rbに分けられます。

・S状結腸とRsの境界は仙骨岬角です。

・RsとRaの境界は第2仙椎です。

・RaとRbの境界は腹膜翻転部(およそ恥骨上縁と第5仙椎下縁を結ぶ線)です。

・上記よりRa前面は腹膜に覆われますが、Rbは覆われません。

 

下部消化管読影のポイント

小腸:拡張の無い小腸はしばしば塊状に描出されるため、連続性を追うのが難しいことが多いです。

大腸:直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸の順に観察するとよいようです。S状結腸や横行結腸の連続性が追えないこともありますが、その場合は下行結腸や上行結腸から観察を再開します。

 

②小腸壁肥厚

小腸の浮腫性壁肥厚

正常な小腸壁は薄いため、CTでは壁構造が認識できないこともあります

腸炎では、小腸の一部-全体が軽度拡張して内部に液体貯留を示します。

・さらに浮腫性壁肥厚を伴う場合は、積極的に炎症を疑います。

 

小腸腫瘍による壁肥厚

層構造が不明瞭で造影増強効果を示す壁肥厚は、腫瘍性病変を疑います。

Aneurysmal dilatation悪性リンパ腫にみられる所見で、Auerbach神経叢を侵すため、壁肥厚をきたしても腸管狭窄はきたさず、むしろ腸管拡張を呈する所見です。

 

③大腸壁肥厚

大腸の浮腫性壁肥厚

腸炎を疑います。粘膜は造影増強効果を有することが多いです。

左半結腸-直腸の浮腫性壁肥厚を示す場合、虚血性腸炎偽膜性腸炎アメーバ赤痢などの頻度が高いです。

 

大腸腫瘍による壁肥厚

層構造が不明瞭で造影増強効果を示す壁肥厚は、腫瘍性病変を疑います。

 

腸蠕動

蠕動運動によって大腸壁肥厚を認めることもあります

・この場合は正常所見ですので、⑴や⑵らしくないか慎重に検討します。

 

④小腸の拡張(腸閉塞・イレウス)

小腸の腸閉塞・イレウスの基本事項

・腸閉塞とイレウスは区別して用いることが推奨されています。

腸閉塞:腸管に閉塞起点が存在して口側が拡張する状態で癒着性、腸管捻転、癌による閉塞、食餌性、ヘルニアなどが原因として挙げられます。

イレウス:いわゆる麻痺性イレウスです。蠕動低下による腸管拡張を示し、腹膜炎や腸管虚血が原因として挙げられます。

小腸ヒダ拡張のない小腸では少量の液体を含む管状構造や軟部濃度を呈する塊のようにみえ、小腸壁やヒダは同定できません。しかし小腸が拡張すると櫛の歯のようなヒダが目立ってきます

・腸閉塞やイレウス読影の際は空気(腸管ガス)と脂肪(腹腔内脂肪織)の違いが十分に認識できる程度にウィンドウ幅を広げます(例:WW/WL 400/20)。

小腸の一部が拡張し、内部の液体貯留液体とガス貯留によるniveau像を呈する場合には腸閉塞やイレウスを疑って、thin slice上で胃・十二指腸から拡張した腸管をたどっていきます

・十二指腸からの追跡が困難な場合は、拡張した部分から口側と肛門側の両方向に追跡していきます。

・腸管の径が急に細くなり狭窄または閉塞する所見をcaliber changeと呼びますが、これがあれば腸閉塞なければ麻痺性イレウスを疑うこととなります。

 

Closed loop obstruction

・腸閉塞において拡張腸管の口側と肛門側で2か所に狭窄を認める所見を指します。

・血流障害のある絞扼性腸閉塞の可能性が高い所見です。

腸管の浮腫性壁肥厚と腸間膜の浮腫性変化:まず静脈が閉塞しますが、血圧の高い動脈は開存するためうっ血が生じます。これにより生じる所見です。

腸管壁内血腫:単純CTで腸管壁が淡い高吸収域を示し、造影増強効果はありません。うっ血が持続し、腸管壁内への出血が生じたことを示唆します。

腸管壁造影増強効果消失と血性腹水:上記が強まり、動脈閉塞にまで至ったことを示唆します。腸管壊死が進むと門脈内ガスもみられることがあります。

whirl sign+同部の静脈途絶+末梢側の静脈拡張や造影不良:小腸捻転を示唆する所見です。whirl signは上腸間膜動静脈が渦巻き状に回転している所見です。

 

外ヘルニア嵌頓

・外ヘルニアは腹腔臓器が腹膜外へ脱出する状態です。ヘルニア門が広ければ腸閉塞は基本的にきたしません。

・ヘルニア門が狭く嵌頓を起こすと腸閉塞をきたします。caliber changeも確認できます。

・なお、閉鎖孔ヘルニアは臨床的にHowship-Romberg徴候(大腿内側の放散痛)が有名です。

 

