内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

心房細動の診療

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●この記事は2021/1/6に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

心房細動はありふれた不整脈疾患です。

 

対応法をまとめておきます。

 

と思いましたが、あまりにも奥深く全てをまとめきることはできませんでした。

 

従って特に重要と思われる部分だけまとめてみました。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

(特に意見の分かれる部分もありそうですので、慎重にお読みください)

 

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目次

 

 

【参考文献】

2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン

 

【基本事項】

・小刻みな細動波(f波)と不規則なRR間隔を特徴とします。

罹患期間が長いとf波が認識しにくくなります

・多発性心房期外収縮(PAC)と鑑別が必要ですが、こちらは明らかなP波を認めます。

・頻拍化が継続すると、心拡大と心壁運動の低下から頻拍誘発性心筋症に進展します。

・心房内血栓脳梗塞(年間5%程度)のみならず、冠動脈、脾臓、腎臓、腸管など全身の塞栓症を引き起こします。

・持続期間で以下のように分類されます。

-発作性AF:発症後7日以内に洞調律に復したもの。

-持続性AF:発症後7日を超えてAFが持続しているもの。

-長期持続性AF:持続性AFのうち発症後1年以上持続しているもの。

-永続性AF:電気的あるいは薬理学的に除細動不能のもの。

 

【疫学/リスク因子】

有病率:0.6%程度で、加齢に伴い上昇します(60歳以上で2−4%)。

リスク因子

-患者要因:高齢者、家族歴、肥満、喫煙、飲酒など。

-基礎疾患:高血圧、糖尿病、心筋梗塞、僧帽弁疾患、肥大型心筋症、拡張型心筋症、甲状腺機能亢進症、SAS心不全など。

-薬剤:ステロイド、NSAIDs、カフェインなど。

-発作誘因:運動、食事、ストレス、疼痛、脱水、急性疾患(感染症など)など。

※特に初発の場合は、リスク因子を評価し介入可能なものは介入します。

 

【初期対応】

①血行動態が不安定な場合

発症から48時間以内

血栓症リスクは比較的低く、そのまま電気的除細動を行います。

同期モードで、2相性なら50J→100J→200Jと改善するまで繰り返します。

50Jだと弱いという文献も多いです。単相性なら100J→200J→360Jです。

意識がある場合は鎮静は必須です。

-投与例1:プロポフォール 4-5mL(40−50mg) 静注。

-投与例2:ミダゾラム(ドルミカム®︎)4−5mg 静注。

ミダゾラムは1A(10mg/2mL)を生食8mLで希釈して1mg/mLで使用します。

・発症<12時間で0.3%、12−48時間で1.1%の血栓症リスクがあることには注意します。

※発症12時間以上の場合は、発症48時間以上に準じてヘパリン併用下での電気的除細動を推奨する意見もあります。

 

発症から48時間以上 or 発症時期不明の場合

血栓症リスクが高いため、電気的除細動の前にヘパリンを投与します。

目標はAPTT1.5−2倍で、これを達成してから電気的除細動を行います。

除細動後はワルファリンかDOACを4週間投与します。

※詳細は抗凝固薬の使用法の項参照です。

 

②血行動態が安定している場合(レートコントロール)

・対応にはリズムコントロールとレートコントロールがあります。

・近年ではレートコントロールの優位性を示唆するデータが多くなってきており、今回はこちらをまとめることにします。

※自覚症状が強かったりQOLを損ねている場合はリズムコントロールも考慮します。

※また最近は、カテーテルアブレーションも脚光を浴びているようです。

一応の目標は安静時心拍数<110/分ですが、確固たるエビデンスはありません。

患者の自覚症状やQOLを重視した管理を心がけます。

 

心機能低下のある場合(EF<40%)

急性期

-投与例:ランジオロール(オノアクト®︎) 1-10γ。

-50mgを生食に溶解し50mg/50mLとして使用します。

→この場合の投与速度は、1γ=0.06×体重(kg) ml/hrとなります。

-禁忌:心原性ショック、代謝性アシドーシス、徐脈性不整脈、右心不全、褐色細胞腫。

-β1選択性が高く、喘息患者は禁忌ではないですが、症状が出たら中止します。

-効果が乏しい場合はジゴキシン静注の追加を考慮します。

→遅くてもこの段階では循環器内科コンサルトが望ましいと思います。

 

慢性期

-投与例1:ビソプロロール(メインテート®︎)錠 2.5mg 1日1回。

-投与例2:ビソプロロール(ビソノテープ®︎) 4mg 1日1回貼り替え。

-投与例3:カルベジロール(アーチスト®︎)錠 5mg 1日1回。

-上記のいずれかが選択肢となります。

-ビソプロロールの方がより心臓選択性が高く、心拍数抑制効果が強いです。

-その分、高度徐脈に注意する必要があります。

-禁忌などの注意点はランジオロールとほぼ同じですが、添付文書も参照ください。

 

心機能が保たれている場合(EF≧40%)

