内科医キューピーのつぶやき

医学部首席になれた勉強法や医学情報を発信したりします。

急性膵炎の診療

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●この記事は2020/10/03に内容更新しました。

 

キューピーです。

 

重症度が高く、比較的出会う頻度の高い急性膵炎についてまとめていきます。

 

※この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。

 

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目次

 

 

【参考文献】

 

【診断の要点】

①診断基準

・以下の2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したものです。

⑴上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。

⑵血中または尿中に膵酵素の上昇がある。

⑶超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある。

腹痛のない急性膵炎も約10%存在します

 

②膵酵素の注意点

アミラーゼは感度は高いですが特異度は低く、以下のような病態でも上昇します。

-膵疾患

-唾液腺疾患:流行性耳下腺炎、外傷、放射線照射

-消化管疾患:消化管穿孔、腸間膜動脈閉塞、腸閉塞

-婦人科疾患・妊娠

-薬剤:モルヒネ、利尿薬、ステロイド

-その他:腎不全、マクロアミラーゼ血症、熱傷、神経性食思不振

※特に他の膵疾患や消化管穿孔などの腹痛を伴うような消化管疾患と誤診しないよう注意します。

・一方で膵性アミラーゼ(P−AMY)やリパーゼは特異度が高いため、これらの値が上昇していればより膵炎が疑わしいと言えます。

 

③画像検査の注意点

・XPは消化管穿孔などとの鑑別や肺病変の確認のため、胸腹部XPとします。

・膵炎を疑えば、重症度評価のためにも腹部造影CT(最低でも単純CT)を施行することが重要です。

 

【初期対応】

①問診

発症前の飲酒:飲酒は腹痛の増悪因子でもあります。

既往歴:胆石、脂質異常症、ERCP歴、外傷など。

内服歴:フロセミド・サイアザイド、サルファ薬、ACE阻害薬など。

喫煙歴

家族歴:遺伝性膵炎もあり得ます。

※アルコールと胆石で原因の6割を占めます。BMI>30は重症化因子です。

 

②診察

・腹痛部位は上腹部、次いで腹部全体が多く、圧痛部位は腹部全体が、次いで上腹部、右上腹部が多いとされます。腹痛は前屈で軽減することがあります。

・腹痛の他には背部への放散痛、食欲不振、発熱、悪心・嘔吐の頻度が高いです。

・主に重症化を示唆する以下の所見に注意します。

-血圧低下、頻脈、頻呼吸、高熱

-筋性防御

-腸蠕動音減弱

-出血斑(側腹壁:Grey−Turner徴候、臍周囲:Cullen徴候)

 

③血液検査・動脈血液ガス

・アミラーゼは特異度が低く、重症度も反映しません。

・膵性アミラーゼとリパーゼは特異度が高いです。

・肝胆道系酵素は胆管炎併発の確認に必須です。

・以下に、採血項目ごとの急性膵炎における役割を示します。

-白血球数:診断/重症度判定 -血小板数:重症度判定

-アミラーゼ:診断 -リパーゼ:診断 (-尿中アミラーゼ:診断)

-BUN:重症度判定 -Cre:重症度判定 -Ca:重症度判定 

-LDH:重症度判定 -CRP:重症度判定

-T−bil/D−bil:原因検索 -AST/ALT:原因検索

-中性脂肪:原因検索 -IgG4:原因検索

-動脈血液ガス(PaO2,PaCO2,BE):重症度判定

 

④胸腹部X線・腹部エコー

胸部XP:胸水貯留(大量補液に注意)、ARDS(重症例)をみます。

腹部XP:以下の麻痺性イレウスを示唆する所見をみます。

-colon cut−off sign:横行結腸まで追えたガスが脾彎曲から追えなくなる所見です。

-sentinel loop sign:左上腹部に限局する空腸ガス像です。

腹部エコー:膵腫大や膵周囲の炎症性変化、胆道結石や総胆管拡張を確認します。

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Pancreas より画像引用(colon cut-off sign)

 

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Acute pancreatitis より画像引用(sentinel loop sign)

 

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Chapter-2 膵炎 より画像引用

 

⑤腹部造影CT・重症度判定

・腎機能が厳しい場合は単純CTを撮影することもあります。

→その場合、膵壊死が分からない(Gradeがつけられない)膵癌など膵腫瘍を見逃しやすい点には注意します。

・予後因子か造影CTの重症基準のどちらか一方でも満たせば重症と判定します。

予後因子(以下の該当項目3個以上で重症)

