キューピーです。
主訴別シリーズもボチボチまとめていきます。
まずは下腿浮腫から。怖い疾患を除外していくことに主眼を置きます。
※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。
目次
【参考文献】
【鑑別疾患】
・昼ドラ(HIRUDOLA)で覚えます。
-Infection:蜂窩織炎
-Renal:腎性浮腫(急性糸球体腎炎など)
-Upstand:過度な起立
-Drug:NSAIDs、ステロイド、Ca拮抗薬など
-Obstruction:急性動脈閉塞、DVT
-Liver/Lymph:肝硬変、リンパ浮腫(術後(リンパ節郭清)・リンパ節転移)
-Albumin:低アルブミン血症
【初期対応】
①ABC確認+vital sign確認
・どんな主訴でもABCは忘れません。
・vital signでは特にSpO2低下があるか注意します。
→SpO2低下がある場合、動脈血液ガス分析を行います。
②片側or両側?圧痕性or非圧痕性?を確認
・大幅に鑑別を絞ることができます。もちろん、例外もあるのでいずれにしても検査は必須ですが。
・数秒指で押して圧痕が残らない場合、甲状腺機能低下症とリンパ浮腫を念頭に置きます。圧痕性はそれ以外が原因となります。
・両側:心不全、肝硬変、腎性浮腫、低アルブミン血症、骨盤内腫瘍などを念頭に置きます。
③採血+尿検査
・一般外来では問診が先ですが、ERを念頭に置くと先に検査を出して、結果を待つ間に問診や身体診察を進める方が効率がよいと思います。
・採血:血算、生化学(アルブミン、血清コレステロール、肝・腎機能、甲状腺機能)、凝固系(Dダイマー)、BNPを提出します。
・尿検査:尿蛋白の有無を確認します。
④問診(随伴症状・AMPLE)
・随伴症状:呼吸困難(心・PE・腎)、下肢痛(蜂窩織炎・DVT)、尿の泡立ち(腎)など。
・AMPLEに沿って問診します。以下のポイントを意識します。
-M:副作用で浮腫を起こし得るNSAIDs、ステロイド、Ca拮抗薬、ACE阻害薬などの内服歴に注意します。
-P:既往歴は最大のヒントです。妊娠も浮腫の原因となり得ます。
-L:最終食事ではないですが、低栄養のリスクは評価します。
-E:慢性的か急性発症かは必ず聴取しておきます。
⑤身体診察
・診察は特に以下に注目します。記載されていなくても多くの身体診察を行う方が診断に有利になるとは思います。
-頭頸部:眼瞼貧血、眼球黄染、頸静脈怒張、甲状腺腫大
-胸部:心音、呼吸音
-腹部:肝腫大、腹水
⑥追加の検査
・これまで得られた情報から追加の検査を考慮します。
・胸部XP、心電図、心エコー、下肢静脈エコー、腹部エコー、造影CT(腹部・骨盤(悪性腫瘍のリンパ節転移検索等)、PEプロトコルetc)などです。
・特に片側性の場合は、下肢静脈エコーはほぼ必須と思います。
【modified Well`s criteria】
・下腿浮腫の鑑別疾患は怖いものも多いですが、最も怖いのはDVT→PEだと思います。
・下腿浮腫がDVTらしい、でもPEはどうだろう。腎機能が悪いし、hydrationしてまで造影CT撮るべきかな・・・。という場面で役に立つのがこのcriteriaです。
・modified Well`s criteria
-DVTの臨床的徴候:3点
-PE以外の可能性が低い:3点
-PEやDVTの既往:1.5点
-心拍数>100bpm:1.5点
-4週間以内の手術あるいは長期臥床(3日以上):1.5点
-血痰:1点
-悪性腫瘍:1点
・使い方ですが、4点以下でDダイマーが陰性の場合は、PEは否定的と考えます。
→このように除外のために特に有用です。
・逆に4点より大きかったり、Dダイマーが陽性の場合には造影CT撮影を行う方針とするのが無難だと思います。
【特発性浮腫】
・これはもうERとは無縁(鑑別しなくてよい)だと思いますが、知っておくと便利かもしれないと思ったので追記します。
・基礎疾患がなく、夕方に増悪する両側性の浮腫(特に下腿が多い)で、中年女性に多く、抑うつや不安などと関係があるとされています。
・完全に除外診断で、心・肝・腎・甲状腺や薬物性、低Alb血症などを否定します。
・立位で水利尿が極端に悪化する傾向があり、夕方になると体重が1.5kg程度増加します。
・予後は悪くなく、数年で自然消失する例も多いようです。