癒着性腸閉塞

・1つの部位で通過障害を起こしており、閉塞部位で先細り(caliber change)のみを認める場合は癒着性腸閉塞を疑います。

狭窄部に腫瘍や食物残渣などを認めないことが重要です。

 

食餌性腸閉塞

・1つの部位で通過障害を起こしており、閉塞部位の手前に何らかの腸管内容物が観察されれば、それによる閉塞を疑います。

食物残渣果物の種胆石などが閉塞起点となり得ます。

 

小腸腫瘍による腸閉塞

・1つの部位で通過障害を起こしており、閉塞部位に壁肥厚(層構造が不明瞭で造影増強効果あり)があれば、腫瘍性病変による閉塞を疑います。

・ただし、若年女性では子宮内膜症による腸閉塞の可能性も考慮します

 

⑤大腸の拡張(腸閉塞・イレウス)

大腸の腸閉塞・イレウスの基本事項

・基本的には上記の小腸の際と変わりません。

・大腸の場合、拡張した腸管に大きな大腸ヒダ(ハウストラ)が観察されます。

・大腸の拡張の場合は、盲腸と直腸の両端から追跡し、caliber changeの有無を確認します。これがあれば腸閉塞、なければ麻痺性イレウスを疑うこととなります。

 

腸管内容物による腸閉塞

閉塞部位の手前に何らかの腸管内容物が観察されれば、それによる閉塞を疑います。

・主に宿便異物が閉塞起点となることが多いです。

 

大腸腫瘍による腸閉塞
閉塞部位に壁肥厚(層構造が不明瞭で造影増強効果あり)があれば、腫瘍性病変による閉塞を疑います。

 

軸捻転による腸閉塞

閉塞部位で先細り(caliber change)を認める場合は軸捻転による腸閉塞を疑います。

・小腸の場合と異なり、大腸の癒着性腸閉塞の頻度は低いため、あまり鑑別には挙げません。

 

⑥消化管周囲の遊離ガスや糞便(穿孔・穿通)

消化管穿孔・穿通の基本事項

・穿通は、穴があいた部位が隣接する組織、臓器により被覆された状態を指します。

・消化管穿孔(穿通)は十二指腸大腸に多く消化性潰瘍、悪性腫瘍腸閉塞腸管異物宿便性潰瘍外傷憩室医原性などが原因として挙げられます。

・消化管穿孔があると腹腔内に遊離ガスが出現し、特に大腸の穿孔では腸管外に便塊が出現します。

・腹腔内の遊離ガスを検索する際にWWが狭いと脂肪内に存在する小さい遊離ガスが検出しにくいので、WWは400以上が推奨されます。腸閉塞と同様にWW/WL 400/20でよいと思われますが、air window(肺野条件)とすると遊離ガスの検索が更に容易になります。

・腸管外のガスや便塊をみた場合に穿孔(穿通)部位の推定は重要で水、空気、便塊などの濃度が腸管内から外へ連続する所見(壁欠損像)は、穿孔部位を示唆する直接所見となります。

 

胃壁の欠損像

胃潰瘍では浮腫性壁肥厚と陥凹を呈しますが、穿孔をきたすと壁欠損の所見を示します。

・胃内腔から壁外にかけて水や空気の濃度が連続する所見をthin sliceで探します。

 

十二指腸球部前壁の欠損像

十二指腸潰瘍は球部前壁に頻度が高く、穿孔をきたすと壁欠損の所見が観察できることが多いとされます。

 

大腸壁の欠損像

・腸管外に便塊を認めた場合は、大腸穿孔(穿通)と考えられます。

下部消化管穿孔では壁欠損像が指摘困難とされますが、便塊が腸管内腔から壁外にかけて連続して観察された場合は壁欠損と考えます

 

⑦結腸壁の限局的な突出(憩室)

・結腸には、内膜の一部が外膜側へ袋状に飛び出す憩室がしばしば形成されます。

憩室内には糞便、ガス、糞石やバリウムなどが含まれるため、憩室内部は低吸収-高吸収まで様々な濃度を呈します。

・腹痛の部位と一致した憩室の周囲に脂肪織濃度上昇を認めたら、憩室炎を考えます。穿孔所見や膿瘍形成がないか注意して観察します。

 

虫垂炎

正常虫垂

 ・正常な虫垂は径6mm以下で、内部にガスを含むことがほとんどです。

・盲腸から起始し、盲端で終わります。

 

虫垂炎

・CTでは虫垂腫大(径6mm以上)内部の液体貯留壁肥厚周囲脂肪織濃度上昇がみられます。

・虫垂根部に糞石が嵌頓すると、虫垂の先端が拡張して内部に液体が貯留します。

・炎症が周囲に波及すると虫垂周囲の脂肪織濃度上昇をきたします。

・穿孔や膿瘍形成の有無も確認します。