1:BE≦−3mEq/Lまたはショック(sBP≦80mmHg)

2:PaO2≦60mmHg(room air)または呼吸不全(人工呼吸管理要する)

3:BUN≧40mg/dL(or Cr≧2mg/dL)または乏尿(輸液後も1日尿量≦400ml)

4:LDH≧基準値上限の2倍

5:血小板数≦10万/mm^3

6:総Ca≦7.5mg/dL

7:CRP≧15mg/dL

8:SIRS陽性項目数≧3

9:年齢≧70歳

 

造影CTによるCT Grade分類(Grade2以上で重症)

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急性膵炎のCTグレードの評価をイラストと画像でわかりやすく解説! より画像引用

※以下も同URLより画像引用。

 

CT Grade分類に当たってのイラスト

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Grade1(前腎傍腔まで+造影不良域なし)

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Grade2(腎下極以遠+造影不良域なし)

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Grade3(腎下極以遠+2つの区域の造影不良)

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⑥初期治療

補液

・治療のメインであり、最も重要です。

・生理食塩水より乳酸リンゲル液(ラクテック®︎)などが推奨されています。

補液前に心エコーで心機能評価を行うことが望ましいです。

ショックや脱水あり:150−600ml/時。

脱水なし:150ml/時(3600ml/日)。

平均血圧65mmHg尿量0.5mL/kg/時が確保されるようになったら、この指標を維持するように減量します。

・循環不全が最大の死因であり、補液を緩めてはならない一方で過度な補液も死亡率を高めることが知られています

 

鎮痛薬

・疼痛は強く、十分な効果のある鎮痛薬を投与します。

例1ペンタゾシン(ソセゴン®︎)注 1回15mg 点滴静注

例2:ブプレノルフィン(レペタン®︎)注 1回0.2mg 点滴静注

※コントロール不良の場合、フェンタニル注 0.01-0.1mL/kg/hrも考慮します。

 

蛋白分解酵素阻害薬

・実際に予後を改善するエビデンスは明らかではありません。

・習慣的に用いる施設もあります。

例1:ガベキサートメシル酸塩(エフオーワイ®︎)注 300mg+生食500ml 1日2回

例2:ナファモスタット(フサン®︎)30mg+生食500ml 1日2回

・溶解液量が多いですが、高濃度投与すると静脈炎や皮膚壊死のリスクが高まります。

※添付文書上は5%ブドウ糖液との溶解が推奨されていますが、生食でも特に問題はないとは思います(参考文献では生食となっていました)。

 

抗菌薬

重症に当てはまらない症例では必須ではありません

・意見の分かれるところで、施設差もあると思われます。

・胆管炎合併例では、確実に胆管炎に対する抗菌薬が必要となります。

 

PPI

・胃酸による膵外分泌刺激を抑える目的で使用されてきましたが、膵炎に対するエビデンスはありません。従って軽症例にはまず不要です

重症例にはストレス性の消化管出血予防のために使用すべきと考えます。

 

【初期治療後の対応】

①呼吸管理

・体液過剰による胸水や心不全、ARDSを併発している場合はNPPVや人工呼吸器管理を考慮します。

 

②血液浄化療法・CHDF

・十分な初期輸液にもかかわらず利尿が得られない場合、体液過剰により腹腔内圧が上昇した場合に導入を検討します。

 

③経腸栄養

・急性期は絶食が基本です。

・しかし、発症48時間以内に低脂肪製剤を再開することで感染予防などの面から、予後改善の可能性が示唆されています

・従って、できるだけ早期の経腸栄養を検討します

以下の2項目をクリアしていることを再開の目安とします。

(1)腹痛が消失している。

(2)血中膵酵素(リパーゼ)が正常値上限の2倍以下に減少している。

 

④造影CTフォロー

・重症度判定は診断直後になされますが、経時的に増悪する症例も多く、造影CTや採血のフォローが重要です。

・特に発症後48時間時点での造影CTは必須となります。

・順調に急性期を乗り切った症例では、補液が減量できているか、局所の液体貯留を合併していないかなどに注意します。

 

【胆石性膵炎】

・基本的に消化器内科コンサルトの推奨は、①重症例 ②胆石性膵炎のいずれかです。

※軽症例でも全例入院は推奨されます。

・胆石性膵炎で、胆管炎や胆道通過障害を伴う場合は緊急ERCPの必要性検討のため、速やかに消化器内科へコンサルトします。

・また、膵炎が落ち着けば外科にて胆嚢摘出術を施行するようにします。