●この記事は2022/2/19に内容更新しました。
キューピーです。
研修医が買っておくべき教科書は何か。
数多くの参考書がある中で、意外と難しい問題だと思います。
自分は都内市中病院で初期研修を行い、その後も都内市中病院を転々としています。
まだ若手なので、研修医向けの本は今でもたくさん読んでいます。
新しく研修医となった先生からも毎年情報を仕入れています。
今回はそんな僕が選びに選び抜いた買っておくべき研修医向けの教科書をご紹介します。
目次
【何も考えず買っておくべき本】
①内科レジデントの鉄則 第3版
これは絶対に買っておくべき1冊です。何も考えずに購入しても、後悔しないと思います。
内科系はもちろん外科系志望の方でも必須と思います。
ちなみに改訂されて間もないので、なおさら買わない理由がありません。
病棟から
「先生、〇〇さんのSpO2が80%まで下がってしまいました!」
「先生、□□さんが痙攣してます!どうしますか?」
「さっき血圧測ったら70/45でした、指示ください!」
ということはよくあります。
病院の体制にもよりますが、当たり前のように1年目研修医にもコールがきます。
そんな時に頼りになる1冊です。
極論を言うとこれ1冊さえあれば、病棟管理の本は他に買う必要はないと言ってもいいです。
この1冊を極めるだけで"デキレジ"になれると思います。
1冊極めるというのがとても難しいのは皆さんもよくご存じとは思いますが。。。
絶対に持っておきましょう。必須本です。
②救急外来 ただいま診断中!
これも絶対に買った方がいいと思います。
個人的には初期研修医中に読んだ本の中で一番良かった本です。
先ほど紹介した"鉄則"は、病棟コールやメジャーな疾患の入院管理は網羅されています。
しかし、ERに患者さんが運び込まれてきた時の初期対応や考え方は網羅されていません。
そこでこの本が役に立ちます。
実は、多くの救急外来向けの本は断片的な書き方が多く、意外と分かりにくいです。
ある程度経験を積まないと中身が理解しにくい印象があります。
その反面、この本は考え方を丁寧に示してくれますし、何よりとても読みやすいです。
もし研修医になる前に何か1冊でも予習しておきたいなら、この本をオススメします。
救急外来での対応のみならず、医師としての診療の実力が確実に上がると思います。
僕自身もこれを読んでからERでの対応の質が格段に上昇したと感じました。
そして著者の坂本壮先生のファンとなり、先生の著書を他にも購入して読み漁っていました(笑)。
それについては機会があればまたご紹介します。
③内科レジデントマニュアル
一見すると"鉄則"のコンパクト版とも思われる本ですが・・・。
実は微妙に内容が違っています。
こちらの方が実は項目が多く、具体的でより実践的です。
"鉄則"は考え方などについて、文章がしっかり書いてあります。
一方のこちらの本は簡易的に要点がまとまっている感じです。
使い分けは①は家での座学用で、病棟では③を片手に対応を行うとよいと思います。
ポケットサイズであり、処方の具体例などが豊富に記載されています。
処方の用量まで記載されているので、このまま処方ができるようになります。
①と③はセットで買っておくことを強くお勧めします。
こちらも改訂したばかりで、尚更買わない理由はないと思います。
④京都ERポケットブック
②で救急外来向けの本を紹介しました。
しかし、予習していないと救急外来ですぐに確認するには内容が多すぎる欠点があります。
救急外来はスピードが大事で、主訴を聞いてすぐに動けることが重要です。
そういった面でおすすめしたいのが、この1冊になります。
これは当直経験の少ない初期研修医の目線に立って、
「主訴は分かったけど、結局何をすればいいの?」
「どんな疾患を考えなければならないの?」
ということが的確かつ簡潔に記載されています。
"主訴ごとの動き方"が記載されていることに現場目線を感じます。
特にいわゆるデキレジの先生がよく読んでいる印象のある本です。
とにかくERで動けるようになるために、買っておくべき1冊だと思います。
【領域別1st choiceの本】
