キューピーです。
人工呼吸と気管挿管はイコールではありません。
人工呼吸には以前記事にしたNPPVも含まれます。
今回は分かっているつもりでしたが、あまり理解できていなかったそれぞれの適応をまとめていきます。
目次
【基本事項】
・人工呼吸の目的は酸素化改善、換気の改善、呼吸仕事量の軽減です。
・人工呼吸は①気管挿管による侵襲的人工呼吸と②非侵襲的陽圧換気(NPPV)に大別されます。
・NPPVでは気道は確保できませんが、気管挿管では気道を確保することができます。
・気管挿管による侵襲的人工呼吸の方が、より高度な酸素化の改善、換気の改善、呼吸仕事量の軽減を狙えます。
【気管挿管の適応】
・MOVESというゴロで覚えます。
‐Mental status/Maintain airway:意識障害、気道維持の問題
‐Oxygenation:通常の酸素療法で改善しない低酸素血症
‐Ventilation:換気障害
-Expectoration/Expected course:喀痰排泄の問題、今後の悪化が予測される場合
‐Shock:ショック(相対的適応)
・MOVESの問題が解決すれば、抜管を検討します。
・なお、NPPVの適応は上記のOとVのみで、NPPVで改善がない場合には、気管挿管による人工呼吸を早期に検討します。
【NPPVまたは気管挿管による人工呼吸の適応例】
①睡眠薬過剰摂取による意識障害(GCS8以下)
・挿管の適応:M V
・判断:気管挿管による人工呼吸。嘔吐時に窒息するためNPPVは禁忌です。
②頭部外傷による意識障害(GCS8以下)
・挿管の適応:M V
・判断:気管挿管による人工呼吸。意識障害があること、換気とPaCO2を厳密にコントロールする必要があることからNPPVは禁忌です。
③急性喉頭蓋炎や血管浮腫によるストライダー
・挿管の適応:M
・判断:気管挿管による人工呼吸。
④市中肺炎による低酸素および頻呼吸
・挿管の適応:O V
・判断:気管挿管による人工呼吸。喀痰排出を妨げるため、NPPVは使用しません。
⑤うっ血性心不全による頻呼吸
・挿管の適応:O V
・判断:NPPVまたは気管挿管による人工呼吸。
⑥COPD急性増悪による呼吸筋疲労とシーソー呼吸
・挿管の適応:O V
・判断:NPPVまたは気管挿管による人工呼吸。
⑦ギランバレー症候群による呼吸筋疲労とシーソー呼吸
・挿管の適応:V E
・判断:気管挿管による人工呼吸。増悪時に唾液や分泌物で窒息する可能性があるため、NPPVは安全ではありません。
⑧抜管後の廃用性筋力低下による喀痰排出不全による低酸素
・挿管の適応:O V E
・判断:気管挿管による人工呼吸。気管切開が必要となる可能性が高いです。
⑨敗血症性ショックによる組織低酸素(SpO2は保たれていても)
・挿管の適応:S O
・判断:気管挿管による人工呼吸により、呼吸仕事と酸素需要を軽減します。
⑩敗血症性ショックによる意識障害
・挿管の適応:M S
・判断:気管挿管による人工呼吸。
⑪食道静脈瘤破裂によるショック
・挿管の適応:M S
・判断:気管挿管による人工呼吸。