内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

咽頭痛の初期診療

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●この記事は2021/1/11に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

ERや一般内科に咽頭痛を主訴とする患者さんが表れた際の初期対応を考えます。

 

やはり、まずは致死的な疾患を除外することを考えるのではないでしょうか。

 

また、COVID-19も咽頭痛を認めるので注意が必要です。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【鑑別疾患】

①5 killer sore throat(=耳鼻咽喉科コンサルト)

急性喉頭蓋炎

-細菌感染による正門上部の急性炎症で、窒息をきたすことがあります。

-key word:嚥下困難、含み声、流涎、呼吸困難、stridor、舌骨部圧痛、咽頭所見軽微など。

-頚部側面XP喉頭蓋腫脹(thumb sign)を認めます。

-舌圧子の使用や仰臥位での診察(CT撮影など)は気道閉塞のリスクとなります。

-投薬例:CTRX2gq24hr+ステロイド静注。

 

扁桃周囲膿瘍

-炎症が口蓋扁桃を超えて周囲組織(扁桃周囲間隙)に波及し、膿瘍を形成したものです。

-key word:開口障害、嚥下困難、流涎、呼吸困難、片側扁桃腫大(前方突出)/口蓋垂偏移、Muffled voice(熱いポテトを口に入れた時の声)。

-頚部造影CT扁桃周囲に膿瘍形成を認めます。

-治療例:切開排膿+ABPC/SBT 3-6g/日。

 

咽後膿瘍

-深頚部膿瘍の1つで、咽頭後間隙に膿瘍を形成したものです。

-key word:嚥下困難、開口障害、呼吸困難、頚部の炎症所見、咽頭後壁の片側腫脹、頸部可動制限(後屈で疼痛増悪)。

-頚部造影CT:膿瘍形成を認めます。

-治療例:切開排膿+ABPC/SBT12g/日。

 

Lemierre症候群

-上気道感染を契機に内頚静脈に化膿性血栓が生じ、塞栓を引き起こす病態です。

-key word:頚部の炎症所見、内頚静脈血栓、血液培養でFusobacterium属陽性など。

-頚部造影CT:内頚静脈に血栓を認めます。

-肺塞栓肝膿瘍化膿性脊椎炎脳膿瘍など様々な所見を呈します。

-治療例:ABPC/SBT→(Fusobacterium属+ならば)MNZ。

 

Ludwig`s angina(口腔底蜂窩織炎)

-齲歯などを契機に口腔底に炎症が波及した病態です。

-key word:頚部の炎症所見、齲歯、口腔底腫脹、開口障害、嚥下困難、呼吸困難など。

-頚部造影CT:口腔底に膿瘍を認めます。

-縦郭炎膿胸心膜炎敗血症などに進展し得ます。

-治療例:切開排膿+ABPC/SBT12g/日。

 

各疾患のkey figure

f:id:p_kun:20210110214421j:plain

(左上から右下にかけての引用元)

thumb signThumb Sign of Epiglottitis(NEJM)

扁桃周囲膿瘍の診察所見:扁桃周囲膿瘍 - Wikipedia

咽後膿瘍のCT所見:咽後膿瘍|電子コンテンツ|日本医事新報社

Lemierre症候群のCT所見(右内頚静脈血栓):Article - Lemierre’s syndrome

Ludwig`s anginaのCT所見:若手のための人工呼吸器ワークショップ: Ludwig's angina

 

②その他の致死的疾患

ACS

・大動脈解離

アナフィラキシー

 

③頻度の高い疾患

・ウイルス性咽頭炎

・インフルエンザ

・A群β溶連菌咽頭炎

伝染性単核球症

逆流性食道炎

 

④その他の疾患

・COVID-19

・亜急性甲状腺

マイコプラズマ

HIV感染症

クラミジア/淋菌感染症

・異物誤飲 など

 

【初期対応】

①ABC+vital sign確認

・特に気道緊急がないかが重要です。

→呼吸困難の有無に常に注意します。

・vital signでは発熱の有無が鑑別に有用です。

 

②嚥下時痛+red flag signs確認

・まず"嚥下の際に痛いか"を確認します。

→嚥下時痛がある場合、喉頭に病変があると推定して対応します。

red flag signs(=5 killer sore throatを考慮)

-発熱+唾も飲み込めない(または過去最大の)咽頭

-咽頭所見が軽度だが、症状などの臨床所見が強い

-嚥下困難

-開口障害(指が縦に2本分入らない)

-嗄声やMuffled voice(熱いポテトを口に入れた時の声)

-前頚部の著明な圧痛(頚部の炎症所見)

-呼吸困難

→5 killer sore throatを疑った場合は、耳鼻咽喉科と気道確保に長けた医師を呼び、緊急気道確保に備えます。

→急性喉頭蓋炎以外を疑う場合、気道緊急でない場合は、頸部造影CTを検討します。

 

③病歴聴取(ACSと大動脈解離を考慮)

・見落としがちな致死的疾患にACS大動脈解離があります。

・5 killer sore throatが考えにくいものの、突然の咽頭の場合、これらの致死的疾患を考慮する必要があります。

嚥下時痛を伴わない咽頭胸痛背部痛などを確認します。

→少しでも疑わしい場合、心電図等の検査を行います。

AMPLEの要点

-A:アナフィラキシーも鑑別です。

-M:前医での抗菌薬処方の有無などに注意します。

-P:繰り返す扁桃炎や血管リスクとなる疾患の既往を確認します。

-L:直近の食事内容は、アナフィラキシーの鑑別にも有用です。

※性交歴(HIV/淋菌/クラミジア)や最近パートナーができたか(EBV)も聴取します。

 