①抗菌薬、感染症の1st choice
●感染症プラチナマニュアル2021-2
これは当ブログの記事の参考文献としても、かなりの頻度で登場しています。
コロナ診療で一躍時の人となった岡 秀昭先生の本になります。
実は、自分がこの本に出会うまでの道のりが長かったんです。
研修医でマスターすべきことは抗菌薬と輸液
とよく言われますが、この本に出会うまでは抗菌薬の考え方がめちゃくちゃでした。
この本は多くの場合、実際の処方量だけでなく、処方日数も言及があります。
また、各種感染症に対する考え方の要点を非常に簡潔に、深くまとめています。
何かの感染症に出会ったら、この本を参考に処方をしてみてください。
診療が終わったら、その感染症の要点を読んで勉強しましょう。
これを繰り返すことでかなり力がつくと思います。
ポケットサイズですので、机で勉強したい方は下記の大判もオススメです。
ちなみによく比較されるので、他の教科書も記載しておきます。
●絶対わかる抗菌薬はじめの一歩
この本は、確かに抗菌薬についての原理や作用機序などはしっかり書いてあります。
が、実践的ではないです。恐らく医学部生向けの本なのだと思います。
時々研修医向けのサイトでこの本がオススメされています。
言い方が悪いですが、そのサイトの管理者は恐らくこの本を読んでいないと思います。
自分も被害者で、この本を読破しましたが、実臨床では全く役に立ちませんでした。
誤解しないでほしいのですが、内容は悪くないです。
ですが、医学生向けだと思います。
●サンフォード感染症治療ガイド2021
こちらは世界標準の本で、実践的です。
実際にこの本を参考にすれば世界標準の抗菌薬処方ができるようになると思います。
プラチナマニュアルが気に入らなければこちらでもいいかもしれないです。
ですが、各種感染症解説についてはプラチナマニュアルの方がよいと思います。
僕も最後まで迷いましたが、プラチナマニュアルを1番にオススメさせて頂きます。
②エコーの1st choice
●あてて見るだけ!劇的!救急エコー塾
エコーは、研修医のうちにある程度はできるようになっておきたい手技の1つです。
特に救急外来では、FASTや心臓、腎臓、胆道などエコーが非常に有用です。
しかし、敷居は比較的高く、教科書も専門的で難しいものが多いのが現状です。
そんな中、非常に分かりやすく様々な場面でのエコーを解説しているのがこの本です。
これを読めば明日にでも患者さんにエコーを当てたくなります。
難しい理論は全部取っ払い、必要なことを凝縮して書いてある印象です。
心エコーをここまで単純に書いてある本はこの本だけだと思います。
エコー画面ってどっちが左?どっちが上?
というレベルから丁寧に解説がされており、内容が非常に分かりやすいです。
初期研修医なら必ず持っておくべき1冊です。
③CT読影の1st choice
●CT読影レポート、この画像どう書く?
比較的新しい本ですが、これはかなりの良著です。
放射線科の先生が強くオススメしたいと仰っていました。
CT読影能力は研修医に必要なの?と思う方もいるかもしれませんが、必須です。
当直ではしばしばCTを撮影する機会があり、自分で読影しなくてはなりません。
上級医に頼ることもできますが、病院によっては自分で読影しなくてはなりません。
また、研修医が終われば自分自身が上級医として読影する番になります。
虫垂炎の所見があったのに、腸炎の診断で帰宅させてしまった・・・。
early CT signを見抜けなかった・・・。
CT読影による当直帯でのトラブルはしばしば経験します。
この本には、必要最低限の解剖学的知識と、よく出会う疾患の所見を研修医に解説する視点で書いてあります。
頭部・胸部・腹部骨盤CTについて網羅されており、これ1冊で研修医が身につけるべきCT読影能力が十分身につくと思われます。
僕自身も非常に内容が良かったため、すぐに読破してしまいました。
④心電図の1st choice
●3秒で心電図を読む本
●心電図ハンター
まず、3秒で心電図を読む本についてです。
え?3秒?本当にこんな本で大丈夫なの?
