内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

痙攣の診療

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●この記事は2021/5/15に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

目の前で人が痙攣し始めたら怖いですよね。

 

そんな時でも冷静に対応しなくてはなりません。

 

今回は、目の前で患者が痙攣し始めた場面を想定します。

 

5分以上持続すれば"重積状態"と考え、緊急で対応を行います。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】 

 

ERでの非専門医のためのけいれん・てんかん診療ストラテジー | Antaa Slide

 

【痙攣の定義と類義語】

・しばしば混同されるため、痙攣に関する用語を確認します。

痙攣(convulsion):全身または一部の筋肉が発作的に不随意収縮する神経症候。

痙攣発作(seizure):1回ごとの痙攣(発作)。

てんかん(epilepsy)てんかん性発作を引き起こす持続性素因を特徴とする脳の障害。

→慢性の"脳疾患"であり大脳神経細胞が過剰に興奮するために、発作が反復します。

てんかん性発作は必ずしも痙攣とは限りません。

 

【初期対応】

⓪人を呼ぶ

・モニター装着やルート確保など、同時にやらなければならないことが多いです。

・痙攣をみると頭が真っ白になりますが、人を呼ぶことで少し冷静になれます。

 

①ABC確認+モニター装着+簡易血糖測定

・痙攣に際してはABCの安定が重要です。

・可及的速やかにモニターを装着します。

気道確保(エアウェイ含む)必要に応じて酸素投与/マスク換気を行います。

最も重要なのがCの異常で"頸動脈を必ず触れる"ようにします。

・出血や心疾患(AMIやVFなど)などで脳血流低下→痙攣という可能性があるためです。

→これにジアゼパムを投与すると、更なる循環抑制で状態が悪化し得ます。

・従って、頸動脈を触れない場合は細胞外液投与を検討します。

・また、低血糖でも痙攣をきたすため、初期段階で低血糖を除外します。

血糖値≦60mg/dL時投与例

-ビタメジン®1V+生食20mL 3分かけて投与。

-50%ブドウ糖液50mL 急速静注。

-ビタミンB1投与をブドウ糖投与に先行-並行するようにします。

 

②治療フローチャート

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https://www.neurology-jp.org/guidelinem/epgl/tenkan_2018_08.pdf

・日本のガイドラインに沿った治療を考えます。

・以下の3つのステージに分けて治療方針を検討していきます。

-早期てんかん重積状態:痙攣発作が5分以上持続する状態です。

-てんかん重積状態:BZ系薬剤で痙攣発作が頓挫せず、30分以上持続する状態です。

-難治てんかん重積状態:抗てんかん薬で頓挫せず、60分以上持続する状態です。

・難治例は60分以上ですが、30分以上で脳に不可逆的な変化が起こると報告されています。 

→理想論ですが、痙攣が持続する場合は30分以内に第3段階開始を目標とします。

※現実にはなかなか難しいと思います。

 

②-1 第1段階:ジアゼパム投与

・ABCの異常と低血糖がないことが確認できれば、ジアゼパムを投与します。

投与例ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)10mg 2分かけて静注。

※高齢者(特に小柄な方)では5mg(1分かけて)でも可能です。希釈はしません。

※小児用量は0.3-0.5mg/kg(最大で20mg)です。

20分程度の痙攣抑制効果があり、5分後に再投与可能です(総量20mgまで)。

ルート確保困難時ミダゾラム筋注が比較的行いやすい選択肢だと思います。

-ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)10-30mg 注腸。

(小児:0.2-0.5mg/kg)

-ミダゾラム(ドルミカム®)10mg 筋注/口腔内/鼻腔内投与。

(小児:0.3mg/kg)

 

②-2 第2段階:抗てんかん薬投与

ホスフェニトイン

投与例:ホストイン® 22.5mg/kg+生食100mL 20分かけて投与。

投与速度:3mg/kg/分か150mg/分の遅い方を超えない速さとします。

禁忌:過敏症既往、洞性徐脈、高度の刺激伝導障害。

併用禁忌タダラフィル、抗ウイルス薬など。

※詳細は添付文書を参照ください。

→併用薬の血中濃度を低下させ得ますが、ホストイン®投与の利益が勝れば投与します。

維持投与(翌日以降)