急性期/慢性期

-投与例1:ビソプロロール(メインテート®︎)錠 2.5mg 1日1回。

-投与例2:ビソプロロール(ビソノテープ®︎) 4mg 1日1回貼り替え。

-投与例3:カルベジロール(アーチスト®︎)錠 5mg 1日1回。

-投与例4:ベラパミル(ワソラン®︎)錠 40mg 1日3回。

-β遮断薬と非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が選択肢です。

-β遮断薬で開始し、効果不十分の場合にCa拮抗薬を併用するのが良いと思われます。

 

ジギタリス製剤について

・上記レートコントロールは"2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン"を参考にしています。

ガイドラインでは、心機能低下例においてもβ遮断薬を第一選択に挙げています

・しかし、非循環器内科医でオノアクト®︎を使い慣れてない場合には、血圧低下を伴う心房細動症例にはジギタリス製剤を使用する場合があり得ると思います。

投与例ジゴキシン(ジゴシン®︎)注 0.25mg 生食20mLに希釈し5分で静注。

禁忌:房室ブロック、洞房ブロック、閉塞性心筋疾患、ジギタリス中毒。

腎機能低下例ではジギタリス中毒になりやすいので、注意します。

重篤な副作用としてNOMIにも注意します。

 

【抗凝固薬の使用法】

①弁膜症性心房細動と非弁膜症性心房細動

・"2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン"で、定義が変更となっています。

弁膜症性:リウマチ性僧帽弁疾患、機械弁置換術後。

非弁膜症性:上記以外。

※生体弁置換術後は、非弁膜症性に含まれることになりました。

弁膜症性→PT−INR 2.0-3.0を目標にワルファリンの使用が推奨されます。

非弁膜症性→リスクを評価したうえで抗凝固薬の適応を考えていきます。

 

②CHADS2スコア

心原性塞栓症のリスク評価に用います。

-Congestive heart failure(心不全):1点

-Hypertension(高血圧):1点

-Age(75歳以上):1点

-Diabetes mellitus(糖尿病):1点

-Stroke/TIA(脳卒中TIAの既往):2点

非弁膜症性のうち、このスコアが1点以上であればDOAC開始が推奨されます。

※CHA2DS2−VAScスコアについては、上記に追加された因子である"年齢(65−74歳)"、"血管疾患"、"女性"のいずれも日本人では有意なリスク因子でなかったという統合解析結果から、最近はCHADS2スコアを重視する傾向にあります。

 

③HAS−BLEDスコア

・抗凝固薬を使用する際には、出血リスクも評価します。

-Hypertension(収縮期血圧>160mmHg):1点

-Abnormal renal & liver function(肝腎機能障害):各1点

-Stroke(脳卒中):1点

-Bleeding(出血):1点

-Labile INRs(不安定なINR):1点

-Elderly(65歳以上):1点

-Drugs or alcohol(薬剤またはアルコール依存症):各1点

※肝機能障害:慢性肝障害or検査値異常(総Bil>正常上限×2、AST/ALT/ALP>正常上限×3)

※腎機能障害:慢性透析、腎移植、血清Cr≧2.26mg/dL

※出血:出血歴、出血傾向(出血素因・貧血など)

※不安定なINR:INR高値orTTR<60%

※薬剤:NSAIDs、抗血小板薬

3点以上で出血高リスクと考えます。

→この場合、リスクとベネフィットを考慮し、抗凝固薬の使用を決定します。

 

④重大な出血関連因子

・HAS−BLEDスコアに加えて以下の因子を重大な出血関連因子としています。

-年齢≧75歳

-低体重≦50kg

-腎機能障害

-抗血小板薬併用

-管理不能な高血圧

・列挙した因子がある場合は、より慎重に抗凝固薬導入を判断します。

 

⑤ワルファリンの使用法

使用場面

・現在ではDOACの使用頻度が高いですが、以下ではワルファリンを使用します。

-弁膜症性心房細動(リウマチ性僧帽弁疾患or機械弁置換術後)

-CCr<15mL/分の高度腎機能障害時

※ただし、出血リスクが高まるため添付文書上はワルファリンも禁忌です。

-生体弁術後3か月間(DOACのエビデンスが不十分のため)

 

目標PT−INR

弁膜症性心房細動:2.0−3.0

非弁膜症性心房細動:以下が推奨されます。

-一次予防(脳梗塞既往なし)かつ血栓低リスク:1.6−2.6

-二次予防(脳梗塞既往あり)または血栓高リスク:≧70歳は1.6−2.6、<70歳は2.0−3.0

血栓低リスクの一例:CHADS2≦2点など

血栓高リスクの一例:CHADS2≧3点、担癌患者

 

⑥DOACの使用法

⑴各薬剤の用法・用量

DOAC間の優劣は現状ついていないと考えるのが無難です。

・以下に用法用量を示します。

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 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン

 

開始前の採血

・モニタリング不要というイメージがありますが、そうではありません。

必須項目:腎機能(用量決定に必須)、肝機能(投与後の増悪確認)、凝固系(元々の出血素因)。

 

開始後の採血

投与開始後3か月(特に1か月)以内に出血性合併症が多いとされます。

→この期間は特に採血頻度を高めるべきと考えます。

必須項目:Hb(出血の早期発見)、腎機能、肝機能。

・年単位の長期投与となる場合、最低でも1年に1回は採血フォローします。

・高齢者(≧75歳)は半年に1回、CCr<60の患者ではCCr/10か月に1回のフォローが推奨されます。