内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

創傷処置の方法

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●この記事は2021/4/4に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

今回は創傷処置について学びます。

 

内科医が創傷処置をしなくてはならない場面は基本的にはありませんが、緊急事態に必要になる可能性もあります。

 

医者だったら怪我の処置くらいできるでしょ、みたいに言われてしまうこともあり得そうなので、ある程度マスターしておいた方がよさそうです。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【縫合練習用キット】

・そもそも縫合ができないと創傷処置はマスターできません。

・生身の人間相手に練習するわけにはいかないので、僕は練習キットを買って何度も練習しました。

・上の商品を買ったのですが、実際より皮膚が固いものの、道具の再現性が高く、かなり練習になりますのでオススメです。

 

【参考文献】

 

【処置の前にやること】

・どんなに軽い外傷でもまずは"ABC"を評価します。

→話してA(嗄声や会話困難)、見てB(頻呼吸や呼吸様式異常)、脈触れてC(頻脈や冷汗)。

・AMPLEの問診も行います。受傷起点はとても大事で、外表だけでなく体内出血を疑うヒントにもなります。体内出血を疑えばエコーやCTなどによる評価を追加します。

AMPLE:アレルギー歴、内服薬、既往歴/妊娠、最終食事、受傷状況(受傷起点)。

・四肢の外傷ならばPulse(動脈触知)Motor(指先まで動くか)Sensory(指先まで触覚があるか)を確認します。

神経(知覚・運動)腱(運動)血管(出血)損傷をチェックできます。

・活動性出血がある場合は、まずは圧迫止血です。動脈性なら10分以上の圧迫もためらわずに行います。

・最後に創内異物を忘れないように注意します。ガラス片や金属片が疑われる場合、2方向のXP撮影が推奨されます。それ以外の異物ではCTやエコーが有用です。

※創内異物に気付かずに縫合すると、高確率で感染が生じます。

 

●コラム:腱損傷の対応

・創が大きく、直視できる場合は容易に診断できますが、ガラスやナイフでの損傷では創が小さくても、常に腱損傷を念頭に置きます。

腱損傷は緊急性はなく、待機的に手術室での縫合の適応となります。

※ただし、腱の短縮を考慮し早めの手術が望ましいとされます。

・感染予防のため、念入りに洗浄を行いラフに閉創して後日整形外科受診とします。

※直視できる場合は、写真を残しておき、持参させます。

 

●コラム:神経損傷の対応

・腱損傷と同様に切創や刺創での受傷が多いとされます。

・特に指尖部は多く、各指の橈側と尺側を比較するようにします。

神経損傷も緊急性はなく、待機的に手術室での縫合の適応となります。

・感染予防のため、念入りに洗浄を行いラフに閉創して後日整形外科受診とします。

 

●コラム:血管損傷の対応

・5P(疼痛/蒼白/脈拍消失/感覚異常/麻痺)を特徴とします。

・腱/神経損傷と異なり、緊急コンサルトの必要な可能性が高いです

→初療医は"初期止血"と"損傷部位評価"を行う必要があります。

止血

-まず出血部位にガーゼを当て徒手的に圧迫し、圧迫部位を挙上します。

※この時点で基本的には専門医コンサルトとします。

-血圧計(上肢は250mmHg,下肢は350mmHg)で駆血を行います。

-ドレーン鉗子等で送気管/排気管をクランプし、駆血を完了します。

-創内を洗浄しながら観察します。

-動脈断端寄りでモスキートペアンなどでつまんで止血します。

-バイポーラや結紮は永久止血となるため、非専門医が行わない方が無難です。

・肘関節より高位の上肢動脈損傷や下肢の動脈損傷は 、末梢の壊死を引き起こす可能性が高いとされています。

・駆血を行えない四肢近位での動脈出血を認める場合は、手術室に移動してから止血を行うことが望ましいとされます。

 

【処置】

①局所麻酔

・極端な汚染などがなければ、洗浄に先立って行います(無麻酔での洗浄は疼痛刺激が強いため)。

浅い擦過創ならば、2%キシロカインゼリーを創傷面に直接塗布して10-15分待つことで、洗浄処置を行うのに十分な麻酔が得られます。

・事前に麻酔薬のアレルギー歴を聴取します。

絶対に静注しないように注意します。

・極量は1%リドカイン(キシロカイン)で4.5mg/kgです。10mg/mLなので、mL換算だと0.45mL/kgです。大雑把に20mL程度が極量と覚えておくのも手です。