-投与量:5-7.5mg/kg/日

-投与速度:1mg/kg/分か75mg/分の遅い方を超えない速さ

 

フェノバルビタール

投与例:ノーベルバール® 15-20mg/kg+生食100mL 20分かけて投与。

投与速度:100mg/分を超えない速さとします。

禁忌:過敏症既往、急性間欠性ポルフィリン症

併用禁忌:ボリコナゾール、タダラフィル、抗ウイルス薬など。

※詳細は添付文書を参照ください。

維持投与(翌日以降):規定されていませんが2.5-5mg/kg/日を目安とします。

 

レベチラセタム

投与例:イーケプラ® 1000mg+生食100mL 15-30分かけて投与。

禁忌:過敏症既往。

・重積にはまだ保険適用外だったと思いますが、使用頻度は極めて高いです。

 

②-3 第3段階:鎮静薬投与

ミダゾラム

第1-3段階のいずれでも投与可能です。

→厳重な呼吸モニタリング下ならば、気管挿管/人工呼吸管理を行わずに投与できます。

※第2段階では使用経験例が少ないため、記事内では記載しませんでした。

投与例ドルミカム® 5A(50mg/10mL)+生食40mL。

※上記組成で50mg/50mLとなり、投与速度が考えやすくなります。

投与速度:0.05-0.1mg/kg/hrで持続静注。

ガイドラインは0.05-0.4ですが、高用量になると呼吸停止のリスクが高くなります。

禁忌:過敏症既往、閉塞隅角緑内障、重症筋無力症など。

 

プロポフォール

投与例:プロポフォ-ル(ディプリバン®) 200mg(/20ml)

投与速度例:0.5mg/kgを静注→2.0-2.5mg/kg/hrで持続静注。

ガイドラインより少ない用量で記載しています。

禁忌:過敏症既往、小児。

気管挿管/人工呼吸管理下での投与を行います。

※必ず投与に慣れた集中治療医の協力を仰ぎます。

 

●コラム:ホストイン®vsイーケプラ®

・第2段階の治療薬として、経験的にホストイン®とイーケプラ®がよく用いられます。

→施設差もありますが、最近は特にイーケプラ®の使用頻度が増えてきたと感じます。

・先行研究もありますがどちらが優れているか、はっきりと言えないと思います。

・安全性についても大きな差があるとは言い難いです。

・イーケプラ®は血中濃度測定が原則不要であることはメリットだと思います。

リンク先NEJM 2019;381:2103-2113をもとに色々な考察をしており、面白いと思います。

 

③原因検索

急性症候性発作

定義:急性全身性/代謝性/中毒性/中枢神経疾患と時間的に密接に関連して起こる発作。

・痙攣発作を診療する際、まずは"急性症候性発作であるか"考えることが重要です。

→すなわち、急性症候性発作をきたす原因を検査で鑑別していきます。

→急性症候性発作はてんかんとは異なります。多くの場合は単回の発作です。

てんかんへの移行(≒発作再発)の確率は0-30%程度です。

→急性症候性発作の場合、てんかん薬の予防投与は必須ではないことが分かります。

※最終的には症例ごとに検討する姿勢が重要です。

原因

-脳血管障害:発症7日以内の発作です。

-中枢神経感染症/脱髄性疾患:疾患活動期に生じる発作です。

-頭部外傷:受傷7日以内の発作です。

-代謝性:低血糖、非ケトン性高血糖電解質異常、尿毒症、低酸素性脳症、子癇など。

-中毒:アルコール、アミノフィリン、イミプラミン、コカイン(麻薬)など。

-離脱:アルコール、バルビツレートベンゾジアゼピンなど。

-頭蓋内手術後:手術直後の発作です。

-多因性

→特に脳卒中低血糖低Na血症尿毒症アルコール離脱の頻度が高いとされます。

→コモンなこれらの原因(特に脳卒中)の鑑別から始めると良いと思います。

→また重症度の高い中枢神経感染症(髄膜炎脳炎)は必ず鑑別します。

 

