この記事は2022/10/15に内容更新しました。
深部静脈血栓症(DVT:Deep Vein Thrombosis)の検索で、エコーはかなり有用です。
特にERなど時間の限られた診療場面に置いて、効率的なこともあります。
今回はDVT検索におけるエコーのあて方(特にERや病棟を想定)についてまとめてみました。
この記事の内容が原因で生じたいかなる不利益にも責任は負いかねます。
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目次
【参考文献】
超音波による深部静脈血栓症・下肢静脈瘤の標準的評価法(日本超音波医学会/日本脈管学会/日本静脈学会)
【DVTの好発部位と分類】
超音波による深部静脈血栓症・下肢静脈瘤の標準的評価法(一部改変)
・上図のように、好発部位に応じて3つの型にまずは分類できます。
・腸骨型:右総腸骨動脈の圧排と関連して、左側に好発します。
・大腿型:CV留置とも関連してくる部位です。
・下腿型:ヒラメ静脈は最大の好発部位と考えられ、中枢側に進展していきます。
・更にこれらをまとめて大きく2つに分類され、これが一般的に用いられる分類になります。
・中枢型(近位型):腸骨型、大腿型、膝窩に形成されるものです。
・末梢型(遠位型):下腿に限局して形成されるものです。
・その他に血栓の形態で閉塞型、非閉塞型、浮遊型に分類されます。
・更に血栓の新旧によって、急性期血栓、慢性期(器質化)血栓に分類されます。
→特に浮遊型の急性期血栓は、遊離して急性にPEをきたす可能性が高いので注意が必要です。
※エコー所見の特徴については後述します(【検査手技】①安静時評価を参照)。
【検査範囲】
⓪基本事項
・下肢静脈エコーは検査範囲により、大きく2種類に分けられます。
・よく検査室で用いられるのは、下肢を遠位側まで全て検索するwhole-leg USです。
・一方で検査時間短縮を目的とし、ERなどで実施するのはproximal CUSだと思います。
①proximal compression ultrasonography(proximal CUS)
・中枢側の静脈に限定して、圧迫法で行う検査方法です。
※圧迫法については後述します。
・特にERなどで用いられる機会が多く、検査範囲は2-3点のみとなります。
→すなわち、鼠径部の総大腿静脈と膝窩部の膝窩静脈の2か所、または大腿静脈を加えた3か所です。
→それぞれ2(3) point CUSと呼ばれます。
・簡便かつ短時間で施行できますが、陰性の場合は未検索の下腿限局型DVTの近位進展を見逃さないために1週間後の再検が必要とされます。
・なお、proximal CUS陰性かつD-dimerも正常であれば1週間後の再検は不要とする報告があります(JAMA 2008;300:1653-1659)。
→原則としてproximal CUS陰性かつD-dimer陰性ならば否定、D-dimer高値なら1週間後再検とする方針が一般的と考えます。
②全下肢静脈エコー whole leg ultrasonography(whole-leg US)
・主に検査室などで用いられる、下肢全体の評価を行う検査方法です。
・大腿静脈(更に中枢を疑う場合は腸骨静脈)を評価し、圧迫法により膝窩静脈まで観察します。
→次いで下腿で後脛骨静脈、腓骨静脈およびひらめ静脈や腓腹静脈を観察します。
・感度/特異度とも高いとする報告があります。
・proximal CUSと異なり末梢まで観察するので、原則として再検は不要と考えます。
【検査手技】
①安静時評価
・静脈を短軸像、次いで長軸像で描出し、壁と内腔を観察します。
・静脈径は、画像のように対側の静脈や同名動脈と比較して拡張の有無を評価します。
・カラードプラ法を併用すると、観察が容易になります。
・急性期血栓:静脈径拡張や血管閉塞(血栓充満像)を認め、エコー輝度は低いことが多いです。
・慢性期血栓:壁在血栓を認め、エコー輝度は高いことが多く、時に石灰化をきたします。
・浮遊(型)血栓:血栓の末梢部は血管に固着し、それより中枢の部分(5cm以上)が固着せずに内腔に浮遊している血栓です。
→エコーで認めた場合、既に36-60%の症例でPEを合併していると報告されています。
②圧迫法
・proximal CUSでもこの圧迫法を行うため、必ず習得すべき検査手技です。
・エコーで静脈を圧迫し、静脈の圧縮性を判定する最も重要な方法とされます。
・長軸では圧迫の力が確実に伝わらないため、短軸での操作が基本になります。
・また、静脈が確実に圧迫されるように力が伝わることが最も重要です。
→そのため、エコーを持っていない手で被検者の足を把持し、両手で抱え込むように検査を施行することが推奨されます。
・上図のように血栓が存在すると圧迫により、血管の圧縮が生じません。
→ただし、急性期血栓は柔らかいので強く圧迫しないように注意が必要です。
③血流誘発法
※血栓を遊離させるリスクがあり、圧迫法に比して感度/特異度が低下するという報告もあることから、個人的には(医師が)習得する意義は高くない手技と思います。
・血流誘発法には、呼吸負荷法とミルキング法があります。
・いずれも新鮮血栓の存在が明らかな場合は禁忌であり、乱暴な操作は控えます。
・呼吸負荷法:深呼吸(腹式呼吸が推奨)させて血流の変動を観察する方法です。
→正常では深吸気時に静脈血流の遅延、深呼気時に亢進を認めます。
→中枢側で閉塞がある場合、呼吸性変動の消失や減弱が生じます。
・ミルキング法:用手的に下腿筋群を圧迫して、静脈還流を観察する方法です。
→観察部位とミルキング部位の間に狭窄/閉塞があると、血流誘発反応低下または無反応となります。
※血栓遊離のリスクもあるため、無理に強い力でミルキングしないように注意します。