と思われる方もいるかもしれません。
本書では、心臓血管研究所所長の山下先生が、自身で心電図を読む際の読み方を教えてくれます。
山下先生は、この読み方で問題が生じたことは1度もないそうです。
僕自身も3秒とまではいきませんが、10秒ほどで読むことができるようになりました。
書名が少し胡散臭いですが、内容は非常に論理的で納得できます。
続いて心電図ハンターシリーズの紹介です。
これはもっと早く出会いたかった1冊(2冊)です。
微妙なST変化の場合、ACSと判断するためにはどうすればいいのか。
失神や動悸で心電図をとってみたけど、どう解釈すればいいのか。
現場目線にこだわり抜いて、どこから循環器内科へコンサルトするべきなのか、初期研修医をメインの読者層と想定して書いてあります。
とにかく実践的な本で、虚血編だけでも必読だと思います。
なおこれらの本は現場での動き方を重視していますが、"この不整脈はこんな波形"というような記載は、重要なもの以外はありません。
この波形はどう解釈すればいいのか?と迷ったときに役に立つのがこれです。
●心電図の読み方パーフェクトマニュアル
つまり"心電図の辞書"と思っていただければよいと思います。
必須ではないと思いますが、意識の高い研修医は全員持っている印象です。
⑤輸液の1st choice
●該当書なし
2022年も引き続き、輸液の領域は自信を持ってオススメできる本に出会っていません。
輸液は非常に奥が深い反面、経験的なオーダーでもやり過ごせることが多い気がします。
また心不全や腎不全の輸液は、基本的に初期対応以降は専門医コンサルトが必須です。
つまり、非常に難易度が高く、患者の生命にも直結してしまいます。
そういった特性上、
①詳しすぎて研修医が読むには難しすぎる、腎臓/循環器内科志望なら読むべき
②簡単すぎて読まなくてもよい、実臨床の経験で十分
のどちらかの特性を持つ教科書がどうしても多くなってしまいます。
そんな中で優秀な研修医の先生方がよく読んでいる印象のある本がこちらです。
●レジデントのための これだけ輸液
デキレジの先生いわく、かなりオススメとのことでした。
僕自身も買って読んでみましたが、確かに非常に分かりやすかったです。
特に右も左も分からない、医学部卒業したての先生にはかなりオススメです。
しかし、ある程度経験を積むと記載の内容は自然に身についてしまう気もしました。
⑥救急外傷の1st choice
●教えて!救急 整形外科疾患のミカタ
●救急整形外傷レジデントマニュアル
転んだ患者さんがきます!
交通事故にあった患者さんがきます!
救急外来での診療において、外傷は避けて通れません。
その際の研修医の仕事は"いかに当直帯で対応して整形外科へつなぐか"と思います。
また、緊急性が高い骨折を見抜き、すぐに整形外科へコンサルトすることも必要です。
上記2冊は研修医が救急外来で整形外科疾患をみた時の動き方が具体的に書かれています。
上が画像等も豊富、下がポケットサイズという特徴があるので好みで選ぶと良いです。
両方買ってしまってもよいと思います。
シーネ固定や松葉杖の長さの決め方、RICEの解説もあり、非常に丁寧だと思います。
内科系志望の研修医でも、1冊持っておくといざというときに安心だと思います。
また、もう一歩踏み込みたい方はこの書籍も非常にオススメです。
●骨折ハンター
心電図でオススメした"心電図ハンター"と同じ作者の本です。
前述の2冊より1ランクレベルの高い書籍だと思いますが、非常に勉強になります。
整形外科や外科系志望の先生は持っておくべき1冊だと思います。
⑦小児科救急の1st choice
● 初期研修医・総合診療医のための小児科ファーストタッチ
病院によっては小児科当直もあります。
小児科当直では、成人診療の常識が通じない場面が多々あります。
僕自身は小児科当直のない研修病院でしたが、小児診察の経験はあります。
そんな時に小児科当直をバリバリこなしていた元同級生にオススメしてもらいました。
その元同級生によると9割くらいの研修医はこの教科書を使っているようです。
実際にこの教科書を使って診療にあたりましたが、確かに内容通りに診療がうまくいきます。
特に最初の総論(主訴別の動き方)を読むだけで、小児科当直はほぼこなせそうです。
⑧基本手技の1st choice
●診察と手技がみえる②
やはり手技については経験に勝るものはありません。
しかし、間違った覚え方をしないためにも教科書は1冊持っておくと便利です。
また、初期研修中は手技で悩むことも多いので、精神安定上持っておくことをオススメします。
僕もルート確保でスランプに陥ったとき、この本を読んでどこか改善できる点はないか、よく探していました(笑)
病気がみえるユーザーなら構成などに慣れているでしょうし、使いやすい1冊です。
また、MEDIC MEDIAの信頼度の高さは、国試を終えた皆さんが一番知っていると思います。
⑨辞書系教科書の1st choice
●内科診療フローチャート 第2版
学生ならイヤーノートが1stですが、研修医ならこれがいいと思います。
最新のエビデンスなども、引用論文とともに記載があります。
症例発表の際に引用元として、論文名をすぐに書くという裏技も使えます(笑)
(当然悪用厳禁ですが。。。)
とりあえず何も考えずに買ってしまっていい1冊かなと思います。
最近改訂されたばかりなので、なおさら買わない理由がないと思います。
以上になります。
2022年版は、昨年度より書籍数が減り、より厳選できた気がします。
特にこの1年間は、かなり優秀な研修医が集まる病院だったので、逆に教えてもらうことも多かったです。
この記事が、少しでも初期研修医(前)の先生のお役に立てたなら嬉しいです。
1st choiceだけ買うとしても、そこそこの出費にはなると思います。
ですが、自信を持ってオススメするので、是非購入してみてください。
それでは。