・5-10分で効果が発現し、1時間程度持続します。

患者満足度を上げるために以下のポイントを意識します。

‐仰臥位にします(血管迷走神経反射が起き得るため)。

-胸ポケットで麻酔薬を温めておくと痛みが軽減します。

-創縁内部から刺入し、ゆっくり(1mL/30秒)と注射すると痛みが軽減します。

-27ゲージ針(より細い針)で行うと更に痛みが軽減します。

・指のブロック麻酔(Oberstブロック)は、基節骨端の4か所に約1mLずつ注射します。

※1mLシリンジを用いると量が調整しやすいと教わりました。

・E(エピネフリン)入りは出血抑制や効果時間延長の利点がありますが、指先・耳介・陰茎には原則として禁忌です。

 

②洗浄

・大量の生食や水道水で"徹底的に"行います。

・どちらを使用しても効果に差はなく、量が重要です。

綿球等で創内をしっかり擦ります。砂利の場合はブラシ使用も考慮します。

・狭い部分は創を十分開いて20mLシリンジ+18Gサーフロでジェット噴射を行います。

250mL/1か所が目安です。10回以上はジェット噴射が必要ということになります。

 

③創閉鎖

強い汚染創動物咬傷(ヒトを含む)一次縫合による創閉鎖を行うべきでありません。開放での管理が推奨されます。

・一次縫合を行ってよい受傷からのゴールデンタイムは6時間です。

→これを超える場合は一次縫合を見送りますが、清浄な傷なら19時間は閉創可能という報告もあります。

・様々な創閉鎖の方法を見ていきます。

 

擦過傷処置

・閉創の必要のない擦過傷の場合、洗浄後に湿潤環境を保てるように処置します。

・(見込まれる浸出液の量が少ない順に)テガダーム®、デュオアクティブ®、ハイドロサイト®などで被覆します。

・出血が持続する場合はカルトスタット®やソーブサン®などのアルギン酸被覆材を使用(併用)します。

※カルトスタット®やソーブサン®は通気性があるため医療用フィルムで被覆します。

 

ステリ

感染リスクが最も低いです。

・単純で浅く、創縁があまり開いていない表層の切創・裂創に向いています。

・創縁を合わせる作業が治療の成否を決めるので丁寧に行います(図)。

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今日の臨床サポート より画像引用


ステープラー

頭髪に隠れる頭部の単純な裂創に用います(美容的に問題となりにくいため)。

合わさった創縁が若干外にめくれるようにして留めるのがコツです。

・周囲の毛は、合わさった創縁の間に挟まっていなければ、金具と表皮の間に多少入り込んでいても問題ありません(抜鈎の際に開放されるため)。

 

縫合

・上記のいずれにも当てはまらない場合、縫合による創閉鎖を試みます。

・最も基本的な単純結節縫合の動画を示します。

※創傷縫合時は動画より少しきつめにすると思います。

 ・以下が縫合のポイントです。

‐できるだけ表皮よりも皮下組織をつかみこみ創縁を把持します(ピンセット把持に伴う圧挫を最小限にするため)。

‐合わさった創縁は、双方の真皮組織が接触できるよう外にそりかえっている必要があり、これがきちんとなされることで瘢痕形成を最小限にとどめられます。

‐糸を結ぶ際に締める力は、創縁がきちんと合わさるのに十分な力までとし、必要以上に締め過ぎないように注意します。

‐単純結節縫合のサイズ上な目安は、5mm間隔・5mmの深さ・創縁から5mm、顔面における美容的創閉鎖などではそれぞれ2.5mmです。

・縫合部はゲンタシン軟膏を塗布のうえ、清潔なガーゼなどの被覆材で保護します。

・創縁が内側にめくれている場合は、内翻している部分を長軸方向に切除して単純結節縫合するか、単純結節縫合の間に垂直マットレス縫合を混ぜて縫合します(図)。

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今日の臨床サポート より画像引用

 

コラム:糸について

・天然糸と合成糸がありますが、現在は合成糸がほとんどです(天然は抗張力が弱く抗原としても認識されやすい欠点があります)。

モノフィラメントブレイドがあり、前者は単一のフィラメント、後者は複数のフィラメントを編んだものです。前者は細菌が伝播しないので感染に有利後者は結び目がほつれにくく確実に結紮できる利点があります。