④身体診察+採血+Centor scoreの評価

・最低でも口腔内視診頚部リンパ節触診甲状腺触診胸部聴診は行います。

・また、伝染性単核球症が鑑別となる場合は、肝脾腫皮疹の確認も重要です。

採血:血算(分画含む)、生化学(肝機能)、甲状腺機能、EBV関連抗体、CMV抗体など。

・診察後にはCentor scoreのスコアリングが可能となっています。

-体温≧38℃(+1)

-咳嗽がない(+1)

-前頚部リンパ節腫脹と圧痛(+1)

-扁桃腫大・滲出物(+1)

-3~14歳(+1)、≧45歳(-1)

2点以上の場合は、A群溶連菌迅速抗原検査を行います。

陽性なら治療開始陰性で偽陰性を疑う場合は咽頭培養を提出します。

迅速診断キット:感度70-90%、特異度90-100%と陰性でも除外はできません。

 

●コラム:A群β溶連菌咽頭炎

・Centor scoreを軸とした診療方針は上述の通りです。

→現場では使いにくさを感じることもあり、以下のようなエキスパートオピニオンもあります。

-前頚部リンパ節は明瞭に触れにくく、圧痛がある程度の場合が多い。

→その場合、+1点と取ることもある。

-白苔を認める症例は半分に満たず、朝はないのに夕方はあるということもしばしば経験される。

-38℃を超える発熱をきたす前の早期受診も多い。

-"鼻汁がない"ことも+1点くらいで考える。

-"左右の喉のどちらかが痛い"も+1点くらいで考える。

※ただし扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍なども鑑別に挙げる。

-ウイルス性咽頭炎に比し、咽頭痛がかなり強いことが多い。

→嚥下時痛が強く"痛みが食事で改善しない"ことは細菌性らしい。

※ウイルス性の咽頭痛は、咳嗽時のみ増強したり、起床時に強いことが多い。また、食事中に軽快することが多く"食事中に痛みが気にならなくなった"ことはウイルス性を示唆する。

処方例:AMPC(サワシリン®)250mg 4Cap2× 10日間。

ペニシリン/セフェム系アレルギーの場合:CLDM(ダラシン®)150mg 6Cap3× 10日間。

ニューキノロン系は有効ですが、耐性化の観点から温存すべきです。

マクロライド系は耐性化が進み、効果が期待できません。

・リウマチ熱や化膿性合併症を予防するため、症状改善を認めても10日間は飲み切ります。

4回/年以上扁桃炎を繰り返す場合は、扁桃摘出術を考慮します。

 

伝染性単核球症の評価

・(キスなど唾液を介する)EBVの初感染により、5~25歳に好発します。

症状:発熱、咽頭痛、倦怠感、筋痛、頭痛、皮疹など。

診察所見扁桃腫大(しばしば"ベッタリした白苔"を伴う)、リンパ節腫脹(特に後頸部)、脾腫など。

採血所見:リンパ球増多(特に≧50%)、異型リンパ球(特に≧10%)、肝酵素上昇(軽度)。

抗体(確定診断に有用):VCA-IgM≧10倍またはVCA-IgG≧640倍を認め、EBNA陰性の場合は急性期感染の確定診断となります。回復期のペア血清も採取が推奨されます。

※VCA-IgGとEBNAは生涯陽性が持続します。

・3日以上軽快しない、抗菌薬投与で改善しない咽頭炎などは本症を疑います。

・脾腫を伴うこともあり、3週間程度で改善しますが稀に脾破裂をきたします(約0.5%)。

最低でも4週間はコンタクトスポーツを行わないように指導します。

重篤な合併症として気道閉塞も知られています。

デキサメタゾン 0.25mg/kg 6時間ごとに静注、などで治療介入します。

ペニシリン系の使用で皮疹をきたすことが有名ですが、AZM,LVFX,PIPC/TAZ,CEXでも報告例があるようです。

※原則として投与から1週間程度して出現します(抗体産生が原因のため)。

・治癒後に疲労感が数か月持続し、慢性疲労症候群の基準を満たすことがあります(約5-10%)。

※"女性"と"発症前の気分障害"が危険因子とされています。

 

HIV感染症の評価

・最後に見逃してはならない急性HIV感染症(ARS)を鑑別します。

HIV感染から6か月以内に非特異的な症状を伴って出現する症候群を言います。

症状:発熱、頭痛、皮疹、咽頭痛、リンパ節腫脹、下痢、体重減少など。

伝染性単核球症などにも類似しますが、既往歴や性交歴の聴取で鑑別します。

既往歴B型肝炎やその他の性感染症など。

性交歴:最近のパートナー変更、複数人のパートナー、同性愛の有無など。

・疑った場合はHIV抗体やHIV-RNAの測定を行います。

→抗体陰性かつウイルス量>10000 RNAコピー/mLでARS確定となります。

・疑った段階で専門医紹介、診断がついた段階で速やかに抗HIV療法開始となります。

※なお、性感染症クラミジア/淋菌感染症、二期梅毒も咽頭痛の鑑別疾患です。