病歴聴取/身体診察

・最も重要です。痙攣がおさまってからの来院では、目撃者証言は必ず聴取します。

既往歴アルコール多飲歴、女性の場合は妊娠の可能性(子癇)も必ず聴取します。

・痙攣の原因にも結果にもなり得る外傷の有無も確認します。

内服薬では特に以下の薬剤に注目します。

-抗てんかん薬:内服コンプライアンスを確認します。

-キノロン系+NSAIDs:併用で痙攣をきたし得ます。

-低Na誘発薬:利尿薬や向精神薬などがあります。

-糖尿病治療薬:低血糖高血糖も痙攣をきたし得ます。

-中毒関係:アミノフィリンやイミプラミンなどがあります。

-離脱関係:バルビツレートベンゾジアゼピンなどがあります。

・身体所見では舌咬傷(特に舌側面)失禁の他に神経学的所見は必ず確認します。

・また、共同偏視は以下の如く急性症候性発作とてんかんの鑑別の参考になります。

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ERの、そのてんかん発作を評価する。 | Antaa Slide

 

検査

ABG:痙攣の原因となり得る多くの異常を把握でき、最も重要な検査です。

心電図:痙攣性失神(convulsive syncope)であることもあり、重要な検査です。

採血:ルーチン項目、血糖、アンモニア、CK、Ca、Mg、VitB1など。

※抗てんかん薬内服中であれば、血中濃度も追加します。

頭部CT:原因診断や頭部外傷の評価のため原則として施行します。

※CT室などへの移動時にはジアゼパムやBVMなどを携帯します。

頭部MRI:初回発作の場合は可能であれば施行が推奨されます。

→頻度の高い脳卒中や重症度の高い脳炎の診断に有用です。

脳波検査:初回発作の場合は可能であれば施行が推奨されます。

てんかん波を認めれば、初回発作でもてんかんとして治療介入を検討します。

髄液検査髄膜炎脳炎を疑う場合は必須の検査です。

 

コラム:痙攣を示唆する所見

・目の前で痙攣すれば簡単ですが、しばしば痙攣後として搬送されます。

・この場合、真に痙攣であったのかを判断する必要性が生じます。

・身体所見として舌咬傷(特に舌側面)失禁などは痙攣の存在を示唆します。

・検査所見として、以下などがよく用いられます。

-乳酸値上昇:>2.5 mmol/lは全般発作で陽性尤度比25。

(Press Med. 1998;27(13):604-7.)
-アンモニア上昇:痙攣発作の68%で認め、平均7.8時間で低下(250→47μg/dL)。

(Epilepsia. 2011;52(11):2043-9.)

-CK上昇:発作後3時間を超えると80%で上昇(3時間以内は22%)。
(J Gen Intern Med. 1991;6(5):408-12.)

→いずれの身体/検査所見もあくまで補助的に用います。

 

コラム:convulsive syncope

概要:痙攣のような運動を伴う失神です。

病態:失神病態による一過性の脳虚血により痙攣をきたします。

→すなわち、原因病態はあくまで"失神"です。

→原因の鑑別疾患は失神に準じて考えるべきだと思います。

※特に"HEARTS"(リンク先記事参照)は必ず鑑別するべきです。

座位で失神病態を生じた場合に好発するとされます。

convulsive syncopeと真の痙攣発作の鑑別点

-convulsive syncopeは発作後の意識混濁時間が短いです。

→いわゆる"postictal confusion"が存在しないものと考えます。

-convulsive syncopeでは痙攣発作の時間も短いです。

→多くは1分以内とされます。

 

