内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

意識障害の初期対応

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●この記事は2020/10/12に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

今回は意識障害に出会った時の対応です。

 

原因によって治療方針も異なり、難しい分野だと思います。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【初期対応】

⓪病歴・AMPLE把握(他と並行して行う)

・これは一番初めに行うのではなく、対応を進めながら並行して行うまたは複数人で対応できる場合は手分けして把握するという意味です。

意識障害の鑑別には病歴とAMPLE聴取がとても大事です。なお、Eとして外傷歴も聴取します。

妊娠(P)も忘れずに聴取します。

→重症妊娠悪阻に伴うWernicke脳症や妊娠高血圧症候群(子癇・HELLP症候群)なども鑑別になります。

・最近の実情を踏まえるとCOVID-19も鑑別します。特に上気道症状、嗅覚・味覚障害、発熱、接触歴などはできるだけ早期に把握し、詳細不明であればfull PPE対応が推奨されると思います。

 

①ABCの評価+簡易血糖測定

・まずはA(嗄声/会話困難)B(頻呼吸/呼吸様式の異常)C(脈触知)が最優先です。

・A(やB)の異常ならともかく、Cの異常(ショック)や意識障害自体でも気管挿管の適応があるため、初期から気管挿管の適応を考えながら診療します

・Cの異常(ショック)の場合は、ショックの初期対応を行っていきます。

pkun.hatenablog.com

・血糖測定は後述する動脈血液ガス分析でもよいですが、可能ならばABC評価と同時に行います。

BS<70であれば50%ブドウ糖液40mLを急速静注し、15分後に血糖再検とします。

・以下の潜在的ビタミンB1欠乏が疑われる患者には、ビタミンB1投与を行います 。

-アルコール依存症

-拒食症

-つわりがひどい妊婦

-寝たきり

-担癌患者

-慢性下痢症

→投与例:ビタメジン®1V+生食20ml 3分かけて

pkun.hatenablog.com

 

②モニター装着+体温測定+失神と痙攣を除外(目撃者証言)

モニター装着:心電図、血圧計、SpO2モニター装着をします。

体温測定:低体温による意識障害を否定します。

・失神か痙攣の場合はアプローチが異なります。

→"目撃者の証言"が一番大事な情報となります。

失神であれば、現在の意識レベルは"普段通り"です。たとえ「意識が戻った」と言われても、普段はJCS0の人がJCSⅠ-2ならばそれは意識障害です。

・痙攣は、痙攣後意識障害なども考えると、目撃者がいないと鑑別ができません。目撃者がいない場合、痙攣の可能性を考慮しつつ意識障害の対応を進めていきます

 

③動脈血液ガス分析+ルート確保(採血)

動脈血液ガス分析低血糖、低酸素、CO2ナルコーシス、CO中毒、電解質異常(NaやCaの異常)など多くが分かります。全項目を確認する癖をつけます。

採血:血算、生化学、凝固、NH3、アルコール濃度、甲状腺・副腎機能(Na・K・血糖値など)、VitB1をみます(すぐに結果が出ない項目でも今後のため採取しておきます)。

 

④瞳孔所見±頭位変換眼球反射

対光反射消失瞳孔不同(1mm以上の左右差)があり、血圧高値や突然発症である場合は頭蓋内病変の確率が上がります。

※血圧高値を示さない脳卒中様症状は、低血糖、薬物中毒の他に大動脈解離も考慮します。

極端な縮瞳を認める場合は(1)脳幹出血/梗塞(2)麻薬(モルヒネやアヘン)(3)有機リン中毒の可能性が高まります。

共同偏視を認める場合は可能ならば四肢の動きも併せて評価します。

逆側の上下肢麻痺:偏視側のテント上脳病変同側の上下肢痙攣:偏視逆側の大脳皮質てんかん発作を考えます。

・頚椎損傷が確実に否定できる場合は、頭位変換眼球反射を確認します。頭と眼球が同じように動いてしまう場合(反射消失)、脳幹病変を疑います。

→この場合、呼吸抑制が生じる可能性が高く、気管挿管の準備をします。

※倒れていて受傷状況が不明な場合など、頚椎損傷を否定できない場合は行ってはいけません。この場合、頚椎保護を考慮します。

 

⑤頭部CT±胸部CT

※必ずABCの安定化を確認してから検査に向かいます。

・外傷の可能性が否定できない場合は、骨条件も含めます。

・頭蓋内疾患では血圧高値を認めることが多いですが、SAHではたこつぼ型心筋症や神経原性肺水腫を合併しやすいなどの点から、血圧正常-やや低めのこともあります

・頭部CTで異常を認める場合は、可能な範囲で神経診察を行い、所見が一致するか確認します

・なお、大動脈解離(→脳梗塞)が否定できないと考えた場合、胸部CTも同時に撮影します。発症時の胸背部痛や上肢血圧の左右差の有無が重要です。

※ほぼルーチンで胸部CT撮影を行う施設もあるようです。

 

⑥fever work up(敗血症による意識障害を考える場合)

・感染を疑うvital sign(体温>38℃or<36℃)や白血球数異常(例えば>12000/μLor<4000/μL)などを認める場合、敗血症による意識障害を考え、熱源精査を開始します。

髄膜炎が考慮される場合はためらわずに髄液検査を行うことが推奨されます。

※頭部CTで頭蓋内圧亢進となり得る病態がないか忘れずに確認します。

 

⑦除外診断としてアルコール、肝性脳症、電解質異常、薬物中毒、精神疾患を考慮

・上記は頻度が高いものの、その他の意識障害の原因が重複していることも多く、除外診断が原則となります。

・すなわち①-⑥までの対応を行った上で、これらを原因として考慮します

・特にこれらとその他の意識障害の原因が併存している場合が多いため、そのような対応が推奨されるのです。

 