・表皮縫合の際は非吸収性のモノフィラメントであるプロリン®やエチロン®を用います。非吸収性なので、抜糸が必要です。

・真皮縫合(中縫い)や臓器の縫合は吸収性のバイクリル®(ブレイド)やPDS®(モノフィラメント)を用います。吸収性なので、抜糸は必要ありません。

・サイズについては6-0(細い)から4-0(太い)くらいを用いることが多いです。

※実臨床では医師によって選択に好みがある印象です。

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今日の臨床サポート より画像引用

 

【抗菌薬予防投与と破傷風予防】

①抗菌薬予防投与

・予防投与の必要性の明確な基準は探した限りでは不明でした。

開放骨折関節に達する開放創動物咬傷口腔内裂創の場合はほぼ必須です。

・他にも免疫不全者汚染の強い創人工異物のある患者に投与が必要と考えます。

開放骨折や動物咬傷(ヒト含む)は洗浄/デブリドマンが重要で、特に前者では専門医コンサルトが必須と考えます。

動物咬傷処方例:AMPC/CVA(オーグメンチン®)250mg+AMPC(サワシリン®)250mg 各3錠3× 3-5日間。

(アレルギー時はDOXY(ビブラマイシン®)100mg2錠2× 3-5日間。)

汚染創処方例:CEX(ケフレックス®)250mg6Cap3× 3-5日間。

(院内採用がない場合などはCCL(ケフラール®)250mg3錠3× 3-5日間。)

※ケフレックス®はケフラール®に比べてアレルギーが少ないとされます。

 

破傷風予防

・創傷の汚染度以上に、ワクチン接種歴が適応に関わります

・5年以内に接種がなければ、多くがトキソイドの適応となります。

基礎免疫破傷風予防接種歴が3回以上あることを指します。

※日本では1968年に3種混合ワクチンが開始されており、それ以前の出生者(2021年時点で51-2歳以上)の人は基礎免疫がない可能性が高いです。

 

基礎免疫なし(または不明)

破傷風トキソイド0.5mL筋注×3回は必須となります。

※2回目は3-8週後、3回目は2回目の12-18か月後を予定します。

創汚染が強ければ抗破傷風ヒト免疫グロブリン(HTIg)投与を考慮します。

→テタノブリン®250単位+5%ブドウ糖液50ml 30分以上かけて点滴静注。

※急速静注はアナフィラキシーのリスクとなるので、行わないようにします。

 

基礎免疫あり

5年以内に接種あり:トキソイド、HTIgとも不要です。

5年以内に接種なし

清潔な切創:10年以上前の接種の場合に限り、トキドイド0.5ml筋注×1回。

清潔な切創以外:全例にトキソイド0.5mL筋注×1回。

 

【フォローアップ指針】

⓪帰宅時の指導事項

必ず翌日に専門医受診とします(トラブル回避のため最重要)。

傷跡は残ってしまうことを説明します。

・抜糸まで浴槽につかるのは控えていただきます。

・シャワーは可能ですが、出血が強い創傷の場合は、当日は控えていただきます。

 

①擦過創

感染のリスクがあるもの滲出液、出血により被覆材などの交換が必要と見込まれるものは、2日以内に再受診を指示します。

・そうでなければ感染徴候を認める場合に再受診とします。

感染徴候:痛みの増強、膿、発熱、腫脹、発赤、局所熱感。

 

②縫合やステープラー処置した創

感染のリスクがあるものガーゼ交換が必要と思われるものは、2日以内に再受診とします。

出血したり、運動機能に異常が出現したり、感染徴候を認めた場合は再受診するように指示します。

・その後は、抜糸・抜鈎の時期を目安に再診予定とします。

抜糸/抜鈎:基本的に7日以内に行います。大きな関節の伸展側など創縁に対して垂直に伸展力がかかるような部位や、いわゆる手や足の指紋や掌紋などのある部分などでは10-14日後に行います。

顔面縫合の抜糸:3-5日で抜糸して、縫合痕が発生するリスクを減らします。この頃までに表皮はふさがりますが、真皮が伸展に耐える癒合を獲得するには至りません。そのため抜糸後数日は、創閉鎖用テープで創部を補強します。