④入院判断

・発作が頓挫している場合、明確な入院適応は存在しません。

・また、施設により方針も異なっている印象があります。

入院適応の一例:初発、原因不明、神経学的所見のいずれかを認めるもの。

→入院により、原因精査および経過観察を行います。

・その他にも原因(e.g.脳卒中→入院)により、方針が変わってきます。

・また、帰宅とする場合は以下の事項は伝達するべきだと思います。

-抗てんかん薬を服用中であれば、服用を自己中断しないこと。

-睡眠不足は発作誘因になるため、十分な睡眠をとること。

-発作閾値を下げる飲酒や光/音刺激(パチンコなど)を避けること。

 

●コラム:Todd麻痺

痙攣後の一時的な運動麻痺で、一般的には片側性に生じます。

・麻痺の程度は軽度から完全麻痺まで幅広いとされます。

・全般性の強直間代性痙攣に続発することが多いとされます。

・持続時間は1時間以内が多く、長くても24-48時間とされます。

日本の研究では1.7±1.3時間(n=13)というものもあります。

→日単位で持続する場合は、別の原因を考慮すべきではないかと思います。

・しばしば脳卒中との鑑別に難渋する"stroke mimics"の原因になります。

 

【子癇】

・子癇の場合、対応がやや異なるため独立して記載します。

・原則として"妊娠高血圧症候群の診療指針 2015"を参照しています。

定義:妊娠20週以降の初めて痙攣発作で、てんかんや二次性の原因が否定されるもの。

脳卒中てんかんなど、その他の痙攣の原因が否定されるものという意味です。

病態仮説:大脳皮質での可逆的な血管原性浮腫による痙攣発作と推測されています。

リスク因子:初産婦、若年妊娠(10代)、妊娠高血圧症候群、双胎など。

前駆症状:頭痛、視野異常、上腹部痛など。約40%は前駆症状を認めません。

ジアゼパム投与などが可能ですが、硫酸マグネシウムも推奨されます。

投与例:静注用マグネゾール® 4g(40mL 2A) 20分以上かけて静注。

→その後1g(10mL)/hrを維持量とし、最大2g(20mL)/hrまで増量可能です。

→Mg血中濃度は4.8-8.4mg/dLを1つの目安とします。

※投与には原則として持続注入ポンプを用います。

・子癇と判断した場合、降圧療法も推奨されます。

投与例:ニカルジピン注 sBP<160かつdBP<110を目標に投与。

・その他に脳卒中などとの鑑別DICなどの合併にも注意を要します。

胎児の早期娩出も考慮するため、原則として産婦人科コンサルトが必須です。

・PRES(後頭部や頭頂部の分水嶺領域)やRCVSとの関係も注目されています。

 

心因性てんかん発作(PNES)】

・PNES:Psychogenic Non-Epileptic Seizuresです。

てんかん発作に似た精神身体症状で、身体的/生理学的機序のないものです。

→いわゆる詐病などとは異なる概念であることに注意します。

てんかん疑いの初診患者の5-20%難治性てんかん患者の15-30%に認めます。

精神遅滞を17-37%に伴い、この場合は直接的な誘因が存在することが多いとされます。

精神遅滞を伴わない場合、家族関係等の成育歴が重要な背景因子と言われています。

典型的な発作症候

-発作持続時間が長い -発作症状が変動する

-左右で同期しない -下腹部を激しく動かす

-頭や体を左右に揺らす -発作中に閉眼している

-発作中に泣く -発作時の記憶がある

-発作後の錯乱がない

-睡眠時の発作に見えるが脳波が覚醒状態である

→いずれも確定的な所見ではなく、あくまで参考所見です。

尿失禁や咬舌は頻度が少ないながらも認め、PNESを完全には否定できません

・発作後20分以内に血中PRL上昇を認める場合は、PNESは否定的とされます。

確定診断には発作時ビデオ脳波同時記録が必須です。

→疑い例では積極的に施行可能な施設へ紹介するべきと考えます。

てんかん薬は不要ですが、てんかんが併存することもあるので注意します。