アルコールによる意識障害

・アルコール血中濃度が測定できる場合は測定します。測定できない場合は、浸透圧を測定し、推定値を算出します。

推定アルコール血中濃度=(実測浸透圧-計算上の浸透圧)×4.6≧250以上でアルコールの影響を考慮します。

計算上の浸透圧=2Na+BUN/2.8+BS/18

アルコール依存症が疑われる場合、ビタミンB1(e.g.ビタメジン®1V)の投与を忘れないようにします。

ビタミンB1は枯渇まで2-3週間程度かかります。数日食事がとれていないくらいでは枯渇しません。慢性的に偏食がある場合などに投与を考慮します。

 

肝性脳症による意識障害

・肝性脳症におけるアンモニア血症感度は37.5%特異度は66.7%です。

アンモニア低値のみで除外できず、高値でも確定診断とはしにくい面もあります。

・また羽ばたき振戦は尿毒症、低血糖、低K・Mg血症などでもみられるため、その存在のみで肝性脳症の確定診断とはなりません

 

電解質異常による意識障害

・NaやCaの異常で意識障害をきたします。

・臨床的には低Na血症の遭遇頻度が多いですが、急性か慢性かが重要です。

慢性の経過では意識障害をきたすことは少なく、他の意識障害の原因を積極的に考慮する必要があります

pkun.hatenablog.com

 

薬物中毒による意識障害

・内服薬の詳細が判明している場合は裏付けを、不明な場合はTriage®を使用します。

Triage®の特徴は以下の通りです。

ベンゾジアゼピン系、アンフェタミン類、オピオイドバルビツール酸、三環系抗うつ薬などが検出可能です。

‐危険ドラッグなど、検出不能な薬剤もあるので注意が必要です。

‐服用直後だと検出されない場合があります。

‐鎮咳薬(コデイン)でオピオイド、麻黄配合感冒薬でアンフェタミン偽陽性となってしまうことがあります。

・従ってTriage®のみでは確定できない=除外診断とする姿勢が重要です

・なお、危険ドラッグについては悪心/嘔吐、動悸/頻脈などの症状も認め、使用した事実を聞き出すことが診断のために重要です。

 

精神疾患による意識障害

統合失調症うつ病を持つ患者は、意識障害を認めても原疾患の影響であろうと軽視されがちです。

・しかし、低Na血症(水中毒、薬剤によるSIADHなど)や薬物過量内服などの影響も考えなくてはならず、常にこれまで記載したステップを実行して、鑑別を進める必要があります。

たとえ精神疾患患者でも、何か意識障害をきたす原因がないかいつも通りに検索する姿勢が重要です

 

⑧最後にAIUEOTIPSを確認

・ここまで来たら、たいていの鑑別は終わり、原因も判明していることが多いですが、依然として原因不明の場合や取りこぼしがないか確認するためにAIUEOTIPSを利用します。

Aに大動脈解離も加えて、常に鑑別に挙げるようにします。

・また、原因不明の意識障害として痙攣後意識障害てんかん発作の持続なども考慮するようにします。

・さらに、原因が判明したと思っても複数の原因が重なっている場合もあるため、注意します。以下にその例を示します。

-尿路感染症(敗血症)+低Na血症

-低Na血症による意識障害+痙攣→痙攣後意識障害

-アルコール+頭部外傷

-低血糖+敗血症   etc

 

AIUEOTIPS

‐Alcohol,Aortic Dissection:アルコール、大動脈解離

-Insulin:低/高血糖

-Uremia:尿毒症

-Encephalopathy,Endocrinopathy,Electrolytes:高血圧性/肝性脳症、副腎不全/甲状腺機能異常、電解質異常(Na,K,Ca,Mg)

-Overdose,O2:薬物中毒、低酸素/CO中毒/CO2ナルコーシス

-Trauma,Temperature:外傷、低/高体温

-Infection:感染(敗血症、髄膜炎/脳炎/脳膿瘍など)

-Psychogenic,Porphiria:精神疾患ポルフィリア

-Seizure,Shock,Stroke:てんかん、ショック、脳卒中

 

【一過性全健忘(Transient Global Amnesia:TGA)】

 ・意識障害(JCSⅠ-2程度)のsnap diagnosis可能な疾患として、TGAをおさえます。自験例でもまさに典型的な所見を呈していました。

定義:24時間以内に改善する急性発症の前向性および進行性健忘。

典型例:「患者が同じことを繰り返し聞いてくる」と言って不審がった周囲の人に連れられて来院します。診察では、自分の名前は言え、神経所見に異常は認めません。頭部外傷や痙攣の既往もありません。しかし「なんでここにいるんですか?」、CTから戻ってきても「CT撮ったんですか?」とこういった有様です。

誘因:発作の数日-数週間前から精神的あるいは身体的に披露した状態にあり、そこに何らかの刺激が加わることで起こるとされます。例えば、「家の前で工事が始まった」「会社で上司に嫌がらせを受けた」「厳しいトレーニング中であった」など。

対応:外傷がないことと、24時間以内(平均7.4時間)に症状が改善することを確認しなくてはなりません。そのため、記事で述べてきた通り鑑別を進め、入院とし24時間以内に改善することを確認します。

注意点:繰り返す場合は側頭葉てんかんを鑑別する必要があります。

※自験例ではまさにsnap diagnosisとなり、この記事で述べたような丁寧な鑑別は行いませんでした。どこまで精査するかは、落としどころが分からず困っています(笑)。